ガス分析計

ガス分析計とはガス分析計

ガス分析計とは、ある物質のガス成分を分析するための装置です。

気体中の成分の濃度を測定する場合が一般的で、対象とするガスは二酸化炭素一酸化炭素、酸素、窒素酸化物などがあります。使用用途に応じて測定できるガスの種類や項目数などは大きく異なります。

工場では大気汚染のモニタリングや省エネルギーのために使用されます。その他、農業分野など、幅広い用途で使用される機器です。

ガス分析計の使用用途

ガス分析計は複数種のガスを測定できることから、使用される場面も様々です。以下はガス分析計の使用用途の一例です。

1. 環境監視

大気中のガス成分の濃度を監視することで、大気汚染の状況を把握して適切な対策を講じることが可能です。二酸化炭素や一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物などの濃度を測定します。

また、工場排気ガスの測定に使用されるガス分析計は排ガス分析計とも呼ばれます。排ガス分析計は大気汚染防止法で特定されたばい煙発生施設などでは設置が義務付けられており、環境監視用とで広く使用されています。

2. 医療

医療においてもガス分析計が応用され、主に呼吸器疾患や代謝性疾患診断または治療に使用されます。肺機能検査で呼気中のガス成分の濃度を測定したり、血液ガス分析で血液中のガス成分の濃度を測定することがあります。

医療用のガス分析計は高精度な測定が求められ、医療従事者が簡単に操作できるように設計されています。特に、緊急時や救急車などでの使用においては、素早く正確な測定が必要なため、簡単な操作性が重要です。

3. 産業プロセス

化学プラントや製造工場のプロセス制御に使用されます。反応器内のガス成分の濃度を測定して、プロセスの最適化や品質管理に役立てます。食品業界では鮮度や品質を評価するために、パッケージ内の空気中のガス成分の濃度を測定することもあります。

ガス分析計の原理

ガス分析計によって測定できる気体は複数存在します。そのため、分析の方式は多岐に渡ります。以下はガス分析計の原理一例です。

1. 赤外線吸収法

試料に特定の波長を持つ光を照射し、吸収された赤外線量をマスフローセンサーで検出する方法です。照射の種類によってダブルビーム式・シングルビーム式があります。ダブルビーム式は基準セル (ブランク) と試料セルを比較してガスの濃度を検出する方式で、シングルビーム式は試料セルのみを測定する方式です。

2. 熱伝導法

白金線を熱して試料ガスと接触させた際に、供給熱量と放射熱量との間で平衡した温度がそれぞれのガスの熱伝導率に依存することを利用した方式です。構造が簡単でさまざまなガスを測定することが可能です。

3. 磁気力法

試料に磁界を与えると、酸素が引きつけられる際に圧力が発生します。この圧力をマスフローセンサーで検出します。主に酸素濃度を測定するための方法です。

酸素を測定する方法にはジルコニア方式も存在します。高温下でジルコニア磁器が酸素イオンを通電する性質を利用する方式です。ジルコニア素子の電極に発生する起電力を検出することで酸素濃度を求めます。

ガス分析計の選び方

ガス分析計を選ぶ際は、ガスの種類、検出感度、使用用途などに応じて選定します。予算が限られている場合には、必要最低限の機能を備えた測定器を選ぶことが重要です。

まずは、測定したいガスの種類を確認します。ガス成分によって使用可能なガス分析計が異なります。原理は上記項のような製品が各種存在し、測定可能なガス成分が異なります。目的に合わせて選択する必要があります。

ガス種類を決定したら、検出感度を確認します。必要なレンジのガス濃度を測定できなければ用途を満たしません。濃度の低いガス成分を測定する場合には、高感度な測定器を選ぶ必要があります。

また、使用用途に応じて選定することも重要です。可搬式の製品や連続測定用の製品が存在するため、使用用途に応じて選定します。

参考文献
https://www.jemima.or.jp/tech/1-01-05-01.html
https://www.yokogawa.co.jp/solutions/products-platforms/process-analyzers/gas-analyzers/
https://www.fujielectric.co.jp/products/instruments/products/anlz_gas/genri.html
https://www.fujielectric.co.jp/products/instruments/products/anlz_gas/application.html

チップ抵抗器

チップ抵抗器とは

チップ抵抗器

チップ抵抗器とは、面実装抵抗器とも呼ばれる直方体の抵抗器で、小さなセラミック基板上に金属皮膜を抵抗体として形成したものです。

一般にチップ部品は、小型の表面実装型受動部品全般を指します。コンデンサー、抵抗器、ヒューズ、コイル、トランス等でチップ部品が作られていますが、全て固定電極を備えていることが特徴です。

旧来の抵抗器では、プリント基板の穴に挿入するために柔軟性のあるリード線が電極として扱われてきましたが、チップ抵抗器は固定電極をプリント基板表面に直接はんだ付けするものです。

チップ抵抗器の使用用途

抵抗器はコンデンサやコイルと共に電子回路において最も基本的な受動素子です。チップ抵抗器は、電流の制限や電圧の検出、バイアス電圧の設定など様々な役割を担い、あらゆる電子機器で使われています。

特に近年は、携帯電話やスマートフォンを中心とする移動体通信分野において、急速に需要が拡大しています。チップ抵抗器は、目的や用途に合わせて様々な製品が販売されているため、要求性能応じて抵抗器の性能や特徴を見極めて使用する必要があります。 

チップ抵抗器の原理

チップ抵抗器は、セラミック基板上に形成する抵抗体により、次の3種類に分類されます。

1. 厚膜チップ抵抗器

厚膜チップ抵抗は、メタル・グレーズを抵抗体として採用し、数μm程度の厚さの被膜を形成します。後述する薄膜チップ抵抗器より厚いことから、厚膜チップ抵抗器と呼ばれています。

メタル・グレーズ膜を形成した後に、抵抗体の一部をトリミングすることで、抵抗値の調整が可能です。スクリーン印刷法を用いてメタル・グレーズ膜を一気にセラミック基板上に形成できるので、比較的安価かつ汎用的な抵抗器です。定数やサイズは様々なものがあります。

