ヘーズメーター

ヘーズメーターとは

ヘーズメーター(英語: Haze meter)は透過率計や曇り度計のことで、フィルムやガラスなどの曇り度を測定することができる装置です。光源からサンプルに光を照射したときの透過光や拡散光を検出することで、ヘーズ(曇り度)を求めることができます。

ヘーズは主に透明性のある材料を評価する際の指標に使われます。ヘーズメーターは液晶ディスプレイやタブレット表面に貼る光学フィルムの評価には欠かせない装置です。

ヘーズメーターの使用用途

ヘーズメーターを使用すると、サンプルの曇り度を測定することができるので、サンプルの透明性、光学特性、表面粗さなどを評価することができます。

ヘーズメーターは主にプラスチックなどの透明材料の光学特性を調べる際に使用されます。例えば、建築材や自動車に使用されるガラスや太陽電池、液晶ディスプレイ、タッチパネル、スマートフォンなどに取り付けられる光学フィルムの評価に用いられます。またアンチグレア加工などの防眩性を付与する分野でも使用されています。

ヘーズメーターの原理

ヘーズメーター(英語: Haze meter)とは、透過率計や曇り度計のことで、フィルムやガラスなどの曇り度合いを測定することができる装置です。装置は複数の光源、レンズ、積分球、受光器、トラップなどから構成されており、透過光や拡散光の区別して検出することができます。

ヘーズは全光線透過率の中の拡散光成分の割合を示したもので、ヘーズ(%) = 拡散透過率 / 全光線透過率 × 100 の式で求めることができます。全光線透過率とは、サンプルを透過する光全体を含んだ数値です。拡散透過率とは、サンプルを透過する光のうち、拡散された光のみを含んだ数値です。透明度の高いサンプルではヘーズの値は0に近くなり、濁りや曇りがあるサンプルではヘーズの値が大きくなります。

日本産業規格 JIS K7136には、プラスチック-透明材料のヘーズの求め方の規格が記載されており、産業界の多くではこれらの記載に準拠した測定が行われています。

参考文献
https://www.sugatest.co.jp/function/ex2/
https://oceanphotonics.com/application/tec_haze.html

ジルコニアビーズ

ジルコニアビーズとは

ジルコニアビーズとは、スラリー状にした被粉砕物をビーズと共に攪拌して、スラリー内の被粉砕物を細かく砕くビーズミルという装置で使用するビーズの一種です。

ジルコニアセラミックスを素材として用いていることが特徴と言えます。

ジルコニアビーズの使用用途

ジルコニアビーズは、ビーズミル (粉砕機) という装置で使用されます。ビーズミルの主な構成は、供給部と攪拌装置を持つ攪拌部、分離部の3つです。ジルコニアビーズをはじめとするビーズは、攪拌部の中に封入されています。工程は以下の通りです。

  1. 被粉砕物を細かく砕いたものを液体に溶かし込んだスラリーを供給する。
  2. スラリーがビーズが封入されている攪拌部に供給される。
  3. ビーズがスラリーと一緒に高速で回転して攪拌される。

3の工程では、ビーズの被粉砕物の粒子や粉体への衝突が起こります。この衝突により、被粉砕物のさらに細かい粉砕や、表面の研磨、またはスラリー内への均一な分散が可能になります。

ジルコニアビーズは、ジルコニアよりなるため、ジルコニア本来の耐摩耗性、高い強度をもち、靭性も良好です。このため、誘導体や圧電体などの電子材料の分散や微粉砕、顔料やインクおよび塗料の分散や微粉砕、ナノテクノロジー材料などの分散や微粉砕などで使用されています。強度が高く、スラリー内で破損しないため安全性も高いことから、医薬品や食品の分散や微粉砕にも好適です。

ジルコニアビーズを用いた加工原理

ビーズミルの攪拌部の中でジルコニアビーズを高速に回転させて攪拌すると、遠心力が生じ、その結果、ジルコニアビーズへ力が与えられ、粉砕エネルギーが生じます。この粉砕エネルギーの大きさにより一度の衝突での加工度合いが決まり、その回数により、加工の特性を制御できるようになります。

被粉砕物の粒子が大きい場合は、大径のジルコニアビーズを用い、被粉砕物の粒子径が小さくなるに従って小径のジルコニアビーズが用いられます。これは、被粉砕物の粒子が大きい場合は、ジルコニアビーズの一度の衝突による加工度合いを上げる必要があるためです。

被粉砕物粒子が微粒子化してくると、小径のジルコニアビーズを用い、ジルコニアビーズと被粉砕物の粒子の接触頻度を増やして粉砕効果を高めます。あまりに小径になると質量が軽すぎて粉砕エネルギーが極小となるため注意が必要です。この場合は、密度の高い材質のビーズを選び、サイズを変えずに質量を上げると粉砕エネルギーは向上します。

ジルコニアビーズのその他情報

1. ジルコニアビーズの材質

ジルコニアビーズを構成するジルコニアは、化学式はZrO2酸化ジルコニウムのことを指し、ジルコニアセラミックスとしてセラミックスに分類されます。ジルコニアは、室温では最も安定な単斜晶の結晶構造を形成しており、温度を上げていくと正方晶、立方晶へと順次変化する物質です。

ジルコニアに安定化剤として、酸化イットリウム (Y2O3) 、酸化カルシウム (CaO) 、酸化セリウム (CeO2) 、酸化マグネシウム (MgO) などの酸化物を添加して反応させることにより、室温下でも立方晶が安定に存在できるようになります。室温で立方晶が安定となったジルコニアを安定化ジルコニア、もしくは部分安定化ジルコニアといいます。

