金属皮膜抵抗器とは
金属皮膜抵抗器とは、抵抗体に金属を使用した固定抵抗器のことです。
固定抵抗器の1種であるため、金属皮膜固定抵抗器と呼ばれることもあります。固定抵抗器にはカーボン抵抗器と金属皮膜抵抗器の2種類が一般的に広く使用されています。
カーボン抵抗器は抵抗体がカーボンであり、金属皮膜抵抗器は金属を抵抗体としています。カーボン抵抗器よりも抵抗値精度が高いですが、その分高価になります。
金属皮膜抵抗器の使用用途
金属皮膜固定抵抗器は、抵抗素子に金属皮膜を用いた固定抵抗器です。抵抗値許容差や抵抗温度係数が小さく、高精度かつ安定性に優れた抵抗器です。また、電流雑音を抑えられるといった利点があります。
これらの特性を活かし、微少な信号を扱う機器に広く使用されます。以下は、金属皮膜抵抗器の使用例です。
- 産業用機器分野における通信・計測機器
- コンピュータならびにその周辺器具
- AV機器
発光素子などの電流制限抵抗やアンプのバイアス抵抗などにはあまり抵抗値精度を求められないため、カーボン抵抗器が採用されます。一方、温度ドリフトが問題となる直流増幅回路や厳密なカットオフ周波数が求められるフィルター回路などでは、金属皮膜抵抗器を採用します。
金属皮膜抵抗器の原理
金属皮膜抵抗器の抵抗体は、主に金属で構成されます。材質としては、ニッケルクロムなどが使用される場合が一般的です。カーボン抵抗器と比較して精度が高いなどのメリットがありますが、価格は高価です。
金属皮膜抵抗器には厚膜型と薄膜型の2種類があります。薄膜型は、厚膜型をより高精度(±0.05%程度)にした製品です。
厚膜型は金属系のペーストを加熱焼成して製作され、薄膜型は金属を蒸着・コーティングして製作されます。一般的な金属の温度特性は正特性であるのに対し、金属皮膜抵抗器は合金の比率を変えることによって温度係数を小さくしています。したがって、その比率によって正特性か負特性のどちらになるのかが決まります。
金属皮膜抵抗器の選び方
金属皮膜抵抗器は抵抗値等を基に選定します。抵抗器には、抵抗値を文字印字されている製品とカラーコードで表示されている製品があります。1,005サイズ以下の抵抗器では読み取りが困難なため、カラーコード表示を採用しています。
カラーコード表示の場合、抵抗値の「上2桁」または「上3桁」を、黒を0、灰色を9とした計10色で表します。これを読み取ることにより抵抗体の抵抗値を把握できます。同様に、乗数や許容差、温度係数などもカラーコード体系で分かる仕組みです。
抵抗値の許容差は、カーボン抵抗器で±5%が一般的ですが、金属皮膜抵抗器は±2%、±1%、±0.5%と誤差の少ない製品を選定可能です。抵抗値の温度計数はカーボン抵抗器が-200~-800ppm/℃の負の温度系数を示します。金属皮膜抵抗器は比較的温度変化が少なく、±200ppm/℃、±100ppm/℃、±50ppm/℃の中から選択可能です。
金属皮膜抵抗器のその他情報
金属皮膜固定抵抗器のカラー表示
リード線タイプもしくはメルフタイプの抵抗器はカラーコードで抵抗値と誤差、及び温度係数を表示します。カラーコードが示す数値については、JIS C 5062に規定されています。
抵抗器に表示されるバンドは3本~6本の4通りありますが、4バンドと5バンドが一般的です。左から2本または3本が抵抗値を表し、そのあとの1本は乗数を表しています。
カーボン抵抗器は通常4バンド表示が一般的です。左から2本で抵抗値を表示し、3本目が乗数で桁を表示します。4本目は誤差を示しますが一般的には金色 (5%) が使用されます。
一方、金属皮膜抵抗器は高精度であるために有効数字が3桁となります。したがって、左から3本目までが抵抗値を表し、4本目が乗数を表します。5本目は誤差を示しますが、緑 (0.5%) 、茶 (1%) 、赤 (2%) も使用されます。
参考文献
https://www.marutsu.co.jp/pc/static/large_order/mame/164
https://detail-infomation.com/resistor-type/
http://www.op316.com/tubes/tips/data7.htm
https://www.koaglobal.com/product/library/resistor/basic
https://detail-infomation.com/resistor-color-code/