アスパラギン

アスパラギンとは

L-アスパラギンの構造式

アスパラギンは、アミノ酸の一種であり、アスパラガスの汁から単離されました。一番最初に発見されたアミノ酸でもあります。 ヒトのタンパク質を構成するアミノ酸であり生合成が可能であることから、栄養学的には非必須アミノ酸に分類されます。光学活性化合物であり、タンパク質構成アミノ酸としてのアスパラギンは全てL体です。

このアスパラギンには、体内で有害となるアンモニアを体外へ排出し、中枢神経系を保護する働きがあります。また、アスパラギン酸とともに、体内でエネルギーを作り出すTCA回路に働きかけてエネルギーの代謝を促進する働きをもっています。 そのため、効果としては運動をする際の持久力を向上させるというものがあります。

アスパラギンの使用用途

アスパラギンは、アミノ酸の一種でありヒトの体内に存在している物質になります。そのため、比較的安全性の高い物質といえます。このアスパラギンは食品添加物の分類で使用されることがあります。

また、TCA回路に働きかけてエネルギーの代謝を促進するという点から、低タンパク血症や低栄養状態の方にアミノ酸を補給する目的で医薬品として使用される場合もあります。

アスパラギンの性質

1. 名称

和名:L-アスパラギン 英名:L-Asparagine IUPAC名:(S)-2,4-diamino-4-oxobutanic acid 3文字略号:Asn 1文字略号:N

2. 分子式: C4H8N2O3

3. 分子量: 132.12

4. 構造式: 図1の通り。

5. 融点: 234~235℃

6. 溶媒溶解性: 水に易溶であり、エタノールに難溶である。

7. 味: 苦味

アスパラギンのその他情報

1. アスパラギンの生合成

アスパラギンの生合成

図2. アスパラギンの生合成

生体内においては、アスパラギンシンテターゼによりアスパラギン酸から生合成されます。

2. アスパラギンが多く含まれる食品の例

乳製品、ホエイ、肉類、魚介類、たまご、ナッツ、玄米、レーズン、エビ、ジャガイモ、アスパラガス、発芽したマメ類などに豊富に含まれます。

アジピン酸

アジピン酸とは

アジピン酸は、化学式(CH2)4(COOH)2で表される有機化合物です。工業的に最も重要なジカルボン酸で、白色で無臭の結晶性粉末です。別名、ヘキサン二酸、1,4-ブタンジカルボン酸とも呼ばれます。
アジピン酸自然界で見られることは稀ですが、火焔菜(カエンサイ)など一部の植物に含まれており、さわやかな酸味があります。歴史的には種々の脂肪を酸化させることで調製していたため、ラテン語で「動物の脂肪」を意味するadeps、adipisを冠してアジピン酸と名付けられました。

アジピン酸の性質

エタノールに溶けやすく、熱水やアセトンにも可溶です。水にわずかに溶け、水溶液は酸性を示します。

1分子あたり2つの酸性基を持ち、水中で2つのプロトンを放出できる二塩基酸の一つです。pKa値4.4と5.4において、2段階のプロトン解離を起こします。

2つのカルボン酸基が4つのメチレン基で隔てられているため、アジピン酸は分子内縮合反応します。水酸化バリウムを加えて高温で処理するとケトン化し、シクロペンタノンが生成します。
(CH2)4(CO2H)2 → (CH2)4CO + H2O + CO2

また、アジピン酸を高温で加熱すると、無水アジピン酸になります。

アジピン酸の製法

アジピン酸は、シクロヘキサンを酸化することにより得られます。まず、ケトンアルコールオイルと呼ばれるシクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混合物を用意し、これを硝酸で酸化することで、多段階の経路を経てアジピン酸を得ます。反応の初期にシクロヘキサノールはケトンに変換され、亜硝酸が放出されます。
C6H11OH + HNO3 → (CH2)5CO + HNO2 + H2O

