記録温度計

記録温度計とは

記録温度計

記録温度計または自記温度計とは、気温の時間的な変化を自動的に測定し記録する装置です。

記録温度計には、主に2つのタイプがあります。1つ目のタイプは金属の熱膨張を利用したもので、バイメタルブルドン管が使用されます。これらの部品が熱膨張することによって、自記装置のペンが動かされ、温度の変化が記録可能です。

もう1つのタイプは、温度による電気抵抗の変化を利用するものです。この方式ではサーミスタを使用し、その抵抗値の変化を電流の変化に変換して、記録電流計を用いて温度を記録します。

これらの記録温度計は、それぞれ異なる原理に基づいており、用途に応じて適切なタイプを選択することが可能です。

記録温度計の使用用途

記録温度計は、感度にやや遅れがあるものの、気温の変化を追跡し、その時の最高温度や最低温度が発生した時刻を知ることができます。この特性から、一般的な気象観測や学校の百葉箱などで広く使用されています。

空調管理が求められる病院や倉庫、さらには温度管理が極めて重要な博物館や美術館で展示品を保護する目的で設置されることもあります。これらの施設では、温度変動が展示品に悪影響を及ぼす可能性があるため、記録温度計による温度監視が不可欠です。

また、薬品保管庫や食品庫といった倉庫、農業分野での気温監視、半導体やLSIなどの精密機械を生産する工場、環境実験室などでも記録温度計は利用されています。これらの用途では、温度の正確な監視が製品品質の保持や適切な環境管理に直結するため、記録温度計の役割は極めて重要です。

記録温度計の原理

記録温度計には主にバイメタル式とブルドン管式、そしてサーミスタを使用したタイプがあります。

1. バイメタル式

バイメタル式温度計では、熱膨張係数の異なる二枚の金属を貼り合わせたバイメタルをセンサーとして使用します。温度の変化により、バイメタルが反り、この反り具合を測定して温度の検出が可能です。

2. ブルドン管式

ブルドン管式温度計は、平たい楕円形の断面を持つ金属管をほぼ円形に巻き、一端を固定して他端を閉じる形で構成されています。管内に封入されたアルコールやエーテルが温度の上昇とともに膨張し、固定されていない管の端が変位することで温度変化を測定します。

これらバイメタルやブルドン管を利用した記録温度計では、温度によるバイメタルの反りやブルドン管の変位をテコの原理で増幅し、記録装置のペンに伝えて、回転するドラムに巻かれたチャート紙 (記録紙) に記録を行います。

3. サーミスタ式

サーミスタは温度変化に応じて抵抗値が変わる電子部品を使用します。サーミスタ式温度計は、センサー部に微量の電流を流して抵抗値を測定し、これを温度値に変換します。この方法は電気的な計測を行うため、デジタル表示やデータロガーによる記録が可能です。

これらの記録温度計はそれぞれの特性によって異なる用途に適しており、使用環境や測定の必要性に応じて選ばれます。

記録温度計の選び方

記録温度計を選ぶ際には、以下の点を考慮します。

1. 温度範囲と精度

測定対象の温度範囲と精度を確認することは、最も重要な点です。用途に応じて、耐高温能力や低温での正確な測定が可能なモデルを選ぶ必要があります。また、食品産業や医療関連の場所では高精度が要求されることが多いため、より精密なセンサーを持つ温度計が適切です。

2. 記録方式

アナログ式温度計は直感的で読み取りが容易ですが、長期間のデータ蓄積や後処理が難しいことがあります。一方、デジタル式温度計はデータの自動記録やコンピュータへの直接的なデータ転送が可能で、詳細な分析が容易です。

3. 設置と交換

設置の容易さやメンテナンスの手間も選定基準に含めるべきです。特に交換が頻繁に必要となる環境では、取り付けや交換が簡単なモデルが有利です。

4. その他

その他の点として、使用環境が製造現場や屋外である場合、耐久性や耐環境性に優れたモデルが求められます。

また、最近ではIoT技術を活用した温度計も登場しており、リアルタイムでのモニタリングや遠隔操作が可能な製品もあるため、こうした機能の付属も選定基準の1つとなります。

参考文献
https://www.murata.com/ja-jp/products/thermistor/ntc/basic/thermistor
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0079.html

解砕機

解砕機とは

解砕機とは、粒状やかたまり状の凝集した材料を砕いて粒のサイズを小さくする装置のことです。

粉砕機と機能が似ているものの、役割は大きく異なります。粉砕機は材料を粉状になるまで砕くため、粉体や粉粒体が得られますが、解砕機はある程度の粒のサイズになったら吐出されるので、粒体の材料を得ることが可能です。

解砕機の特徴を活かして、パンやビスケット、スナック菓子などの食品をフレーク状に分解する工程や粒状に固めた材料を必要な粒のサイズに整える工程に利用可能です。そのため、解砕機は食品加工業界だけでなく、建築や鉱業など幅広い分野で活躍しています。

解砕機は、さまざまな種類の材料を効率的に処理可能です。経済的で環境にも配慮した選択肢として注目されており、解砕機の技術が進化し続けることで、より多くの産業での利用が期待されます。

