sus630

sus630とは

sus630は析出硬化系ステンレスと言う、より限られた環境で使用される系統のステンレスに属する金属です。

JIS規格で規定されており、硬さ・粘り・引張強さ・耐熱性・耐食性が高く、優れた特性を持っています。

構成成分はクロム15.00~17.50%、ニッケル3.00~5.00%、銅3.00~5.00%、ニオブ0.15~0.45%で、他のステンレスと異なり銅とニオブを含んでいることが特徴です。

クロムとニッケルの含有量をとって、17-4PHと呼ばれる場合もあります。

PHとは英語でPrecipitation Hardening、日本語で析出硬化を表します。

析出硬化とは金属間化合物の析出を利用して、高い強度と硬度を持たせる処理を指します。

sus630は銅の添加によって析出硬化を起こしており、ニオブが耐食性と高温強度を高める役割を果たしています。

JIS規格では熱処理の温度の違いによって、H900・H1025・H1075・H1150の4段階に規定されています。

sus630の使用用途

sus630は優れた強度・耐食性を活かして、自動車や航空機、電子機器などの精密機械の部品に多く使われています。

具体的には小型ロケットの推進部部品や航空機エンジン部品、機械のシャフト類、タービン部品、スクリュー、切削部品などが挙げられます。

医療、特に外科用部品の材料としても、sus630は重要な役割を果たしています。

実験研究用解剖ハサミ、外科ハサミ、手術支援ロボットの鉗子関連部品など、部品を小さくしつつ強度も欲しい場合などに採用されています。

深海探査や海洋研究、地中探査で使う機械の部品など、高圧力に耐えられると同時に耐食性が必要な場合にも使用されている金属です。

建築分野でも活躍しており、高層建築や橋梁に用いられる高い強度・引張強さ・防錆性を持った高力ボルトの素材として用途が増えています。

特殊な環境下で多く使われる金属ですが、ゴルフクラブやスピアーフィッシングで使用する手銛の銛先など、身近でも活用されています。

scm440

scm440とは

scm440は、クロム鋼にモリブデンを加えた合金「クロムモリブデン鋼」、通称「クロモリ鋼」に属する金属です。

構成成分は炭素0.38~0.43%、マンガン0.60~0.90%、クロム0.90~1.20%、モリブデン0.15~0.30%を含み、引張強度・靭性・耐摩耗性・耐疲労性に優れた特性を持っています。

クロモリ鋼は機械構造部品に使用される「構造用合金鋼」の一種でもあり、scm440はその中では硬めの材料で、強さと靭性を必要とする場面で選定されています。

硬い材料ではありますが適度な粘りもあり、sus304などのステンレスよりも切削性が良く加工がしやすい利点があります。

また、500℃前後の高温でも強度が低下しにくく、高温高圧にも耐え、焼き入れ・焼き戻しを施すことで硬度と強靭性を得られるため、熱処理をおこなうことが重要な金属と言えます。