多段階の反応過程で、次式に従ってシクロヘキサノンはニトロソ化され、C-C結合が切断されます。

HNO2 + HNO3 → NO+NO3- + H2O
OC6H10 + NO+ → OC6H9-2-NO + H+

この製法の副産物として、グルタル酸コハク酸があります。ここにおいて、アジピン酸に対して約1対1のモル比で亜酸化窒素(N2O)が生成されます。

亜酸化窒素が発生しない、代替製造方法としては、次式に従ってブタジエンをヒドロカルボキシル化する方法や、過酸化水素を用いてシクロヘキセンを酸化開裂させる方法が提案されています。

CH2=CH-CH=CH2 + 2 CO + 2 H2O → HO2C(CH2)4CO2H

アジピン酸の使用用途

アジピン酸は、各種有機合成原料として使用され、特にナイロン-66やポリエステル樹脂などの高分子製造の原料モノマーとして多く利用されています。また、アルキド樹脂や医薬品等の合成原料としても利用されています。

アジピン酸は他にも、食品添加物として酸味料、品質改良剤、膨張剤等に使われています。また、酸の標準物質として、アルカリ標準液の標定にも用いられています。

アジピン酸をオクチルアルコール、デシルアルコール等とエステル化して得られるジエステルは、可塑剤や合成潤滑油として使用されています。

アジピン酸の安全性

アジピン酸は、他のカルボン酸と同様に、軽度の皮膚刺激性があります。毒性は穏やかで、ラットに経口摂取させた場合の致死量は中央値で3600mg/kgです。

環境面としては、アジピン酸の生産において排出される亜酸化窒素(N2O)は、成層圏のオゾン層破壊を引き起こす物質であること、また二酸化炭素の約300倍の温室効果を有することが指摘されています。そのため、この排出を抑制する必要があり、アジピン酸メーカーでは、次式に従って、亜酸化窒素を触媒作用によって窒素と酸素に変換するプロセスを導入しています。
2 N2O → 2 N2 + O2

アクリルアミド

アクリルアミドとは

アクリルアミドとは、アクリロイル基 (-COCH2) とカルバモイル基 (-CONH2) を有する有機化合物です。

常温では無臭白色の結晶の物質です。別名、アクリル酸アミド、アクリルアミドモノマーとも呼ばれます。

アクリルアミドの使用用途

アクリルアミドは、ほぼ全量がアクリルアミドポリマー (ポリアクリルアミド) の原料として使用されています。アクリルアミドがそのまま別の用途に使用されるケースとしては、他のポリマーに少量モノマー成分として使用される以外はほとんどありません。なお、クリルアミドポリマーの使用用途は以下のとおりです。

1. 凝集剤

ポリアクリルアミドは、汚水処理などで凝集剤として利用されます。ポリアクリルアミドは、水と混合すると、水の表面張力を減少させるため、水中の不純物や浮遊物を凝集させ、ろ過によって取り除くことができます。このため、水処理においては、混凝処理や浄水場でのろ過工程前に添加されます。

2. 接着剤

ポリアクリルアミドは、接着剤の原料としても利用されます。ポリアクリルアミドをモノマーとする重合体は、熱可塑性や粘着性に優れているため、接着剤として使用されます。例えば、木材やプラスチックなどの素材を接着する際に使用されます。

3. 農業分野

ポリアクリルアミドは土壌改良用途用、特に土壌の保水性や透水性を改善するため、農業分野で利用されています。具体的には、農地に散布することで、土壌中の水分や栄養素を保持し、作物の生育を促進することができます。

4. 医療分野

ポリアクリルアミドは、医療用品などの原料としても使用されます。具体的には、血液や体液を凝固させる作用があるため、手術や出産時の止血剤として使用されることがあります。

