研磨目

研磨目とは

研磨目とは、ブラシや研磨剤などによって生ずる物体の表面の縞模様を言います。研磨の種類によって、研磨目の形状が異なります。

光沢研磨は、バフを使用しますが、バフの細かさにより、粗い光沢面から、研磨目がない鏡面まで可能です。梨地研磨のうち、バイブレーション研磨は、表面にランダムな小さな弧の研磨模様を付けたものです。一般的な梨地研磨は、髪の毛のような真っすぐのライン状のヘアーライン模様です。また、うろこ研磨は、円周状にスピン研磨した模様をうろこ状に重ねた研磨目です。

研磨目の使用用途

研磨目の用途は、ステンレス鋼を例にとると、光沢のある粗い目の仕上げでは、建材や厨房用品などです。光沢のある細かい目の仕上げでは、車両、医療器具、食品設備などです。細かい目の研磨仕上げは、厨房器具などに使われます。また、鏡面で少しすじがあるものは、建材や厨房器具などです。ヘアーラインやバイブレーションの研削目のものは、建材に多く使われます。

バフ研磨は、表面の凹凸を小さくしたり、汚れを取ったりするので、外観・美観の向上、サビや汚れの付着を防止する用途に使われます。

金属以外の研磨の用途は、宝石や大理石、光学部品や電子部品、及び歯科・生体用代替物などがあります。

研磨目の原理

精密加工の分野では各種の加工法がありますが、その中で多く使われるのが砥粒を用いて研磨する方法です。この方法は二つに分類され、砥粒を結合剤により砥石状に固めたものを使用して研磨する固定砥粒方式と、砥粒をバラバラにした状態で研磨する遊離砥粒方式とがあります。固定砥粒方式の例は、ホーニングや研磨布加工などです。また、ラッピングやポリシングなどは遊離砥粒方式に分類されます。これら各方式の加工により、独特の研磨目ができます。

研磨加工に使用する砥粒には、天然砥粒と人造砥粒があります。ラッピングなど比較的研磨量が多い粗研磨には、モース硬度が9以上のアルミナ、炭化ケイ素、ダイヤモンドなどの非常に硬い砥粒が使用されます。また、ポリシングなどの仕上げに用いる精研磨には、モース硬度が7以下の比較的軟らかい微細砥粒が使われます。天然砥粒は、主流であった天然ダイヤモンドが次第に人造物に置き換わり、人造砥粒の時代になっています。

ラッピングの加工原理は、遊離している硬い砥粒の先端が、ワーク表面とラップ工具との両方にめり込み、個々の砥粒先端が微小工具となって研磨する方法です。また、ポリシングの加工原理は、ポリシャと呼ばれる板状工具上に遊離した微細砥粒を流し、ワークを押し付けてポリシャとの相対運動させて研磨する方式です。

簡易的に研磨目を作るには、各種の研磨材を使用します。ベルト、フィルム、ホイールなどのタイプがあり、目の粗さがいろいろ揃っています。電子部品用の精密研磨ホイールは、半導体ウェハーのラップ研磨や端面研磨、及び光学ガラスの精密研削などに使われます。自動車の補修用の研磨材もあり、コンパウンドと呼ばれています。

異形線

異形線とは

異形線 (英: deformed wire) とは、丸形、正六角形、正方形、長方形以外の種々の断面形状に加工された中実の線材です。

異形線は従来の切削加工、研磨加工、板金加工に比べて、大きなコスト低減効果があります。冷間引抜や冷間圧延などで生産でき、軽量化、歩留まり改善、工程簡略化、精度向上、滑らかな金属表面などがメリットです。

異形線のばねは断面を異形にすると、高いばね特性が得られます。焼き入れや焼き戻しによって優れた真直性、弾性限の拡大、高い降伏点が得られ耐久性が向上します。異形線の材料は炭素鋼合金鋼ステンレス鋼及び銅合金チタン及びチタン合金などから選定可能です。

異形線の使用用途

異形線の用途は多岐にわたります。割りピンやばねなどの機械部品だけでなく、スキーのエッジ、ネックレス、電気カーペットの電熱線、腕時計のバンド、めがねの枠、ギターのフレットワイヤ、模型レールなどに使われます。さらに、自動車のピストンリング・トランスミッション部品、各種産業機械、石油・ガス産業、鉱業・水道業界、製紙・パルプ産業、林業・クレーン用のワイヤロープなどで使用可能です。

