シーラ

シーラとは

シーラ

シーラとは、塗装の下地処理に使用される塗料のことです。

建設現場での外壁塗装や内壁塗装、修繕などで使用されます。

水性、油性、その他様々な種類が存在するため、塗装する対象の種類によって適切な効果を持ったものを選定することが重要です。

シーラの使用用途

シーラは、外壁工事や内壁工事などの塗装時に使用されます。塗装は「下塗り」「中塗り」「上塗り」など3段階に分けて行いますが、シーラは「下塗り」で使用されているものです。

シーラ塗りを行うことで、最終塗装面である上塗り面の仕上がりが向上し、下地の補強につながります。仕上がりの綺麗さだけでなく、劣化対策になるのが大きなメリットです。

シーラの原理

その語源である英語では、「覆い隠す」「接着」「密閉する」などの意味を持ちます。その名の通り、塗装の際にシーラを下塗りとして塗ることで、密着性が強化されるのが特徴です。

そのほかにも、壁面の強度が増したり、劣化を遅らせる効果もあります。また、シーラには水性タイプと油性タイプがあり、それぞれメリットや目的が異なります。

水性タイプには水性塗料を、油性タイプには油性塗料を塗るのが基本です。

1. 水性タイプ

水性タイプは、比較的臭いが少ないため主に室内の壁紙や天井の塗装に使用されます。シーラに含まれている水分が蒸発することで膜ができます。しかし、水に溶けやすいため、雨などの外的環境の影響を受けやすい外壁には適していません。

2. 油性タイプ

油性タイプは、臭いが強い代わりに浸透性が高く補強効果に優れているため、外壁などの劣化の激しい塗装面に対して主に使用されます。

シーラの特徴

シーラは種類によって、以下の違いも存在します。そのため、用途に応じて最適なものを選ぶことが重要です。

1. 塗装面と塗料の密着性向上

シーラが接着剤のような役割を果たします。上塗り材を直接壁面に塗るよりも、間にシーラを塗ることで、シーラと塗料が密着し、塗膜の剥がれなどの劣化防止につながります。

2. 塗装時の塗料の吸い込み抑制

塗料が着いていない壁面に対して直接塗料を塗ってしまうと、一気に塗料が染み込み、色が変わってしまったり、ムラになったりする可能性があります。特に、壁面に傷が入ってしまっている場合は、塗料が傷口から入り込みやすい状態です。

シーラを最初に塗ることで、中塗りや上塗りでの塗料の吸い込みを防ぎ、より綺麗な仕上がりにすることができます。

3. 塗装面の下地を補強できる

これから塗装をする面に対してシーラ塗りを行っておくことで、劣化した下地を補強できます。風化したコンクリートやモルタルをシーラで補強することにより、塗料もより綺麗に塗れるだけでなく、耐食や防腐効果も期待できます。

シーラの種類

シーラには、目指す効果や塗装面の素材によって使用する種類を見極めることで、より高い効果が期待できます。

1. ヤニ止め用シーラ

主に内壁や天井などに使用されます。タバコのヤニや雨じみなどによって汚れてしまった壁紙の上からでも塗ることができ、塗料に染み出すのを抑える効果もあります。

2. カチオンシーラ

浸透性、密着性、経済性に優れ、外壁、内壁どちらにも使用できるシーラです。また、薄い膜が作られる造膜型と下地へ浸透する浸透型があることから、施工の適用範囲が広いのが特徴です。

劣化した壁面を補強する効果のある透明タイプと、壁面にある微小な穴を埋めて上塗りを密着させやすくする効果のあるホワイトタイプがあります。ただし、上塗り塗料に強溶剤型塗料は使用できない点にちゅいが必要です。

3. コンクリート強化用シーラ

耐久性に優れ、粉塵やホコリの発生を予防することができます。コンクリートやモルタルに使用する際に最適です。

シーラのその他情報

プライマーとの違い

同じ下塗りとして使用されるプライマですが、密着性を高める効果を持つ点は変わらないものの、多少の違いもあります。

プライマーは主に、密着性の低い金属部分やプラスチックに対して使用されます。密着効果の他に、表面の凹凸をなめらかにしたり、錆止めの効果もあります。

シームレスパイプ

シームレスパイプとはシームレスパイプ

シームレスパイプとは、パイプの長手方向に接合部のないパイプです。

鋼管の一般的な製造方法は、鋼板を丸めて円筒状にし、溶接する事で製造されます。しかし、パイプに繋ぎ目が存在すると、使用用途によっては配管から原油が漏れるなど、強度や信頼性において重大な事故につながりかねません。

シームレスパイプはマンネスマン法など、強度低下の原因となりうる繋ぎ目が生じない方法で製造されます。継ぎ目から不具合が発生する懸念がないため、高強度・信頼性が必要な場合に使用されるものです。

シームレスパイプの使用用途

シームレスパイプは、ガス、石油、水など流体を輸送するために幅広く使用されています。また、建設用の配管も存在するため、シームレス鋼管にも多くの種類があります。

  • 建設用シームレス配管
  • 流体輸送用シームレス鋼管
  • 高圧ボイラー用シームレス鋼管
  • 冷間引き抜き精密シームレス鋼管

シームレス鋼管は用途によって材質や規格が異なるので、それぞれの目的にあったシームレスパイプの選定が必要です。具体的な使用用途の例としては、石油や天然ガス設備、火力発電所のボイラーチューブ、産業機械の高圧配管などに使用されています。