鋼材としては高価な材料ですが、特殊な合金類よりも流通量が多く汎用性が高いため、幅広い分野で活用されています。 

scm440の使用用途

scm440は強靭で振動を吸収する特性があり、金属疲労が起きにくく適度な「しなり」具合も持っているため、自転車のフレームに使用されることが多い金属です。

高温に耐えフレーム成形しやすい点や、鋼の柔軟さを持ちながら錆びにくい点がメリットで、一般用自転車からロードバイクまで様々な製品に使用されています。

次に多い用途が機械部品としての使用です。

シャフト類(クランクシャフト・ハンマーシャフトなど)、加工専用機や旋盤などのスピンドル類、シリンダー、研削盤などのアーム軸といった部品に用いられています。

歯車にも使用されており、より強度が必要な場合にクロモリ鋼の中でも硬めのscm440が選定されています。

他にもグリップボルトや六角穴付き止めネジなどの、ボルト・ネジ・ナット類の素材にも使われます。

私たちの周りの身近な製品の例では包丁などの調理器具、車のタイヤ交換の際などに使用するインパクトレンチの、ソケットの素材としても使われている金属です。 

secc

seccとは

seccは、冷間圧延鋼板(spcc)に電気亜鉛メッキを施し防錆効果を持たせた鋼板で、JIS規格で定められた金属です。

正式名は「電気亜鉛メッキ鋼板」と言い、英語の「Steel Electrolytic Cold Commercial」の頭文字を取って、seccと呼ばれています。

各メーカーから、ボンデ鋼・シルバートップ・ジンコートなどの製品名で製造・販売がされており、流通量の多い材料でもあります。亜鉛のメッキは鋼板と相性が良く、空気中の酸素と結びつき酸化被膜を形成するため、錆びや腐食を軽減する特性を持ちます。

メッキの粗さが均一で光沢があるので、素材そのものの色を生かして使われることもありますが、塗料のなじみが良く塗装することも多い材料です。亜鉛メッキには、メッキ方法が異なる「溶融亜鉛メッキ(sgcc)」という種類もあります。

sgccに比べるとseccはメッキが薄く耐食性で劣るため、水がかかる場所や屋外での使用は避けた方が良いでしょう。

seccの使用用途

seccは室内で使用される家電製品や、電気機器の部品・部材として幅広く使われています。メッキが薄いため室内での使用が望ましい金属で、雨ざらしになる屋外での使用や過酷な環境には向きません。

私たちの周りにある身近な製品では、デスクトップパソコンの背面パネル、照明のブラケットなど電気製品に使われています。オフィスにあるコピー機の内部部品などにも活用され、室内の使用では塗装せずそのまま使われる場合が多いです。

その他には、塗装を施してドアやサッシ、シャッターなど建築関連の部材としての用途や、自動車や輸送機器などの内装・足回り・外装・ボディの補修部材としての用途も多い材料です。

公共の場ではビル・駅などの壁や天井、エレベーター・エスカレーターの外装、ATMの本体カバーなどにも使用されています。まれな用途として耐候性のある塗料で塗装を施し、建物の屋根材として利用しているケースもあります。

seccは私たちの生活の中で目にする機会の多い、身近な金属と言えます。 

sus430

SUS430とは

SUS430とは、鉄やクロムが主成分のフェライト系に分類されるステンレス鋼です。

ステンレス鋼は、鉄とクロムなどを主成分とする合金であり、鉄よりも耐食性や耐熱性に優れています。SUS430は、その中でも代表的なグレードの1つであり、クロムを16~18%含みます。

このクロムの含有量によって、SUS430はさまざまな特性を持っています。

SUS430の使用用途

SUS430はフェライト系ステンレスの中では最も一般的な材料であり、家庭用品から工業部品まで幅広く使用されています。比較的コストが安い、加工性が良いなどの理由から、製品自体を形作る素材として使われます。

身近な使用例は、家庭内の水回り製品や家電製品です。キッチンのシンク・混合栓・お湯を沸かす電動ポットの魔法瓶部分・洗濯機のドラムなどが挙げられます。また、やかん・鍋などの調理器具やスプーン、フォークなどの食器類、業務用冷蔵庫などの厨房用品にも使われており、最もよく目にするステンレスです。

その他の分野でもSUS430は幅広く活用されており、工業分野、建築の屋根材として建築分野でも使用されています。強い磁力を常に持つ性質から、磁力を使う製品でも採用されています。SUS304より安価である理由から、SUS304の代替として用いられることも多いステンレスです。

SUS430の性質

クロムを16~18%含み、コストが高いニッケルを含まないため安価です。400番台のステンレスの中では耐食性が高く、加工性に優れ、強い磁性がある性質を持ちます。一方で、屋外では腐食の可能性が高く、屋内での使用が推奨されています。そのため、屋外使用の製品では耐食性が高い他のステンレスを選定する場合があります。