異形線はばねとして多く使用されます。家電製品・OA機器のばね、自動車のクラッチ・ブレーキ・ワイパーアーム・シガーライターのばね、自転車のブレーキのばねなどに使われます。ばねの断面形状を異形にすると、一般の丸ばねに比べて高過重性や長寿命化が実現可能です。同一トルクの丸ばねよりコイル外径が小さく、ばねのコンパクト化・軽量化が可能です。

異形線の原理

一般的な円形断面の素材であるコイルの冷間引抜加工や冷間圧延加工によって、色々な断面の異形線を製造可能です。素材をコイルのままで表面処理を行い、次いでコイルを伸ばしながら、ダイスを使って引抜又はロール圧延して、再びコイル状に巻き取り、必要に応じて焼鈍を行います。ばね材に使用する異形線は、焼き入れや焼き戻しをします。

例えばねじりばねの場合、円形線と同じ外径で同じ巻き数の異形線を比較すると、耐久性は約2倍です。同様に同じ巻き数で同じ自由長の場合には、耐久性は約6倍です。

様々な表面処理を行って耐食性を上げたり、外観を良くする場合もあります。例えば亜鉛や亜鉛とアルミニウムの合金で表面被膜を行うと、耐食性がより向上します。樹脂などの被膜によって色による識別ができ、ステンレス鋼にも着色可能です。

異形線の種類

異形線には多種多様な材質があります。材質の具体例は鉄線、鋼線、ピアノ線、ステンレス線、アルミニウム線、燐青銅線、黄銅線、銅線、特殊鋼、洋白などです。鉄線にはなまし鉄線、冷間圧造用炭素鋼線、亜鉛メッキ鉄線、亜鉛アルミメッキ鉄線などがあります。

異形線の硬度は、ピアノ線がHRC40~50、硬鋼線がHRC35~45、オイルテンパー線がHRC45~52、鈍し線がHRC95~105、ステンレス線がHRC35~45です。

また、異形線の荷姿の具体例としてコイル、リールレスコイル、キャリア、リールなどが挙げられます。異形線の断面の形状には平線、平角線、半丸線、台形線、三角線、五角線、六角線、楕円線、菱形線、テーパー線、タル形線、凸型線、メガネ線、半丸メガネ線、丸コバ台形線などがあります。

異形線の選び方

異形線は自身に機能性がある線材で、最終製品に近い状態が容易に得られるため、表面加工が不要で製造工程を簡素化でき、コストを抑えられるなどのメリットがあります。

基材の種類ごとに特性を改変すると、用途に応じて適した特性が得られます。低炭素鋼では硬化圧延と焼き戻しにより、成形や後加工が容易になります。高炭素鋼や合金鋼では、オイルテンパー処理と高周波焼き入れによって均一化された安定性が良い鋼組織を作り、引張強度や疲労特性を向上させることが可能です。ステンレス鋼も硬化圧延と焼き戻しを行います。

異形管

異形管とは

異形管の呼称が使われるものは、いくつかあります。一つは、鉄管、銅管樹脂管、及び土管などの管路において、接続部や分岐部に使用する曲がり管、枝付き管、及びT字管などを言います。二つ目は、水道管や下水管などに使われる鋳鉄異形管及びダクタイル鋳鉄異形管です。さらに、管路の断面が円形や長方形以外の形状をしたものも、異形管と呼ばれます。

流路変更や分岐のための異形管には、10~180度の角度のベンド管、クロス管、Y字管、及び枝付き分岐管などがあります。水道管などに使われる鋳鉄異形管も同様の種類があり、JIS規格でベンド角度の基準などが定められています。また、断面が円形以外の異形管には、多彩な断面形状、例えば楕円、半円、甲丸、溝形などがあります。

異形管の使用用途

異形管は、流路の方向変更や分岐、合流などが必要な各産業分野で、各種プラントをはじめ、化学工場や発電プラントの配管網、建設機械、冷凍空調分野の配管、油圧回路など広範囲の用途があります。また、上水道・下水道、ガス配管の流路などには、鋳鉄異形管やダクタイル鋳鉄異形管などが使われます。