シームレスパイプの原理

シームレスパイプを製造する代表的な製造方法は、マンネスマン法です。シームレスパイプを製造するにあたって、最も生産性が高いです。マンネスマン法は簡単に言えば、鋼板ではなく、丸棒からパイプを成型します。丸棒から成型されたパイプなので、接合部が生じません。

マネキン法ではまず、ビレットと呼ばれる丸棒形状のパイプの材料を真っ赤になるくらい (約1,300℃) に高温で加熱します。ビレットの圧延が可能になったところで、パイプに成型するためのプラグ (シームレスパイプ内径成型用) と呼ばれる工具をビレット中心に押し当てていきます。

プラグをそのまま押し当てるだけでは、行き場を失ったビレットは外形に押し出されてしまい、パイプ形状にはなりません。そこで外周をコーン型、バレル型といったロールで押さえながら成型していきます。するとプラグで押し出された材料は前に押し出されるため、内径を成型しつつ、外形も整えることができます。

一般的に、高温のビレットに対して過酷な圧延を行うと、表面性状の劣化が避けられません。同様に圧延工程の負荷が軽くなる厚肉品のほうが、比較的容易に製造できます。しかし、現在ではシームレス配管でありながら薄肉加工を得意とする企業も存在します。厚み0.08mmといった極薄な小径シームレスパイプから、日本製では最大径となる直径426.0mmサイズの大径シームレスパイプまで存在します。

シームレスパイプのその他情報

1. シームレスパイプと溶接パイプの違い

シームレスパイプと溶接パイプの違いは、配管の製造方法において溶接を用いるかいないかです。そもそもシームレスパイプが必要になる理由として、溶接部には「溝状腐食」が発生することが挙げられます。

この溝状腐食とは、配管の溶接部 (内側) にV字形の腐食が起こることです。一般的に溶接時には高温を伴うため、接合部の金属組織の変化が避けられません。溶接部と母材との組織に違いができると電位差が生じるため、腐食の原因になります。一度腐食が発生すると溝が形成されることによって、腐食が促進され、最終的に配管の表面まで到達するか、もしくは強度不足により、流体の漏れに至るというのが溝状腐食のメカニズムです。

シームレスパイプの一番の選定理由は溝状腐食を発生させないことですが、溶接パイプにも耐溝状腐食鋼管というものが存在します。耐溝状腐食鋼管、母材の組成分子の調整 (硫黄分の減少) 及び、溶接部への特殊元素の添加した鋼管です。通常の配管よりは高価ですが、シームレスパイプほど高価ではないため、仮に漏れても危険性のない液体、例えば水などの配管として広く用いられます。

2. シームレスパイプと溶接パイプの価格差

シームレスパイプと溶接パイプ (ここでは例として電縫鋼管とします) の価格の差について説明します。ここでは、例として材料はSUS304で考えます。価格は電縫鋼管に対しシームレスパイプはおよそ1.5~2倍です。配管径が小さいと価格差は小さいですが、大きくなると価格差も大きくなり、肉厚によっても多少前後します。

プラント全体で考えた場合、価格は配管だけでも1.5~2倍するため、配管の一部取り換えではそこまでの価格差にはなりませんが、新たにプラントを建設するとなると、全体のコストが大きく変わってきます。そのため、取り扱う流体に応じて適切な配管選定を行い、コスト削減することが大切です。

参考文献
https://www.technos-j.com/stainless/stainless-seamless_pipe/
https://www.jfe-steel.co.jp/products/koukan/catalog/e1j-026.pdf
http://www.jssa.gr.jp/contents/products/shapes/tubes/
http://energy-kanrishi.com/pipe-e-s/

シュリンクトンネル

シュリンクトンネルとはシュリンクトンネル

シュリンクトンネルとは、シュリンク包装を実施する装置です。

シュリンク包装のシュリンク (shrink) は、「縮む」という意味を持ちます。パッケージ業界では、透明なフィルムを熱処理して商品をピッタリと包装することを「シュリンク」または「シュリンク包装」と言います。

シュリンクトンネルの使用用途

シュリンクトンネルはシュリンク包装を流れ作業的に行う機械です。そのため、シュリンクトンネルは、飲料容器、調味料、缶詰、カップ麺などの包装で使用される食品業界を始め、書籍やCD等のケースや箱物や医薬品など、幅広い分野で使用されています。

シュリンクトンネルの原理

シュリンクトンネルの基本的な構成は、シュリンクフィルムをかけ溶着させる装置と熱処理をするトンネルの2つです。これに蒸気式であれば、ボイラーが付随します。

シュリンクフィルムは、巻いた状態で供給されます。シュリンクフィルムは、包装を行う商品にかけた時点で切断されます。シュリンクフィルムに印刷されたレジマークと言われる黒い目安線を感知して、切断がおこなわれる仕組みです。

また、生産ラインに直接設置されない場合は、商品の投入口が付随します。なお、シュリンク包装は、シュリンクフィルムというフィルムを加熱し、熱収縮させて包装したい商品の包装に使う技術です。