5. その他

アクリルアミドポリマーは、紙力増強剤や繊維加工、漏水防止剤、染料、UV塗料、レンズ材料など、シェービングジェルや整髪剤などの化粧品にも利用されます。化粧品に使用する場合、保湿剤や増粘剤としての用途が多いです。アクリルアミドポリマーは、核酸およびタンパク質解析におけるPAGEゲル電気泳動で、マトリックスとしても使用されています。

アクリルアミドの性質

アクリルアミドは、分子式 (CH2=CHCONH2) 、分子量71.08の無色透明な結晶状の粉末で、水に溶解しやすく、エタノールジエチルエーテルにも溶解します。室温では安定した物質ですが、紫外線を受けることで重合が起こることがあります。また、水やアルコール、アセトン等に可溶ですが、ベンゼンヘプタンには不溶です。

加熱すると84.5℃で溶融し、急激に反応してポリアクリルアミドになります。アクリルアミドは、発がん性物質である可能性があるため、長期的な摂取や曝露には注意が必要です。特に、炭水化物を多く含む食材を高温加熱した食品に含まれていることが多く、食品安全上の問題となっています。

また、アクリルアミドは皮膚や目に刺激性があり、吸入すると呼吸器系に影響を与えるため、取り扱いには十分な注意が必要です。

アクリルアミドのその他情報

アクリルアミドの製造方法

アクリロニトリルを酸触媒 (硫酸塩酸など) の存在下で加水分解する方法です。この反応は以下のように表されます。

CH2=CHCN + H2O → CH2=CHCONH2

この反応では、アクリロニトリルと水が反応してアクリルアミドが生成します。また、酸触媒によってニトリル基の加水分解が促進されます。

その他、アクリロニトリルの加水分解反応をニトリルヒドラーゼという微生物由来の酵素を用いて合成することも可能です。ニトリルヒドラーゼはニトリルを加水分解する酵素で、製造効率の観点で優れているため、工業的にも採用されています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/79-06-1.html

アクリル酸メチル

アクリル酸メチルとは

アクリル酸メチルの構造

アクリル酸メチル (Methyl Acrylate) とは、アクリル樹脂の原料として広く使用されている有機化合物です。

アクリル酸エステルの一種であり、MAと省略形で表記されることもあります。IUPAC命名法では、プロペン酸メチル (methyl propenoate) と呼ばれます。

化学式CH2=CHCOOCH3を持つエステル化合物で、果実に近いエステル臭を強く持つ無色透明の液体です。揮発性と引火性が高いため、危険物第4類第1石油類非水溶性液体に指定されています。

アクリル酸メチルの使用用途

アクリル酸メチルは、主にアクリル樹脂の原料として広く使用されています。

具体的には、繊維、樹脂、粘接着剤、塗料、エマルジョン、繊維処理剤などの用途が一般的です。さまざまな産業界でも広く活用されており、自動車部品や皮革加工、紙加工、アクリルゴムの製造にも使用されています。

加えて、高い透明性や耐熱性、耐溶剤性を示すため、液晶パネルやスマートフォンなどの画面保護フィルムなどにも応用されています。

アクリル酸メチルの原理

アクリル酸メチルは、化学式CH2=CHCOOCH3で表されます。分子量は86.1、沸点は80.3℃、融点は-76.5℃、引火点は-2.8℃です。無色透明の液体で、水に対しては可溶性を示します 。CAS番号は96-33-3で、化学物質としては危険物第4類に分類されています。

1. アクリル酸メチルの合成方法

アクリル酸メチルの合成方法

図2. アクリル酸メチルの合成方法

アクリル酸メチルは、主にプロピレンやアクロレインを原料として合成されます。プロピレンを酸化してアクロレインを生成し、その後アクロレインを酸化することでアクリル酸を得る方法が一般的です。