身近なステンレス鋼であるSUS304と比べると、ニッケルを含まないため、コストが安くなる反面、耐食性は劣るのが欠点です。表面が滑らかなほど錆びにくくなるため、研磨やエンボス加工などの表面処理を行い、腐食を防いで用いられる場合もあります。

常温以下の低温で脆くなる低温脆性や、400~500℃の高温で脆くなる475℃脆性と呼ばれる性質が、オーステナイト系やマルテンサイト系ステンレスに比べて顕著であることが大きなデメリットです。延性・靭性が低下し衝撃に弱くなるため、高い荷重がかかる部分や、高温環境での長時間使用が想定される用途への使用は向いていません。

SUS430の種類

SUS430は、フェライト系ステンレスの中、クロム含量が16~18%程度であるステンレスの総称でもあります。SUS430のクロム含有量をそのままで、微量成分を追加して、フェライト系ステンレスの特徴である安価、加工性、溶接性を維持したまま、性質を改良したものが多くつくられています。

1. SUS430L

炭素量を減らしており、耐食性が向上されています。

2. SUS434

モリブデン (Mo) が1%添加されて耐食性を向上させています。

3. SUS430F

硫黄 (S) 含量が多く、被切削性が向上しています。

SUS430のその他情報

SUS430の製造方法

まず、鉄、クロムなどの原料を炉で溶かします。その後、溶かした原料から不純物を取り除くために精錬を行います。この工程では酸素を注入して炭素を取り除きます。

精錬が終わった溶鋼は、厚板、線材、棒材などの形状に押し出されて冷やされます。これが鋳造と呼ばれる工程です。鋳造されたステンレス鋼は、2つの回転する円柱の間で引き伸ばされ、薄く加工されます。

この過程を圧延と呼び、熱間圧延と冷間圧延の2つの方法があります。最初にスラブ (鋳造された鋼のブロック) を使用して熱間圧延が行われます。その後、スラブ表面の欠陥を研磨し、熱間圧延後に熱処理と酸洗が行われ、必要に応じて冷間圧延が行われます。最終的には研磨や検査などの工程を経て完成です。

sus316

SUS316とは

SUS316とは、鉄やクロムニッケルモリブデンを主成分とするオーステナイト系のステンレス鋼です。

非磁性のステンレス鋼で、構成成分はクロム16~18%、ニッケル10~14%、モリブデン2~3%で、耐熱温度は約800~900℃です。この合金組成により、SUS316は優れた耐食性と耐熱性を備えています。

SUS316の使用用途

SUS316は、海水や塩水などの塩化物環境にさらされる機器や部品に多く使われます。例えば、海洋構造物、船舶部品、化学プラント、医療器具、食品加工機械などがあります。また、高温や高圧の環境にも適しているため、原子力発電所や石油精製所などでも利用されます。タンカーなど船舶の部品としても有用です。

内陸であっても塩化物を使用する環境下では、配管などの素材としてSUS316が採用されています。寒冷地など道路に融雪剤をまく地域は、融雪剤に含まれる塩化ナトリウムによって、鉄を使用した配管では錆が発生してしまうためです。

また、レストランなどの飲食店の厨房で使用する業務用食品保管容器も、SUS316でつくられています。調味料に塩分が含まれている場合を想定し、腐食しにくい素材の容器を選定する必要があるため、錆びにくく丈夫であるSUS316が最適です。

このように、SUS316は耐食性が必要とされる場面で選定され、沿岸部だけではなく我々の生活の中でも活用される重要なステンレス鋼です。

SUS316の性質

ステンレス鋼は、構成する成分によって、金属組織の状態が異なり、フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト系、オーステナイト・フェイライト系、析出硬化系の5種類に大きく分けられます。その中でオーステナイト系ステンレスは、耐食性と延性に優れており、極低温でも脆化しにくいのが特徴です。

