スタッドボルト

スタッドボルトとは

スタッドボルト

スタッドボルト(英語:Stud Bolt)は、六角ボルトのような頭部がなく、両端がねじ部(オスねじ)の軸部のみのボルトです。一般的に「植込みボルト」、「寸切りボルト」も同義語として使用されています。
片端のねじ部を機械や部品のメスねじ部にねじ込み(植込み)、被固定物を取り付けナットで締め付け固定します。

スタッドボルト

図1. スタッドボルト

下記にスタッドボルトの特徴を示します。

  •  軸方向の引張強度に優れています
  • 繰り返しの組み込み、取り外しが可能です
  • ボルト頭部がないため長尺の加工が容易です

なお、スタッドボルトの規格は JIS B1173 植込みボルト で規定されています。

スタッドボルトの使用用途

スタッドボルトの使用用途は、機械本体と部品の組み立てや、部品同士の固定など、さまざまな場面で使用されています。

機械本体と部品の組み立て固定の身近な例として、自動車のハブとタイヤホイールの取り付け部に使用されています。また部品同士の固定の例としては、フランジ同士の締結に使用されています。スタッドボルトの特徴である、引張強度に優れていることを利用し、高いトルクで締め付けて強い締結力を発揮します。

スタッドボルトと同じような用途で使用するボルトで、ウェルディングスタッド(またはウェルドボルト)があります。ウェルディングスタッドは、メスねじにねじ込むのではなくボルト溶接をして機械や部品などに植込みます。ウェルディングスタッドは、溶接時にひずみが発生することがあり、多少の溶接ひずみでボルトが曲がって取り付いても締結できるように、被固定物のボルト穴径を大きくするなど、製品設計で考慮する必要があります。

スタッドボルトの原理

スタッドボルトのネジ加工は、一般的に転造加工と呼ばれている加工方法で製作されています。転造加工は、スタッドボルト素材をねじ金型で圧力を加えて挟み込み、素材外表面をねじ形状に加工します。切削加工と比較して、生産性に優れて大量生産に適しています。

JIS B1173ではスタッドボルトの呼び方(使用、寸法、材質の表示方法)は、下記のように規定されています。

例: ① JIS B1173 ➁ 4×20 ➂ 4.8 ➄ 並 ⑥ 2種 ➆ 並 ⑧ MFZn H-C
① 規格番号 または 規格名称: 植込みボルト
➁ 呼び径x長さ:M4x20mm長さ
➂ 強度区分:4T
④ 植込み側のピッチ系列:並
➄ 植込み側のねじ種別:2種
⑥ ナット側のピッチ系列:並
➆ 指定事項:電気亜鉛メッキ

スタッドボルトのその他情報

1. スタッドボルトの材質

スタッドボルトの材質は、一般的に合金鋼オーステナイト系ステンレス鋼など比較的強度の高い材質使用されています。

JIS B1173では、JIS B1051 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-強度区分を規定したボルト、小ねじ及び植込みボルト-並目ねじ及び細目ねじ で規定された強度区分を選定することで適した材質が決定されます。

雨水が侵入する場所や屋外で長期間風雨にさらされる場所で使用する場合は、耐腐食性の高いオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、SUS316、SUS316Lなど)が使用されます。また配管内流体が高温の配管用フランジに使用する場合は、流体温度の熱伝導によりスタッドボルトにも熱が加わるため、熱伸びによる熱応力を考慮して JIS G4107 高温用合金鋼ボルト材が使用されます。

オーステナイト系ステンレス鋼は、合金鋼に比べ熱伸び量が大きいため、熱膨張による緩みや熱応力に対して注意が必要になります。また、ステンレス鋼は熱が加わる条件でステンレス鋼スタッドボルトとナットを使用すると、ねじ部がかじりつく可能性があるため、ナットには炭素鋼や合金鋼を使用することで、かじりつかないようにします。

2. スタッドボルトリムーバーとは

スタットボルトリムーバーは、スタッドボルトを取り付け、取り外しする専用の工具のです。スタッドボルトは、ボルトの片端が機械や部品に植込まれていて、ねじ山がつぶれたりボルト自体が折れてしまったり、さらには経年的な劣化摩耗により使用不可となったりする場合があります。この場合はスタッドボルトの交換が必要となります。スタッドボルトの交換には、このスタッドボルトリムーバーを使用することで、確実な緩めや締め付けが可能になります。植込まれているねじ部が機械メスねじと焼き付いている場合や、長期間経過して固着していることが多くあります。その場合は、植込み部周辺をバーナーなどで加熱し緩み易くしたり、浸透ねじ緩め材などを浸透させたりして作業することが必要になります。

スタッドボルトリムーバーを使用する以外に、ナットを2個使用したダブルナットを用いて取り外すことも一般的な方法です。ダブルナットは、2個のナット同士を締め付け固定することでボルト頭付きと同じような状態となり、ナットを回すことでボルトも併せて回すことが加工になります。

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