2. 薄膜チップ抵抗器

構造は厚膜チップ抵抗とほぼ同じですが、抵抗体は金属合金で、真空蒸着法を用いてセラミック基板上に抵抗体を形成します。この抵抗体の厚さは、数nm程度と極めて薄いものです。そこから薄膜チップ抵抗器と呼ばれます。

薄膜チップ抵抗は公称抵抗値に対する誤差が小さく (±1%以下) 、その上温度係数も小さいことから正確な抵抗値が必要な場合に採用されます。さらに、抵抗値の経年変化が少ないことも特徴の一つです。

3. 金属板チップ抵抗器

金属板チップ抵抗は、金属板を抵抗体として用いたもので、小さな抵抗値の抵抗器を製造できます。電流検出用として、1mΩ以下の抵抗器も販売されています。また、放熱性に優れていて熱容量が大きいことから、比較的大きな電流を流すことも可能です。

一方、高い抵抗値は作りにくく、高価なことが短所として挙げられます。なお、抵抗器のベースとなっているセラミック基板は、主に酸化物系セラミックスであるアルミナで形成されており、強度や熱伝導性、絶縁性に優れています。

チップ抵抗器の種類

市場のニーズによりチップ抵抗器においても、以下に記す高機能商品が供給されています。

1. 耐硫のチップ抵抗器

一般的なチップ抵抗器の内部電極には銀が使用されており、硫黄が含まれる雰囲気中に放置されると、その銀が硫黄と反応して絶縁体である硫化銀が形成され、その成長によって内部電極が導通不良となる可能性が高いです。

そのため、活火山の近くなど大気中に硫黄成分が含まれる環境や硫黄を含む材料の近傍で使用する場合は、硫化対策を施した抵抗器を使用する必要があります。

具体的には、内部電極を銀ではなく、硫黄と反応しない材料に変更したものが開発されています。

2. 耐サージ・耐パルスのチップ抵抗器

スイッチング回路や静電気放電が起こりやすい回路など、抵抗器にサージ電圧やパルスが頻繁に印加される場合は、瞬間的に大きな電力が加わっても損傷しにくい抵抗器を使用する必要があります。そのため、耐サージ・耐パルスのチップ抵抗器も販売されています。

3. 測定精度の高いチップ抵抗器

計測器や制御機器などの精密機器では、抵抗値誤差 (抵抗値許容差) や温度による抵抗値変化 (抵抗値の温度係数) が小さい高精度な抵抗器が求められます。

4. 電流検出用のチップ抵抗器

電流検出用途の抵抗器は小さな抵抗値で、過電流やバッテリー残量を検知するための電流検出として、主に金属板チップ抵抗器が使用されます。

また、回路内の消費電力を抑えるためより低抵抗のものや、過酷な温度環境でも優れた抵抗温度係数を確保する高精度な抵抗器に対するニーズも高くなっています。

5. 長辺電極タイプのチップ抵抗器

チップ抵抗器はもともと短辺に電極がレイアウトされていました。抵抗体自体は放熱性が低いので、電極を通じた放熱がチップ抵抗器の定格電力を大きく左右します。

そこで、チップ抵抗器の長辺側に電極を設けることで電極の面積を増加させ、放熱性を向上させた製品がいくつかの抵抗器メーカーから販売されています。このようなチップ抵抗器は「長辺電極タイプ」もしくは「長辺チップ抵抗器」などと呼ばれています。

また、区別するために従来のチップ抵抗器を「短辺電極タイプ」と呼ぶこともあります。

チップ抵抗器のその他情報

チップ抵抗器のサイズ

チップ抵抗器の代表的なサイズとして、以下のものが挙げられます。

  • 6.mm×3.mm
  • 5.0mm×2.5mm
  • 4.5mm×3.2mm
  • 3.2mm×2.5mm
  • 3.2mm×1.6mm
  • 2.0mm×1.25mm
  • 1.6mm×0.8mm
  • 1.0 mm×0.5mm
  • 0.6mm×0.3mm
  • 0.4mm×0.2mm
  • 0.3mm×0.15mm

ただし、定格電圧や定格電力はサイズによって制約があり、大きいほど有利なので、自由にサイズを決められません。一方、比較的低い電圧で動作する回路では小型の抵抗器を選択することが可能ですが、対応できる実装装置 (マウンターなど) が制約されることがあります。

チップ抵抗器で最も出荷数量の多いサイズは「1005:1.0mm×0.5mm)」サイズであり、前の主役である「1608:1.6mm×0.8mm」サイズは数量を減らしつつあります。一方で今後の主流である「0603:0.6mm×0.3mm」サイズが数量を増やしています。

さらに、小さなチップ抵抗器として2011年10月には「03015:0.3mm×0.15mm」サイズが製品化され、「0201:0.2mm×0.125mm」サイズの開発が抵抗器メーカー各社で進められています。

参考文献
https://jp.rs-online.com/web/c/passive-components/fixed-resistors/surface-mount-fixed-resistors/
https://detail-infomation.com/chip-resistor-structure/
https://industrial.panasonic.com/cdbs/www-data/pdf/RDA0000/DMA0000COL10.pdf
https://eetimes.jp/ee/articles/2002/12/news008_2.html
https://www.rohm.co.jp/products/resistors

金属皮膜抵抗器

金属皮膜抵抗器とは

金属皮膜抵抗器

金属皮膜抵抗器とは、抵抗体に金属を使用した固定抵抗器のことです。

固定抵抗器の1種であるため、金属皮膜固定抵抗器と呼ばれることもあります。固定抵抗器にはカーボン抵抗器と金属皮膜抵抗器の2種類が一般的に広く使用されています。

カーボン抵抗器は抵抗体がカーボンであり、金属皮膜抵抗器は金属を抵抗体としています。カーボン抵抗器よりも抵抗値精度が高いですが、その分高価になります。

金属皮膜抵抗器の使用用途

金属皮膜固定抵抗器は、抵抗素子に金属皮膜を用いた固定抵抗器です。抵抗値許容差や抵抗温度係数が小さく、高精度かつ安定性に優れた抵抗器です。また、電流雑音を抑えられるといった利点があります。