SUS316はオーステナイト系ステンレスで、その中でも、モリブデンを加えることで耐食性をさらに強化しています。ステンレスを錆びにくくさせる効果を持つ、クロムの酸化被膜修復作用をモリブデンが高めていることで、高い耐食性を実現しています。

ただし、流通量が少ないため汎用性に劣ること、モリブデンを含む分、高価なためコストがかかることがデメリットです。塩化物や薬品による腐食・孔食が、構造物や機器に重大な悪影響を及ぼす状況下で、高い耐食性を必要とする場合に限定しての使用が望ましいです。

SUS316の種類

SUS316には、通常のSUS316と炭素含有量が異なるSUS316Lが存在します。SUS316は炭素を0.08%以下に抑えていますが、SUS316Lはさらに炭素を0.03%以下に減らしたものです。

これにより、SUS316LはSUS316よりも耐食性が高くなります。特に、溶接部の耐食性が向上します。しかし、炭素を減らすと強度や硬度が低下するため、用途によってはSUS316の方が適している場合もあります。

SUS316のその他情報

SUS316の製造方法

最初に、鉄や他の原料を炉で溶かします。その後、溶けた原料から不純物を除去する精錬プロセスを行います。この工程では、炭素を取り除くために酸素を吹き込むことが行われます。

SUS316Lの場合は、SUS316よりも炭素の量が少ないため、炭素の少ない高純度の原料を用いるか、精錬の条件を厳しくすることが必要です。精錬を経た溶鋼は、炉から押し出されて冷やされ、厚板、線材、棒材など、加工メーカーによる加工前の形状になります。この過程を鋳造と呼びます。

鋳造されたステンレス鋼は、2つの回転する円柱の間で引き伸ばされ、薄く加工されます。これが圧延と呼ばれる工程です。熱間圧延と冷間圧延の2つの方法があります。まず、スラブ (鋳造された鋼のブロック) が使用され、熱間圧延が行われます。

スラブ表面の欠陥を研削した後、熱間圧延が行われた後に熱処理と酸洗が行われ、必要に応じて冷間圧延が行われます。最終的には、研磨や検査などの工程を経て製品となります。

scm435

scm435とは

scm435とは、炭素を0.33~0.38%程度含むクロムモリブデン鋼で、機械構造用合金鋼鋼材です。

クロムモリブデン鋼の頭についている「scm」の文字は、鉄(Steel)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)の頭文字に由来しています。

scm435の降伏点は785以上、引っ張り強さ930以上です。 500℃前後の高温下でも強度が低下しにくいといわれる材料です。クロムモリブデン鋼の中では、比較的硬度が高く、高い機械的性質を持っています。

機械的性質とは、素材が外部から力(熱、圧力、引っ張りなど)を加えられたときに、どのような反応を示すか表したものです。

クロムモリブデン鋼は、ステンレス鋼と比較すると、腐食しやすいとされています。クロムの含有量が少ないため、腐食から保護できる皮のような膜を十分に形成することができません。

scm435hと末尾にh記号がついたものは、H鋼と呼ばれます。焼き入れ性が保証された素材です。

scm435の使用用途

scm43は、主に機械部品に幅広く使用されています。

クロムモリブデン鋼の中でも、強い硬度を持つという特性からナットの製造に利用されます。

また、六角ボルトに使用される場合もあります。scm43には、クロムが含まれています。そのため、耐食性があり、鉄よりも強い硬度を持っているため六角ボルトの製造に適しています。

自転車のフレームに使用される場合もあります。適度なしなりが発生して、自転車を漕いだときに、フレームがしなり元に戻る力が働き、快適な走行を実現することができます。また、scm43には衝撃を吸収してくれるという特性があります。それにより、足場の悪い道だったり、段差に乗り上げたりしても衝撃が緩和されます。アルミ製やカーボン製の自転車に比べて、体への負担が少なく、長距離を移動することができます。

