ジルコニアセラミックス

ジルコニアセラミックスとは

ジルコニアセラミックス

ジルコニアセラミックスは、ファインセラミックスとよばれる、一般のセラミックスとは区別される高性能・高精度を有した非金属かつ無機物の中でも、常温環境下において最も機械的な強度が高く、靭性が大きいのが特徴です。さらに、摩耗にも耐性が強く、高温や腐食に対する耐性にも優れています。
そのため、これらの特徴を生かして産業界から医療業界まで、幅広く使用されています。

ジルコニアセラミックスの使用用途

ここで、ジルコニアセラミックスの使用用途について、ジルコニアセラミックスの特徴別に分類して例示します。

  • 高強度と高靭性
    常温における機械的な強度に最も優れたセラミックスで、破壊に対する靭性も大きいです。
    使用例:包丁や産業機械のカッターなどの刃物や、ノズル、インプラントなどに用いられます。
  • 熱耐性
    使用することができる最高温度が1200度と高く、耐熱衝撃性が大きい上に、他のセラミックスよりも熱伝導率がとても小さくなっています。
    使用例:耐火や断熱などの材料でスペースシャトルなどにも用いられています。
  • 耐摩耗性
    摩耗に対する耐性が強いことから、工作機械や産業機械の部品に使用されます。
    使用例:ベアリングなどの産業機器部品や人工関節などの医療用途にも使用されています。

ジルコニアセラミックスの原理

続いてジルコニアの原理について説明します。
ジルコニアは、化学式でZrO2と表記し、正しくは二酸化ジルコニウムと呼びます。
純粋なジルコニアでは、温度変化に伴う結晶構造の変化によって、劣化しやすい物質であったため、扱うことが難しかった課題を、結晶構造を安定化させることで解決しています。
ダイヤモンドに次いで、モース硬度をもつために、金属や他のファインセラミックスよりも高い強度と硬度を有しています。
靭帯が大きい原理は、亀裂が全体に伝わっていくことが破損につながりますが、大きな力が加わると、体積が膨張して結晶構造を変化させることで、これを阻止することができるためです。これを応力誘起相変体強化機構と呼びます。
アルミナも酸化物ですが、ジルコニアセラミックスの方が大型な製造が難しい上に素材にかかる費用も高価なため、小さい部品の加工が主流になっています。

ジルコニアセラミックスの特性

ジルコニア(ZrO2)は、融点が約2700℃であり、低熱伝導率、耐熱性、耐食性、高強度等、多くの機能を有しています。

純粋なジルコニアは、常温から高温になるにつれて結晶構造が単斜晶、正方晶、立方晶へと変化する特性を有しています。すなわち、ジルコニアは、温度変化によって結晶構造が変化し体積変化も伴うため、劣化しやすいという性質があります。

そこでこのような欠点を補うために、安定化剤として酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの酸化物が結晶構造中に固溶させると,立方晶が常温下でも安定状態となります。これを安定化ジルコニアといいます。

安定化ジルコニアは、酸素空格子を多く含むため高温で酸素イオンの良い伝導体となります。また化学的に安定であるため、高濃度 TRU廃棄物の固化母材としての検討が進められています。

また安定化ジルコニアよりも酸化物の添加量を減らすと,一部に単斜晶もしくは正方晶が分散した状態となります。これを部分安定化ジルコニアといいます。

部分安定化ジルコニアは高強度・高靭性材料として広く知られています。

ジルコニアセラミックスの歯科への適用

部分安定化ジルコニアのうち、酸化イットリウムを3mol%程度添加すると常温下で正方晶がほぼ100%であるY-TZP(TetragonalZirconia Polycrystal)となり、歯科用材料として活用されています。

なおジルコニアは高硬度の物質であるため、完全に焼結させる加工性が悪くなります。そのため,歯科用に使用されるジルコニア製品においては比較的加工が容易な半焼結の状態にあるブロック体を切削加工し、その後本焼結することにより製品化することが一般的です。

なおジルコニアセラミックスに限らずセラミックス材料を歯科用途で適用する場合には、JIS T 6526(歯科用セラミック材料)およびISO 6872(Dentistry‐Ceramicmaterials)によって規定される基本物性を満たすことが必要となります。

参考文献
https://www.kyocera.co.jp/prdct/fc/list/material/zirconia/
https://www.sifce.co.jp/SZM.html
https://www.kyocera.co.jp/fcworld/first/about.html
https://www.kida.co.jp/study/material_zro2.htm
https://www.top-seiko.co.jp/works/material-cat/ceramics/zirconia/
http://www.ginza-dental.com/zirconia/about/
http://www.tepceram.co.jp/tech/
https://atomica.jaea.go.jp/dic/detail/dic_detail_1336.html

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