解砕機の使用用途

解砕機は、かたまり状の対象物を一定の大きさまで砕いたり、粉体の凝集を解消したりするために使用されています。特に食品分野と製造分野の用途が多いです。

1. 食品分野

食品分野では、パンや麺、ビスケット、スナック菓子などを一定の大きさまで分解する目的で活用されています。例えば、フレーク状のカレールーやチョコレートチップ、ドッグフードの製造において、解砕機は重要な役割を担っています。

2. 製造分野

製造分野では、粒状にした材料を必要な粒のサイズまで砕いてフレーク状にしたり、意図せず発生してしまったダマを解消したりするために使用されます。解砕機は一般的に造粒工程の下流に設置され、ふるい機などの粒のサイズを選別する装置と組み合わせることで、一定範囲内の粒サイズの材料を得ることが可能です。

解砕機の原理

解砕機は主に内部で回転する刃と網目状のメッシュによって構成されており、これらが協力して材料を砕くことで成り立ちます。解砕機内に投入された材料は、刃に衝突することで繰り返し砕かれながら下流に送られ、メッシュの隙間よりも粒のサイズが小さくなると通過して吐出されます。

大きいサイズの材料を一定の粒のサイズまで小さくすることが可能です。得られる材料の粒サイズは、メッシュの網目の細かさによって決定されます。しかし、解砕機内で繰り返し刃と衝突することで、必要とする粒のサイズよりも小さな粒体材料になることがあります。

そのため、解砕機の下流ではふるい機などの粒サイズを選別する装置が使用されることが多く、粒のサイズが小さい材料は吐出され、前工程に戻されます。投入する材料の大きさや必要とする粒のサイズ、処理能力などによって刃やメッシュのサイズが異なり、装置自体はオーダーメイドになることが多い点が特徴です。

生産ラインの工程や生産能力に合わせた仕様が確定できます。解砕機の原理を理解することで、適切な装置選びや効率的な運用が可能になります。

解砕機の種類

解砕機には、主にジョークラッシャー、コーンクラッシャー、インパクトクラッシャーの3種類があります。

1. ジョークラッシャー

ジョークラッシャーは、一般的な石炭や鉱石の破砕に用いられる解砕機で、2つの顎の間で材料を圧縮して砕く原理に基づいています。初期破砕に適しており、比較的大きな石や鉱石をある程度のサイズまで砕くことが可能です。

2. コーンクラッシャー

コーンクラッシャーは、円錐形の破砕部と外側の壁の間で材料を圧縮して砕くことで、より細かい粒状の材料を得ることが可能です。中間破砕や細砕に適しており、建築材料や化学製品の製造などに利用されています。

3. インパクトクラッシャー

インパクトクラッシャーは、高速回転するローターに取り付けられたハンマーが材料に衝突することで、破砕力を発揮します。破砕効率が高く、さまざまな硬度の材料に対応できるため、建築廃材のリサイクルや道路建設など幅広い分野で使用されています。

参考文献
https://www.econmw.co.jp/122/
https://www.tsukasa-ind.co.jp/product/milling/

表面抵抗計

表面抵抗計とは

表面抵抗計とは、対象物表面の電気抵抗値を測定するための機器です。

表面抵抗計は、電気絶縁材料や導電性材料の表面における電気的な抵抗を測定します。静電気の発生や防止、静電気による損傷を評価するために重要な指標です。静電気対策品の抵抗値を測定する場合などに使用されます。

電気の絶縁体は静電気を帯びる場合があり、これによって劣化を引き起こす場合があります。絶縁体が劣化すると地絡や感電などの事故につながります。表面抵抗を測定し、絶縁抵抗値を測定することで、対象物の経年劣化具合を予測することが可能です。

また、水性塗料やコンクリートなどに対しても使用される場合があります。これらは水を含んでおり、乾燥することで硬化するため、表面抵抗の測定によって水分含有量を確認します。特に水溶媒が揮発して成膜化する製品は、水分管理が大きな課題になることが多いです。

表面抵抗計の使用用途

表面抵抗計は以下のような用途で使用されます。

1. クリーンルーム

クリーンルームでは微粒子の混入を回避することが重要です。表面抵抗計によってクリーンルーム内設備の表面抵抗を測定し、静電気による微粒子の付着を評価します。作業環境測定として、表面抵抗の値を定期的にモニタリングすることが一般的です。

2. 建設現場

表面抵抗計はコンクリートの腐食具合を評価するために使用されることがあります。コンクリートの腐食は主に鉄筋の錆によって引き起こされます。鉄筋が腐食すると周囲コンクリートが剥がれたりして、コンクリートの表面抵抗が低下するのが一般的な傾向です。

したがって、表面抵抗計を使用してコンクリートの腐食具合や強度を確認することが可能です。また、同様に塗料の表面抵抗を測定することで、塗膜の品質や耐久性を確保するための情報を得ることもできます。

3. 製品開発室

製品開発室では、静電気が製品品質や信頼性に影響を与える可能性があります。特に電子機器や半導体デバイスの製品開発では、静電気による損傷を防ぐことが重要です。表面抵抗計は製品や材料の静電気特性を評価し、静電気による損傷のリスクを最小限に抑えるための対策を検討するのに役立ちます。

表面抵抗計の原理

表面抵抗計の原理は電気回路に由来します。抵抗計から電圧を印加し、対象物に流れた電流値を測定することで計算する仕組みです。測定の目的によって、様々な方法で結果を計算します。