他にも、高温になる箇所や高圧力がかかる、エンジン部分や航空機脚部品に使用される場合もあります。

sus304

SUS304とは

SUS304 (サスサンマルヨン) とは、鉄とクロムニッケルを主成分とするオーステナイト系のステンレス鋼です。

オーステナイト系のステンレスで最も幅広く使用されており、成分は鉄をベースとして、クロムが18%、ニッケルが8%含まれています。サビや腐食に強く、伸ばしやすく、溶接しやすい特徴があります。

また、耐熱性にも優れており、耐熱温度は約900℃です。低温でも、高温でも加工がしやすいとされています。

SUS304の使用用途

SUS304の使用用途は非常に幅広く、様々な分野で使用されています。例えば、家庭用品、建物、工業用品、電子力発電などです。

具体的な製品をあげると、家庭用品では、スプーンやフォーク、水筒やコップなどに使用されています。建物では、自動ドアやエレベーター、エスカレーターの銀枠や銀板、手すりなどに使用されています。工業用品では、ボルト、ナット、自動車部品、省力化部品、洗浄機部品などに使用されています。

しかし、SUS304の価格は、ニッケルをはじめとする原料価格の影響を大きく受けます。SUS304と似た特性を持ち、より安価で手に入れられる、SUS430に置き換えられる場合も多いです。

SUS430は希少金属であるニッケルを含まないため、耐食性がSUS304に比べやや劣りますが、コストを安く抑えることができます。また、SUS304にはない磁性がSUS430にはあります。

SUS304の性質

SUS304は伸ばしやすく、粘り気が強いため深絞りや曲がりくねった製品の加工に使用されます。また、鉄との溶接も可能です。伸ばしやすいことから、部品などに使用される薄板での使用が最も多いです。

ただし、冷間加工を行う場合は、硬化が起きます。強度は上がりますが、加工しにくくなるデメリットがあります。鉄、クロム、ニッケル、ともに磁性はあるものの、ニッケルと混ぜ合わせることで構造変化が起こり磁性を打ち消し合うことで、SUS304には磁性がありません。

しかし、曲げ、絞り、切削などの加工により磁性を発現する場合があります。

SUS304の種類

SUS304は、オーステナイト系ステンレスの中でも、クロム、ニッケル含量がそれぞれ18%、8%であるステンレスの総称でもあります。SUS304のクロム、ニッケル含有量をそのままで、微量成分を追加して、オーステナイト系ステンレスの特徴である、耐食性、加工性、溶接性を維持したまま、性質を改良したものが多くつくられています。

1. SUS304L

SUS304から炭素の量を減らした極低炭素鋼です。炭素を減らすことで、高温下で発生する局部的な腐食現象である耐粒界腐食に対する耐性を向上させています。

2. SUS304N

SUS304に窒素、または窒素とニオブを加えて、延性を保持しながら強度を高めています。

3. SUS304Cu

SUS304に銅を1%添加し、加工硬化を防ぎ、深絞り性を改良したものです。プレス成形性もSUS304に比べて改良されています。

4. SUS302

名称の数字は304と異なりますが、SUS304をベースに作られます。SUS304に対して炭素が約2倍含まれており、加工硬化しやすくなっており、強度を高められています。その反面、粒界腐食が起こりやすくなっており、高温処理である溶接や高温下での使用用途には向いていません。

5. SUS303S

SUS304に硫黄を添加し、切削性を高めています。切削加工が必要な用途に使用され、切削工具の寿命も延ばすことが可能です。

SUS304のその他情報

SUS304の製造方法

はじめに鉄などの原料を炉で溶解します。次に溶解した原料から、不純物を取り除く精錬を行います。この工程では酸素を吹き込むことで、炭素を除去します。

精錬後の溶鋼は、厚板、線材、棒材や、加工メーカーで加工される前の形状で炉から押し出され冷やし固められます。この工程が鋳造です。

鋳造されたステンレス鋼は、2つの回転する円柱の間で引き伸ばし、薄く加工されます。これを圧延と呼び、熱間圧延と冷間圧延の2つの方法があります。スラブ (鋳造された鋼のブロック) を使用し、まず熱間圧延されます。

