異形線

異形線とは

異形線 (英: deformed wire) とは、丸形、正六角形、正方形、長方形以外の種々の断面形状に加工された中実の線材です。

異形線は従来の切削加工、研磨加工、板金加工に比べて、大きなコスト低減効果があります。冷間引抜や冷間圧延などで生産でき、軽量化、歩留まり改善、工程簡略化、精度向上、滑らかな金属表面などがメリットです。

異形線のばねは断面を異形にすると、高いばね特性が得られます。焼き入れや焼き戻しによって優れた真直性、弾性限の拡大、高い降伏点が得られ耐久性が向上します。異形線の材料は炭素鋼合金鋼ステンレス鋼及び銅合金チタン及びチタン合金などから選定可能です。

異形線の使用用途

異形線の用途は多岐にわたります。割りピンやばねなどの機械部品だけでなく、スキーのエッジ、ネックレス、電気カーペットの電熱線、腕時計のバンド、めがねの枠、ギターのフレットワイヤ、模型レールなどに使われます。さらに、自動車のピストンリング・トランスミッション部品、各種産業機械、石油・ガス産業、鉱業・水道業界、製紙・パルプ産業、林業・クレーン用のワイヤロープなどで使用可能です。

異形線はばねとして多く使用されます。家電製品・OA機器のばね、自動車のクラッチ・ブレーキ・ワイパーアーム・シガーライターのばね、自転車のブレーキのばねなどに使われます。ばねの断面形状を異形にすると、一般の丸ばねに比べて高過重性や長寿命化が実現可能です。同一トルクの丸ばねよりコイル外径が小さく、ばねのコンパクト化・軽量化が可能です。

異形線の原理

一般的な円形断面の素材であるコイルの冷間引抜加工や冷間圧延加工によって、色々な断面の異形線を製造可能です。素材をコイルのままで表面処理を行い、次いでコイルを伸ばしながら、ダイスを使って引抜又はロール圧延して、再びコイル状に巻き取り、必要に応じて焼鈍を行います。ばね材に使用する異形線は、焼き入れや焼き戻しをします。

例えばねじりばねの場合、円形線と同じ外径で同じ巻き数の異形線を比較すると、耐久性は約2倍です。同様に同じ巻き数で同じ自由長の場合には、耐久性は約6倍です。

様々な表面処理を行って耐食性を上げたり、外観を良くする場合もあります。例えば亜鉛や亜鉛とアルミニウムの合金で表面被膜を行うと、耐食性がより向上します。樹脂などの被膜によって色による識別ができ、ステンレス鋼にも着色可能です。

異形線の種類

異形線には多種多様な材質があります。材質の具体例は鉄線、鋼線、ピアノ線、ステンレス線、アルミニウム線、燐青銅線、黄銅線、銅線、特殊鋼、洋白などです。鉄線にはなまし鉄線、冷間圧造用炭素鋼線、亜鉛メッキ鉄線、亜鉛アルミメッキ鉄線などがあります。

異形線の硬度は、ピアノ線がHRC40~50、硬鋼線がHRC35~45、オイルテンパー線がHRC45~52、鈍し線がHRC95~105、ステンレス線がHRC35~45です。

また、異形線の荷姿の具体例としてコイル、リールレスコイル、キャリア、リールなどが挙げられます。異形線の断面の形状には平線、平角線、半丸線、台形線、三角線、五角線、六角線、楕円線、菱形線、テーパー線、タル形線、凸型線、メガネ線、半丸メガネ線、丸コバ台形線などがあります。

異形線の選び方

異形線は自身に機能性がある線材で、最終製品に近い状態が容易に得られるため、表面加工が不要で製造工程を簡素化でき、コストを抑えられるなどのメリットがあります。

基材の種類ごとに特性を改変すると、用途に応じて適した特性が得られます。低炭素鋼では硬化圧延と焼き戻しにより、成形や後加工が容易になります。高炭素鋼や合金鋼では、オイルテンパー処理と高周波焼き入れによって均一化された安定性が良い鋼組織を作り、引張強度や疲労特性を向上させることが可能です。ステンレス鋼も硬化圧延と焼き戻しを行います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です