なお、空気中の湿度が60%を超えると、空気中の水分で測定値が異なってしまうことがあります。したがって、暫定的に温度や湿度を測定する表面抵抗計もあります。表面抵抗計は抵抗値を示すだけでなく、導電体であるか絶縁体であるかを文字で表記する製品も販売されています。

表面抵抗計はプローブやワニクリップで対象物を捉えて測定する場合が多いです。また、装置にリング電極が付属し、置くだけでも測定できる機器も販売されています。リング電極を使用することで表面に流れる電流のみを検知することができるため、表面抵抗値を測ることができる仕組みです。

ただし、プローブや裏面リング電極にホコリが付くと正確な測定ができなくなります。測定前にアルコールで拭いて洗浄する測定方法が一般的です。

表面抵抗計の選び方

表面抵抗計を選ぶ際は、以下の選定要素を考慮することが重要です。

1. 測定方法

表面抵抗計には直接接触式や非接触式などの測定方法があります。直接接触式はプローブを材料の表面に接触させて測定を行う方法で、非接触式はセンサーを使用して材料の近傍で測定を行う方法です。測定対象や状況に適した測定方法を選択する必要があります。

2. 測定レンジ

使用する材料や用途によって必要な測定レンジが異なります。適切な測定レンジを選択することで、正確な測定が可能です。一般的には広い範囲の表面抵抗値を測定できるモデルが好まれます。

3. 精度

測定精度は表面抵抗計の重要な要素です。高い精度の表面抵抗計を選択することで、より正確な測定結果を得ることができます。特に品質管理や研究開発などの用途では非常に重要です。

4. 外形寸法・重量

外形寸法や重量は携帯性や取り扱いの容易さに影響を与えます。建設現場などの屋外での使用や、移動が頻繁に必要な場合には、コンパクトで軽量な表面抵抗計が好まれます。

参考文献
https://vessel.co.jp/userfiles/staticelectric/SRC01_im.pdf

血流スコープ

監修: あっと株式会社

毛細血管スコープとは

毛細血管スコープ

毛細血管スコープとは、採血をすることなく、指先にオイルを塗り、高輝度な光源を照射し、皮下を拡大する事で、簡単に指先、肌などの毛細血管の状態と毛細血管の中を流れる赤血球・白血球・血小板などを観察することができるマイクロスコープのことを指します。

皮膚毛細血管研究は、20世紀初頭Mullerらの先駆的研究にはじまり、日本国内でも戦前から小川三郎などの研究が残されています。1979年発行の生涯教育シリーズ6『微小循環』では武見太郎・沖中重雄・山村雄一が総監修の下、浅野牧茂が皮膚の微小循環観察に生体の窓として爪床および唇紅部皮膚の毛細血管係蹄の観察を一つのモニターとして重視していることが記されています。ただ、当時は顕微鏡を覗き込んで観察し、模写や写真で記録するという形をとっていました。これらの研究は科学技術の進歩にともない、21世紀に入りモニターで確認し、動画として記録できるところに新たなる可能性が開け、毛細血管血流観察装置と呼ばれていました。

2010年少し前くらいから毛細血管観察装置は小型化が進み、大阪大学医学系研究科はあっと社との共同研究成果により、反応拡散方程式を用いて毛細血管像を抽出する事に成功し、定量化できる様になった事で、NHKガッテンなどテレビ番組の露出が増えた事で認知が高まり毛細血管スコープと呼ばれる様になりました。

使用される幅は、医療業界の研究にとどまらず、健康業界や美容業界などでも、毛細血管を観察して、施術の効果を測る目的で幅広く利用されています。

毛細血管スコープの使用用途

ここで、毛細血管スコープの使用用途について説明します。

毛細血管スコープは、手指の先端や、肌など様々な体表の毛細血管の形状や血流を確認することができるため、大学や研究機関などにおける臨床試験や実証機器として用いられたり、病院で抹消や皮下の毛細血管形状や血流を観察する治療の効果検証を行う機器として使用されるなど、医療に関わる業界で幅広く使用されています。以前は観察や毛細血管画像を保存し、目視や簡易的な描画システムを用いて数値化が行われておりましたが、前述の大阪大学の非属人的な定量化手法により大量解析が可能となり、2020年10月に日本緑内障学会にて前川ら(東北大学医学部眼科学教室)により緑内障診断における爪床毛細血管測定の有用性の発表があり、測定機器として医学界での認知が高まってきている事から大阪大学微生物病研究所情報伝達分野 高倉教授を委員長としてNPO近畿バイオインダストリー振興会議により毛細血管ラボ社会実装コンソーシアムが設立されました。
また、漢方やマッサージなどの血行促進の変化を観察したり、薬局などで生活習慣改善のための行動変容の為のカウンセリングにも使用されています。

医療業界の他にも、美容業界や健康業界でも使用されることもあり、施術後の毛細血管や血流改善などを観察するために用いられています。

毛細血管スコープの原理

続いて、毛細血管スコープの原理について説明します。

毛細血管スコープは、表皮や真皮部分などに高輝度な光源を照射し、体表面にある毛細血管を拡大しカメラで映すことで、採血などをしなくても毛細血管に流れる赤血球・白血球・血小板などのようすを投影し観察することができます。