2. ジルコニアビーズの製造方法

ジルコニアビーズは、ジルコニアを微小なサイズの球状に加工して製造します。ジルコニアの中でも安定化ジルコニアは、強度の高さと靭性の大きさに優れており、微小なサイズに加工可能です。

なお、ビーズに加工する方法としては、転動法、プレス法などが挙げられますが、これらの手法では、微小なビーズの製造が困難というデメリットがあります。このため、さらに微小なビーズの製造方法として、水などの架橋液体を使用する方法や水とアルコールなどの液体を併用する液中造粒法が提案されています。

参考文献
https://www.tosoh.co.jp/product/functionality/speciality/zirconia_microbeads.html
https://www.ashizawa.com/column/16.html
https://www.aimex-apema.co.jp/seihin_beadmill/beadsmilltowa.html

ジルコニアセラミックス

ジルコニアセラミックスとは

ジルコニアセラミックス

ジルコニアセラミックスは、ファインセラミックスとよばれる、一般のセラミックスとは区別される高性能・高精度を有した非金属かつ無機物の中でも、常温環境下において最も機械的な強度が高く、靭性が大きいのが特徴です。さらに、摩耗にも耐性が強く、高温や腐食に対する耐性にも優れています。
そのため、これらの特徴を生かして産業界から医療業界まで、幅広く使用されています。

ジルコニアセラミックスの使用用途

ここで、ジルコニアセラミックスの使用用途について、ジルコニアセラミックスの特徴別に分類して例示します。

  • 高強度と高靭性
    常温における機械的な強度に最も優れたセラミックスで、破壊に対する靭性も大きいです。
    使用例:包丁や産業機械のカッターなどの刃物や、ノズル、インプラントなどに用いられます。
  • 熱耐性
    使用することができる最高温度が1200度と高く、耐熱衝撃性が大きい上に、他のセラミックスよりも熱伝導率がとても小さくなっています。
    使用例:耐火や断熱などの材料でスペースシャトルなどにも用いられています。
  • 耐摩耗性
    摩耗に対する耐性が強いことから、工作機械や産業機械の部品に使用されます。
    使用例:ベアリングなどの産業機器部品や人工関節などの医療用途にも使用されています。

ジルコニアセラミックスの原理

続いてジルコニアの原理について説明します。
ジルコニアは、化学式でZrO2と表記し、正しくは二酸化ジルコニウムと呼びます。
純粋なジルコニアでは、温度変化に伴う結晶構造の変化によって、劣化しやすい物質であったため、扱うことが難しかった課題を、結晶構造を安定化させることで解決しています。
ダイヤモンドに次いで、モース硬度をもつために、金属や他のファインセラミックスよりも高い強度と硬度を有しています。
靭帯が大きい原理は、亀裂が全体に伝わっていくことが破損につながりますが、大きな力が加わると、体積が膨張して結晶構造を変化させることで、これを阻止することができるためです。これを応力誘起相変体強化機構と呼びます。
アルミナも酸化物ですが、ジルコニアセラミックスの方が大型な製造が難しい上に素材にかかる費用も高価なため、小さい部品の加工が主流になっています。

ジルコニアセラミックスの特性

ジルコニア(ZrO2)は、融点が約2700℃であり、低熱伝導率、耐熱性、耐食性、高強度等、多くの機能を有しています。

純粋なジルコニアは、常温から高温になるにつれて結晶構造が単斜晶、正方晶、立方晶へと変化する特性を有しています。すなわち、ジルコニアは、温度変化によって結晶構造が変化し体積変化も伴うため、劣化しやすいという性質があります。

そこでこのような欠点を補うために、安定化剤として酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの酸化物が結晶構造中に固溶させると,立方晶が常温下でも安定状態となります。これを安定化ジルコニアといいます。

安定化ジルコニアは、酸素空格子を多く含むため高温で酸素イオンの良い伝導体となります。また化学的に安定であるため、高濃度 TRU廃棄物の固化母材としての検討が進められています。

また安定化ジルコニアよりも酸化物の添加量を減らすと,一部に単斜晶もしくは正方晶が分散した状態となります。これを部分安定化ジルコニアといいます。

部分安定化ジルコニアは高強度・高靭性材料として広く知られています。

ジルコニアセラミックスの歯科への適用

部分安定化ジルコニアのうち、酸化イットリウムを3mol%程度添加すると常温下で正方晶がほぼ100%であるY-TZP(TetragonalZirconia Polycrystal)となり、歯科用材料として活用されています。

なおジルコニアは高硬度の物質であるため、完全に焼結させる加工性が悪くなります。そのため,歯科用に使用されるジルコニア製品においては比較的加工が容易な半焼結の状態にあるブロック体を切削加工し、その後本焼結することにより製品化することが一般的です。

なおジルコニアセラミックスに限らずセラミックス材料を歯科用途で適用する場合には、JIS T 6526(歯科用セラミック材料)およびISO 6872(Dentistry‐Ceramicmaterials)によって規定される基本物性を満たすことが必要となります。

参考文献
https://www.kyocera.co.jp/prdct/fc/list/material/zirconia/
https://www.sifce.co.jp/SZM.html
https://www.kyocera.co.jp/fcworld/first/about.html
https://www.kida.co.jp/study/material_zro2.htm
https://www.top-seiko.co.jp/works/material-cat/ceramics/zirconia/
http://www.ginza-dental.com/zirconia/about/
http://www.tepceram.co.jp/tech/
https://atomica.jaea.go.jp/dic/detail/dic_detail_1336.html

プレートヒータ

プレートヒータとはプレートヒータ

プレートヒータは薄型板状のヒータの総称で、あらゆる工業、産業用途で広く活用されています。 プレートを構成する板材は様々な素材が用いられており、内蔵されるヒーターは一般的な抵抗加熱を用いたものが内蔵されます。 内蔵されるヒーターだけでは強度が得られず、固定等が難しい為、外装となる板状の材質で覆う事で強度の確保や、簡易な固定が出来るよう構成されています。 外装に過昇温防止のサーモスイッチや温度監視用の熱電対を備えた製品もあります。