シュリンク包装機には、一つ一つ手包装を行う機械もありますが、大量生産には加熱トンネルを通してシュリンク加工をするシュリンクトンネルが使われています。

シュリンクトンネルの種類

シュリンクトンネルは加熱方式によって3種類に分けられます。また、パレット用のように大きなものをシュリンク包装できる商品も存在します。

1. 熱風式

熱風を吹き付けてフィルムを収縮するタイプです。使用するのは熱源のみなので、場所を取らず設置できます。ただし、他の方法に比べると、仕上がりムラが出やすい傾向があります。

2. 蒸気式

トンネル内に蒸気を通して、シュリンクフィルムへの加熱むらが生じないようにしたタイプです。蒸気を使うのでボイラーが必要になり、装置が大掛かりになります。

仕上がりはきれいですが、水蒸気を除去する工程が必要です。

3. 熱旋風式 (トルネード式)

近年広がってきている方法で、熱風式の装置内に気流を発生する装置を配して、熱ムラを防いだ装置です。蒸気式と遜色ない仕上がりが得られます。

シュリンクトンネルのその他情報

シュリンクトンネルの使用目的

シュリンク包装は、主に以下の目的で使用されます。

1. 商品の保護
一旦シュリンク包装を実施すると、その包装の中には異物が入りません。輸送時の虫やホコリの混入も防げますし、いたずら防止にもなります。

2. 識別性の向上
シュリンク包装は製品の大部分に施されるため、ラベルなどを貼り付けるより、大きな面積に商品情報を印刷できます。商品棚に並べたときも区別がつきやすく、識別性が向上します。

3. 多品種生産への対応
従来、包装容器は品目ごとに意匠を変更する必要がありました。その場合は、製造中止で包装材料が余ったり、逆に急な生産の前倒しで、包装材料が間に合わなかったりしました。

これでは、少量多品種の生産になればなるほど、ムダが多くなってしまいます。それに対して、シュリンク包装を採用すれば、同じ製造工程で同じ製造容器を使用してつくられた商品でも、シュリンク包装の違いで商品を区別可能です。瓶やキャップなど、包装材料が無駄にならずコスト削減につながります。

4. 包装コストの低減
シュリンク包装を使って複数の商品を1つにまとめて販売しすれば、ひとつひとつに包装コストをかけるよりも、安価に仕上がります。

シュリンク包装を使えば、包装に通常必要な糊やテープ、箱も必要なく手間もかかりません。

5. 輸送性の向上
通販サイトの中には、商品を段ボール板と共にシュリンクトンネルを通して、動かないように加工する企業があります。このシュリンク処理によって、そのまま箱に入れても破損が防げ、輸送性が向上します。

6. セット販売
違う種類の製品を組み合わせて、セット販売をする際にもシュリンク包装が使われます。文房具や果物まで、用途は多様です。

参考文献
file:///C:/Users/pukip/Downloads/Full-N-1023132308-haruta-masayuki.pdf
https://wrap.hakko.com/mametishiki/
https://www.jpml.jp/expert/knowledge/09.html
http://www.kd-sp.jp/products/index.html

シャッターオイル

シャッターオイルとは

シャッターオイルとは、シャッターの摺動部に使用するオイルです。

シャッターの上げ下ろしを軽くし、騒音を低減します。手動、電動共にシャッターのメンテナンス時に使用します。

シャッターオイルには、スプレータイプ (シリコンスプレー・グリススプレー) の物やグリス、潤滑油などがあります。シリコンスプレーは、被膜作成による錆びつきを防止し、シャッターの上げ下ろし時の騒音軽減に効果大です。

潤滑油やグリスは、少量で潤滑が可能ですが、ごみの付着に注意する必要があります。

シャッターオイルの使用用途

シャッターオイルは、住宅や店舗、作業場、工場などで、シャッターのすべりを良くすために、シャッターの摺動部などにスプレーして使います。特に、レールとスラットとの摺動部や、スラットとスラットとの間へのスプレーすると効果が大きいです。

オイルスプレーは、金属の錆び取りや洗浄、ねじなどの部品の固着を取るために使用します。グリスは、長時間オイルを潤滑させる効果が高いため、シャッターの可動部などに使います。

シリコンオイルは、耐熱性・耐寒性に優れており、素材の表面にシリコンの膜を作って滑りを良くします。ごみなどが付着しないのが長所です。

シャッターオイルの特徴

シャッターのメンテナンスには、オイルスプレーでさびを洗浄後に、シリコンスプレーで被膜を作成する方法が多く使われます。

1. シリコンスプレー

シリコンスプレーは表面に被膜を作成し、滑りを滑らかにする作用を持っており、金属以外のゴムやプラスチック、木製、紙にも使用できますが、金属の洗浄能力はありません。シリコンオイルには、ストレートシリコンオイルと変性シリコンオイルがあります。

ストレートシリコンオイル
ストレートシリコンオイルは、耐熱性、耐寒性に優れており、温度変化によって粘度に差が出にくいオイルです。皮膜効果があるため、撥水性を持ち、他の物質の粘着も防ぐ効果があります。水のようなものから、水あめ状のものまで、種類はさまざまです。

変性オイル
変性シリコンオイルは、ストレートシリコンオイルを改良したものです。具体的には、有機物との相溶性や水との溶解性などを改良しています。化粧品や撥水剤として使用されるオイルです。