繊維機械、食品機械、印刷機械、及び医療機器、OA機器などの機械装置やエクステリア用品、オフィス用品などの製品・部品では、流路ではなく、構造材として各種の断面形状・材料の異形管が使われます。

異形管の原理

異形管に使われる材料は、鋼材をはじめ、ステンレス鋼合金鋼、及び鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、窯業系など用途に応じて選定します。ダクタイル鋳鉄は、黒鉛球状化処理により高強度、高靭性を特徴とする鋳鉄です。引張強さや曲げ強さは鋼材以上あり、適度な伸びと硬さを有して流体圧送管材に適しています。異形管の接続部は、溶接やフランジ接続、ねじ接続などサービス性を考慮して選定します。

水道管やガス管などに使われるポリエチレン管に接続できるメカニカル接手があります。鋳鉄管とポリエチレン管とを接続する異形管接手で、ゴム輪によりシールしてフランジ状の金具で絞めこむ方式です。

異形管の製造方法は、鋼材や合金鋼では、薄板をまげて溶接したり、各種の鋼管を素材に使って冷間ロール成形で仕上げたりするのが一般的です。精密異形管と称して、引抜加工により色々な断面形状の異形管を製造する方法は、内面の切削加工や異形切削加工が不要で精密な引抜面が得られます。鋳鉄異形管は、鋳型を使った鋳造法で作るため、比較的自由な形状のものが作れます。

片状黒鉛鋳鉄

片状黒鉛鋳鉄とは

片状黒鉛鋳鉄とは、黒鉛が花片の集合したような形をしたねずみ鋳鉄の一種です。

JIS (日本産業規格) G5501では、片状黒鉛鋳鉄を持つ鋳鉄品が6種類 (FC100、FC150、FC200、FC250、FC300、FC350) 規定されています。片状黒鉛鋳鉄は振動を吸収する能力が優れており、減衰能が高いです。また、黒鉛は潤滑剤的な効果があり熱伝導がよいため、摩擦熱を逃がしやすい性質を持っています。さらに、振動吸収能が高く、熱衝撃にも強いです。

片状黒鉛鋳鉄の使用用途

1. 自動車の部品

エンジンブロック、シリンダーヘッドなどが挙げられます。

2. 建設機械の部品

シリンダーブロック、クランクケースなどが挙げられます。

3. 配管部品

水道管、バルブなどが挙げられます。

4. 電気機器の部品

モーターハウジング、トランスボックスなどが挙げられます。

モーターハウジングは、電気モーターの外装部分の一つで、モーターの内部構造を保護するための部品です。トランスボックスは、電気変圧器 (英: Power Transformer) の部品の一つで、電力の変圧を行うためのコイルを内蔵し、変圧器内のコイルを結線するための端子台を備えた箱型の部品です。

5. ガスタービン、ターボチャージャーの部品

タービンブレード、コンプレッサーブレード、インペラーなどが挙げられます。

コンプレッサーブレードは、ガスタービンエンジンや圧縮機などのターボ機械で使用される、流体を加速して圧縮するための羽根車のことです。インペラーは、流体機械の一種であるターボ機械やポンプなどで用いられる、回転式の羽根車のことです。

6. 鉄道車両の駆動装置、台車の部品

クランクシャフト、車輪などが挙げられます。

片状黒鉛鋳鉄の原理

片状黒鉛鋳鉄は、鋳造時に鋳型内で急速に冷却されることによって生成されます。急冷過程で、鋳鉄中に含まれる炭素が黒鉛の形で析出し、片状に配列されます。

鋳造時に鋳型に注入された鋳鉄は高温で液体状態で存在します。鋳型内部の温度は非常に高く、急速に冷却されて鋳鉄が固化します。この際、鋳鉄中に含まれる炭素が黒鉛の結晶核を形成し、次第に成長していきます。

通常、鋳鉄中にはフェライトとパーライトの2つの組織が存在し、炭素はパーライト中に存在します。しかし、鋳造時には鋳型内部の急激な冷却により、フェライトとパーライトの結晶成長が抑制されるため、炭素が黒鉛の形で析出し、片状に配列されるのが特徴です。