これらの特性を活かし、微少な信号を扱う機器に広く使用されます。以下は、金属皮膜抵抗器の使用例です。

  • 産業用機器分野における通信・計測機器
  • コンピュータならびにその周辺器具
  • AV機器

発光素子などの電流制限抵抗やアンプのバイアス抵抗などにはあまり抵抗値精度を求められないため、カーボン抵抗器が採用されます。一方、温度ドリフトが問題となる直流増幅回路や厳密なカットオフ周波数が求められるフィルター回路などでは、金属皮膜抵抗器を採用します。

金属皮膜抵抗器の原理

金属皮膜抵抗器の抵抗体は、主に金属で構成されます。材質としては、ニッケルクロムなどが使用される場合が一般的です。カーボン抵抗器と比較して精度が高いなどのメリットがありますが、価格は高価です。

金属皮膜抵抗器には厚膜型と薄膜型の2種類があります。薄膜型は、厚膜型をより高精度(±0.05%程度)にした製品です。

厚膜型は金属系のペーストを加熱焼成して製作され、薄膜型は金属を蒸着・コーティングして製作されます。一般的な金属の温度特性は正特性であるのに対し、金属皮膜抵抗器は合金の比率を変えることによって温度係数を小さくしています。したがって、その比率によって正特性か負特性のどちらになるのかが決まります。

金属皮膜抵抗器の選び方

金属皮膜抵抗器は抵抗値等を基に選定します。抵抗器には、抵抗値を文字印字されている製品とカラーコードで表示されている製品があります。1,005サイズ以下の抵抗器では読み取りが困難なため、カラーコード表示を採用しています。

カラーコード表示の場合、抵抗値の「上2桁」または「上3桁」を、黒を0、灰色を9とした計10色で表します。これを読み取ることにより抵抗体の抵抗値を把握できます。同様に、乗数や許容差、温度係数などもカラーコード体系で分かる仕組みです。 

抵抗値の許容差は、カーボン抵抗器で±5%が一般的ですが、金属皮膜抵抗器は±2%、±1%、±0.5%と誤差の少ない製品を選定可能です。抵抗値の温度計数はカーボン抵抗器が-200~-800ppm/℃の負の温度系数を示します。金属皮膜抵抗器は比較的温度変化が少なく、±200ppm/℃、±100ppm/℃、±50ppm/℃の中から選択可能です。

金属皮膜抵抗器のその他情報

金属皮膜固定抵抗器のカラー表示

リード線タイプもしくはメルフタイプの抵抗器はカラーコードで抵抗値と誤差、及び温度係数を表示します。カラーコードが示す数値については、JIS C 5062に規定されています。

抵抗器に表示されるバンドは3本~6本の4通りありますが、4バンドと5バンドが一般的です。左から2本または3本が抵抗値を表し、そのあとの1本は乗数を表しています。

カーボン抵抗器は通常4バンド表示が一般的です。左から2本で抵抗値を表示し、3本目が乗数で桁を表示します。4本目は誤差を示しますが一般的には金色 (5%) が使用されます。

一方、金属皮膜抵抗器は高精度であるために有効数字が3桁となります。したがって、左から3本目までが抵抗値を表し、4本目が乗数を表します。5本目は誤差を示しますが、緑 (0.5%) 、茶 (1%) 、赤 (2%) も使用されます。

参考文献
https://www.marutsu.co.jp/pc/static/large_order/mame/164
https://detail-infomation.com/resistor-type/
http://www.op316.com/tubes/tips/data7.htm
https://www.koaglobal.com/product/library/resistor/basic
https://detail-infomation.com/resistor-color-code/

放射温度センサー

放射温度センサーとは

放射温度センサー

放射温度センサーとは、物質から発せられる赤外線を感知して温度を測定する装置です。

あらゆる物質は温度の高低にしたがって赤外線を放射されるため、赤外線量を検知して温度を測定する仕組みです。物質内部の温度や気体の温度は測定できませんが、物体に触れず瞬時に温度を測定することができます。

測定可能範囲 (スポット径) と測定距離が機器によって決まっており、状況に応じて選定します。 

放射温度センサーの使用用途

放射温度センサーは高速に温度測定ができるほか、直接触れずに非接触での温度測定も可能です。そのため、移動・回転する物体やセンサーの接触で温度が変化する小熱容量物体の温度測定に適しています。

産業プロセスや研究分野などと、広範囲で用いられています。以下の場合は、放射温度センサーの活用が有効です。

  • 対象物が動いている場合
  • 電磁界によって囲まれている場合
  • 対象物が真空あるいはその他調節空気内にある場合

放射温度センサーの原理

人間を含め、全ての物質は赤外線を放出しています。手のひらを頬に近づけると温かさを感じますが、これは、頬から発せられている赤外線を手の皮膚が感知しているためです。一般に、物質の温度が高いほど放出される赤外線量は多くなります。

放射温度センサーは、まず物質から放出された赤外線をサーモパイルと呼ばれる検出素子に集めます。サーモパイルとは吸収した赤外線によって電気信号を発する検出素子です。

サーモパイル内では複数の熱電対が温接点を中心部に向けた状態で直列接続されており、その温接点が向かう中心部には赤外線吸収膜が設置されます。レンズで集められた光は温接点部分にのみ当たるため、外側にある冷接点側との間に温度差が生じます。これによりゼーベック効果によって電圧差が生まれ、温度測定ができる仕組みです。

赤外線放射とは電磁スペクトルの一部であり、その周波数は可視光と電波の間程度です。この周波数範囲において、0.7ミクロンから20ミクロンの周波数のみが実用的な温度測定に用いられます。