アクリル酸メチルは、アクリル酸メタクリル酸系のエステルの中でも特に重合しやすい物質です。尚、不純物として酢酸メチルやプロピオン酸メチルが含まれることがあります。

また、製造過程で生成される副生成物(ギ酸、酢酸など)は、適切に管理し、環境負荷を最小限に抑えることが求められます。

アクリル酸メチルの種類

アクリル酸メチルは、試薬用途としての小型製品から産業用途としての大型製品まで、幅広いラインナップががあります。。

安定性が低く重合しやすい性質を持つため、 重合防止剤として、ヒドロキノンモノメチルエーテルを含んでいることが一般的です。

アクリル酸メチルのその他情報

アクリル酸メチルの安全性情報

アクリル酸メチルの蒸気と空気が混合すると、非常に引火性が高まり爆発を起こす危険性があるため、注意が必要です。

また、下記に示すとおり、人体に対してもさまざまな有害性が指摘されています。

  • 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷
  • 重篤な眼の損傷
  • 吸入すると有毒
  • 発がんのおそれ
  • 呼吸器の障害
  • 水生生物に毒性

取り扱いの際は、保護メガネや保護手袋など保護具の着用を徹底しましょう。法令においても、下記とおり有害性が指摘されています。

  • 消防法: 第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体
  • 労働安全衛生法: 危険物・引火性の物、健康障害防止指針公表物質、名称等を表示すべき危険物及び有害物、名称等を通知すべき危険物及び有害物、危険性又は有害性等を調査すべき物、作業場内表示義務
  • 化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法): 第1種指定化学物質

アクリル酸メチルの取り扱い時の注意点

アクリル酸メチルを取り扱う際は、十分な換気を行い、蒸気が蓄積しないよう配慮する必要があります。また、裸火や火花、煙草などの発火源を周囲から取り除き、火災発生のリスクを低減することが大切です。

加えて、作業時には適切な保護具(手袋や保護メガネ、防毒マスクなど)を着用し、皮膚や目への接触を避けることが重要です。万が一、作業時にアクリル酸メチルが漏出した場合は、砂や珪藻土などの吸収剤を用いて適切に処理します。

アクリル酸メチルを保管する際には、容器を開けたままにせず、接地して静電気対策を行います。また、温度が上昇すると重合が急速に進み、爆発の危険性があります。そのため、冷暗所に保管し、密閉された容器で保存することが重要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/96-33-3.html

スプリングベンダー

スプリングベンダーとは

スプリングベンダー (Spring Bender) とは、配管やパイプなどの断面を潰さずに曲げることができる工具です。

スプリング構造をしているためスプリングベンダーと呼ばれています。大まかに、管の中に差し込んで曲げるタイプと、管の外側に装着して曲げるタイプの2種類があります。管の直径や材質にあったベンダーを選び、変形や潰れを防ぎながら手軽に管を曲げられる便利なツールです。

スプリングベンダーの使用用途

スプリングベンダーは、銅管、アルミ管、ステンレス管などの金属管を所定の角度に曲げる作業で使われます。壁から出て急激に曲げる必要がある場合などに重宝です。配管工事、自動車の製造や修理、エアコンや冷蔵・冷凍機器の配管、電気工事など、さまざまな用途があります。以下にそれぞれの用途ついて説明します。

  • 配管工事:水道やガス、冷媒などの配管を成形するために使用
  • 自動車製造・修理:ブレーキや燃料のラインで金属管を精密に曲げ加工するために使用
  • エアコン、冷蔵・冷凍機器:冷媒配管を成形するために使用
  • 電気工事:コンジットを曲げて配線ルートを調整するために使用

スプリングベンダーの原理

スプリングベンダーは管の内外に均一に力を分散させることで、管が潰れたり変形したりするのを防ぎます。管の内側に挿入するタイプでは内側から形状を保持し、外側に装着するタイプでは外側にかかる力を分散させます。手作業で管を曲げる作業では、スプリングを支点とすれば効率よく力を加えて曲げることが可能です。

管の内部に挿入するタイプでは、引き抜く際に切れてしまうことがあるので注意が必要です。また、角度を付けすぎると抜けにくくなるため、曲げた後の処理も考えながら注意深く加工します。