フェライトとは、主に鉄と一部の非金属元素 (主に炭素、そして少量のシリコン、マンガン、硫黄など) から構成される材料で、弱い磁性を持つ合金です。

パーライトとは鋼の一種であり、フェライトとセメンタイト (炭素鉄) の微細な積層から構成されています。この積層構造により、パーライトは非常に硬く強度が高く、耐摩耗性に優れます。鉄鋼の中で最も一般的な組織であり、一般的に熱処理によって形成されます。

片状黒鉛鋳鉄の種類

JIS G 5501では以下の六種類が規定されています。

種類の記号 引張強さ(N/mm2)
FC100 100以上
FC150 150以上
FC200 200以上
FC250 250以上
FC300 300以上
FC350 350以上

片状黒鉛鋳鉄の性質

1. 耐高温性

片状黒鉛鋳鉄が高温下で変形に対する強度や耐久性が高い理由はいくつかあります。まず、黒鉛の薄片状の配列により、荷重や熱応力に対して耐久性が向上することが挙げられます。また、結晶構造により強度が上がるため、高温下でも強度を維持できること、炭素の含有量が高く、高温下で鉄が軟化しないため、強度を維持できることなども挙げられます。

2. 熱伝導性

片状黒鉛鋳鉄が熱伝導性に優れる理由は、微細な結晶構造によるものです。この結晶構造は、均一な配列によって熱を効率的に伝えられて、鉄と黒鉛の結合力が弱いため、熱応力に対する耐性が高くなっています。さらに、高温環境での使用に適した添加物を含んでいるため、高い耐熱性を発揮できます。よって、片状黒鉛鋳鉄は、高温環境下での使用や熱伝導性が要求される場合に適した材料です。

3. 耐食性・耐摩耗性

片状黒鉛鋳鉄が高い耐食性や耐摩耗性を持つ理由は、微細な組織構造にあります。この組織構造は、鋳造時の冷却速度によって形成される特定の結晶構造で、鉄と炭素が結晶化した黒鉛を含みます。

特定の結晶構造とは、片状黒鉛鋳鉄が鋳造時に急速に冷却されることで形成される「微細な鉄と黒鉛の結晶構造 (フェライト+片状黒鉛組織) 」のことです

この結晶構造により、鋳造物の表面に酸化被膜を形成し、化学反応を防止できます。また、片状黒鉛鋳鉄は非常に硬く、密度が高く、化学的に安定しているため、耐摩耗性が高く、長期間使用しても変形や損傷が少ないことが特徴です。

4. 制振性

片状黒鉛鋳鉄は、黒鉛の配列形状によって振動吸収能力が高く、機械部品や工作機械などの振動を抑制するために使用されることがあります。黒鉛の薄片状の配列が、材料内部での応力を効率的に伝播でき、振動エネルギーを吸収し分散させられるため、片状黒鉛鋳鉄は、振動に対する耐性が高い材料です。

片状黒鉛鋳鉄の音響特性が優れていることから、楽器やスピーカーなどの分野でも使用されることがあります。ただし、実際に使用される機械部品や工作機械の振動状況によっては、片状黒鉛鋳鉄の振動吸収能力が十分でない場合もあるため、材料選択の際には総合的な判断が必要です。

片状黒鉛鋳鉄のその他情報

片状黒鉛鋳鉄の耐久性

片状黒鉛鋳鉄は、鋳造の際に黒鉛が薄片状に配列しているため、その結晶構造が強度や耐久性に影響を与えます。しかし、鋳造時に急激な冷却が起こると、鉄と炭素が結晶化して白色のセメンタイトが生成されることがあります。セメンタイトは、黒鉛と比べて硬くもろいため、鋳造品の強度や耐摩耗性を低下させる原因となるので注意が必要です。

セメンタイトとは、鉄と炭素からなる硬くもろい化合物で、化学式はFe3Cです。セメンタイトは、鉄と炭素が共晶組織を形成している鋳鉄や鋼の組織中に存在することがあります。鋳鉄や鋼の冷却速度が速い場合や高炭素鋼では、セメンタイトの割合が増加する傾向があります。