2. シリコン以外のオイル

オイルスプレー (潤滑油) は、金属への浸透度が高いため、錆び取りなどの洗浄に向いています。オイルは物への浸透度が高く、木材に使用するとシミの原因となるので、金属にしか基本的に使用できません。

グリススプレーは粘着性があり、長期間の潤滑に向いています。オイルスプレーは乾きにくくベタつくので、放置しておくとごみ溜まりの原因となるため、よくふき取るなどの工夫が必要です。

シャッターオイルのその他情報

1. シャッターオイルの使い方

シャッター各部のごみなどを清掃後、使用前に必要なことは、シャッターオイルの缶を良く振ることです。次いで、各摺動部にスプレーします。この場合、手の届かない場所や狭い部分にスプレーするときは、付属のチューブを吹き出し口に取り付けて使用します。

シャッターオイル缶は、LPGなどの高圧ガスを使用したものが多いので、火気などの注意が必要です。炎や火気の近くでの使用は厳禁です。

2. シャッターオイルを使用する際の注意点

吸入飲用不可
人体に害がありますので、飲用できません。子供の手の届かないところにおいてください。

保管方法
破損する恐れがありますので、自動車の車内に置くのは不可です。また、直射日光の当る所、40℃以上になる所、錆の発生しやすい場所、湿気の多い場所での保管は避けてください。

廃棄方法
シャッターオイル缶を廃棄する場合は、中身を使い切り、火気の無い戸外でボタンを押してガスを完全に抜いてから、各自治体の廃棄方法に従って廃棄する必要があります。

3. シャッターオイルの応用

シャッターオイルは、シャッター以外にも使われます。とくに、シリコンスプレーは、雨戸・網戸のきしみ、閉まり、滑りが悪くなったサッシ、カーテンレールの滑り、動きの悪くなったタンスの引き出しなどにも有用です。

また、シリコンスプレーは、切れ味の悪くなったはさみ、動きの悪くなった椅子のキャスターなどの動きを良くする万能潤滑剤として、便利です。さらに、撥水性が優れており、繊維、金属、ガラスなど様々なものの撥水加工にも使用されます。

参考文献
https://www.silicone.jp/products/type/oil/index.shtml
https://www.kyodoyushi.co.jp/knowledge/grease/about/

サーモコントローラ

サーモコントローラとは

サーモコントローラ(Thermo controller)とは、電気ヒーターやクーラーユニットにON/OFFの信号を出して、対象の温度を一定に保つ機器または部品です。

制御用基板、電源、センサー接続口、ヒーター接続口、クーラー接続口などが備わっています。

設定温度付近でON/OFFのみを行うような安価な機器から、微妙な温度変化を検知して、設定温度付近ではONの制御信号を減らしてOFF信号を多めに出し、設定温度から離れている場合はON信号を多めにしてOFF信号を少なめに出し、設定温度付近を維持するPID制御プログラムが組み込まれている高価なものまであります。

サーモコントローラの使用用途

サーモコントローラの使用用途ですが、安価なものは、小型の水槽の温度を制御する場合など、可変温度範囲が狭かったり、制御機器が小型であったりする場合に良く用いられています。

高価なものは、可変温度範囲が広く、制御機器が極めて大きかったり、高精度の温度維持が求められたりする場合に良く用いられており、調査、実験、試験などに用いる機器に組み込まれています。

ホームセンターで手に入る環境制御キット、生物学や医学の分野で用いられる分析器や恒温器、石油化学や食品関連の施設設備の制御機器に欠かせないコントローラです。

サーモコントローラの原理

サーモコントローラの原理と特徴について記述します。

ON/OFF制御型のサーモコントローラは、温度センサーの信号を温度に変換して、設定値に対して足りない場合はON信号を出し、設定値を超えた場合はOFF信号を出すことで、ヒーターやクーラーを動かすことで対象物の温度を一定に保ちます。

制御プログラムを用いたデジタル式と温度変化に応じてスイッチを動かすアナログ式があります。

高価かつ高精度のサーモコントローラは、PID制御型が主流となっています。

PID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)とは、現在温度と設定温度の差に比例した出力を出す比例動作(Proportional Action)に、その温度差の積分値に比例する出力を出す積分動作(Integral Action)を加え、温度差の微分に比例した出力を出す微分動作(Derivative Action)を引いた値に基づいて、出力電圧波形のパルス幅変調(pulse width modulation)を行い、ヒーターやクーラーの出力を調節することです。

具体的に説明すると、できうる限り早く設定温度に近づき(比例動作)、設定温度付近での加熱と冷却のし過ぎを修正し(積分動作)、設定温度付近での温度の増減を抑える(微分動作)制御のことで、比例動作はアクセルを踏む動作、積分動作はアクセルを調整する動作、微分動作はブレーキを踏む動作に例えられます。

参考文献
https://metoree.com/categories/2496/
https://www.yukisako.xyz/entry/pid_control
http://energychord.com/children/energy/pe/inv/contents/inv_pwm_tri.html

ゴムロール

ゴムロールとは

ゴムロール

ゴムロールとは、金属やプラスチックなどの材質の芯にゴムなどの弾性のある物質を被覆し、研磨した棒材です。

表面に被覆したゴム特有の特性を生かし、多種多様な素材の搬送用途に用いられています。ローラーの芯には鋼が一般的に用いられますが、使用条件に応じ、アルミニウムステンレス鋼、プラスチックなども使用されます。