プレートヒータの使用用途

樹脂成型用金型やプレス金型の加熱、試験装置内部の熱源、結露防止、ガラスや樹脂基板の貼り合わせ装置などの産業、工業設備での使用や、液晶パネル製造工程でのアニール炉、エッチャー等の平面熱源、真空成膜容器の防着熱源など、半導体製造分野でも多く利用されています。

簡易な製品ではボンデ鋼板アルミ鋼板、ステンレス鋼板で覆われたものが多い一方、平面度に高い精度が要求される場合や均熱性を重視する場合はステンレス鋼、アルミ、セラミック等の高精度加工プレートが用いられます。

プレートヒータの原理

プレートヒータは薄型の板状をした加熱源としての総称であり、構成は各種タイプが存在します。

一般的にプレートヒータとして呼称されるものは発熱減となるニクロムやステンレス、ニッケルなどをマイカ(雲母)板で挟んだマイカヒータを、更にステンレス薄板やボンデ鋼板、アルミ薄板等で多い、マイカの強度不足、脆さを補った製品を指します。 また、内蔵するヒータがポリイミドヒータやシリコンラバーヒータの製品もあります。 予め曲面に合わせて湾曲させたものや、薄い鋼板ではなく面積に応じた厚みを持つ高精度加工品のプレート(ステンレスやアルミ、チタン、セラミック等)を備えるものなど、使用用途によって多岐にわたる製品が存在します。 その為、既製品が少なく、カスタムオーダーによる製品が主流です。

使用方法として接触加熱と非接触加熱の2種に大別され、前者は加熱対象物にプレートヒータを接触させて使用し、後者は接触させずに対流や輻射の効果で対象物を加熱します。
後者の場合はヒータが熱負荷の無い空焚き状態となる為、断線のリスクを考慮し、ヒータ容量の設定に注意が必要です。

 

シリコーン離型剤

シリコーン離型剤とは

シリコーン離型剤とは、製品を成形する際に金型から製品をスムーズに取り出せるようにするための薬剤です。

シリコーン離型剤を金型に塗布することで、製品が金型にくっつくことを防ぎ、製品の表面を傷つけずに美しく成形ができます。名前の通り、主成分としてシリコーンが使われています。

表面張力の低さと広がりやすさが特徴のため、どんな金型にも塗布しやすく、化学的に不活性でほとんどの材料に使用可能です。その分子間力は非常に小さく、ほとんどの成形材料と非相溶なので、離型剤として優れた性能を発揮します。

シリコーン離型剤の使用用途

シリコーン離型剤は、さまざまな成形工程で使用されます。プラスチックやゴム、金属など、さまざまな材質の製品を成形する際に有用です。例えば、プラモデルや玩具、自動車部品、キッチン用品など、日常生活で見かける多くの製品がシリコーン離型剤のおかげできれいに成形されています。 また、食品業界でも、食品包装容器などの成形などに用いられます。。

その他、ダイカスト表面処理や合成繊維も用途の1つです。シリコーン離型剤には艶出し、表面保護、潤滑などの機能もあるため、離型性向上以外の目的でも用いることができます。一般的にエマルジョン、オイル、溶液状で使用されますが、焼き付けたり、スプレーして使ったりするものもあります。

シリコーン離型剤の原理

シリコーンはSi-O結合を骨格とした無機化合物の特性と、Si原子に結合するメチル基 (-CH3) などの有機基に由来する化合物の特性を兼ね備えています。

1. 離型性

シリコーンは表面が有機基で覆われているために表面エネルギーが低く、分子間力が低い特徴があります。これは、他の物質とくっつきにくく剥がれやすいことを示します。この性質により、離型性を向上させることが可能です。

分子間力が極めて小さいと、凝集力が弱く拡散しやすいです。シリコーンは、液滴にならずに金型表面に薄く広げることができます。これにより、シリコーン離型剤を金型に塗布すると、その表面に極薄のシリコーン層が形成されます。このシリコーン層の存在によって、製品と金型との直接の接触を防ぎ脱型しやすくなります。

2. 耐熱性

シリコーンは耐熱性が高く、高温でもその機能を失うことがありません。これはシリコーンの主鎖となるケイ素と酸素の結合が、炭素と炭素の結合に比べて安定であるからです。そのため、高温で成形するプラスチック用の金型にも使用できます。

脱型後の成形品表面にシリコーンが移ってしまうことがありますが、シリコーン離型剤を金型へ焼き付けて皮膜にすることで長期間の使用が可能になります。

シリコーン離型剤の種類

1. エマルジョン型

シリコーンオイルを乳化したエマルジョンで、希釈安定性に優れています。食品包装容器、ゴムやプラスチック成形時の離型、アイロンの滑剤、つや出しに使用されます。

2. オイル型

耐熱性、ぬれ性に優れ、化学的に不活性です。ゴム、プラスチック、タイヤ成形時の離型やつや出しに優れています。他のシリコーン離型剤の基油としても用いられます。

3. 溶剤型

シリコーン樹脂トルエンなど、石油系炭化水素などの溶剤で希釈したものです。金型へのぬれ性に優れています。溶剤が揮散しやすいので熱処理が容易で、焼き付けて使用すると皮膜を形成し、長時間の離型効果を発揮し、製品への離型剤の転写を防止します。