焼結体

焼結体とは

焼結体

焼結体とは、粉末状の金属を固めた後、融点よりも低い温度で原子同士を接合させることで緻密になる物体のことです。

焼結体初期の段階では、粉末の粒子同士が接合したネックを形成します。ネック表面にイオンや原子、分子が拡散することでネックが大きくなり焼結体の表面積が減少します。このときネックの直径は粒径に対して約30%になります。

焼結体の内部にある気孔の形状はチューブ状に変化して互いに繋がります。この状態の気孔を開気孔と呼びます。最終的には相対密度が95%を超え、気孔が焼結体内に分散し閉気孔の状態になります。

焼結体の使用用途

焼結体は圧延や鍛造など、塑性変形による加工ができない材料の成形に使用されます。例えば、粉末冶金や、セラミックの製造で適用されています。鋳型や湯の条件によって不良の発生有無が左右される鋳造に比べ、焼結は形状に自由度があるため、自動車のエンジン部品や駆動系の部品、小型の歯車や軸受など、複雑な形状を伴う部品に使用されています。

焼結は粉末にできる金属であれば、ほとんどの材料で対応が可能です。そのため、融点の高いタングステンモリブデン、高温になると他の元素と反応しやすいチタンを使用する部品にも焼結が適用されます。

焼結体のその他情報

焼結体の特徴

主な焼結の方法は常圧焼結と加圧焼結に分類されますが、新たな方法として電磁場支援焼結の研究開発が進んできており一部実用化が始まっています。

1. 常圧焼結
雰囲気を大気圧の状態で焼結する手法です。添加物により高温で液相を生成させて緻密化する液相焼結と、液相を生成させずに固相間で物質移動をして緻密化する固相焼結に分けられます。

2. 加圧焼結
とは外圧を与えて緻密化する方法で、ホットプレス焼結、熱間静水圧焼結などがあります。ホットプレス法は一軸の圧力を粉末に加え、熱間静水圧焼結はガラスや金属でカプセル化した粉体をガスで加圧して固化する方法です。

3. 電磁場支援焼結
パルス通電加圧焼結、マイクロ波・ミリ波焼結、電場支援焼結があります。パルス通電加圧焼結は加圧しながら数1000Aのパルス電流を導電性の型に流して焼結する方法で、ホットプレス法で対応できない高融点材料の焼結が可能です。マイクロ波、ミリ波は誘導体内部より自己発熱させて焼結する方法で、熱効率が高く短時間で加熱処理を行うことができます。粉末成形体へ直接通電しながら周囲の温度を上げることで、常圧焼結に比べ低い温度で焼結できます。

振動レベル

振動レベルとは

振動レベル

振動レベル (英: vibration level) とは、物理量より求めた振動加速度に人間の振動感覚補正を加えたものです。

単位はdBです。振動は変位、速度、加速度で測定できますが、人体が感じる振動は加速度を基本にするのが適切と認識されています。振動レベルは、振動公害を規制するために定められたものです。

振動には鉛直や水平の方向性があり、方向別に人の感じ方は差異があります。JIS C1510振動レベル計は、鉛直振動と水平振動について、周波数毎の人の振動感覚を考慮した加速度レベルで表示する計測器です。振動は一般的に鉛直振動の方が、水平振動より強く感じるので、振動規正法は鉛直方向のみが規制されます。

振動レベルの使用用途

1. 特定工場、特定建設作業

戦後の経済急成長のひずみとして様々な公害が発生し、それに対応するための規制が制定されています。騒音規制法に続いて、振動規正法が制定されました。規制の対象振動は、特定工場等、特定建設作業、道路交通振動です。昼間、夜間に分けて人体の感覚を基準とした振動レベルの数値が決められています。

特定工場等は、自治体が定める指定区域内の工場・事業場です。著しい振動を発生する施設が特定施設として定められています。特定施設は、例えば、金属加工機械、大型圧縮機、土石用又は鉱物用の破砕機、コンクリートブロックマシン、合成樹脂用射出成形機、 木材加工機械などです。振動の規制値は、地域ごとに定められています。

特定建設作業は、著しい振動を発生する建設作業であり、例えば、くい打機作業、建築物などを破壊する作業、ブレーカー作業などが規制対象です。規制値は区域、作業時間帯・期間・作業日などにより、敷地境界線の振動レベルにより定められています。

