チップ抵抗器

チップ抵抗器とは

チップ抵抗器

チップ抵抗器とは、面実装抵抗器とも呼ばれる直方体の抵抗器で、小さなセラミック基板上に金属皮膜を抵抗体として形成したものです。

一般にチップ部品は、小型の表面実装型受動部品全般を指します。コンデンサー、抵抗器、ヒューズ、コイル、トランス等でチップ部品が作られていますが、全て固定電極を備えていることが特徴です。

旧来の抵抗器では、プリント基板の穴に挿入するために柔軟性のあるリード線が電極として扱われてきましたが、チップ抵抗器は固定電極をプリント基板表面に直接はんだ付けするものです。

チップ抵抗器の使用用途

抵抗器はコンデンサやコイルと共に電子回路において最も基本的な受動素子です。チップ抵抗器は、電流の制限や電圧の検出、バイアス電圧の設定など様々な役割を担い、あらゆる電子機器で使われています。

特に近年は、携帯電話やスマートフォンを中心とする移動体通信分野において、急速に需要が拡大しています。チップ抵抗器は、目的や用途に合わせて様々な製品が販売されているため、要求性能応じて抵抗器の性能や特徴を見極めて使用する必要があります。 

チップ抵抗器の原理

チップ抵抗器は、セラミック基板上に形成する抵抗体により、次の3種類に分類されます。

1. 厚膜チップ抵抗器

厚膜チップ抵抗は、メタル・グレーズを抵抗体として採用し、数μm程度の厚さの被膜を形成します。後述する薄膜チップ抵抗器より厚いことから、厚膜チップ抵抗器と呼ばれています。

メタル・グレーズ膜を形成した後に、抵抗体の一部をトリミングすることで、抵抗値の調整が可能です。スクリーン印刷法を用いてメタル・グレーズ膜を一気にセラミック基板上に形成できるので、比較的安価かつ汎用的な抵抗器です。定数やサイズは様々なものがあります。

2. 薄膜チップ抵抗器

構造は厚膜チップ抵抗とほぼ同じですが、抵抗体は金属合金で、真空蒸着法を用いてセラミック基板上に抵抗体を形成します。この抵抗体の厚さは、数nm程度と極めて薄いものです。そこから薄膜チップ抵抗器と呼ばれます。

薄膜チップ抵抗は公称抵抗値に対する誤差が小さく (±1%以下) 、その上温度係数も小さいことから正確な抵抗値が必要な場合に採用されます。さらに、抵抗値の経年変化が少ないことも特徴の一つです。

3. 金属板チップ抵抗器

金属板チップ抵抗は、金属板を抵抗体として用いたもので、小さな抵抗値の抵抗器を製造できます。電流検出用として、1mΩ以下の抵抗器も販売されています。また、放熱性に優れていて熱容量が大きいことから、比較的大きな電流を流すことも可能です。

一方、高い抵抗値は作りにくく、高価なことが短所として挙げられます。なお、抵抗器のベースとなっているセラミック基板は、主に酸化物系セラミックスであるアルミナで形成されており、強度や熱伝導性、絶縁性に優れています。

チップ抵抗器の種類

市場のニーズによりチップ抵抗器においても、以下に記す高機能商品が供給されています。

1. 耐硫のチップ抵抗器

一般的なチップ抵抗器の内部電極には銀が使用されており、硫黄が含まれる雰囲気中に放置されると、その銀が硫黄と反応して絶縁体である硫化銀が形成され、その成長によって内部電極が導通不良となる可能性が高いです。

そのため、活火山の近くなど大気中に硫黄成分が含まれる環境や硫黄を含む材料の近傍で使用する場合は、硫化対策を施した抵抗器を使用する必要があります。

具体的には、内部電極を銀ではなく、硫黄と反応しない材料に変更したものが開発されています。

2. 耐サージ・耐パルスのチップ抵抗器

スイッチング回路や静電気放電が起こりやすい回路など、抵抗器にサージ電圧やパルスが頻繁に印加される場合は、瞬間的に大きな電力が加わっても損傷しにくい抵抗器を使用する必要があります。そのため、耐サージ・耐パルスのチップ抵抗器も販売されています。

3. 測定精度の高いチップ抵抗器

計測器や制御機器などの精密機器では、抵抗値誤差 (抵抗値許容差) や温度による抵抗値変化 (抵抗値の温度係数) が小さい高精度な抵抗器が求められます。

4. 電流検出用のチップ抵抗器

電流検出用途の抵抗器は小さな抵抗値で、過電流やバッテリー残量を検知するための電流検出として、主に金属板チップ抵抗器が使用されます。

また、回路内の消費電力を抑えるためより低抵抗のものや、過酷な温度環境でも優れた抵抗温度係数を確保する高精度な抵抗器に対するニーズも高くなっています。

5. 長辺電極タイプのチップ抵抗器

チップ抵抗器はもともと短辺に電極がレイアウトされていました。抵抗体自体は放熱性が低いので、電極を通じた放熱がチップ抵抗器の定格電力を大きく左右します。

そこで、チップ抵抗器の長辺側に電極を設けることで電極の面積を増加させ、放熱性を向上させた製品がいくつかの抵抗器メーカーから販売されています。このようなチップ抵抗器は「長辺電極タイプ」もしくは「長辺チップ抵抗器」などと呼ばれています。

また、区別するために従来のチップ抵抗器を「短辺電極タイプ」と呼ぶこともあります。

チップ抵抗器のその他情報

チップ抵抗器のサイズ

チップ抵抗器の代表的なサイズとして、以下のものが挙げられます。

  • 6.mm×3.mm
  • 5.0mm×2.5mm
  • 4.5mm×3.2mm
  • 3.2mm×2.5mm
  • 3.2mm×1.6mm
  • 2.0mm×1.25mm
  • 1.6mm×0.8mm
  • 1.0 mm×0.5mm
  • 0.6mm×0.3mm
  • 0.4mm×0.2mm
  • 0.3mm×0.15mm

ただし、定格電圧や定格電力はサイズによって制約があり、大きいほど有利なので、自由にサイズを決められません。一方、比較的低い電圧で動作する回路では小型の抵抗器を選択することが可能ですが、対応できる実装装置 (マウンターなど) が制約されることがあります。

チップ抵抗器で最も出荷数量の多いサイズは「1005:1.0mm×0.5mm)」サイズであり、前の主役である「1608:1.6mm×0.8mm」サイズは数量を減らしつつあります。一方で今後の主流である「0603:0.6mm×0.3mm」サイズが数量を増やしています。

さらに、小さなチップ抵抗器として2011年10月には「03015:0.3mm×0.15mm」サイズが製品化され、「0201:0.2mm×0.125mm」サイズの開発が抵抗器メーカー各社で進められています。

参考文献
https://jp.rs-online.com/web/c/passive-components/fixed-resistors/surface-mount-fixed-resistors/
https://detail-infomation.com/chip-resistor-structure/
https://industrial.panasonic.com/cdbs/www-data/pdf/RDA0000/DMA0000COL10.pdf
https://eetimes.jp/ee/articles/2002/12/news008_2.html
https://www.rohm.co.jp/products/resistors

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