シリコーン離型剤の選び方

シリコーン離型剤の選び方を説明します。選び方のポイントは、主に3つあります。

1. 離型性能

製品がスムーズに脱型できるかどうかは、離型剤の性能によるところが大きいです。製品の形状や材質によって適した離型剤は異なるので、目的に応じて選びましょう。

2. 耐熱性

成形温度に耐えうる離型剤を選びましょう。成形する製品の素材や成形方法により、必要な耐熱性は変わります。

3. 安全性

特に食品や医療品を成形する場合は、人体に影響を与えないものを選ぶことが大切です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1968/1/3/1_3_146/_pdf/-char/en
https://www.silicone.jp/products/type/mold/index.shtml
https://www.silicone.jp/catalog/pdf/mold_release_j.pdf

シリコン消泡剤

シリコン消泡剤とは

シリコン消泡剤とは、極めて低い表面張力を有しており、他の物質に溶けにくいことから優れた消泡硬化を持つ消泡剤です。

主な成分はポリシロキサンで、その特性からあらゆる物質、溶剤に対して不溶性または難溶性を示し、水との界面張力も小さいので水系・非水系の両方でごく少量で良好な消泡剤として機能します。

シリコン消泡剤の使用用途

シリコン消泡剤は、さまざまな分野で使用されています。具体的には、化学、石油、発酵、印刷、製紙、繊維、排水処理など、あらゆる工業分野で発生する泡の消泡です。無味無臭で毒性が極めて少ないことから、食品添加物としても使用されています

少量で消泡効果が高いこと以外に、幅広い温度で液状を保ったり、粘度以外は物性が大きく変化しなかったりするなどの特性をもちます。そのため、耐熱性や耐候性に優れており、過酷な条件下でも使用可能です。また、化学的・生理的に不活性かつ無味無臭です。

シリコン消泡剤の原理

液体中の泡は、液体内に混ざった気体が薄い液体の膜で覆われた状態で液体内に存在しています。この泡を包む膜は液体内の界面活性剤により形成されており、言い換えれば気体が界面活性剤よりなる膜にくるまれている状態です。すなわち、泡の表面 (ラメラと呼ばれる液層) では、空気側には界面活性剤の疎水基が、水中側に界面活性剤の親水基が並び気体を囲んで安定している構造です。

シリコン消泡剤は、この界面活性剤の分子の秩序を壊して消泡硬化を発揮します。泡の表面の粘性は、界面吸着物質同士の疑似的な橋掛け構造によるものです。シリコン消泡剤の表面張力は非常に小さく、これが泡の表面に付着すると泡表面の界面吸着物質を引き込み、泡の表面の疑似的な橋掛け構造を破壊して泡を分離し、泡の表面張力を大幅に低下させて消泡効果を発揮します。

また、界面活性剤にはマランゴニ効果と呼ばれる現象があり、これは表面の吸着密度に偏りがあると表面張力に勾配が生じ、薄くなった部分に再び界面活性剤が移動してくる現象です。この現象により界面活性剤層の弾性が保たれ泡が安定して存在可能です。しかしながら、シリコン消泡剤があると、界面活性剤層が分子間力の小さいシリコンに置換されて泡の表面が弾性を失い、消泡に至ります。

泡の中で内圧の高い小さい泡は、内圧の低い大きな泡に連続的に吸収されていく現象をガス拡散と呼びます。界面活性剤が存在している場合、ラメラ層のガス拡散速度は低下して泡が安定する状態です。しかし、泡表面の界面活性剤層の一部がシリコン消泡剤で置換されていると、シリコンはガス透過性が高いためガス拡散を促して消泡できます。

シリコン消泡剤の種類

シリコン消泡剤には、「オイル型」「オイルコンパウンド型」「自己乳化型」「エマルジョン型」「溶液型」「固形型」「粉体型」などがあり、消泡する対象により使い分けられています。

1. オイル型シリコン消泡剤

オイル型シリコン消泡剤は溶剤や添加物を含まない消泡剤です。ノンシリカであるため、水や溶剤の混入に適しない油性の発泡液に使用できます。

価格が安く、即効性や耐熱性ももちます。しかし、油浮きを起こすほど、油性成分が強力です。そのため、河川などへの排水用途は問題となる可能性があり、取り扱いに注意が必要です。

2. オイルコンパウンド型シリコン消泡剤

オイルコンパウンド型シリコン消泡剤は、シリコンオイルに粉末シリカ粉を配合したもので、シリコン樹脂のみで作られているため、シリコーン本来の特製を発揮します。油性、水性発泡液のどちらにも有効です。乳化剤が添加されていないため、そのままで水系発泡液に使用できません。

3. 自己乳化型シリコン消泡剤

自己乳化型シリコン消泡剤は、酸性とアルカリ性どちらに対して有効です。また、持続性も高く、幅広い用途に使用できます。他の消泡剤に比べて価格が高いことが欠点です。

4. エマルジョン型シリコン消泡剤

エマルジョン型シリコン消泡剤は、汎用的な水性発泡液用消法剤です。取り扱いが用意であり、安全性が高く、品種も多くあります。そのため、食品添加用や排水処理用として使用されます。

欠点としては、貯蔵条件に制限があります。高温発泡液、耐アルカリ性、耐酸性に弱いことも弱点です。

5. 溶液型シリコン消泡剤

溶液型シリコン消泡剤はシリコーンオイルを溶剤に溶かしているため、溶剤によりさまざまな機能性の付与が可能です。主に、油性の発泡液の消泡に使用されています。油性であれば、優れた効果を発揮しますが、水系発泡系に対しては効果が落ちることが欠点です。

6. 固形型・粉末型シリコン消泡剤

固形型・粉末型シリコン消泡剤は、シリコーンオイルを高吸油性の粉体や固体に吸着させて製造されます。これらは、貯蔵安定が良く、取り扱いが容易で作業性に優れます。また、水系発泡液に良く分散する効果がある一方で、水系以外の発泡液への使用が難しい消法剤です。