2. 道路交通振動

道路交通振動に対しては、直接の規制ではなく、要請です。道路の周辺の生活環境が著しく損なわれていると判断される場合、市町村長は県公安委員に対し改善を要求します。

振動レベルの原理

1. 振動レベルの算出

振動レベルは、振動感覚補正を行った振動加速度の実効値 (a) の基準振動加速度 (a0) に対する比率の常用対数を算出し、その20倍を言います。下記に式を示します。単位はdBです。

  VL = 20log10^(a/a0)

VL: 振動レベル (dB) 、a: 振動感覚補正を行った振動加速度の実効値 (m/s^2) 、a0: 基準の振動加速度 (m/s^2)

a0は日本の振動規正法では、10^-5m/s^2を使用します。振動レベルに、常用対数を使うのは、Weber-Fechnerの法則により、聴覚などと同様に振動の感覚は、刺激の強さの対数に比例することによります。

振動レベルに使用する体感補正は、鉛直方向では4~8Hz、水平方向では1~2Hzの周波数帯域が、他の帯域に比べ感度が高いです。

2. 振動階級の目安

振動レベルは、目安として人の感覚に応じたdB値が気象庁の震度階級として発表されています。110dB以上では揺れに翻弄され、自分の意思では行動できないレベル、55dB以下では人は揺れを感じないレベルです。

振動レベルのその他情報

1. 振動レベルの測定

振動規正法の振動レベルは、計量法第71条の条件を満足する振動レベル計を用いて測定を行うことが規定されています。具体的には、JIS C 1510振動レベル計の規定を満足する特定計量器を使用します。

振動測定値は、振動の波形に応じていくつか決定方法が異なり、JIS Z 8735振動レベル測定方法に規定があります。例えば、指示値があまり変動しない場合は、その指示値を測定値とします。指示値が波状に大きく振れる場合は、その最大値の平均値を使用します。

また、指示値が不規則で、大幅に変動する場合は、5秒間隔で100個以上測定し、LV10という方法で値を決めます。以前はこのような方法を人間が読み取っていたのですが、現在では振動レベル計が自動で計算できるようになっています。LV10は統計的な値で、測定した時間の10%を占めるという意味です。

2. 地面振動の測定

地面振動の測定位置は、敷地又は用地の境界部が原則となりますが、地上面で振動を測定すると、測定の位置によっては異常な振動量を拾う場合があります。原因は地盤の性状によるものです。複数の地点の振動を測定し、振動の伝搬を把握することが必要です。

制振鋼板

制振鋼板とは

制振鋼板には、制振材料の樹脂を鋼板の表面に接着したり、または2枚の鋼板の間に制振材料を挟んだりして振動減衰を大きくした複合型の制振鋼板と、亜鉛合金などで振動エネルギーを吸収する制振合金があります。鋼板の共振を抑制して、振動エネルギーを熱に変換するもので、主として機械類の騒音振動低減に使用されます。制振材料には、粘弾性を持った粘着剤、ブチルゴム、及び不織布、塗料、合金などを使います。

制振鋼板に使用される鋼板は、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板、電気めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、及び合金めっき鋼板、合金鋼板などの種類があり、鋼板の利点を損なうことなく、用途に応じて選択できます。

制振鋼板の使用用途

騒音を発生する機械などのメーカーが、騒音低減のため外板などに独自の制振材を貼り付ける場合もありますが、専門メーカーから販売されている各種の制振鋼板を使用することが一般的になっています。

制振鋼板の実用例は、自動車関連では、オイルパン、2輪車のチェーンカバー、ダッシュボード、ドアパネル、ボンネットルーフ、カムカバーなどがあります。家電では、洗濯機のボディ、冷蔵庫のボディ、エアコンの外板、スピーカのフレームなどです。また、建築では、屋根材に使用して雨の音を小さくし、合わせて断熱強化にもなります。病院のカーテンレールにも使われます。

制振鋼板の原理

制振鋼板のうち、制振材料が鋼板により拘束されるものは拘束型と呼ばれます。鋼板の曲げ振動により制振材の曲げ変形が生じて、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されることで、振動が低減します。鋼板の強度、靭性や加工性、溶接性などの利点は変わらずに高い制振性を有しています。自動車や家電、建築などに使われているのはこのタイプです。また、非拘束型の制振鋼板は、制振材が拘束されないタイプで、伸縮変形により振動エネルギーを吸収します。