放射温度センサーのその他情報

1. 放射温度センサーの精度

放射温度センサーは汎用品で±1℃以内と高い精度です。ただし、実際の測定時に機器の測定条件を正しく守らなければ測定誤差が生じるため注意が必要です。測定精度を決める条件は下記3点です。

測定ポイント
測定対象からの距離に従い測定範囲 (またはスポット径) が異なります。一般に測定距離が離れるにつれて測定範囲が大きくなります。 放射温度センサーの種類により測定距離と測定できる範囲が変わるため、この2つの条件を確認します。

温度ドリフト
放射温度センサーの環境温度を急激に変化させると温度変化によって測定値が変化する場合があります。 したがって、環境温度を急変させないように保ちます。

測定する表面の放射率
放射温度センサーは測定対象の物体表面から放たれる赤外線の強度を測定して温度を測定します。その際、測定対象から 放射された赤外線の強度は測定対象の温度だけでなく、放射率と呼ばれる係数によって決定されます。 したがって、温度測定の際は放射率による補正が必要です。

2. 放射温度センサーによる体温測定

近年、衛生意識向上の影響で体温を放射温度センサーで測定するケースが増加傾向です。一般に外部温度が体温より低いケースで体温測定をすると、外気温の影響で体温が低く表示されることがあります。

反対に、ヒーターの近くのような外気温が高いケースでは、高い温度表示がされることがあるため注意が必要です。体温測定の際は、放射温度センサーの取扱説明書を確認して、正しい外部環境で測定します。

3. サーモグラフィーについて

非接触で温度を測定する装置にサーモグラフィーがあります。サーモグラフィーは測定対象全体の表面温度を色の濃淡で色別し、視覚的に見易くした装置です。具体的な使用例は以下です。

  • 人の体表面温度分布
  • 手足の血流による温度分布
  • 機械装置の異常温度部の検出
  • 暗視カメラでの動物行動追尾

サーモグラフィーの内部には放射温度センサーが使用されています。

参考文献
https://www.jp.omega.com/technical-learning/infrared-temperature-measurement-theory-application.html
https://ureruzo.com/ondo-hInfo.htm
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/infrared-thermometers-guide
https://www.horiba.com/jp/process-environmental/products-jp/thermometry/notice/
https://www.testo.com/ja-JP/products/pyrometer
https://www.horiba.com/jp/process-environmental/products-jp/thermometry/how-to-select-a-thermometer/
https://www.japansensor.co.jp/faq/1014/index.html

ガスクロマトグラフ

ガスクロマトグラフとは

ガスクロマトグラフ

ガスクロマトグラフとは、気化しやすい化合物の定性・定量分析に用いられる装置です。

一般的にガスクロと略されて呼ばれることが多く、英語表記であるGas Chromatographの略号から、GCと表記されることもあります。高速液体クロマトグラフと並び、非常に有名な分析手法です。

その原理としては、試料を気化させた後、各成分ごとに分離し、化合物の種類と含有量を決定します。非常に低濃度の揮発性成分も分析できる点が最大のメリットです。現在は、製薬や食品、化学工業など幅広い分野で活躍し、科学技術の基礎と発展に貢献しています。

なお、ガスクロマトグラフとよく似た言葉としてガスクロマトグラフィーがあり、両表現は混同されがちですが、前者(ガスクロマトグラフ)は『実験装置』を意味し、後者(ガスクロマトグラフィー)は『ガスクロマトグラフを用いた分離操作』を意味するため、その意味が異なります。

ガスクロマトグラフの使用用途

ガスクロマトグラフは、医薬や食品、化学などの分野で、化合物の分離・分析目的に使用されます。例えば、有害物質濃度の測定や装置内で発生するガスの成分分析など使用用途は多岐にわたります。ただし、あらゆる化合物を分析できるわけではないので注意が必要です。ガスクロマトグラフィーはその原理上、一般的には沸点が400℃以上の不揮発性化合物や高温状態で分解する不安定な化合物は分析できません。また、無機金属やイオン類、吸着性の高い化合物なども同様の理由で分析困難なため、分析の前に確認する必要があります。

ガスクロマトグラフィーの原理

ガスクロマトグラフィーの原理は、非常にシンプルであり、以下の3ステップから構成されます。

  1. 試料を熱で気化させる。
  2. カラムクロマトグラフィーにより成分を分離する。
  3. 適切な方法で成分を検出する。

まず液体試料を熱気化させます。気化した成分はキャリアガスによりカラムへと運ばれます。気化した成分はカラム内の固定相(液相)に吸着・分配され、成分ごとに分離されてカラムを通過します。この時、カラム内を化合物が進む速度は化合物によって異なるため、移動速度の速いものから順にカラムの外へ出ていきます。分離された各成分は検出器によりピークとして記録されるため、この保持時間およびピーク面積を標準品のそれと比較する事で、試料の種類と濃度を決定できます。

本分析手法は、高速液体クロマトグラフィーでは分離・定性・定量できないような揮発性成分を分析できる点が大きな特徴です。

ガスクロマトフの模式図

図1. ガスクロマトフの模式図

ガスクロマトグラフィーに用いられる固定相について

ガスクロマトグラフィーのカラムに使う固定相の選定は非常に重要であり、成分特性に応じて適切な固定相のカラムを用いないと分離・分析が困難になります。

カラムは固定相の極性の高さから、無極性カラムと高極性カラムの2種類に大別されます。

無極性カラム

固定相として極性の低い化合物が用いられたカラムの事です。このようなカラムにおいては、極性の低い化合物は固定相である低極性の液相に強く保持されるため、移動速度が遅くなり、その結果として高い分離能が得られます。そのため、無極性の化合物の分析に適したカラムであるといえます。また、無極性カラムは、高極性カラムより耐熱性が高く、一般的には350℃程度まで使用可能です。

高極性カラム

固定相として極性の高い化合物が用いられたカラムの事です。このようなカラムにおいては、極性の高い化合物が強く保持されるため、その移動速度が遅くなり、結果として高い分離能が得られます。そのため、高極性の化合物を分析に適したカラムであるといえます。また、高極性カラムは耐熱性が低く、一般的には250℃程度が上限のため注意が必要です。