参考文献
https://www.silicone.jp/products/type/defoaming/index.shtml
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1956/42/10/42_10_762/_pdf
https://www.tetsutani.co.jp/wp-content/uploads/2015/12/23.pdf
http://cosmeseibun.web.fc2.com/cosme/mokuteki/mokuteki_034.html
https://www.is-chemi.co.jp/products/paintink/antifoam

シリカサンド

シリカサンドとはシリカサンド

シリカサンドとは、蛙目粘土 (ガイロメネンド) 層に含まれている石英粒を水洗して取り出し、乾燥および分級したものです。

珪砂とも呼ばれています。硬質で耐火性が高く、耐薬性や耐酸性などにも優れているのが特徴です。

シリカサンドの使用用途

シリカサンドは、建築分野や加工分野などさまざまな分野で利用されており、例えば以下のような用途で使用されています。

1. 建築分野

  • 建材用: 各種モルタル骨材
  • 舗装用: 目地・インターロッキングなど
  • 造園用: 土壌改良用の骨材や美観用骨材、除菌砂など
  • 成形用: コンクリート成形用骨材
  • 鋳造用骨材
  • ガラス用材料

2. その他分野

  • サンドブラスト用骨材
  • 上下水道濾過用
  • 清掃プラント流動床用
  • ルーフィング用
  • 塗料用・塗材用
  • ゴルフ用目土
  • バンカー用

シリカサンドの原理

シリカサンドは、蛙目粘土 (ガイロメネンド) 層に含まれている石英粒を水洗して取り出し、乾燥・分級したものです。この石英粒は、珪石の地層から採掘され、珪石を砕いて粒状になったものです。また、珪石の地層は、花崗岩や石英斑岩などの酸性岩が長い年月を経て風化され崩壊し、化学的に安定で風化に耐えた石英粒子として川や海に運ばれて集積して形成されます。

このため、シリカサンドには、石英の特性が反映されています。硬質で、溶融点は1,680℃程度と高く耐火性があるのが特徴です。また、耐薬性、耐酸性、耐アルカリ性、耐候性や耐摩耗性にも優れています。

シリカサンドのその他情報

1. シリカサンドに関する規格

シリカサンドに関する規格の一例として、日本産業規格の「JIS G 5901(2016) : 鋳型用けい砂」が挙げられます。この規格によると、シリカサンドのサイズは 3号~8号 (0.5号間隔) の11種類に分けられています。網目ふるいの公称目開きが1,700μmの最も粗いシリカサンドが3号で、サイズが小さくなるに従って号数が大きくなり、最も細かなシリカサンドが8号です。

この規格では各号数における微粒量も決められています。3 号~5 号の比較的粗いシリカサンドに関しては、20μm~106μmの大きさの微粒を2wt%以下、5.5号~7 号の比較的細かいシリカサンドに関しては、20μm~53μmの微粒を1~2wt%以下と規定しています。

2. シリカサンドの用途別特性

シリカサンドはさまざまな分野で使用されていますが、ガラスの原料として使用する場合と鋳造用骨材として使用する場合には注意が必要です。

ガラスの原料として使用する場合は、SiO2が99.5%以上のものが用いられています。シリカサンドには石英 (SiO2) のほかにFe2O3、FeO、Al2O3、CaO、MgO、TiO2、K2O、Na2Oなどの鉱物が含まれています。ガラスの原料として使用する場合に鉄は着色や光透過率の低下などの原因となるため、Fe2O3の含有量の規制が必要です。

鋳物用の骨材として使用する場合には、長石や雲母が混入していると焼き付けなどに問題が生じます。なお、鋳物用の品質規格ではSiO2に加え、Al2O3やCaOおよびMgOの含有量が規定されています。また、鋳物用では水分含有量にも気をつけなければなりません。

3. シリカサンドの有害性

シリカサンドを経口摂取しても、人体にほとんど影響がないことが知られています。しかしながら、シリカサンドの微粒子を鼻や口から吸入すると重篤な症状が現れることがあります。石英などの結晶性シリカの吸入は珪肺の原因です。珪肺やアスベストの吸引に起因するアスベスト肺などの症状をまとめてじん肺症といいます。

じん肺症の症状の傾向としては、最初は自覚症状がありませんが、時間経過とともに咳や痰、さらには息切れや呼吸困難の症状が現れます。一度じん肺症にかかると治療方法はなく、正常な肺に戻ることはありません。

材料表面に砂などを吹き付けて表面加工するサンドブラストには従来、シリカサンドが使用されてきました。このとき、シリカサンドは吹き付けられた衝撃によって、さらに微細化し空気中に舞う現象が起き、作業者がシリカサンドの微粒子を吸ってしまい、珪肺の発症原因となっています。

そこで、近年はサンドブラスト用のシリカサンドとしては、シリカの含有量を抑えたものが開発され、広く使用されています。また、このような事故を防ぐために、通常は防塵マスクなどの保護具を使用することが推奨されています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rpsj1954/24/2/24_2_22/_pdf
http://www.tkip.jp/staurolite.html
https://ehimes.johas.go.jp/wp/wp-content/uploads/2018/10/2018100404.pdf
https://www.jmedj.co.jp/premium/treatment/2017/d030902/
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/0309-1a_0002.pdf
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/08/dl/s0809-5g.pdf
https://kikakurui.com/g5/G5901-2016-01.html
https://foundry.jp/bukai/wp-content/uploads/2013/03/7ffc82f3d1f05c40f47791ab0a3a0dcd.pdf