スプリングベンダーの種類

スプリングベンダーには、管の内側に挿入するタイプと管の外側に装着するタイプがあります。前者は内挿式スプリングベンダーあるいはインサイドスプリングと呼ばれ、特に細い管や柔らかい材質 (銅管、アルミ管など) の加工に適したベンダーです。曲げる際に管の内径が潰れるのを防げます。後者は外装式スプリングベンダーあるいはアウトサイドスプリングと呼ばれ、曲げる際に管の外側が膨らむのを防ぎ、均一な曲げ加工を実現します。

スプリングベンダーの選び方

スプリングベンダーは、曲げる管の性質を考慮して、適した製品を選びます。アルミや銅を素材にした柔らかい管には内挿式、被覆管には外装式が適しています。ステンレス製とスチール製のベンダーがあり、錆びにくさと強度が求められる場合にはステンレス製、取り外しやすさが求められる場合にはメッキ加工を施したスチール製がおすすめです。また、スチール製は安価に抑えられます。

スプリングベンダーは特定の外径に対応して設計されるため、曲げる管のサイズに合ったものを選びます。一般的なサイズ例は6mm、8mm、10mm、12mmです。素材やサイズによって、最小の曲げ半径が決まっているため、それに対応したベンダーを選んでください。長期的な使用頻度を考慮して、コストパフォーマンスの良いものを選ぶことも大切です。

スプリングベンダーのその他情報

スプリングベンダーを使用する際には、いくつかの注意点があります。これらを守ることで、効率的かつ安全に作業を行い、製品や材料を損傷から守ることが大切です。以下に主な注意点を説明します。

1. 材質・サイズの適合性

スプリングベンダーは特定の材質に最適化されています。柔らかい銅管やアルミ管には適していますが、硬いステンレス管や鉄管には適さない場合がありますので注意が必要です。また、使用する管の外径に適合したスプリングを選び曲げ加工の品質を確保します。

2. 曲げ半径の制限を確認

管それぞれに「最小曲げ半径」があり、それを超えると管が潰れる、折れる、または亀裂が入る可能性があるため注意が必要です。無理に急な角度を作ろうとすると、管の内部構造を破壊するリスクがあります。

3. 内挿式の注意点

内挿式スプリングベンダーの場合には、スプリングを完全に管の中に挿入しないと、曲げ加工中にスプリングが管内で動かなくなり、取り出せなくなる可能性があります。また、取り出しやすいように、スプリングの一部を管の外に残す工夫が必要です。

4. 作業環境の安全

作業中に管が滑ることを防ぐため、管や手に油分や水分がついていないか確認することが大切です。また、安定した作業台の上で作業してください。ベンダーや管がずれたり転がったりするリスクを減らせます。

5. 事前にスプリングの状態を確認

使用する前に損傷がないか、ひび割れや曲がりがないかを確認します。長期間使用したスプリングは、経年劣化で硬度が低下することがあるため、定期的に交換を検討してください。

万能ソケット

万能ソケットとは

万能ソケットとは、一つで色々なサイズ、形状のネジ、ボルト、ナットなどを簡単に締めたり緩めたりすることができる工具です。

仕組みは、ソケット内部に多数のバネピンが設置されており、ピンにボルトを押し当てるとボルトの形にピンが引っ込みます。そして、引っ込んでないピンが、ボルトに引っかかることで回せるようになっています。

同じく、様々な種類のネジやボルトに対応することのできる「スプラインソケット」というソケットがあります。こちらは、内部に複数の溝があり、その溝に引っ掛けて回すタイプのソケットです。

万能ソケットの使用用途

万能ソケットの用途は、ネジやボルトを締付け、緩め作業です。

ラチェットハンドルなどに差し込み、手作業用として使用されています。また、ソケット専用アダプターを使えば電動ドライバー、インパクトドライバーとしても使用可能です。上部から力をかけて回すのと違い、横から回す場合は、力がかけにくいため、電動ドライバーとして使用できることが大変便利です。