毛細血管スコープは、高倍率なレンズとカメラで構成されている場合が多く、用途に合ったモニターに接続して投影したり、解析ソフトと組み合わせて定量化したりすることによって、活用の幅を広げることが出来ます。

毛細血管スコープを導入した結果

毛細血管スコープは、被検者の血液を採取することなく、リアルタイムで毛細血管・血流を観察できることが最大のメリットです。毛細血管形状や血流からその変化が確認でき、非常に便利な検査機器といえます。

簡単に毛細血管の状態がわかる理由として、観察するポイントが「指先爪床部(爪の甘皮の下あたり)」の毛細血管を観察することに特化しているのは、皮膚と爪の間の毛細血管はヘアピン状に走行していることにあります。操作が非常に簡単で、専門的な知識や難しい操作技術が必要ありません。さらに、シンプルなUIであるため、誰にでも操作ができ、簡単に観察することができます。

毛細血管形状や血流から簡単に自身の微細な変化がわかることは、被検者にもメリットがあります。被検者がすることといえば、痛みに耐えることでも、長い待ち時間でもなく、ただ指先にオイルを塗るだけです。たったそれだけで、その場で簡単に自身の状態がわかります。被検者の負担がほとんど無いことも、人気の理由です。さらに、リアルタイムに毛細血管形状や血流の状態を確認できるため、将来的には生活習慣病などの病気の改善対策に強い納得をもたせることができる可能性があります。

以上のように、毛細血管スコープは導入することで、ユーザーと被検者のどちらにもメリットのある検査機器です。現在でもなお、その人気は増加しています。今後、さらに幅広い分野で扱われるようになり、多くの場面で測定される様になることが期待されております。

毛細血管スコープの価格

毛細血管スコープの価格は20万円から50万円ほどです。レンズやセンサー性能の違いにより高いものになればなるほど高機能ですが、最近では毛細血管専用ではないものの印刷物・電子部品・皮膚を観察するものの転用で安価なレンズとセンサーを使用し機能性をシンプルにすることで薄っすらと毛細血管を観察することができる低価格なものも出てきております。

レンズ・センサー性能の高いものを使用した毛細血管スコープは具体的には、卓上とハンディ兼用タイプで、ピント調節が手動で調整できる毛細血管スコープがあります。自由度が高く、手動で調整できる機能性の高さから40万円ほどかかります。

安いものでは、ハンディタイプで、印刷物や電子部品の品質をみるために作られたものの転用でピント調整が確率的には半分程度オートフォーカスできる機能のスコープがあります。こちらでは、手動で調整がほとんどできないものの、液晶モニタがスマートフォンやパソコンで映し出せるので、18万円ほどで購入できます。

毛細血管スコープは低価格から高価格までさまざまです。しかし、高機能のまま低価格を実現したものもあり、必要な機能に合わせて購入できます。また、レンタルといった方法でも毛細血管スコープを導入できます。

本記事は毛細血管スコープを製造・販売するあっと株式会社様に監修を頂きました。

参考文献
https://3r-beauty.com/comparison/blood

蒸気ボイラ

蒸気ボイラとは蒸気ボイラ

蒸気ボイラとは、水を沸騰させて高温の蒸気として供給する設備です。

蒸気ボイラの多くは、熱源として利用されています。室内の暖房から食品の殺菌まで、使用される分野は幅広いです。蒸気は元々が水なので、化学的な危険性はほとんどありません。

蒸気ボイラの使用用途

蒸気ボイラは産業用にも家庭用にも使用されます。ただし、産業用に用いられる場合がほとんどです。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 食品工業における食品の殺菌
  • 発電用蒸気の生成
  • 化学プラントや製紙プラントにおける製品乾燥
  • クリーニングにおける洗濯物の乾燥
  • 温泉・浴場施設の保温
  • 電解製錬における電解液の保温
  • 室内暖房や給湯用

蒸気機関車も蒸気ボイラを内蔵して機関動力を得ているため、使用用途の一例と言えます。ただし、近年では見かけることがほとんどありません。

蒸気ボイラの原理

蒸気ボイラは燃料の燃焼によって水を蒸発させ、蒸気を発生させる場合がほとんどです。ボイラはドラム、燃焼装置、煙道、給水装置などで構成されます。

1. ドラム

ドラムは純水をためておく部位で、運転中は水と蒸気が混じり合った状態です。内部の純水は還流する構造となっています。燃焼装置に暖められた水はドラム内部で蒸気と純水に分離されます。

2. 燃焼装置

燃焼装置は燃料を燃焼させる装置です。燃料を一定間隔で供給し、空気と混ぜて燃焼させます。燃焼不良やドラム水位低下などの異常が発生した場合、燃料供給を自動停止させる機能も有しています。

3. 煙道

煙道は燃焼後の空気を排気する配管です。煙道には通風機が設置され、燃料の供給量に合わせて空気流量を調整しています。また、排ガス中のばいじんや酸化物が多い場合は、煙道内に集塵機や脱硫・脱硝装置を設置します。

4. 給水装置

給水装置はドラムへ給水する装置です。多くは給水ポンプなどで圧送します。水に金属イオンが多く含まれているとボイラを劣化させるため、純水装置などが付属する場合もあります。