サンプルチューブ

サンプルチューブとは

サンプルチューブ

サンプルチューブとは、化学、生化学、分子生物学等の実験・研究において、培養や試料・試薬の保存、遠心分離機や分析機器に試料をセットするために用いられる試験管です。

用途等に応じて様々な種類がありますが、試料等を取り扱うものは全て「サンプルチューブ」と形容される傾向にあります。

サンプルチューブの使用用途

サンプルチューブは、化学、生化学、分子生物学等の研究開発分野における実験や臨床における検査で用いられる器具です。化学・生化学では、組織培養や細胞培養、試薬や試料の保存、及び、遠心分離や各種分析機器での分析など、様々な用途で用いられます。

臨床で用いられる主な検査は免疫血清検査、細菌検査などです。 

サンプルチューブの原理

サンプルチューブは、先の閉じた円柱型もしくは円錐形をしており、実験試料や試薬・検体などを入れて扱うことができるようになっています。蓋は、マイクロチューブなどの場合は本体と繋がっている場合が多いです。

それよりも大きい遠沈管などではスクリュー式の蓋が別でついているケースがほとんどです。NMRサンプルを扱うNMRチューブ (NMR管) では、軽く押して閉める形状の蓋が別でついています。

サンプルチューブの種類

サンプルチューブの容量、用途により異なります。形状は先の閉じた円柱型もしくは円錐形ですが、丸底のもの、平底のもの、底が円錐形のコニカルチューブ、円錐形でとがっているスピッツ (スピッツ管) などがあります。

材質は、ポリプロピレンポリスチレンなどの合成樹脂、強化硬質ガラス、硼珪酸ガラスなどです。温度や薬剤に対する安定性が要求される試験にはポリプロピレン製が、チューブ内のサンプルを観察する場合には透明度の高いポリスチレン製が適しています。 尚、有機溶媒の中には、プラスチックを溶かすものもあるため、用いる試薬・試料・検体に合わせてチューブを選択することが必要です。

1. マイクロチューブ

マイクロチューブのイメージ

図1. マイクロチューブのイメージ

マイクロチューブは、マイクロリットルからミリリットル単位の試料を扱うためのサンプルチューブです。マイクロチューブは微量遠心管とも呼ばれ、容量は2mL、1.5mL、0.5mL、0.2mLなどがあります。分子生物学分野では、実験の効率化やコンタミネーションの防止のため、合成樹脂製のマイクロチューブを使い捨てで使用します。

蓋は本体に繋がっており、ロック式になっています。蓋をする際には、蓋が水平になるように、かつ、ロックがかかるように下まで押し込みます。マイクロチューブは、試料を遠心分離する時やPCRを行う場合のほか、試料や試薬を分注して保存するために用いることもあります。 マイクロチューブは、最初に販売したエッペンドルフ社に由来して、「エッペンドルフ」「エッペン」と呼ばれることも多いです。

2. コニカルチューブ、スピッツ

コニカルチューブ・スピッツ管のイメージ

図2. コニカルチューブ・スピッツ管のイメージ

コニカルチューブやスピッツ管はマイクロチューブよりも容量の大きいチューブです。

コニカルチューブでは、15mLや、50mLのものが主流であり、スピッツ管は10mLのものが主流です。また、コニカルチューブは合成樹脂製であることが多いですが、スピッツ管はガラス製のものも多くあります。遠心分離に用いられることが多いサンプル管であり、スピッツ管は特に臨床で多く使われます。

3. PCRチューブ

PCRチューブのイメージ

図3. PCRチューブのイメージ

PCR用に用いられる専用のマイクロチューブがPCRチューブです。PCRチューブでは、ドーム型キャップサーマルサイクラーの熱を迅速に伝えられるよう、側面の壁が薄くなった構造になっています。容量目盛りのついたストックチューブなどもあります。

4. その他

NMRサンプルを扱うNMRチューブも広義ではサンプルチューブに含まれます。 凍結保存に用いるクライオチューブも、サンプルチューブの一種です。

サンプルチューブのその他情報

コンタミネーション対策

サンプルチューブには、未滅菌のものと滅菌済みのものがあり、滅菌済みのものは通常、パイロジェン・フリー、エンドトキシン・フリーです。パイロジェンは微生物に由来する多糖類で発熱性物質であり、エンドトキシンはパイロジェンの主要物質です。

細胞培養では、細胞活性に様々な影響を与えるため、パイロジェン・フリー、エンドトキシン・フリーのサンプルチューブを使用します。また、DNAやRNAを扱う場合には、DNaseフリー、RNaseフリーのものを使用します。

参考文献
http://jikken.ihe.tohoku.ac.jp/science/advice/molecular_biology.html
https://www.monotaro.com/g/00085793/
https://www.corning.com/jp/
https://www.monotaro.com/
http://jikken.ihe.tohoku.ac.jp/science/advice/molecular_biology.html

ゴムパッキン

ゴムパッキンとは

ゴムパッキン

工学的な用語では、回転体などの運動部に用いられるシール材をパッキンといい、静止部に使用されるシール材をガスケットといいますが、ゴムパッキンは一般的に静止部に用いられるゴム製シール材を指します。

ゴムパッキンの使用用途

ゴムパッキンは工業設備・実験設備に用いられるだけでなく、様々な容器の蓋や家庭内のシャワーノズルや水道管など日常生活の多くのシーンでも活躍しています。

例えば、配管やバルブの接合部に配されて、これら部位における気密性・液密性を高めて、内部流体の漏洩や異物混入を防ぎます。

ゴムパッキンの原理

ゴムパッキンは、名前の通り、ゴムにより形成されており、ゴムの伸び縮みする性質に起因して、その機能を発揮します。

ゴムが伸びるのは、ゴムを構成する高分子が外力により引き伸ばされても、硫黄原子により分子間のつながり(架橋)が保たれて、結合が維持されるためです。

このため、ゴムは外力により引き延ばされても、ある程度の外力までは断裂することなく伸びます。

一方、外力がなくなった際には、元の状態に戻って縮むため、伸び縮みがなされます。

このような性質のゴムよりなるゴムパッキンを配管等の接合部に用いると、図1に示すように、配管の接合部の締め付けによる図面縦方向の外力(オレンジの矢印で示す)により、図面横方向(黄緑の矢印で示す)に伸びて接合の間隙を埋めます。