制振合金は、材料自体が振動吸収性が優れており、振動を熱に変換するタイプで、工作機械の土台などに使う黒鉛鋳鉄や、コンピュータの周辺機器などに使うアルミニウム・亜鉛合金などが該当します。振動負荷を受けると合金の内部に双晶活動が発生することで、振動エネルギーが熱エネルギーに変換され、制振効果が出てきます。この合金は軟鋼と同等の引張強度や加工性を有しています。また、弾性限度内で振動の振幅が大きいほど制振する効果が大きい特色があります。

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ゴールデンウィーク休業期間のご案内

平素より格別の御厚情を賜り、厚く御礼を申し上げます。

弊社では下記の期間を、ゴールデンウィーク休業とさせていただきます。

2022年4月29日(金)〜 2022年5月6日(金)

休業期間中にいただきましたお問い合わせに関しましては、休業期間後の営業日より順次対応させていただきます。

キルド鋼

キルド鋼とは

キルド鋼とは鋼「鉄鋼材料」を作るための材料となる鋼を指します。
しかし、キルド鋼と規定されるには多くの条件があります。

鋼の製造工程として原材料である鉄鉱石を溶かして銑鉄を作ります。この銑鉄には不純物が多く含まれているため、製銑、精錬、製鋼と多くのプロセスを経て「鋼」が製造されます。

この製造工程の精錬工程では工程の最後に溶鋼中の酸素を取り除く(脱酸)を行います。
この工程で溶鋼から酸素を取り除くことにより、溶鋼が冷えて固まる時にガスの発生が抑えれれるため、高品質な鋼を作ることができます。

この脱酸の程度差により3種類の原材料(インゴット)となり、最も脱酸されている鋼をキルド鋼と呼んでいます。
この他に、脱酸の違いによりセミキルド鋼、リムド鋼と呼ばれる鋼があります。

キルド鋼に含まれる酸素量は約50~100PPM、ミキルド鋼に含まれる酸素量は約100~200PPM、リムド鋼に含まれる酸素量は200~400PPM位になっています。

キルド鋼の使用用途

キルド鋼とは鋼の製法により分類されます。
製造の過程で脱酸と成分の調整をしているため硬度が非常に高く特殊鋼の材料となります。

また、製造過程で行う鋼の成分調整として合金元素を添加するため硬度、粘り強さ、耐摩耗性、耐熱性、腐食性などの任意の特性を持つ鋼を製造することができます。

そのため硬度や粘り強さ等が必要な構造用鋼は車両、機械、建設、船舶など堅牢性が必要な部分に使用されます。

また、高硬度である工具鋼は切削に用いる工具の材料をはじめ、金型やバイト、ドリル等に使用されています。
これらの硬度や組成成分に関してはJISにより詳細に規定されています。

キルド鋼の特徴

キルド鋼の分類方法の1つとして脱酸を行う時に使用する脱酸剤の違いにより分類できます。

脱酸剤にシリコン(フェロシリコン)を使用した場合はシリコンキルド鋼となり、脱酸剤にアルミニウムを使用するとアルミキルド鋼と呼ばれます。
また、キルド鋼は炭素鋼、合金鋼、SS材などの原材料になるため、組成成分の違いにより非常に多くの分野に使用されます。

まず一般的には強度が要求される構造用鋼です。構造用鋼は一般的な強度が必要とされる土木、建設、機械などの分野に使用されます。
ステンレス鋼も特殊鋼となりますが、一般家庭の中でも多く使用されていますので意外と身近な金属になっています。

また工具鋼などは切削、加工する工具、プラスチック成型に使用する金型などに使用するため非常に高い硬度が要求されます。
また、超合金は超高温でも高硬度を保てるため航空機やガスタービンなどに使用しています。

その他には、ばね鋼、軸受鋼、快削鋼等があります。ばね鋼は各種ばねに使用されたり車両の板バネなどにも使用されます。軸受鋼はベアリング、ローラーなど耐摩耗性が要求される部分に使用されます。
また、硬度より加工しやすさに特化した快削鋼があります。快削鋼は削られやすさ(被削性)を向上させた特殊鋼となり製品や部品の仕上り精度が必要な部分に使用されます。