近年は、軽量化の観点から、炭素繊維強化プラスチック製のローラー芯も流通してきています。表面のゴムの特性も重要で、用途に応じた材質や表面性能を選択することが大切です。

ゴムロールの使用用途

ゴムロールは印刷機械をはじめ、製紙や製鉄、コンバーティング産業に至るまで幅広い分野で使用されています。各種用途に応じ、ゴムロールメーカーは芯とゴムの素材、凹凸などの表面形状を選択しています。

代表的な使用用途は、以下の通りです。

1. 印刷

新聞をはじめとする印刷物は高速で素材を搬送する必要があるため、古くからゴムロールが用いられてきました。その種類は多く、輪転用からグラビア印刷用、段ボール印刷用など多岐にわたります。

2. 製紙

製紙は印刷と並び、古くからゴムロールが用いられている用途です。紙の搬送ラインでは、ゴムロールと素材の間に静電気が発生しやすい環境にあります。静電気はホコリ付着の原因になるだけでなく、オゾンを発生させることでゴム自体の劣化も引き起こします。このような不具合を発生させない機能を持つロールが使用されています。

3. 製鉄

私たちの身の回りには住宅や自動車、鉄道など鉄素材で造られた製品が多くあります。この鉄の製造にもゴムロールが使われています。

製鉄の分野で使われるゴムロールへの要求は高く、まず高温かつ大きな荷重に耐えられるものでなければいけません。また、冷却設備のラインでは、コイルを酸で連続的に洗浄する必要があり、搬送用のゴムロールには耐薬品性も要求されます。

ゴムロールの構造

ゴムロールは、芯と表面のゴムにより構成されています。それぞれの構成部材の特徴を以下に説明します。

1. ローラー芯

ゴムロールは大きい荷重が加えられる条件など過酷な環境で使用されることが多いため、それに耐えられる芯材を選択する必要があります。素材には鋼管が良く使われてきましたが、特殊な用途の場合にはステンレスやアルミニウム、樹脂製のものも使用されます。近年は搬送スピードの高速化に伴い、遠心力の増加に耐えられる特殊な加工が施された芯材も開発されています。

2. ゴム

搬送する素材に直接触れるゴムに求められる性能は数多くあります。代表的なものとして、まず挙げられるのは摩擦係数の高さです。摩擦係数が低いと、高速で搬送される製品をしっかりグリップできません。

次に挙げられるのは変形に対する耐久性です。搬送中は素材に強い張力がかかるため、皺が発生する恐れがあります。その皺がゴム表面に転写され残存してしまうと、製品不良が連続して発生してしまいます。

そのため、変形に対する復元性が重要です。続いて重要なのが耐薬品性です。製紙や製鉄の過程では酸や化学物質にロールが触れることが多く、それに対する耐性が求められます。

ゴムロールのその他情報

ゴムロールの製造方法

ゴムロールの製造過程は様々ですが、全てに共通して先ず行われるのが原材料の配合と精錬です。その後、以下に示す四つの方法のどれかでゴムとローラー芯を接着させたのち、ゴムを加硫させることで架橋反応を起こし、弾性を付与します。そして、特殊な表面加工や研磨を施すことで製品となります

1. 積層法
精錬したゴムをキャレンダーロールでシート状に成型し、そのゴムシートをローラー芯で巻き上げ接着させます。基本的にはローラー芯に接着剤を塗布しています。

2. 押し出し法
精錬したゴムを押し出し機でロール状に成型するシンプルな方法です。積層法と並びよく使用される成型方法です。

3. 型成形法
金型を使用する製造方法で、金型に精錬したゴムを充填し、プレス機にて加熱及び加圧を行い成形します。金型のサイズを大きくすれば、一度に多くのゴムロールを製造できます。

4. 注型法
樹脂製の金型に精錬したゴムを流し込みオーブンで加熱し成形します。この製法は大量生産には適しておらず、小ロット生産や試作品などの製造に用いられます。

参考文献
https://www.bunkagomu.co.jp/publics/index/19/
http://www.suzukigomu.co.jp/flow/index.html

ゴムチップタイル

ゴムチップタイルとはゴムチップタイル

ゴムチップタイルとは、細かく裁断したチップ状のゴムをタイルの形状に固め合わせた製品です。

弾性が高くクッション性に優れるため、足やひざの負担を軽減し快適な歩行間を実現できます。雨天時でも滑りにくい特徴を持ちますが、万一転倒した際も衝撃を吸収してくれるため、保育園や公園、ショッピングモールなどで使用されます。

また、着色の容易さから、カラーバリエーションが豊富です。一般的には、排水性を向上させる目的で水勾配をつけて施工します。

ゴムチップタイルの使用用途

ゴムチップタイルは、安全性や歩行性の高さから保育園や公園、ショッピングモールなどの舗装に使われています。ゴムを使用することで、雨天時でもすべりにくく、快適な歩行感を実現できます。

屋上やテラス、プールサイドなどで使用する場合は、透水性に優れたタイプが最適です。視覚障害者誘導用の点字ブロックは樹脂製やコンクリート製などもありますが、安全性に優れるゴムチップタイルでも代替可能です。

ゴムチップタイルの特徴

ゴムチップタイルの特徴は、以下の通りです。

  • クッション性に優れている
  • 転倒時のけがを防止できる
  • カラーバリエーションが豊富
  • 部分補修が可能
  • 騒音が低減される
  • 快適な歩行感が実現される