蒸気ボイラのその他情報

1. 過去の事業用蒸気ボイラ

蒸気はあらゆる製造業で必要なものですが、遠距離輸送に不向きです。したがって、蒸気ボイラはほとんどの場合、需要設備に隣接して設置されます。

製紙工場や石油化学工場では蒸気を大量消費するため、1970年頃から化石燃料の蒸気ボイラを工場内に設置しました。余剰蒸気を有効活用すべく、発電を合わせて行う事例が多数ありました。

2000年以降は、原油価格高騰と温室効果ガス削減の社会機運の環境から減少傾向です。ただし、石油化学プラントでは副生品として発生するオイルやガスがあるため、現在も蒸気ボイラと発電設備が有効活用されています。

2. 事業用蒸気ボイラの今後

水は非常に有効な熱媒であり産業に欠かせないものです。そして、水蒸気は漏洩しても水に戻るため、薬品や毒劇物と比較して人体・環境への影響が少ない傾向にあります。さらに、自然界から無尽蔵供給される原料です。

昨今の報道では、大手メーカーが業務用大型ボイラ製造事業から撤退するニュースもあります。新たに国内に大型ボイラを新設する企業があまりないためです。化石燃料を使用する発電用蒸気ボイラは、地球温暖化ガス削減の観点から将来的に減少する傾向にあります。しかし、熱媒としての蒸気は非常に優れた性状のため、将来的になくなることは考え辛いです。

3. 貫流ボイラとボイラー技士免状

貫流ボイラは法律上、同じ蒸気発生量でも炉筒煙管ボイラや水管ボイラより伝熱面積の計算が少なく済みます。そのため、伝熱面積を基準値よりも小さく抑えればボイラー技士の免許を持っていなくても管理することが可能です。この利点から、貫流ボイラを何台も設置して運用している会社も存在します。

ただし、需要設備が必要とする蒸気発生量・圧力によっては貫流ボイラのみでは対応できない場合もあります。どのようなボイラが適しているかは、ボイラメーカーと相談して選定します。

参考文献
https://www.miuraz.co.jp/product/boiler/steam_boiler.html
https://eee.tokyo-gas.co.jp/product/steamboiler/index.html
https://www.fepc.or.jp/enterprise/hatsuden/fire/index.html
https://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201013kobe_seikou/index.html

荷物用エレベータ

荷物用エレベータとは荷物用エレベータ

荷物用エレベータとは、機械や荷物を積載するためのエレベータです。

荷物用エレベータは機械室の設計を省き、制御盤や駆動装置などを昇降路の内部に設置できます。そのため、エレベータの設置に必要な面積を省スペース化して有効面積を大きくし、建物設計の自由度を高めて導線などを重視して建設します。

積載量や昇降移動する階の数、積み下ろしにかかる時間などを考えて、搬入口の大きさや開閉方式、速度などを選択して、使用用途に合った最適な仕様に荷物用エレベータをオーダーメイド可能です。

荷物用エレベータの使用用途

荷物用エレベータは、作業時の大型荷物を運搬する目的に特化したエレベータです。様々な産業で荷物の運搬の用途で使用されています。作業員の作業効率を考慮して設計されたエレベータも多いです。作業用手袋を着用した操作を想定して、ボタンの配置や仕様を工夫したエレベータもあります。

荷物用エレベータは、仕様によって積載できる重量に制限があります。荷物を台車などで運ぶ場合は、積み下ろしをして運搬する必要があり、フォークリフトごと乗り込んで使用する場合には、機械室を省くことはできません。

基本的には2階以上または地下階層のある建物に設置されます。例えば、広い倉庫や物流施設に導入可能です。複数の階層がある工場では、上下階層に部品や完成品を移動するために、一度に大量に搬送可能な荷物用エレベータは役立ちます。大型商業施設でも大量の荷物を運ぶ際に、荷物用エレベータが必要です。

荷物用エレベータの原理

現在の荷物用エレベータのほとんどが、機械室を省いて設計できます。しかし、従来の荷物用エレベータは、機械室を設置する必要があり、主に建物の最上階に取り付けられる場合が多いです。

また、機械室のスペースと高さを考慮して、建物の高さ制限と合わせて、建物の階数を減らすなどで、高さを下げる必要があります。

そのほか、日影規制のために機械室の配置に合わせて、昇降路の位置を移動する必要があり、機械室を考慮した制約がありました。現在では機械室の設置の必要がなくなり、これらの懸念が解消されています。

荷物用エレベータの種類

荷物用エレベータ以外にも、多種多様なエレベータの種類があります。寝台用エレベータは、医療施設や福祉施設で、人を寝台やストレッチャーに乗せて輸送します。自動車用エレベータは駐車場に設置されており、自動車を輸送可能です。

荷物用エレベータの選び方

荷物用エレベータとフォークリフトを併用する際には、注意が必要です。荷物用エレベータにフォークリフトの一部が乗るため、相当な重量があるフォークリフトが使用できるエレベータを選ぶ必要があります。具体的には、扱う荷物、フォークリフト、運転者の重量を計算して、荷物用エレベータを選択しなければいけません。