また、図2に示すように、配管内部に流体が流れる際の圧力による配管の径方向すなわち図面横方向の外力(オレンジの矢印で示す)によってゴムパッキンの配管の内径側が径方向に縮む(黄緑の矢印で示す)とともに、配管の長さ方向すなわち液体が流れる方向(黄色の矢印で示す)に伸びて配管の隙間を埋めます。
ゴムパッキンの原理

図1. 配管とゴムパッキンにかかる力の関係を示す模式図(左) / 流体からの圧力とゴムパッキンに掛かる力を示す模式図(右) 

このようにゴムパッキンが伸び縮みして配管の隙間を埋めるため、流体の外部への漏洩や外部からの異物の混入を防ぐことが可能となります。

また、流体が流れなくなった場合には、ゴムパッキンには配管の締め付けにより図面縦方向の外力のみが掛かることとなり、ゴムパッキンは図1に示すように元の形状に戻り、再度流体より外力が加われば同様の機能を発揮するため、繰り返しの利用が可能です。

この性質を生かし、配管などの接合部のほか容器の蓋などのように、何度も繰り返し開閉する部位においても使用可能です。

ただし、ゴムパッキンは、完全に元の形状に戻ることはできないため、その機能は徐々に低下します。

このため、ある程度の期間内での使用とし、劣化したら交換することが必要です。

ゴムパッキンのその他情報

1. ゴムパッキンの製造方法

二重リング状ゴムパッキンの模式図

図2. 二重リング状ゴムパッキンの模式図

ゴムパッキンは、シールテープなどのシール材よりも安価で様々な材質で製造されています。

ゴムパッキンの製造方法としては、ゴムシートを所定の形状に打ち抜く方法と、金型を用いて射出成型などで製造する方法が挙げられます。

金型を使用して製造する場合、図3に示すようなリングが二重になっているような複雑な形状のものも製造可能です。

2. ゴムパッキンの材質

ゴムパッキンには様々な種類のゴムを使用することが可能であり、流体の種類や温度など系によって適切な材質を選定することが重要となります。

ゴムパッキンに用いられる材質は天然ゴムよりも合成ゴムがやや多く、具体的な名前を挙げていくとニトリルゴム(NBR)、

フッ素ゴム(FKM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(VMQ)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられます。

3. ゴムの種類

ニトリルゴム(NBR)
ニトリルゴムは、最も一般的な合成ゴムの一つであり、耐油性、耐摩耗性、耐老化性に優れる材料であることから、耐油性が必要な使用状況のパッキンの材料としてまず検討すべきゴムだと言えます。

また、ニトリルゴムは耐老化性にも優れているため、長期間使用する部分に使用するのに適しています。

その一方で、耐候性が弱いため、直射日光が当たる場所などでの使用にはあまり適しません。なお、保管期限は10年ほどです。

フッ素ゴム(FKM)
フッ素ゴムは、他のゴムと比べて、耐熱性、耐油性、耐候性および耐薬品性が優れています。

このため、化学薬品を使用する状況下のパッキンに多く使われています。

ただし、フッ素系ゴムは物理的な衝撃に弱く、取り扱いの際には注意が必要です。なお、保管期限は20年ほどです。

ウレタンゴム(U)
ウレタンゴムは、耐摩耗性が高く、機械的な強度が総合的に強いことが、最大の特徴で、摩擦が多い環境下で使用するパッキンに適しています。

一方、耐水性が弱いため、濡れている場所や湿度が高い環境での使用にはあまり適しません。

なお、保管期限は10年ほどです。

シリコーンゴム(VMQ)
シリコーンゴムは、人体への影響が小さいことが最大の特徴です。また、耐熱性や難燃性にも優れており、温度によって形が変わりません。

値段も比較的安定していることから、生活用品への使用も多く、安全な特性を活かして、炊飯ジャーのパッキンや水周りの商品に用いられています。保管期限は20年ほどです。

エチレンプロピレンゴム(EPDM)
エチレンプロピレンゴムは、耐候性、耐寒性、耐無機薬品性に優れている材料です。

もともとゴムは直射日光や極端な寒さに弱く、硬くボロボロになってしまいますが、エチレンプロピレンゴムは耐候性、耐寒性に優れる為、屋外で使用しても問題のない材料です

屋外で使用されるゴム電線などに使われています。ただし、耐油性は弱いため、耐油性を必要としない使用環境であれば、汎用性が高い材料です。保管期限は20年ほどです。

ブチルゴム(IIR)
ブチルゴムは、イソブチレンに少量のイソプレンを共重合させて作られたゴムであり、防振性、絶縁性、耐水性、耐候性、耐薬品性、耐熱性に優れています。