カラーバリエーションが豊富なので、空間を演出することができます。製品にもよりますが、劣化が進行した部分のみ修復が可能なため、メンテナンス性の高さも魅力です。

ゴムチップタイルの種類

1. エプドムゴムチップタイル

エプドムゴムチップタイルは、主にエチレンプロピレンジエンモノマー (EPDM) ゴムを再生ゴムと組み合わせて作られます。EPDMゴムは耐候性に優れており、紫外線や雨水に対しても耐性があるため、屋外での使用が可能です。

耐摩耗性が高く、変形しにくいため、長期間にわたって耐久性を保つことができます。さまざまな色やデザインで提供され、遊具、運動場、公園などで広く利用されています。

2. シリコーンゴムチップタイル

シリコーンゴムチップタイルは、シリコーンポリマーを主成分として作られるタイルです。シリコーンゴムは耐熱性に優れ、高温環境での使用に適しています。また、耐薬品性や耐久性も高く、耐候性にも強い特性を持っています。

これらの特性により、屋外の建築物や橋梁、屋上庭園など、高温環境や厳しい気象条件下での使用が可能です。シリコンゴムチップタイルは、特に建築デザインや屋外スペースの美観を重視する場合に人気があります。

3. プレイグラウンドゴムチップタイル

プレイグラウンドゴムチップタイルは、子供たちが遊ぶ遊具の下に敷く防災・安全対策のためのタイルです。通常、再生ゴムを粉末状にした後に再度固化させて作られ、これにより落下時の衝撃を吸収し、ケガを軽減する効果があります。

色とりどりのタイルが子供たちの目を楽しませ、安全な遊び空間を提供します。プレイグラウンドゴムチップタイルは、特に公園や幼稚園、学校の遊び場などで広く使用されるタイルです。

ゴムチップタイルのその他情報

ゴムチップタイルのデメリット

デメリットとして、部分的に剥離してしまうことや着色チップの色落ち、ゴミの蓄積などが挙げられます。ゴムチップと接着剤を混合して熱ローラーで施工していますが、経年劣化や衝撃等により部分的に剥離する場合があります。

ただし、部分補修なども可能なため、大きなデメリットにはなりません。着色チップの色落ちが大きな懸念点となっています。使用状況にもよりますが、数年程度で色落ちが目立つようになります。

一般的には5年程度のスパンで塗装などの補修を行うと、美しい状態を維持することが可能です。

参考文献
https://www.kimoto-gomu.co.jp/index.php?id=mat-tip1
https://www.abc-t.co.jp/products/detail/9425.html

ゴム集成材

ゴム集成材とは

ゴム集成材とは、ゴムの樹液を採取した後の木を再利用し、接着剤で組み合わせて成形した人工の木材です。

木目はまっすぐなものが多く、灰白色で美観性に優れています。また、やや重く硬いのが特徴です。無垢材と比較して美しい木目や調湿性などは劣りますが、集成材は人工的に成形するため、コスト面にも優れていて、安定した品質を確保できます。

ゴム集成材の使用用途

ゴム集成材の主な用途は、テーブルの天板や棚板、家具、造作材、内装材などです。日常生活で目にする機会が多い使用用途は天板や家具ですが、造作材や内装材にも使われるほど汎用性に優れています。

加工性に優れ塗装も容易にできる点も汎用性の高さにつながっており、この加工性の良さを活かして、ロクロ加工を施した手すりなどにも使用されています。

しかし、耐久性が低いため建築物用には適していません。そのため、使用用途によって集成材の材質や無垢材などを詳細に比較検討し、選定することが大切です。

ゴム集成材の原理

ゴム修正材は、木材の継ぎ加工と接着加工により、細かい木材板を一枚の大きな材木に加工して作成されます。香りや肌触りが天然の無垢材に比べ劣りますが、品質が安定しており加工性に優れているのが特徴です。

ただし、接着剤を使用しているため、経年劣化の期間を考慮しなければなりません。とはいえ、集成材が流通するようになってから月日がそれほど経っていないこともあり、実際には数十年単位の市場での信頼性データはないのが現状です。

ゴム集成材の種類

集成材は使用用途に応じて、造作用集成材、構造用集成材、ハイブリッド集成材の3種類に大別されます。

1. 造作用集成材

天板や家具、床、壁などに使われており、最も目にする集成材です。高い耐久性を必要としないため、ゴム集成材も利用可能できます。また、美観性を付与するために薄い化粧板を表面に貼り付けた集成材も存在します。ホームセンター等で簡単に手に入れられるため、DIYでもよく使われる集成材です。

2. 構造用集成材

建築物の柱や壁、梁など大きな負荷がかかる用途に用いられる集成材です。耐久力と高強度が求められるため、ゴム集成材は適していません。JAS規格によって集成材の大きさや用途が定められているため、事前に確認する必要があります。

3. ハイブリッド集成材

ハイブリッド集成材は、集成材の内部に鋼材を組み込むことで、強度補強を施した集成材です。万一火災が発生した場合でも建築物の崩壊を防ぐ効果を期待でき、ハイブリッド集成材を使用することで4階までの建築が可能になりました。