誘導体化による高極性有機低分子化合物の分離

極性の高い有機低分子化合物は揮発性に乏しいため、ガスクロマトグラフを用いた分離・分析は一般的には困難です。ただし、対象化合物の構造によっては、化学的手法により揮発性化合物へと誘導体化する事が可能であり、その場合はガスクロマトグラフィーでの分離も可能となります。そのため、高速液体クロマトグラフィーでは分離が困難な化合物の分離・分析にこのような誘導体化のテクニックは広く用いられています。そのような例としては、水酸基を多く持つ化合物である糖類、オリゴ糖類のTMS化と、それに続くGC分析が挙げられます。

ガスクロマトグラフの検出器

検出器は、ガスクロマトグラフのカラムで分離した成分を検出するものであり、目的によって使い分けられています。

水素炎イオン化検出器(Flame Ionization Detector;FID)

送り込まれる空気と水素により形成される水素炎で有機化合物を燃焼させ、イオン化された化合物を検出します。ほとんど全ての有機化合物を検出可能であり、その感度も極めて高いという特徴があります。

熱伝導度検出器(Thermal Conductivity Detector;TCD)

キャリアガスと対象成分との間で生じる熱伝導度の差に基づくフィラメントの温度変化を読み取ることで成分を検出します。非破壊的に無機成分、有機成分の両方を検出可能です。

炎光光度検出器(Flame Photometric Detector;FPD)

燃焼により元素から発生する固有の波長の光が光電子増倍管により増幅されその強さが電気信号に変換されることで各成分を検出します。硫黄化合物、リン化合物、有機スズ化合物が検出対象となります。

化学発光硫黄検出器(Sulfur Chemiluminescence Detector;SCD)

硫黄化合物から変換された化学種(主にSO)がオゾンにより励起され、その後基底状態に戻る際に生じる光を光電子増倍管によって測定することにより、硫黄成分の検出を行うものです。

窒素リン検出器(Nitrogen Phosphorus Detector;NPD)

有機窒素化合物の測定に適した検出器です。水素炎中にはルビジウム塩があり、これにリンや窒素を含む化合物が入るとイオン化しCN-やPO-が生成され、これらのイオンを検出します。

電子捕獲検出器(Electron Capture Detector;ECD)

有機ハロゲン化合物、有機金属化合物、ニトロ化合物のような新電子性の高い化合物の選択的検出に用いられます。コレクタに捕集されるイオン電流を一定にするための電圧値の変化を読み取ることで成分を検出します。

ガスクロマトグラフ質量分析計

ガスクロマトグラフ質量分析計は、ガスクロマトグラフと質量分析装置をインターフェースで介して結合した装置です。 まず、複数の成分を含む試料はまずガスクロマトグラフで単一成分に分離され、次に質量分析装置で個々の成分のMSスペクトルを測定することで成分の定性を行い、イオンのスペクトル強度から定量を行うものです。

ガスクロマトグラフ質量分析計は、各種油の組成分析や、有機溶剤の定性分析、各種材料から発生するガスや熱分解発生ガス種の定性・定量分析、大気中、水中などのVOC (揮発性有機化合物) 分析などに適しています。

ガイガーカウンター

ガイガーカウンターとは

ガイガーカウンタ

ガイガーカウンターとは、物質の表面や空間に、どの程度の放射線が存在するのかを測定するための放射線測定器の1つです。

ガイガーとミュラーが作ったので、ガイガー=ミュラー計数管、GM計数管とも呼ばれています。ガイガーカウンターはサーベイメーターの1種であり、GM管と呼ばれる金属製の、ガスが封入された筒を持つものが、ガイガーカウンターと呼びます。

構造がシンプルなため、比較的低価格で入手可能です。電子力発電施設や警察・病院などの公共施設などから個人向けまで、幅広く利用されています。

ガイガーカウンターの使用用途

ガイガーカウンターは、空間や物質の放射線量の測定に使われています。放射線は、医療や工業分野だけではなく、農業分野でも使用されています。

放射線量の簡易的な測定ができるため、食品表面の汚染チェックや、土壌・水・空間線量など多岐にわたるサンプルの測定が可能です。ガイガーカウンターはとても簡便な装置ですが、放射線測定において万能ではないため、測定したい対象をよく理解し、正しく測定することが必要です。

ガイガーカウンターの原理

ガイガーカウンターはGM管と呼ばれる円筒状の電極の中に、アルゴンヘリウム等の不活性ガスが封入されており、この中を放射線が通過した際に発生する放電 (パルス) を検知することで放射線量を測定します。

ガイガーカウンターの測定結果は、マイクロシーベルト毎時 (μSv/h) という単位で表示されます。マイクロシーベルト毎時とは、ある場所に1時間いた場合に、受ける放射線量のこちです。そもそも放射線とは、放射性物質が崩壊する際に生じる電磁波や粒子線のことです。一部の放射線は、人体を貫くことができます。

特に透過力が高いγ線の個数が多く、そのエネルギーが高いと人体に影響を及ぼします。この影響を表す単位がシーベルト (Sv) です。シーベルトは、人体に吸収されたγ線の個数×エネルギーと定義されています。ガイガーカウンターが計測するのは、機器の内部に存在する放射線の個数です。計測した放射線の単位時間あたりのカウント数 (cpm: カウントパーミニッツ) にある定数を掛け合わせて、マイクロシーベルト毎時に換算しています。

ガイガーカウンターの種類

ガイガーカウンターには大きく2種類に分けられます。

1. 筒状の容器に計数ガスが挿入されたタイプ

ガラスや金属でできた筒状の容器に計数ガスが封入されたタイプです。このタイプのガイガーカウンターは、γ線の放射線量の計測に用いられます。

2. マイカ窓があるタイプ

ガイガーミュラー計数管の一端が薄い膜でできており、放射線が境界面に達するマイカ窓と呼ばれる雲母という鉱石でできた窓があるタイプです。マイカ窓から入ってきたβ線の数を計測するものであり、放射性物質による汚染の調査に使用されます。