小荷物専用昇降機とは違い、荷物用エレベータには運転者や荷扱者の搭乗が容認されています。小荷物専用昇降機では人が乗って動かすことを禁止されています。

荷物用エレベータの構造

荷物用エレベータの積載荷重は非常に広いです。積載荷重はエレベータとしての能力限界である定格積載量で、許容値を荷台と荷物の合計重量が超えないか確認する必要があります。建築基準法の法令積載量として、エレベータの床面積で定める数値もあります。

荷物用エレベータの構造上、人も乗れそうですが、法令的には荷扱い者しか乗れません。人との兼用の場合には、人荷用エレベータを選ぶ必要があります。用途に合わせてカスタマイズされる場合も多いです。

荷物用エレベータは常に重い荷物を運ぶため、作業効率を考慮して、一般的なエレベータとは異なる運転方式を取ることもあります。例えば工場などでは、同乗者がエレベータ内にいなくても目的の階に輸送可能です。倉庫などでは、運転中は一つの呼び出しにのみ応答し、他には反応しない方式を取っています。

参考文献
https://www.e-aiwa.com/lift/main.htm
https://www.toshiba-elevator.co.jp/elv/new/elevator/baggage/
https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/elevator/freight/index.html
https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/catalog/pdf/c-c01-9-c8367.pdf
https://www.kumalift.co.jp/product/elevator/multibear.html
https://www.watabesangyou.co.jp/product/elevator.html
http://nissho-elevator.co.jp/publics/index/45/
https://www.nichiele.co.jp/products/for-luggage/

自記水位計

自記水位計とは

河川や湖などの水位を定量的に計測する装置を水位計と言います。

「水位票(量水票)」は水位を目視で測る水位計で、支柱に目盛り(量水板)を取り付けたものです。洪水の流水による圧力に耐えることができる構造体を支柱とします。記録器がついていて、水位を器械的に読み取るものが「自記水位計」です。

自記水位計には、仕組みにより、「フロート式」「気泡式」「リードスイッチ式」「水圧式」「水晶式」「超音波式」があります。

自記水位計の使用用途

水位とは、ある基準面からの水面の高さを指します。

水位の観測は、河川、河口、湖沼、貯水池、遊水池、内水、地下水などの水文・水理現象を把握することを目的として行われます。

また、上下水道、工業、農業、工場、工事現場など、様々な場面でも行われています。

河川管理を目的として、河川の水位観測が行われています。洪水時には洪水予報や水防活動に情報を提供するため、一方、渇水時には用水の取水量や取水位の管理に用いるために行われます。

自記水位計の原理

フロート式は、観測井の水面にフロートを浮かべたものです。プーリを介して器械的に、フロートの上下の動きをペンに伝達します。

気泡式は、気泡を出すための管を水中に開口し、管内の圧力をセンサーで測ります。開口部にかかる水圧と大気圧の和は管内の圧力に等しく、開口部の圧力から大気圧を差し引いて水位を求めます。

測定基板が水中の測定柱に内封されているものが、リードスイッチ式です。測定基板には、1cm間隔のリードスイッチがあります。永久磁石が内蔵されているフロートが水位変化により上下し、対応するリードスイッチが磁力によって導通状態になることで水位を測定します。

水圧式には、水中の受圧部で水圧の変化を器械的に測るものと、水圧を感圧素子(半導体、シリコン、水晶)で直接検出して電気信号に変換するものがあります。

超音波式は、水面の鉛直上方に超音波送受波器を取り付け、超音波が水面から伝播する時間を水位に換算します。水に接触することなく測定できますが、音波は空気を伝播するため、風向き、風速、気温、湿度も同時に観測します。

参考文献
https://fieldpro.jp/word/water/
https://www.pwri.go.jp/team/hydro_eng/pdf/h14_suimon_kansoku/05.pdf

自動溶接機

自動溶接機とは

自動溶接機

自動溶接機とは、金属やプラスチックなどの材料を自動的に溶接するための機械です。

溶接は2つ以上の材料を熱や圧力を加えて接合するプロセスであり、自動溶接機はこの作業を効率的かつ正確に行うことができます。自動溶接機は機械的な制御により、一定の溶接品質を保つことが可能です。

人間による作業独特のムラやヒューマンエラーを排除し、一貫した品質の製品を生み出すことができます。また、自動溶接機により、作業者の安全性が向上します。高温や有害なガスなどの危険環境での作業を機械が行うため、作業者の体への負担や危険を軽減することが可能です。

高い生産性と一貫した品質によって生産コストが削減され、生産量を増やしつつ廃棄物や不良品を減らすこともできます。初期投資が必要ですが、長期的には経済的な利点が大きいです。生産性の向上や品質の向上により、競争力を高めることができます。

自動溶接機の使用用途

自動溶接機は、さまざまな分野や産業で幅広く使用されています。特に自動車業界で活躍しています。

1. 自動車業界

多量に製造される自動車ボディを手作業で溶接しては、時間もコストもかかります。そのため、自動溶接機を使用してボディの溶接などを行います。

2. 金属加工産業

金属加工産業では、自動溶接機がさまざまな金属部品や構造物の製造に使用されます。鋼タンクやパイプラインの溶接作業に適しています。TIG溶接などの効率的な溶接プロセスを使用して、高速かつ高品質な溶接を行います。