スラブ表面の欠陥を研削してから、熱間圧延した後、熱処理と酸洗が行われ、必要に応じて冷間圧延が行われます。最終的には、研磨や検査などの工程を経て製品になります。

ドライエッチング加工

ドライエッチング加工とは

ドライエッチング加工は、加工物にプラズマ化したガスが化学反応を起こし、腐食効果のあるイオンをぶつけて、レジストという保護膜に覆われていない部分を削る加工方法です。ガスをプラズマ化させる際は、真空状態を作る必要があります。また、少しでもダメージを抑えるために低温プラズマが使用されます。

プラズマとは、中性分子と陽イオン、陰イオンが混ざった非常に活性化した状態のことです。気体に熱や電気エネルギーを加えると、気体は分子とのつながりが弱くなっていき、解離が起きることで発生します。

低温プラズマとは、電子温度は高いが、イオンなどの温度は低い平衡の取れていないプラズマです。低くした気圧を電界や磁界をかけることで電離させて作られます。

また、ドライエッチング加工は、ポリマと呼ばれる化合物が発生します。加工物の腐食が終わることには、レジストも半分以上消えてなくなってしまうことが原因です。放置をするとIC部品などの欠陥の原因になるので除去する必要があります。

ドライエッチング加工の使用用途

ドライエッチング加工は、加工後の洗浄を必要としない、フォトレジストとの選択性が高い、精密な加工ができるという特徴があります。

フォトレジストとは、光や電子線等によって溶解性などの物性が変化する薬剤のことです。

その特徴を生かして、ウエットエッチング加工ではできないような、精密な部品を加工することができます。なので、微細な半導体回路の製造などで使用されることがほとんどです。半導体回路の製造は現在9割、ドライエッチング加工で行われています。

しかし、ドライエッチング加工の場合プラズマにより加工物がダメージを受ける場合があるため使用の際には注意が必要です。

また、ガスをプラズマ化させる必要があるため、真空の装置を用いる必要があります。そのため、液体を用いるドライエッチングよりも複雑な装置を用意しなくてはなりません。なので、ドライエッチング加工の装置はウエットエッチング加工の装置の2倍以上の値段と高価なものになってしまいます。

ウエットエッチング加工

ウエットエッチング加工とは

ウエットエッチング加工とは、腐食を利用し素材の溶融や除去を行う表面処理の加工方法です。

液組成を調整したエッチング液を素材に付着させることで、化学反応を発生させます。エッチング液とは、金属等を腐食させる働きのある酸性やアルカリ性の液体です。

切削や研削よりも精度の高い加工が可能であり、各製造分野で活用されています。

ウエットエッチング加工の使用用途

ウエットエッチング加工は、一度に多くの加工物を処理可能で、エッチング液も安価に手に入れることができます。また、初期費用やランニングコストも抑えられるため、低コストで大量生産を行うのに適しています。

1. プリント基板加工

金属表面を希望の配線パターン形成へ加工する手法として、ウエットエッチング加工が有効です。微細な配線パターンの形成は手作業で行うには難しく、化学的加工法が重宝されています。

主に銅箔が対象となり、レジストにて保護層を作成してエッチング液に浸漬させます。その後、レジストの剥離により残った部分がプリント基板のパターンとなる加工です。引き算の考え方でのプリント基板製造法は、サブトラクティブ法と呼ばれています。

2. めっき加工の前処理

対象素材に金属皮膜を密着させるめっき加工において、ウエットエッチング加工は前処理に利用されます。表面を腐食させ微細な孔を大量に発生させることによって、めっき皮膜となる薬液が孔に入り込み、さらに高い密着性が実現可能です。

