カーボン繊維

カーボン繊維とは

カーボン繊維

カーボン繊維とは、カーボンファイバー、炭素繊維とも言われ、炭素 (C) だけでできている繊維です。

カーボン繊維はPAN系、ピッチ系のカーボン繊維の2種類で、炭素の特徴である耐熱性や通電性が優れているなどの特徴があります。カーボン繊維は軽い、強い、硬いなどメリットが多いため、多くの分野で利用されています。

しかし、現在のところ価格的な課題があるため利用できない分野も多いです。

カーボン繊維の使用用途

カーボン繊維は、強度をキープしながらも軽量化が可能な特性を最大限に生かし、金属素材の代替として幅広い分野で活用されています。さらに、柔軟性や電気伝導性、耐腐食性、難燃性などの特性があり、適用範囲は幅広いです。

単体での使用はほとんどなく、通常は樹脂、セラミック、金属などの素材と複合させてカーボン繊維複合材料として使用されます。航空機、ロケット、人工衛星などの分野では軽量化と高強度が要求されるため活用されており、また義足や車椅子、介護用ベッドなどの医療機器にも採用されています。

特に自動車業界では、車の軽量化が燃費改善に繋がるため、カーボン繊維は重要な役割を果たします。このため、レースカーから普通車まで、カーボン繊維が使用されている車種はさまざまです。また、その強度と弾力性の高さから、ゴルフクラブ、釣り竿、自転車のフレーム、テニスラケット、スキーやスノーボードなど、スポーツ用具の分野でも利用されています。

将来的には、建築や土木工学の領域でも、カーボン繊維シートをコンクリート構造物に適用して耐震性を向上させたり、吊り橋のケーブルや鉄骨の代替材料として応用する可能性があります。

カーボン繊維の種類

カーボン繊維には、原料の違いにより以下の2種類があります。

1. PAN系カーボン繊維

ポリアクリロニトリル (PAN) 繊維を炭化して作られるカーボン繊維で、多くの産業分野に使用され、身近なものではレジャー用品やスポーツの分野で幅広く使用されています。

PAN系カーボン繊維はフィラメント (単糸) が直径5~15μmであり、このフィラメントを束状にして使用します。レギュラートウタイプは30,000フィラメント、ラージトウタイプは48,000フィラメント使用されています。

2. ピッチ系カーボン繊維

原油の蒸留過程によって得られる、揮発性成分が排除された黒い固形物 (ピッチ) から製造されるカーボン繊維です。弾性率を調整できる特徴があり、高弾性を必要としない部分や、逆に高弾性が必要な製品に使用されています。

ピッチ系カーボン繊維も単糸の直径は10~15μmであり、メソフェーズピッチ繊維、等方性ピッチ繊維に分類されます。等方性ピッチ繊維は高耐熱の特徴があり摩擦にも耐性が高いため、車のブレーキパッドなどに有用です。メソフェーズピッチ繊維の特徴としては、自身の振動収束時間が短いことにあります。

メソフェーズピッチの特性は機械の振動問題、特に振動の影響受けたくない半導体製造やLCD製造装置には大きなメリットがあるため、非常に多く使用されています。

カーボン繊維のその他情報

カーボン繊維の製造方法

1. PAN系カーボン繊維
耐炎化過程で、200〜300℃の温度でPAN繊維を酸化させ、分子を環状構造に変えます。続く炭素化過程では、1,000℃以上の温度で不活性ガス環境下で熱を加え、分子構造を炭素の結晶構造へと転換させます。

炭素化工程完了後にも、高強度と高い弾性率を持つカーボン繊維が生成されますが、さらに2,000℃以上の高温で黒鉛化工程を行うことで、やや強度は低下しますが、非常に高い弾性率を持つ黒鉛繊維が得られます。

2. ピッチ系カーボン繊維
石炭ピッチや石油ピッチを繊維化・焼成して作られます。耐炎化前の溶融紡糸工程で、ピッチから長繊維を形成し、それを安定化処理して前駆体繊維を得ます。

前駆体繊維はPAN系カーボン繊維と同様に、耐炎化、炭素化、黒鉛化の過程を経て、ピッチ系カーボン繊維が得られます。

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