3. エネルギー産業

エネルギー産業では、発電所や石油・ガス施設などのパイプラインやタンクの溶接作業に使用されます。これらの設備は高温や高圧な環境にさらされるため、高い品質と耐久性が重要です。

高エネルギー光源やプラズマ溶接を使用して、厳しい条件下でも信頼性の高い溶接を実現します。

自動溶接機の原理

自動溶接機には、溶接や機器制御に必要な電力を供給することが必要です。一般的には電力ユニットや電源装置が備えられており、適切な電流や電圧に調整されて溶接に使用します。これらの調整は制御システムに組み込まれており、溶接パラメータにしたがって電源装置へ指令を送るのが役割です。

また、自動溶接機には溶接プロセスに応じた溶接ヘッドが装備されています。レーザービームなどのエネルギー源を材料に集中的に照射し、溶融プールを形成して接合を行います。溶接プロセスを監視しつつフィードバック制御を行うセンサーも付属され、一貫性のある溶接結果を得ることが可能です。

そのほか、材料の供給を自動的に行うシステムが組み込まれていることが多いです。板材などの材料が適切な速度で搬送され、溶接箇所に供給されます。これらの要素が組み合わさり、自動溶接機は高速かつ正確な溶接を実現します。ただし、各溶接プロセスにおける具体的なエネルギー源や制御方式はそれぞれ異なります。

自動溶接機の種類

自動溶接機にはさまざまな種類が存在します。以下は自動溶接機種類一例です。

1. ロボット溶接機

ロボット溶接機は、産業用ロボットを使用して溶接作業を行う機械です。ロボットはプログラムされた動作に基づいて材料を溶接します。

多軸制御と高い自由度を持つため、複雑な形状や曲面への溶接が可能です。自動化されたロボットシステムにより、高い生産性と一貫性のある品質が実現されます。

また、高速かつ効率的な溶接作業が可能になります。素早く動作し、溶接ワイヤーの供給や溶接パラメータの調整などを迅速に行えるのが魅力です。

2. CNC溶接機

CNC溶接機は、コンピュータ制御システムを使用して溶接作業を行う機械です。溶接パラメータや動作パスは事前にプログラムされ、制御システムによって自動的に実行されます。高い精度と繰り返し性を有し、大量生産や複雑な溶接作業に適しています。

3. 半自動溶接機

溶接作業の一部を人の操作に依存する溶接機です。トーチの位置調整などは操作者が実施します。一方、電極棒の供給や保護ガスの供給など、溶接プロセスの一部は機械によって自動的に行われます。

参考文献
http://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0070010030

自動搬送装置

自動搬送装置とは

自動搬送装置

自動搬送装置とは、物品や材料を自動的に運搬するための装置です。

製造工程や物流業界などで使用されます。自動搬送装置を使用することで、人の労力を軽減することが可能です。物品や材料の運搬作業は機械によって行われるため、人間の負担を減らすことができます。

これにより、作業効率が向上し、作業員はより重要なタスクに集中できるようになります。また、物品や材料の迅速な運搬を可能にするため、生産性の向上が実現されます。装置は連続的に作業を行うことが可能で、これにより運搬ラインの効率化や運搬量の増加が期待できます。

また、物品や材料を運搬する際の人的ミスや事故リスクの低減も実現可能です。装置は予めプログラムされた動作を実行し、正確かつ安全に物品を運搬します。

自動搬送装置の使用用途

自動搬送装置は、さまざまな産業や業界で広範に使用されています。特に製造業や物流業界で重宝されている装置です。

1. 製造業界

製造業において、生産ラインや工程間での物品の運搬に利用されます。組立ラインでの部品や製品の自動運搬や、生産プロセスの効率化に寄与します。

形態や形状もさまざまで、それぞれのラインに合わせて設計されるのが一般的です。組立系の工場だけでなく、化学プラントなどのプロセスを扱う工場でも重宝されます。粉体などの原料を運搬するベルトコンベアも、自動搬送装置の1種です。

2. 物流業界

物流業界でも、倉庫や配送センターにおける物品の受け渡しや保管作業に使用されます。コンベヤベルトやAGVなどの装置を使用して、効率的なピッキングや梱包・出荷作業を行うことが可能です。

自動搬送装置の原理

自動搬送装置の種類はさまざまで、それぞれ構造が異なります。ただし、センサーを使用して物理的な情報を取得し、制御プログラムに応じて動作する点では共通しています。

まず、自動搬送装置は周囲の状況を検知するためにセンサーを使用します。センサーには光センサーや近接センサーなどの種類があり、物品や環境の位置や状態を検知します。検知された情報は制御システムに送られ、制御動作の指針とされます。

センサーからの情報を基に、自動搬送装置の動作を制御します。制御アルゴリズムは、速度や加速度の制御などを行うのが役割です。また、特定のタスクや作業に応じて適切な操作を実行するためのプログラムも含まれます。

物品を移動させるためには、アクチュエータを使用します。アクチュエータはモーターや空圧装置などの形態であり、運搬装置やアームを駆動させます。制御システムからの指示に基づいてアクチュエータが動作し、物品を運搬します。

自動搬送装置の種類

自動搬送装置には、さまざまな種類があります。以下に代表的な自動搬送装置の一例です。

1. コンベア

ベルトやローラーなどの搬送部品を使用して物品を運搬するシステムです。直線や曲線、斜面などの搬送ルートを設定し、物品を連続的に移動させることができます。粉体などにも適用可能です。