「機械部品製造業」「自動車整備工場」「建築」「電設工具」として使用されています。また、ご家庭でのDIYや日曜大工でも利用されています。

万能ソケットの選び方

万能ソケットの選ぶポイントは、差し込み角と対応サイズです。

  1.  工具の差し込み角
    自身が持っているレンチなどの工具の差し込み角と万能ソケットが合わなければ使用できません。差し込み角は、9.5mmか12.5mmが多いです。
    もし、万能ソケットと工具の差し込み角が合わなかった場合には、変換アダプターがあるのでこちらを利用しましょう。
  2.  対応サイズ
    万能ソケットの対応サイズは、主に2つに分けられます。7-19mm程度のレギュラーサイズと11-32mm程度のジャンボサイズです。ネジのサイズに合ったソケットでないと作業ができません。例えば、小さなネジは、ジャンボサイズのソケットでは回せません。サイズ別でいくつか揃えておくことをおすすめします。
  3. その他
    万能ソケットにも欠点があります。それは万能ソケットの構造上均一にトルクがかからないということです。トルクをかけて作業したい場合には、スプラインソケットがおすすめです。スプラインソケットは、様々なサイズには対応していないため、セットで購入しておくといいでしょう。

マイナスビット

マイナスビットとは

マイナスビットとは、先端がマイナスドライバーの形状になっている先端工具です。ネジやボルトの頭部が、マイナスネジかプラスマイナスネジになっているタイプのネジに利用できます。

電動ドライバーなどの電動工具に装着し、高速で回転させることでビスをねじ込ませるなどの作業ができます。

電動工具としてだけでなく、ビット差し替えドライバーに装着すれば、手作業用としても使用できます。

各メーカーからサイズや材質の違いにより、様々な種類のマイナスビットが販売されています。

マイナスビットの使用用途

マイナスビットの主な用途は、ネジ頭部の形状がマイナスネジ、プラスマイナスネジになっているタイプのネジ回しとして使用されています。

マイナスネジ自体が少ない為、プラスビットに比べると使用頻度は低くなります。

マイナスネジには作りがシンプルゆえに埃やゴミが溜まりにくいという利点があります。そのため、キッチンや風呂場などの水回り、配管まわりの水圧の調整など埃や汚れ、石などが詰まりやすい環境で大変重宝されています。

マイナスビットの選び方

「サイズ」「材質の種類」「形状」の違いにより、様々な種類が販売されています。

サイズ

刃先の寸法は、3mm―10mm、長さは45mm―75mmの範囲で展開されています。

材質

「カーボン」「ニッケル」「クロム」「モリブデン」の4種類があります。ニッケル材質のビットが多く販売されています。
マグネット入りのビットは、磁力によってネジやビスを吸着させるため、落下させることなく簡単に作業することができます。

 形状

  • 方頭ビットと両頭ビット:両頭ビットとは、ビットが両端に付いているビットのことです。マイナスビットの場合、もう片方はプラスビットとなります。
  • スリムビット:ネジの頭部が見えやすいように先端部分が細くなっているビットのことです。狭い場所での作業や細めのネジを使用する作業に重宝します。
  • 段付きビット:軸が細く、狭い場所での作業に向いています。スリムビットよりも細い部分が長く、折れやすいので注意が必要です。
  • トーションビット:ビットの中央部分にくびれを持たせることで、ネジ締めの際の衝撃を吸収し緩和させることができます。

用途に合った種類のマイナスビットを選ぶことで、効率的に安全に作業を行うことができます。

L型ドライバー

L型ドライバーとは

L型ドライバーとは、アルファベットの「L」に似た独特の形状をしており、狭い場所や届きにくい場所にあるネジやボルトにアクセスできるように設計された工具です。

「アングルドライバー」とも呼ばれます。プラスやマイナス、六角など、さまざまなタイプのネジに対応できるよう、サイズや形状が豊富に用意されています。自動車修理や電子機器、狭い場所や角度のある機械的用途によく使われます。