昨今のSDGsの環境問題への配慮からも、見た目が人に優しい木造建築でありながら、意匠性や工法にも優れ、防火性や耐震性に優れた特徴あるハイブリッド集成材の開発が建築メーカーを中心に進められている状況です。

ゴム集成材のその他情報

1. ゴム集成材の塗装上の注意点

ゴム集成材の加工は比較的容易な材質といえますが、塗装には注意が必要です。集成材とはその名の通り、一枚の板ではなく、細かい材木を集めて板状に接着剤にて加工されています。そのため、表面上に元の材木間の継ぎ目があるのが特徴です。

特にゴム集成材の場合には、塗料の増量と補強を目的として配合される「体質顔料」の含まれていない着色剤を用いると、吹き戻りが生じることもあるため、継ぎ目を目立たせないよう塗装着色に重点を置いて塗装しなければなりません。また水分による黒色変色を防ぐためにも、乾燥は迅速に行うことが重要です。

2. ゴム集成材の使用環境について

ゴム集成材は耐朽性が低いと称される材木ですが、よほど湿度の高い環境でない限り、実際に市販の家具や造作物にも用いられている材木なので問題ありません。とはいえ、過酷な高い湿度環境下での使用する場合は、この点を留意しなければなりません。

また、ゴム集成材に限らず、白色の色合いの集成材が直射日光で経年的に飴色に変化する事例は多いです。そのため、ゴム集成材の艶やかでくせのない白色や木目を好む場合には、直射日光での経年変化に注意が必要です。

参考文献
https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chumon/c_knowhow/laminated_wood/
https://kenzai-digest.com/what-is-laminated-wood/

グリーストラップ

グリーストラップとは

グリーストラップ

グリーストラップとは、飲食店や食品加工工場などから排出される油を分離する装置です。

油だけではなく、残飯や野菜くずも分離することが可能でグリストラップとも呼びます。

厨房からの排出物は水の中に大量の油が存在しており、そのまま下水に流すと下水管の詰まりや悪臭を引き起こします。更に悪化すると、環境汚染の原因にもなります。そのため、業務用の厨房を持つ飲食店では設置が義務付けられています。

グリーストラップは業種によって必要な大きさや形状が異なります。また、設置方法や定期的な清掃なども適切に行わなければならないため、専門業者によるメンテナンスが必要です。グリーストラップの正しい取り扱いは地球環境にも配慮する上で非常に重要なことです。

グリーストラップの使用用途

グリストラップは食用油を取り扱う業種では広く使用されます。以下はグリストラップの使用用途の一例です。

1. レストランやファーストフード店

レストランやファーストフード店などでは調理に使用される油脂や食品残渣が排出されるため、それらを捕捉することが必要です。グリーストラップによってこれらの油脂や食品残渣を捕捉することが可能です。

飲食店の中でも特にラーメン店などはスープに大量の油が含まれているため、排出物の問題が大きくなります。使われている油は冷えると固まる性質をもつため、配管を詰まらせる恐れもあります。容器の洗浄排水にも大量の油が含まれ、トラップでの分離が追いつかない場合もあります。

店によっては財団法人と手を組み、高性能なトラップ装置を導入しているところもあります。

2. 食品工場や加工施設

食品工場や加工施設などでは、油脂や食品残渣などの廃棄物が排出されます。精肉所などがその一例です。これらの廃棄物を排水管に流すことは環境汚染や下水処理施設のトラブルを引き起こすことがあるため、グリーストラップで油を抜き取ります。

3. 医療施設や獣医病院

医療施設や獣医病院では使い捨ての注射器や医療用具・獣医器具などが排出されます。これらの廃棄物は、下水処理施設で適切に処理されるために、グリーストラップの使用が必要です。

4. 公共施設や学校

公共施設や学校では、食堂やトイレなどから排出される油脂や固形物を捕捉するために、グリーストラップを設置することがあります。給食センターなどではグリーストラップの使用が必須です。

グリーストラップの原理

グリーストラップは、3つの槽から構成されます。

1. 第1槽

厨房からの排出物が最初に通る槽です。この槽には網目状のカゴが設置されています。カゴの中で残飯や野菜くずなど、比較的大きめのごみを取り除きます。汚泥など水よりも重い排出物も沈殿により除去されます。

2. 第2槽

中間槽で、この槽では油を分離し除去します。油は水より比重が小さいことを利用し、浮かんだ油を仕切りを使用して除去します。浮かんだ油を除去した処理は第3槽に運ばれます。

3. 第3槽

第2槽で油を除去していますが、一部は残った油を第3槽で除去します。この槽ではトラップ管を設置し、水だけを管に移動させるようにしています。トラップ管の入り口は液体の中間ぐらいに位置しており、軽くて浮いている油を侵入させない構造です。

グリーストラップの選び方

グリーストラップを選ぶ際には、容量や形状、素材の面から選定します。

まず、グリーストラップに必要な容量を選定します。使用する業種や施設の規模に合わせて適切な容量を選びます。容量が小さいと定期的な清掃の頻度が高くなって清掃コストが上がるため、適切な容量を選ぶことが大切です。

つぎに、設置場所に合わせて適切な形状のグリーストラップを選ぶ必要があります。ハンドシンクや洗浄機などと組み合わせて設置する場合は、壁掛け型が適しています。また、大型の飲食店や加工工場などでは、地下に埋め込んで設置するタンク型が使用されることもあります。

