sus316

SUS316とは

SUS316とは、鉄やクロムニッケルモリブデンを主成分とするオーステナイト系のステンレス鋼です。

非磁性のステンレス鋼で、構成成分はクロム16~18%、ニッケル10~14%、モリブデン2~3%で、耐熱温度は約800~900℃です。この合金組成により、SUS316は優れた耐食性と耐熱性を備えています。

SUS316の使用用途

SUS316は、海水や塩水などの塩化物環境にさらされる機器や部品に多く使われます。例えば、海洋構造物、船舶部品、化学プラント、医療器具、食品加工機械などがあります。また、高温や高圧の環境にも適しているため、原子力発電所や石油精製所などでも利用されます。タンカーなど船舶の部品としても有用です。

内陸であっても塩化物を使用する環境下では、配管などの素材としてSUS316が採用されています。寒冷地など道路に融雪剤をまく地域は、融雪剤に含まれる塩化ナトリウムによって、鉄を使用した配管では錆が発生してしまうためです。

また、レストランなどの飲食店の厨房で使用する業務用食品保管容器も、SUS316でつくられています。調味料に塩分が含まれている場合を想定し、腐食しにくい素材の容器を選定する必要があるため、錆びにくく丈夫であるSUS316が最適です。

このように、SUS316は耐食性が必要とされる場面で選定され、沿岸部だけではなく我々の生活の中でも活用される重要なステンレス鋼です。

SUS316の性質

ステンレス鋼は、構成する成分によって、金属組織の状態が異なり、フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト系、オーステナイト・フェイライト系、析出硬化系の5種類に大きく分けられます。その中でオーステナイト系ステンレスは、耐食性と延性に優れており、極低温でも脆化しにくいのが特徴です。

SUS316はオーステナイト系ステンレスで、その中でも、モリブデンを加えることで耐食性をさらに強化しています。ステンレスを錆びにくくさせる効果を持つ、クロムの酸化被膜修復作用をモリブデンが高めていることで、高い耐食性を実現しています。

ただし、流通量が少ないため汎用性に劣ること、モリブデンを含む分、高価なためコストがかかることがデメリットです。塩化物や薬品による腐食・孔食が、構造物や機器に重大な悪影響を及ぼす状況下で、高い耐食性を必要とする場合に限定しての使用が望ましいです。

SUS316の種類

SUS316には、通常のSUS316と炭素含有量が異なるSUS316Lが存在します。SUS316は炭素を0.08%以下に抑えていますが、SUS316Lはさらに炭素を0.03%以下に減らしたものです。

これにより、SUS316LはSUS316よりも耐食性が高くなります。特に、溶接部の耐食性が向上します。しかし、炭素を減らすと強度や硬度が低下するため、用途によってはSUS316の方が適している場合もあります。

SUS316のその他情報

SUS316の製造方法

最初に、鉄や他の原料を炉で溶かします。その後、溶けた原料から不純物を除去する精錬プロセスを行います。この工程では、炭素を取り除くために酸素を吹き込むことが行われます。

SUS316Lの場合は、SUS316よりも炭素の量が少ないため、炭素の少ない高純度の原料を用いるか、精錬の条件を厳しくすることが必要です。精錬を経た溶鋼は、炉から押し出されて冷やされ、厚板、線材、棒材など、加工メーカーによる加工前の形状になります。この過程を鋳造と呼びます。

鋳造されたステンレス鋼は、2つの回転する円柱の間で引き伸ばされ、薄く加工されます。これが圧延と呼ばれる工程です。熱間圧延と冷間圧延の2つの方法があります。まず、スラブ (鋳造された鋼のブロック) が使用され、熱間圧延が行われます。

スラブ表面の欠陥を研削した後、熱間圧延が行われた後に熱処理と酸洗が行われ、必要に応じて冷間圧延が行われます。最終的には、研磨や検査などの工程を経て製品となります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です