 

ガイガーカウンターは正しくはガイガーミュラー計数管を使った放射線測定器のことですが、シンチレーション式、半導体式と呼ばれる、測定原理が異なる放射線測定器も、ガイガーカウンターと呼ばれることがあります。

ガイガーカウンターの特徴

ガイガーカウンターは構造がシンプルで扱いやすい計測器ですが、測定結果の扱いには注意が必要です。ガイガーカウンターの測定結果は、ばらつきが大きいことを理解しておくことが大切です。

放射線物質から放射線はランダムに発せられているため、測定結果にはばらつきがあります。放射線がランダムに発せらていることから、同じ場所でもガイガーカウンターの向きを変えるだけでも、測定結果は変化します。ガイガーカウンターで放射線量を測定する際には、ガイガーカウンターの向きを決めて複数回測定を繰り返した上で、平均値で判断するといった読み取り方をすることが重要です。

また、ガイガーカウンターに放射線物質が付着してしまうと、正しい結果を得ることができません。ガイガーカウンターは汚さないように扱うことが大切です。

参考文献
https://www.irm.or.jp/answer.html
https://imidas.jp/jijikaitai/K-40-075-12-05-G435
https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK02015_S1A500C1000000/

オートサンプラ

オートサンプラとは

オートサンプラ

オートサンプラ (英: Auto Sampler) とは、自動サンプル調整装置のことです。

分析装置を使用して何らかの分析を行う場合には、手作業で試料導入を行う場合が一般的です。オートサンプラを使用することで試料を自動的に供給し分析することが可能です。

基本的には元素分析装置やクロマトグラフィーなどの分析装置と組み合わせて使用します。固体試料用や液体試料用など分析装置の導入系に合わせて、様々な種類のオートサンプラが開発されています。

オートサンプラの使用用途

オートサンプラは、様々な産業分野で使用されています。クロマトグラフィーや環境分析、医薬・食品分野などが代表的です。

液体クロマトグラフィー (LC) やガスクロマトグラフィー (GC) などの分析において、試料を自動的に注入するために使用されます。オートサンプラを使用することで、手動でサンプルを注入するよりも正確かつ迅速に分析を行うことが可能です。

環境分析では水質や大気中の汚染物質の濃度を測定するために使用されます。一定の間隔で連続測定が可能なため、プロセス系の連続制御プラントでは必須の機器となっています。

食品工業や医薬分野においても広く使用されています。医療分野では血液や尿の検査などに使用し、多くのサンプルを効率的に処理しています。薬品分野などでは原料や製品の成分分析に使用され、高精度多量分析の手段として重宝されています。

オートサンプラの原理

オートサンプラは種類や使用場面に応じて多種多様な製品が存在しており、それぞれ原理が異なります。

オートサンプラで分析する際は、まずは試料の準備をします。投入するサンプルは事前に試料皿やマイクロプレートなどの試料容器に入れておき、サンプル量や濃度に応じて注入量や注入回数を設定します。サンプル準備も自動で実施するオートサンプラも多く設計されます。

試料の準備が終わったら、試料容器内のサンプルをオートサンプラにセットして自動的に供給します。オートサンプラーによっては試料を自動的に混ぜたり、温度を制御したりする機能も備えている場合があります。

試料が供給されると、分析装置によって自動的に分析が実施されます。分析結果はオートサンプラーによってデータ処理され、PCやデータ収集装置に送信されたりします。

オートサンプラの種類

オートサンプラーには使用される分析装置やサンプルの種類によってさまざまな種類があります。以下はオートサンプラの種類の一部です。

1. ランダムアクセス型

様々な種類の試料をランダムに供給することができるタイプのオートサンプラーです。大量の試料を処理するために使用され、高い効率で処理することができます。分析の多様性が高い点が特徴です。

2. フロントアクセス型

フロントアクセス型は試料をフロントパネルから手動で投入するオートサンプラーです。試料が自動供給ではないため、サンプルセットと取り出しの手間が必要です。ただし、機器の取り扱いが簡単で、手動測定よりもサンプルセットが容易です。

フロントアクセス型は手動セットが必要なため、少量のサンプルを処理するために使用されます。高価な試薬を使用する場合や、微量サンプルの分析に適しています。その特性から、研究開発分野で使用される製品です。

3. キャリーフィル型

自動的にサンプルを吸引して試料を供給するタイプのオートサンプラーです。液体クロマトグラフィーなどで使用され、吸引部に適したサンプルがある場合に使用されます。

色素分析や蛍光スペクトル分析においては、正確な試料供給を実現するために使用されます。また、細胞培養分析においても試料供給の自動化を実現するために使用されます。

4. マイクロプレート

マイクロプレートを使用して、一度に複数のサンプルを処理するオートサンプラーです。高い処理速度が必要な分析に使用されます。

参考文献
https://www.chem-agilent.com/pdf/low_5991-1287JAJP.pdf
https://sub.osaka-soda.co.jp/HPLC/nanospace/nan_0004.html

オリフィス

オリフィスとはオリフィス

オリフィス

図1. オリフィス

オリフィスは、孔 (穴) 加工が施された薄い金属板です。

英語ではOrificeと表記され、配管内などに設置することで流体の流量や圧力を制御します。一般的オリフィスは「オリフィスプレート」とも呼ばれています。

オリフィスの使用用途

オリフィスは、産業用、工業用の配管においてさまざまな流量および圧力制御も場面で使用されています。

差圧式流量計

図2. 差圧式流量計

使用例として、「差圧式流量計」として配管中の流体の流量を計測するために、オリフィスが使用されています。オリフィス前後のフランジから流体を取り出し、その差圧を流量に換算し指示計に表示します。