また、使用する素材も重要です。ステンレス鋼、ポリエチレン、FRPなどの素材から選ぶことができます。使用する業種や施設の状況に合わせて、適切な素材を選ぶ必要があります。

参考文献
https://www.kumamoto-waterworks.jp/waterworks_article/15720/
https://www.asahi-kasei.co.jp/saran/products/business/greasetrap/howto/
https://www.isgnet.jp/greasetrap/column/10/

クローラークレーン

クローラークレーンとは

クローラークレーン

クローラークレーンとは、クローラーと呼ばれる無限軌道で走行可能なクレーンのことです。

吊り上げ場所に自力で移動し、作業を行うことができます。タイヤで走行するホイールクレーンと比べて、足元の接地面積が広いため接地圧が低く、整地されていない土地や軟弱地盤でも使用可能です。

また、全周全方向で同様の吊り上げ能力を発揮できる利点があります。反面、公道での走行ができないため、トレーラーに積載しての運搬が必要であり、一定以上の大きさのクレーンは、分解して運ぶという措置が必要となります。

クローラークレーンの使用用途

クローラークレーンは、港湾工事・プラント建設・風力発電所建設など、作業範囲が広く、かつ大重量の部材を持ち上げる必要のある業界・作業現場で多く使用されます。5トン未満の小型のものは、ミニクローラークレーンと呼ばれ、狭隘道路の工事や石材・庭園工事などに使用される場合が多いです。

クローラークレーンの足元は設置面積が広く、移動式クレーンの中でも大きな吊り上げ能力を有しています。吊り上げ能力は、0.5トン程度の小型から大型のものは500トン程度が多く、3,000トンクラスまであります。さらに、クレーン本体に原動機 (主にディーゼルエンジン) を搭載しているため、作業現場での自走が可能です。

クローラークレーンの原理

クローラークレーンは、走行部・クレーン本体・タワー部などで構成されます。

1. 走行部

走行部は、クローラシューという接地部材と、走行用モーター等の駆動装置及び駆動ローラ・遊動ローラなどから構成されます。左右それぞれのクローラシューに走行用モーターが設置されます。

走行用モーターは、大出力が必要なため油圧式が多く、オイルの流路を切り替えて前進・後進を行うことが可能です。油圧ポンプは、上部のクレーン本体にあり、スイベルジョイントロータリージョイントと呼ばれる回転接手を介して、下部の走行部にオイルを送ります。走行部は、吊り上げ部材と上部本体の重量を支える役割と移動する役割があります。

2. クレーン本体

クレーンの本体は、タワーの基部・操作装置・操作室・エンジン・油圧ポンプ・旋回装置などを有しています。

クレーン本体とタワー部は、走行部の上に大径のベアリングで支持され、自由に旋回可能です。クレーン本体側の旋回ギアが旋回モーターで駆動されます。走行部側には、リング体の内側ギアが固定されています。本体側の旋回ギアの回転により、かみ合っている走行部側のギアは固定されているため、クレーン本体が旋回します。

クレーンでの部材の吊り上げはワイヤロープを使い、ワイヤーロープの巻き取りドラムや巻き取りモーター・減速機・安全装置などはクレーン本体に装備されています。

3. タワー部

タワー部は、クレーンの腕に当たるブームや部材を吊り上げるためのフック・ワイヤロープなど、様々な部品で構成されています。

ブームは、固定長のラチスが大型のクレーンで使われます。油圧シリンダーを使った伸縮自在のテレスコピックブームの製品が増加傾向にあります。

クローラークレーンのその他情報

1. クローラークレーンの免許

移動式クレーンの資格は、操縦するクレーンの吊り上げ能力によって異なります。0.5トン以上1トン未満の場合は特別教育、1トン以上5トン未満の場合は技能講習、5トン以上の場合が免許が必要です。

資格取得に必要な期間は、特別教育であれば1日で取得可能です。技能講習は3日程度の講習を受講し、実技および学科の修了試験に合格する必要があります。移動式クレーン運転免許は、実技・学科ともにハードルが高いため、1週間程度教習所で学科対策および実技試験を受けます。

走行に関しては、クローラークレーンは公道を走行することができず、工事現場内のみ走行可能であるため、走行の運転資格は不要です。

2. クローラークレーンの性能表

クローラークレーンには必ず性能表があります。なかでもクローラークレーンの吊り上げ能力を示しているのが、定格総荷重表です。定格総荷重表とは、各姿勢 (起伏角度・ブーム長さ・ジブ長さ・作業半径など) における吊り上げ可能な重量を示す図表を指します。

クローラークレーンの購入や現場で使用するときに参考となるデータです。クローラークレーンは、どのフックを使用するのか、フックのワイヤ掛け数はいくつにするのかによっても性能が変わるため、細かい条件を確認しておくことが重要です。

また、性能表には定格総荷重表の他に、寸法や重量のデータも記載されています。クローラークレーンは公道を走行することができないため、大型のものは分解搬送が必要です。そのため、寸法・重量データが必要となります。

参考文献
http://www.hsc-cranes.com/j/products/hs1.html
http://www.kobelco-cranes.com/jp/product_c_crane/#2
https://www.kobelco-kenki.co.jp/company/recruit/2021/products/machine/crane.html
https://www.maesei.co.jp/products/crawler-cranes/
https://cot.jpncat.com/know/?no=15