シームレスパイプとは
シームレスパイプとは、パイプの長手方向に接合部のないパイプです。
鋼管の一般的な製造方法は、鋼板を丸めて円筒状にし、溶接する事で製造されます。しかし、パイプに繋ぎ目が存在すると、使用用途によっては配管から原油が漏れるなど、強度や信頼性において重大な事故につながりかねません。
シームレスパイプはマンネスマン法など、強度低下の原因となりうる繋ぎ目が生じない方法で製造されます。継ぎ目から不具合が発生する懸念がないため、高強度・信頼性が必要な場合に使用されるものです。
シームレスパイプの使用用途
シームレスパイプは、ガス、石油、水など流体を輸送するために幅広く使用されています。また、建設用の配管も存在するため、シームレス鋼管にも多くの種類があります。
- 建設用シームレス配管
- 流体輸送用シームレス鋼管
- 高圧ボイラー用シームレス鋼管
- 冷間引き抜き精密シームレス鋼管
シームレス鋼管は用途によって材質や規格が異なるので、それぞれの目的にあったシームレスパイプの選定が必要です。具体的な使用用途の例としては、石油や天然ガス設備、火力発電所のボイラーチューブ、産業機械の高圧配管などに使用されています。
シームレスパイプの原理
シームレスパイプを製造する代表的な製造方法は、マンネスマン法です。シームレスパイプを製造するにあたって、最も生産性が高いです。マンネスマン法は簡単に言えば、鋼板ではなく、丸棒からパイプを成型します。丸棒から成型されたパイプなので、接合部が生じません。
マネキン法ではまず、ビレットと呼ばれる丸棒形状のパイプの材料を真っ赤になるくらい (約1,300℃) に高温で加熱します。ビレットの圧延が可能になったところで、パイプに成型するためのプラグ (シームレスパイプ内径成型用) と呼ばれる工具をビレット中心に押し当てていきます。
プラグをそのまま押し当てるだけでは、行き場を失ったビレットは外形に押し出されてしまい、パイプ形状にはなりません。そこで外周をコーン型、バレル型といったロールで押さえながら成型していきます。するとプラグで押し出された材料は前に押し出されるため、内径を成型しつつ、外形も整えることができます。
一般的に、高温のビレットに対して過酷な圧延を行うと、表面性状の劣化が避けられません。同様に圧延工程の負荷が軽くなる厚肉品のほうが、比較的容易に製造できます。しかし、現在ではシームレス配管でありながら薄肉加工を得意とする企業も存在します。厚み0.08mmといった極薄な小径シームレスパイプから、日本製では最大径となる直径426.0mmサイズの大径シームレスパイプまで存在します。
シームレスパイプのその他情報
1. シームレスパイプと溶接パイプの違い
シームレスパイプと溶接パイプの違いは、配管の製造方法において溶接を用いるかいないかです。そもそもシームレスパイプが必要になる理由として、溶接部には「溝状腐食」が発生することが挙げられます。
この溝状腐食とは、配管の溶接部 (内側) にV字形の腐食が起こることです。一般的に溶接時には高温を伴うため、接合部の金属組織の変化が避けられません。溶接部と母材との組織に違いができると電位差が生じるため、腐食の原因になります。一度腐食が発生すると溝が形成されることによって、腐食が促進され、最終的に配管の表面まで到達するか、もしくは強度不足により、流体の漏れに至るというのが溝状腐食のメカニズムです。
シームレスパイプの一番の選定理由は溝状腐食を発生させないことですが、溶接パイプにも耐溝状腐食鋼管というものが存在します。耐溝状腐食鋼管、母材の組成分子の調整 (硫黄分の減少) 及び、溶接部への特殊元素の添加した鋼管です。通常の配管よりは高価ですが、シームレスパイプほど高価ではないため、仮に漏れても危険性のない液体、例えば水などの配管として広く用いられます。
2. シームレスパイプと溶接パイプの価格差
シームレスパイプと溶接パイプ (ここでは例として電縫鋼管とします) の価格の差について説明します。ここでは、例として材料はSUS304で考えます。価格は電縫鋼管に対しシームレスパイプはおよそ1.5~2倍です。配管径が小さいと価格差は小さいですが、大きくなると価格差も大きくなり、肉厚によっても多少前後します。
プラント全体で考えた場合、価格は配管だけでも1.5~2倍するため、配管の一部取り換えではそこまでの価格差にはなりませんが、新たにプラントを建設するとなると、全体のコストが大きく変わってきます。そのため、取り扱う流体に応じて適切な配管選定を行い、コスト削減することが大切です。
参考文献
https://www.technos-j.com/stainless/stainless-seamless_pipe/
https://www.jfe-steel.co.jp/products/koukan/catalog/e1j-026.pdf
http://www.jssa.gr.jp/contents/products/shapes/tubes/
http://energy-kanrishi.com/pipe-e-s/