工業品から家庭用品まで使用の幅は広く、生活には欠かせない材質です。

スチレンブタジエンゴム(SBR)
スチレンブタジエンゴムは、エチレングリコールやブレーキ油などの動物油・植物油に対して優れた特性を持っています。

また、天然ゴムと比べ、耐摩耗性、耐老化性に優れており、価格も安価な材質です。

熱に対しても強く、均質な製品を作りやすいのが利点であり、タイヤやホースなどにも広く使われています。

まとめ

配管や家庭用品など、様々な用途で使用されるゴムパッキンですが、その材質や形、製造方法により、大きく特性が異なります。

使用環境や用途に合わせた材質、形、その材質と形状に適した製造方法を用いて製造されたものを使用することが必要です。

また、耐久性の点も鑑み、必要な時期に交換することも必要です。

参考文献
日本プラントメンテナンス協会 実践保全技術シリーズ編集委員会編『実践保全技術シリーズ4シール技術』 1994年 ISBN 4-88956-066-1
日本プラントメンテナンス協会編 『わかりやすい機械要素―基礎から取扱いまで〈下巻〉』 JIPMソリューション 2001年 ISBN 4-88956-189-7
https://www.kyowakg.com/tech/bosuipacking/
https://www.packing.co.jp/ORING/moredomegenri.htm 
https://www.packing.co.jp/PACKING/packingzaiindex.htm
https://www.e-sealpacking.com/guide/
https://www.ontech.jp/column/theme01/column19.php

コンテナ洗浄機

コンテナ洗浄機とは

コンテナ洗浄機

コンテナ洗浄機とは、様々な種類の容器を洗浄する機械です。

コンテナ洗浄機は、容器洗浄を人が手作業で行うよりも効率よく衛生的に洗浄するための機械です。人が手洗いで洗浄する場合は、時間効率を上げても限界がある上に、高温や強い洗浄剤を使っての洗浄は難しく、仕上がりにムラができる可能性があります。洗浄機はこの点の改善に大きな効果が出ます。

コンテナは、食品、サニタリ、物流などの分野で広く使用されており、汚れたら洗浄して再利用することがコスト面で有利です。コンテナ洗浄の方法は、機械洗浄、浸漬洗浄、クリーニング洗浄などがあります。

コンテナ洗浄機の使用用途

コンテナ洗浄機を導入する場合、最初に、洗浄したいコンテナの量を考え、バッチ式の小型の洗浄機か、コンベヤ式の大型の洗浄機かを選択します。バッチ式は小型で省スペースに特化しており、コンベヤ式は大型で大量処理に適しています。

コンベヤ式は、洗浄のみか、洗浄後に乾燥や脱水を必要とするかで種類が分かれます。水産・肉・食品・飲料などの食料関連からサニタリなどの衛生関連など多岐にわたる業種で使用されています。

コンテナ洗浄機の原理

コンテナ洗浄機は、洗浄にかける時間、水圧、水量、水温、強力な化学洗剤などをコンテナの材質に応じて最適に組み合わせて、質の高い洗浄を可能にしています。

洗浄時の水圧には低圧と高圧があり、低圧の場合は、全体を洗うのに効果的で高温による洗浄ができるため、衛生面で優れていますが、ピンポイントの強い汚れには不向きです。

一方、高圧洗浄の場合は、高圧噴射をピンポイントに直接吹きかけることで汚れを粉砕できるため、強い汚れに効果的です。全体的な洗浄には、ムラができやすいことや、水量は抑えられるものの消費エネルギーが大きい問題があります。

また、洗浄剤は汚れの種類やコンテナの材質などにより的確なものを選択します。

コンテナ洗浄機の種類

1. バッチ式洗浄機

バッチ式洗浄機は、洗浄~遠心脱水まで自動で行うタイプです。省スペースで設置面積が狭い場所に適しています。120枚/h程度以下の能力の場合に使われます。

2. コンベア式洗浄機 (洗浄のみ) 

コンベア式洗浄機は、コンテナをコンベヤに連続して流すので大量処理が可能です。300~2,000枚/h程度の処理まで対応でき、1,000枚/h以上の場合は、マテハン機器が必要です。

3. コンベヤ式洗浄機 (洗浄・ブロア乾燥) 

洗浄後、高速・高温の風を当ててコンテナを一気に乾燥させます。300~2,000枚/h処理まで対応が可能です。

4. 洗浄脱水機 (洗浄・遠心脱水) 

乾燥工程に熱風ではなく、遠心力を使うのでランニングコストの軽減が可能です。処理能力500~2,000枚/hに対応します。

5. 遠心脱水機

遠心式により脱水する装置で、オフラインで使用します。処理能力500~3,000枚/h程度に対応できます。残水1%程度まで脱水が可能です。

6. 無人ロボット搬送

処理能力は最高2,000枚/hまで対応可能です。500枚/hの小型ラインを連結して、処理能力をアップさせます。バリエーションも豊富にあります。

コンテナ洗浄機のその他情報

1. コンテナ洗浄機のメリット

  • 処理能力が高い
    例えば、作業員2名の場合、手洗いに比べ、コンベア式洗浄機では7倍以上の処理能力向上ができます。洗浄時間の大幅短縮と人出不足が解消されます。

  • 強力な洗浄
    手洗いの場合、40℃程度の湯で安全な中性洗剤を使って洗浄しますが、洗いムラが起きやすいと言えます。洗浄機は60~80℃の高温度で、強力な洗浄剤を使うので、ムラのない均一な洗浄が可能です。

  • 無駄な水の使用がなく低コスト
    手洗いの場合、作業員や状況に影響され水の使用量が不均一になりやすい一方で、洗浄機は水の使用量が一定であるため、無駄な水の使用がありません。

2. コンテナ洗浄機用の洗浄剤

汚れの質、洗浄方法、コンテナの材質などに合わせて、種々の洗浄剤が使われます。

洗浄剤は、粉末タイプと液体タイプが用いられます。塩素成分が配合され、除菌・消臭効果が大きいタイプ、油脂・たんぱく質のよごれの除去能力が大きいタイプ、洗浄機内にスケールが付きにくいタイプなどがあります。

また、リン酸塩が配合された劇薬のもので洗浄力が高いタイプ、特殊分散剤の働きで汚れの再付着を防止できるタイプ、抑泡性に優れたタイプなど種々あります。