2. AGV (自動誘導型搬送車)

AGVは自動的に操作される小型の無人車両です。センサーや制御システムを使用して周囲の環境を検知し、目的地に自律的に移動します。さまざまな形態があり、荷物やパレットの運搬に使用されます。

無人搬送車は、オペレーターがいません。荷物など物品搬送を目的とし、道路運送法で定められた道路で使用しないとされています。

一方で、近年ではAIやデータ分析の技術も進歩しています。磁気テープを使用せずに走行ルートを自ら判断し、自律走行できる種類が増加しつつあります。

3. ロボットアーム

ロボットアームは多関節のアームを使用して物品をつかんで運搬する装置です。工場や倉庫での自動化に使用され、高い精度と柔軟性を持ちます。ロボットアームの形態もさまざまで、パラレルロボット垂直多関節ロボットなどが存在します。

4. ドローン

空中を飛行して荷物や物品を運搬する無人航空機です。現在は高所の調査などで広く使用されています。近年、宅配業界での利用が注目されています。

脱泡装置

脱泡装置とは脱泡装置

脱泡装置とは、液体に含まれる気泡を効率的に除去するための装置です。

水や薬液のような低粘度の液体から、樹脂やオイルのような高粘度の液体まで、幅広い製品の生産プロセスで活用されています。脱泡装置にはさまざまな形式があり、液体や用途に応じて選ぶことが可能です。真空 (減圧) を利用したものや、加圧、遠心力を用いるものなどがあります。また、超音波を利用したり、ガス透過膜を活用する脱泡装置も存在します。

脱泡装置を使用することで、液体から気泡を効果的に取り除くことが可能です。製品の強度や性状、表面性状が均一化されるため、歩留まりや品質が向上し、さらに高品質な製品を効率的に生産できます。

脱泡装置の使用用途

脱泡装置は、製造業において多様な用途で使用されています。中でも真空脱泡装置を用いる場合が多いです。真空脱泡装置は、減圧することによって脱泡を行います。高粘度の液体に対しても効果的で、時間経過により気泡を減圧空気中に排出可能です。

シリコンゴムや各種樹脂などの脱泡に使用されており、液体表面に到達した泡の膜を壊れやすくする消泡剤と呼ばれる添加剤が併用されることもあります。そのほか、加圧脱泡装置も広く使用されています。加圧脱泡装置は、加圧によって一時的に気泡を圧縮し、極小さなサイズにできます。

しかし、加圧を解除すると気泡が元の大きさに戻ってしまうのが欠点です。そのため、熱硬化性の樹脂や粘着テープ用の糊など、製品化した際に気泡の大きさが固定される材料に対して効果的に使用されます。

これらの脱泡装置は、製品の品質や性能を向上させるために欠かせない技術です。真空脱泡装置や加圧脱泡装置を適切に選択し、使用することで、高品質な製品を効率的に生産することが可能となります。

脱泡装置の原理

脱泡装置は、主に真空脱泡装置と遠心脱泡装置の2つのタイプがあり、原理が異なる点が特徴です。

1. 真空脱泡装置

真空脱泡装置は、真空ポンプを用いてサンプルが入った密閉容器内を減圧することで、液体内に含まれる気泡を膨張させます。膨張した気泡は浮力により液体表面まで浮き上がり、時間経過とともに表面の液体膜が破壊されることで減圧空気内に排出されます。減圧により液体が常温下で沸騰する可能性や、急速に減圧すると気体の温度が降下するため注意が必要です。

2. 遠心脱泡装置

遠心脱泡装置は、サンプルが入った容器が自転および公転する際の遠心力により、密度差のある液体と気体が分離する原理を利用しています。機種によっては、重力加速度の100倍以上の加速度を発生できます。

真空脱泡装置と遠心脱泡装置は併用されることもあり、この場合には減圧により膨張し密度が大きく低下した気泡が遠心力により液体から切り離されるため、より強力な脱泡作用を得ることが可能です。

脱泡装置のその他情報

脱泡装置と併用される機械

脱泡装置と併用される機械として、撹拌機、フィルター装置、温度調節装置の3種類があります。脱泡装置と組み合わせることで、製造プロセスの効率性や製品品質を向上させる効果が期待できます。

1. 撹拌機
撹拌機は、液体を均一に混ぜるために使用される機械です。脱泡装置と併用することで、気泡を効果的に液体表面に移動し、脱泡装置が気泡をより効率的に除去できます。

2. フィルター装置
フィルター装置は、液体中の不純物や固形物を取り除くために使用される機械です。脱泡装置と併用することで、液体中の不純物が気泡の生成を引き起こす可能性を減らせます。

また、不純物が除去された液体は、脱泡プロセスがより効果的に進行することが期待されます。

3. 温度調節装置
温度調節装置は、液体の温度を一定に保つために使用される機械です。脱泡装置と併用することで、液体の粘度や表面張力を最適化し、気泡の生成や脱泡の効率を向上させることが可能です。

特に、液体の温度が脱泡プロセスに大きく影響する場合、温度調節装置の使用が重要となります。

参考文献
https://ohtsukass.co.jp/07_dappo/
http://www.chiyoda-electric.co.jp/