オリフィスの実際の使用例

図3. オリフィスの実際の使用例

このようにオリフィスを流量測定に使用する場合の規定は、JIS Z 8762-2 円形管路の絞り機構による流量測定方法 第2部: オリフィス板を参照してください。

ショックアブソーバでは、オリフィスの高い圧力損失を利用しています。オリフィス孔の穴径を小さくすると、流体の圧力損失を高くなりショックアブソーバの減衰力は大きくなります。逆に穴径を大きくすると、減衰力が小さくなります。

オリフィスの原理

オリフィス下流の流量 (Q) を求める式

図4. オリフィス下流の流量 (Q) の計算式

オリフィスの原理を簡単に説明すると、オリフィスを設置する配管内径より小さいオリフィス孔の内径が小さいため、ベルヌーイの定理に基づき、流体の圧力はオリフィスの上流側に比べ下流側は低くなります。

※ ベルヌーイの定理は、流体の流れにおけるエネルギー保存則です。

オリフィスの小さな孔を流体が通過すると、配管のオリフィス前後では圧力差が発生します。これは配管中では圧力エネルギー、速度エネルギー、位置エネルギーは常に一定であるというベルヌーイの法則によります。

オリフィスを通過した直後の流体は流速が速くなります、速度エネルギーは増加します。そして、位置エネルギーは同じだとすると速度エネルギーが増加した分だけ、圧力エネルギーは減少します。この違いをオリフィス前後で圧力差として測定することで、流体の流量を算出することができます。

また、流量や圧力を調整する目的でオリフィスを使用する場合に、図7のような式に基づきオリフィス下流の流量を求めることができます。

オリフィスの種類

オリフィスは、大きく分けて「同心円オリフィス」「偏心オリフィス」「四部円オリフィス」「制限オリフィス」の4種類があります。

1. 同心円オリフィス

一般的な差圧式流量計などの絞り流量計に使用されています。

2. 四分円オリフィス

配管内の流量が少なくレイノルズ数が小さい場合に使用します。レイノルズ数とは、慣性力と粘性力の比の無次元数です。

レイノルズ数の式

図5. レイノルズ数 (Re) の計算式

3. 偏心オリフィス

流体中にスラリー (固体の粒子と液体が混ざり合った流体) などが含まれている場合に使用します。配管下側にオリフィス孔を設置することで、スラリーが流れやすくなります。

4. 欠円オリフィス

偏心オリフィスと同様の使用方法です。

オリフィスの種類

図6. オリフィスの種類

配管にオリフィスを設置する場合は、フランジでオリフィスを挟み込んで組立品として使用します。ショックアブソーバのように、あらかじめ製品に組み込まれて使用されていることもあります。

オリフィスおよびフランジの組立品

図7. オリフィスおよびフランジの組立品

オゾン脱臭装置

オゾン脱臭装置とは

オゾン脱臭装置とは、オゾンの脱臭作用を利用して、空間のにおいを除去するための装置です。

オゾンは酸化力が非常に強く、菌やにおいのもととなる物質が近くに存在すると、すぐに酸化させて分解します。空気をきれいにする機器には空気清浄機もありますが、作用機構が異なります。

空気清浄機はフィルターや活性炭によって空気中の微粒子やにおいを除去しているため、近くに浮遊しているものにしか効果を発揮しません。一方でオゾン脱臭装置は、においの元から分解するだけでなく、机やドアなど付着している菌やウイルスにも効果を発揮します。

オゾン脱臭装置の使用用途

オゾン脱臭装置は、病院や高齢者施設、飲食店、工場などあらゆる場面で使われています。脱臭目的だけでなく、菌やウイルスの除去用途にも用いられるのが特徴です。

オゾン脱臭装置の原理

オゾン脱臭装置はオゾン特有の強い酸化力を利用して、においや菌、ウイルスを分解しています。オゾンは酸素原子3つから構成されており、非常に不安定な状態を維持している物質です。

物質は常に安定状態へ移行しようとする特性があるため、オゾンの酸素原子1つを放出し、酸素になろうとします。しかし、酸素原子を渡す物質がいなければ、安定状態へ移行することはできません。実は、この酸素を渡す物質が菌やにおいの元となる物質です。

これらの物質が酸素原子を受け取り、オゾンは酸素分子へと変化します。この際に、菌やにおいの元となる物質は酸化され、分解します。高濃度のオゾンは人体に有害ですが、適切な濃度にコントロールすれば、極めて安全に運用できます。ただし、使用する用途によって最適なオゾン脱臭装置が異なるため、スペック情報は必ず確認しなければなりません。

なお、オゾンを発生させる方法には、無声放電方式、電気分解方式、紫外線ランプ方式などがありますが、工業用途においては、無声放電式が広く用いられています。

オゾン脱臭装置の構造

オゾン脱臭装置の多くは無声放電式と呼ばれるオゾン発生原理を利用しており、交流高圧電圧が付加される電極と、その間にガラス製の誘電体が組み合わされた構造をしています。

無声放電 (英: Silent discharge) とは、平行に並べた電極の間に誘電体 (英: dielectric) を設けて、電極の間に交流高電圧を印加することによって生じる放電現象です。無声放電が起こると、気体中には電子が放出され、放出された電子が酸素分子 (O2) に衝突すると、酸素原子 (2O) に解離します。解離した酸素原子1つ (O) と酸素分子 (O2) 1つが結びつくと、オゾン (O3) が生成されます。この原理を表す化学式は以下の2式です。

  • O2 + e → 2O + e
  • O + O2 + M → O3 + M

オゾン脱臭装置の種類

オゾン脱臭装置には、車内や個室の脱臭をするための小型のタイプ、特定の部屋の脱臭をするための中型のタイプ、特定の時間に利用できるポータブルタイプ、建物全体など複数の部屋を同時に脱臭するセントラルタイプの装置が用意されています。