これを船の碇に例え、アンカー効果と呼ばれています。エッチング状態にて密着性そのものへの影響が大きく、全体の品質に関わります。表面の酸化皮膜を除去する役割も兼ねており、めっき加工技術において必須工程となっています。

3. 版画制作

銅板等を用いた印刷にて、そのデザインを付与するためにウエットエッチング加工が利用されています。下書きされたデザインに沿って、保護レジストとエッチング液塗布部を区別します。その後、浸漬によりエッチング加工を行い、凹凸を作る形で印刷版として使用可能です。

ウエットエッチング加工の原理

等方性、異方性の発生仕組みとしては、反応時に発生する結晶化の構造が利用され、エッチングの材料の表面の結晶構造に依存するとされています。

1. 等方性エッチング

腐食が縦や横のあらゆる方向に進む方式です。保護膜の役割を果たすレジスト付着付近から腐食が始まった場合、レジストの下を潜ってえぐるように腐食が進みます。

これにより、断面で角のないU字型やC字型の加工を行うことができます。化学反応速度を早くすることで、発生させることが可能です。

2. 異方性エッチング

腐食がある一定の方向に向かう方式です。反応速度を遅くすることで、角の立った加工を行うことができます。

これらの腐食に影響を与える反応速度は、エッチング液の成分や種類、混ぜ方、温度、また加工物の素材によってコントロールする必要があります。

ウエットエッチング加工のその他情報

1. ウエットエッチング加工の課題

エッチング液の準備においては、素材によって化学薬品の配合調整が必要です。また、処理時間や温度の管理も厳密に求められます。

使用される化学薬品も、人体に有害な物質が用いられるケースがあり、作業環境への懸念も出てきます。対抗の技術として、より高い精度を誇るドライエッチング加工が存在しています。これは加工物にガスを衝突させて削る加工方法です。

2. エッチング液の成分

エッチング液に使用される化学薬品は、腐食反応を引き起こすために、硫酸やリン酸、硝酸、クロム酸がベースとなります。加工対象となる素材によって使用される組成は異なり、均一にエッチング加工が施せるように別途添加剤を使用するケースもあります。

使用されたエッチング液は不純物も含め劇物に成分が近くなっており、所定の廃液手続きが必要です。

ヘール加工

ヘール加工とは

ヘール加工とはヘールバイトと呼ばれる工具を横方向に動かしてシール面を加工する加工方法です。シールとは流体が漏れるのを防ぐために使用する機械部品のことを指し、パッキンやガスケットが挙げられます。シール面とはパッキンを設置するための溝が加工されたシール設置面を指します。

バイトは切削加工で使用される工具のことであり、先端についたチップと呼ばれる刃で金属の切削を行います。ヘールバイトの大きな特徴としては刃先が直線であることです。

切削加工では加工時に工具がたわむことにより刃物あるいは加工物が振動するびびりと呼ばれる現象が発生します。ヘールバイトはビビりを抑えるためにばねの形状を持っていたり、バイトの剛性が高いものが使用されています。

ヘール加工の使用用途

ヘール加工は高い気密性が求められる平面切削時に実施されます。

回転工具を用いた切削加工の仕上がりでは加工面に円弧上の切削痕が発生します。切削痕でできたわずかなスキマから気体が流入してしまう問題が挙げられます。そのため、エンドミル等でシール面を切削加工をした後は切削痕が消えるまで磨き続ける必要があります。一方でヘール加工では磨き工程を行う必要がありません。ヘール加工ではバイトを一定方向に動かして加工を行うためスキマを生じずにシール面を加工します。

シール面に求められる面粗さはシール対象の流体種類に依存し、求められる精度は粘性液体>液体>気体の順に高くなります。シール面加工時にはシール対象に応じた面粗さの設計やそれに伴う工具の選定が重要になります。