カーボン繊維

カーボン繊維とは

カーボン繊維

カーボン繊維とは、カーボンファイバー、炭素繊維とも言われ、炭素 (C) だけでできている繊維です。

カーボン繊維はPAN系、ピッチ系のカーボン繊維の2種類で、炭素の特徴である耐熱性や通電性が優れているなどの特徴があります。カーボン繊維は軽い、強い、硬いなどメリットが多いため、多くの分野で利用されています。

しかし、現在のところ価格的な課題があるため利用できない分野も多いです。

カーボン繊維の使用用途

カーボン繊維は、強度をキープしながらも軽量化が可能な特性を最大限に生かし、金属素材の代替として幅広い分野で活用されています。さらに、柔軟性や電気伝導性、耐腐食性、難燃性などの特性があり、適用範囲は幅広いです。

単体での使用はほとんどなく、通常は樹脂、セラミック、金属などの素材と複合させてカーボン繊維複合材料として使用されます。航空機、ロケット、人工衛星などの分野では軽量化と高強度が要求されるため活用されており、また義足や車椅子、介護用ベッドなどの医療機器にも採用されています。

特に自動車業界では、車の軽量化が燃費改善に繋がるため、カーボン繊維は重要な役割を果たします。このため、レースカーから普通車まで、カーボン繊維が使用されている車種はさまざまです。また、その強度と弾力性の高さから、ゴルフクラブ、釣り竿、自転車のフレーム、テニスラケット、スキーやスノーボードなど、スポーツ用具の分野でも利用されています。

将来的には、建築や土木工学の領域でも、カーボン繊維シートをコンクリート構造物に適用して耐震性を向上させたり、吊り橋のケーブルや鉄骨の代替材料として応用する可能性があります。

カーボン繊維の種類

カーボン繊維には、原料の違いにより以下の2種類があります。

1. PAN系カーボン繊維

ポリアクリロニトリル (PAN) 繊維を炭化して作られるカーボン繊維で、多くの産業分野に使用され、身近なものではレジャー用品やスポーツの分野で幅広く使用されています。

PAN系カーボン繊維はフィラメント (単糸) が直径5~15μmであり、このフィラメントを束状にして使用します。レギュラートウタイプは30,000フィラメント、ラージトウタイプは48,000フィラメント使用されています。

2. ピッチ系カーボン繊維

原油の蒸留過程によって得られる、揮発性成分が排除された黒い固形物 (ピッチ) から製造されるカーボン繊維です。弾性率を調整できる特徴があり、高弾性を必要としない部分や、逆に高弾性が必要な製品に使用されています。

ピッチ系カーボン繊維も単糸の直径は10~15μmであり、メソフェーズピッチ繊維、等方性ピッチ繊維に分類されます。等方性ピッチ繊維は高耐熱の特徴があり摩擦にも耐性が高いため、車のブレーキパッドなどに有用です。メソフェーズピッチ繊維の特徴としては、自身の振動収束時間が短いことにあります。

メソフェーズピッチの特性は機械の振動問題、特に振動の影響受けたくない半導体製造やLCD製造装置には大きなメリットがあるため、非常に多く使用されています。

カーボン繊維のその他情報

カーボン繊維の製造方法

1. PAN系カーボン繊維
耐炎化過程で、200〜300℃の温度でPAN繊維を酸化させ、分子を環状構造に変えます。続く炭素化過程では、1,000℃以上の温度で不活性ガス環境下で熱を加え、分子構造を炭素の結晶構造へと転換させます。

炭素化工程完了後にも、高強度と高い弾性率を持つカーボン繊維が生成されますが、さらに2,000℃以上の高温で黒鉛化工程を行うことで、やや強度は低下しますが、非常に高い弾性率を持つ黒鉛繊維が得られます。

2. ピッチ系カーボン繊維
石炭ピッチや石油ピッチを繊維化・焼成して作られます。耐炎化前の溶融紡糸工程で、ピッチから長繊維を形成し、それを安定化処理して前駆体繊維を得ます。

前駆体繊維はPAN系カーボン繊維と同様に、耐炎化、炭素化、黒鉛化の過程を経て、ピッチ系カーボン繊維が得られます。