オゾン脱臭装置のその他情報

使用上の注意点

使用方法を誤ると思わぬトラブルにつながるため、以下の2点を確認する必要があります。

1. 高濃度のオゾンによって腐食のリスクがある
オゾンは強い酸化能力を持っているため、高濃度のオゾン環境下では、ゴムや樹脂などを腐食させる恐れがあります。ただし、有人下での使用を想定したオゾン脱臭装置は、物質を腐食させるほど高濃度にならないため、腐食のリスクを懸念する必要はありません。

2. オゾン特有のにおいがある
オゾン自体に特有のにおいがあるため、使用する環境に応じて換気をする必要があります。無人下での使用を想定したオゾン装置は、高濃度のオゾンを発生させるため、人体に有害です。そのため、使用用途により適切なオゾン装置を選定しなければなりません。

参考文献
https://www.alsok.co.jp/corporate/recommend/ozone-sanitization.html
https://www.mitsubishielectric.co.jp/society/ozonizer/technology/index.html
https://www.sat.co.jp/product/ozone/sat-gdc.php#tab-point

オイルレスブッシュ

オイルレスブッシュとはオイルレスブッシュ

オイルレスブッシュとは、産業用機械などの回転軸を支えるすべり軸受 (ブッシュ) の一種で、特に無給油でも使用できるものです。

軸受には大きく分けて、ボールベアリングなどの転がり軸受とブッシュなどのすべり軸受がありますが、通常はどちらも給油やグリス潤滑などが必要です。一方で、オイルレスブッシュはその材質に潤滑効果が含まれているため、無給油でも使用できます。

なお、一部ではオイルレスブッシュではなく、オイルレスベアリングと呼ばれる場合もあります。

オイルレスブッシュの使用用途

オイルレスブッシュは、さまざまな機械において、軸受部品として使用されています。特に給油状態で使用できない機械では、必要不可欠な部品です。例えば食品機械において、食品と直接接する箇所などが挙げられます。

その他の産業機械においても、給油の難しい箇所では欠かせません。自動車、鉄道車両、建設機械、印刷機械、住宅機器関連、発電所設備など、オイルレスブッシュの使用用途は多岐にわたっています。

オイルレスブッシュを使用する事でオイルの交換に要する費用や、オイルのリサイクル費用を低減できます。同様に給油に関する部品の設計が不要となるため、設計にかかる時間の削減、および機械自体をシンプルにするために使用されます。

オイルレスブッシュの原理

オイルレスブッシュが無給油で使用できるのは、その構成材料自体に潤滑効果があるからです。材料自体に潤滑効果を得るためには、2つの方法があります。材料に固体潤滑剤を配合するか、または摩擦係数の低いエンジニアリングプラスチックを用いる方法のいずれかです。

1. 固体潤滑剤を配合する方法

固体潤滑剤の配合は、例えば金属に潤滑性のある二硫化モリブデン、金属石ケン、軟質金属などを配合することにより、通常温金属よりも、はるかに摩擦係数の小さい金属を作る事ができます。このような潤滑性のある金属を配合した材料を加工することによって、オイルレスブッシュが製造されます。

2. エンジニアリングプラスチックを用いる方法

エンジニアリングプラスチックと呼ばれるプラスチックで、オイルレスブッシュを製造することも可能です。エンジニアリングプラスチックの中でも良く使用されるのは、摩擦係数が低く、強度とのバランスが取れ、食品の中に万が一混入しても人体に大きな問題が発生しない材料です。

特にテフロン (PTFE ) や、ポリアセタール樹脂のジュラコンやデルリン、非常に高価ですがポリエーテル・エーテル・ケトン (PEEK) という材料が用いられています。

オイルレスブッシュの種類

オイルレスブッシュの種類は、材質によって樹脂系、複層系、金属系の3つに分類することができます。

1. 樹脂系

樹脂系のオイルレスブッシュには、一般的にポリアセタールや四フッ化エチレン、ポリアミドなどの材料に充填剤や潤滑油を添加したものが使用されます。樹脂系は金属系に比べ強度は劣りますが、低摩擦係数、軽量、低コストなどのメリットがあり、アルミなどの柔らかい材料の支持にも使用されます。

2. 複層系

複層系のオイルレスブッシュには、バックメタル、焼結層、表面層を持ち、表面層には樹脂系材料や固体潤滑材料を使用したタイプがあります。薄肉で機械的強度に優れているので、コンパクトな設計が可能です。オイルレスブッシュなので無潤滑で使用できますが、潤滑油を併用することで、更に優れた特性を発揮します。

3. 金属系

金属系のオイルレスブッシュでは、銅合金やアルミ合金に固体潤滑材を埋め込んだものが一般的です。高負荷軸受け部などに使用され、高強度、長寿命な軸受け材料とされています。固体潤滑材は、グラファイトが多く使用されています。

他にも焼結金属内に固体潤滑材を分散させたタイプがあり、特に高温環境で多く使用されています。

オイルレスブッシュのその他情報

1. オイルレスブッシュの寿命

オイルレスブッシュの寿命とは、摺動によってブッシュが摩耗していき、軸とブッシュの隙間が設計隙間より大きくなり、摺動部にガタができるまでの時間を指します。オイルレスブッシュの寿命に明確な値はありませんが、理論式より摩耗量を求め、その摩耗量が設計隙間より大きくなるまでの時間を寿命とする方法があります。

推定摩耗量は、比摩耗量 (mm/ (N/mm^2・m/s・hr) )設計面圧 (N/mm^2)設計速度 (m/s)摩擦時間 (hr) を乗じたもので、摩耗量の目安として計算します。比摩耗量は実験データから得られますが一般的には無潤滑状態で、0.0006~0.003となっています。

オイルレスブッシュ設計時には摩擦時間を必要寿命とし、推定摩耗量に許容軸受け隙間、設計速度に使用速度を設定して設計面圧を計算します。設計面圧が求まったら、その面圧以下になるように、軸径やブッシュ長さを選択します。

参考文献
https://www.oiles.co.jp/bearing/oiles_bearing/about.html
https://www.oiles.co.jp/bearing/oiles_bearing/list/
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/g0059.html