蒸気ボイラ

蒸気ボイラとは蒸気ボイラ

蒸気ボイラとは、水を沸騰させて高温の蒸気として供給する設備です。

蒸気ボイラの多くは、熱源として利用されています。室内の暖房から食品の殺菌まで、使用される分野は幅広いです。蒸気は元々が水なので、化学的な危険性はほとんどありません。

蒸気ボイラの使用用途

蒸気ボイラは産業用にも家庭用にも使用されます。ただし、産業用に用いられる場合がほとんどです。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 食品工業における食品の殺菌
  • 発電用蒸気の生成
  • 化学プラントや製紙プラントにおける製品乾燥
  • クリーニングにおける洗濯物の乾燥
  • 温泉・浴場施設の保温
  • 電解製錬における電解液の保温
  • 室内暖房や給湯用

蒸気機関車も蒸気ボイラを内蔵して機関動力を得ているため、使用用途の一例と言えます。ただし、近年では見かけることがほとんどありません。

蒸気ボイラの原理

蒸気ボイラは燃料の燃焼によって水を蒸発させ、蒸気を発生させる場合がほとんどです。ボイラはドラム、燃焼装置、煙道、給水装置などで構成されます。

1. ドラム

ドラムは純水をためておく部位で、運転中は水と蒸気が混じり合った状態です。内部の純水は還流する構造となっています。燃焼装置に暖められた水はドラム内部で蒸気と純水に分離されます。

2. 燃焼装置

燃焼装置は燃料を燃焼させる装置です。燃料を一定間隔で供給し、空気と混ぜて燃焼させます。燃焼不良やドラム水位低下などの異常が発生した場合、燃料供給を自動停止させる機能も有しています。

3. 煙道

煙道は燃焼後の空気を排気する配管です。煙道には通風機が設置され、燃料の供給量に合わせて空気流量を調整しています。また、排ガス中のばいじんや酸化物が多い場合は、煙道内に集塵機や脱硫・脱硝装置を設置します。

4. 給水装置

給水装置はドラムへ給水する装置です。多くは給水ポンプなどで圧送します。水に金属イオンが多く含まれているとボイラを劣化させるため、純水装置などが付属する場合もあります。

蒸気ボイラのその他情報

1. 過去の事業用蒸気ボイラ

蒸気はあらゆる製造業で必要なものですが、遠距離輸送に不向きです。したがって、蒸気ボイラはほとんどの場合、需要設備に隣接して設置されます。

製紙工場や石油化学工場では蒸気を大量消費するため、1970年頃から化石燃料の蒸気ボイラを工場内に設置しました。余剰蒸気を有効活用すべく、発電を合わせて行う事例が多数ありました。

2000年以降は、原油価格高騰と温室効果ガス削減の社会機運の環境から減少傾向です。ただし、石油化学プラントでは副生品として発生するオイルやガスがあるため、現在も蒸気ボイラと発電設備が有効活用されています。

2. 事業用蒸気ボイラの今後

水は非常に有効な熱媒であり産業に欠かせないものです。そして、水蒸気は漏洩しても水に戻るため、薬品や毒劇物と比較して人体・環境への影響が少ない傾向にあります。さらに、自然界から無尽蔵供給される原料です。

昨今の報道では、大手メーカーが業務用大型ボイラ製造事業から撤退するニュースもあります。新たに国内に大型ボイラを新設する企業があまりないためです。化石燃料を使用する発電用蒸気ボイラは、地球温暖化ガス削減の観点から将来的に減少する傾向にあります。しかし、熱媒としての蒸気は非常に優れた性状のため、将来的になくなることは考え辛いです。

3. 貫流ボイラとボイラー技士免状

貫流ボイラは法律上、同じ蒸気発生量でも炉筒煙管ボイラや水管ボイラより伝熱面積の計算が少なく済みます。そのため、伝熱面積を基準値よりも小さく抑えればボイラー技士の免許を持っていなくても管理することが可能です。この利点から、貫流ボイラを何台も設置して運用している会社も存在します。

ただし、需要設備が必要とする蒸気発生量・圧力によっては貫流ボイラのみでは対応できない場合もあります。どのようなボイラが適しているかは、ボイラメーカーと相談して選定します。

参考文献
https://www.miuraz.co.jp/product/boiler/steam_boiler.html
https://eee.tokyo-gas.co.jp/product/steamboiler/index.html
https://www.fepc.or.jp/enterprise/hatsuden/fire/index.html
https://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201013kobe_seikou/index.html

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