L型ドライバーの使用用途

L型ドライバーの用途は、従来のドライバーでは届かないような狭い場所にあるネジやボルトを締めたり緩めたりすることです。L字型に設計されているため、手を作業面から離したまま、ネジやボルトにトルクをかけることができます。電子機器や機械など、ネジやボルトに手が届きにくい場所での作業時に特に有効です。

プラスやマイナス、六角など、さまざまなネジの頭の種類に対応できるよう、サイズや形状のバリエーションが豊富です。また、狭い場所での作業でも人間工学に基づいた快適な握り心地を実現し、手の疲労を軽減して生産性を高めることができるよう設計されています。L型ドライバーは、自動車修理、電子機器、製造業など、さまざまな業界で幅広い用途に使用できる汎用性の高い工具です。

L型ドライバーの原理

L型ドライバーの原理は、ネジやボルトを締めたり緩めたりするためにかかる回転力である「トルク」の概念に基づいています。L字型デザインは、狭い場所や届きにくい場所にあるネジやボルトでも、このトルクをかけることができます。

工具の先端をネジやボルトの頭部に当て、ハンドルを回して回転力を加えます。そして、工具の角度を調整することで、ネジやボルトに必要なトルクをかけることが可能です。また、L字型に設計されているため、人間工学に基づいた快適な握り心地を保ちながら必要な力を加えることができ、手の疲れや怪我のリスクを軽減します。

L型ドライバーの種類

L型ドライバーにはいくつかの種類があり、それぞれ用途に合わせて設計されています。

1. 標準的なL型ドライバー

L型ドライバーの中で最も基本的なタイプで、従来のドライバーの先が90度に曲がっています。

2. オフセットL型ドライバー

従来のドライバーのグリップ部分がないので短く、狭い場所にあるネジやボルトに手が届くドライバーです。

3. ボールポイントL型ドライバー

軸の先端がボール状になっており、中心から最大25度ずれた角度で作業ができるドライバーです。ネジやボルトが直線でない場合に有効です。

4. ラチェット式L型ドライバー

ラチェット機構により、工具を取り外すことなく、ネジやボルトを回すことができるドライバーです。

5. マグネット式L型ドライバー

先端が磁石になっているため、ネジやボルトを固定し、工具からの脱落を防ぐことができます。小さなネジやボルトを扱うときに便利な機能です。

6. 電動式L型ドライバー

電動ドライバーの先端に装着するL型のドライバーアダプターで、「L型アダプター」と呼ばれます。

L型ドライバーの選び方

L型ドライバーの選び方は、用途、ネジやボルトの種類、必要な工具のサイズや形状など、いくつかの要因によって異なります。

1. 用途

L型ドライバーは、用途によって設計が異なります。電子工作をする場合は、先端が小さく精密なドライバーが必要です。自動車修理の場合は、狭い場所のネジに届くように軸の長いドライバーが必要になります。作業内容をよく考えて、その条件に最も適したドライバーを選びます。

2. ネジやボルトの頭

L型ドライバーには、さまざまなサイズや形状のものがあり、ネジやボルトの頭の種類に合わせることができます。ネジやボルトの頭の形に合わせて選びます。プラス、マイナス、六角などの種類が一般的です。

3. サイズ

ドライバーは、作業するネジやボルトに適したサイズのものを選びます。小さすぎたり大きすぎたりするドライバーを使うと、ネジやボルトを傷つけてしまい、作業が難しくなることがあります。

4. ハンドル

人間工学に基づいた快適なハンドルが付いたL型ドライバーを選ぶことによって、しっかりと握ることができ、手の疲れや怪我のリスクを軽減します。また、グリップ力を高めたり、滑りにくくする工夫がされているハンドルもあり、力が必要な作業にも役立ちます。

5. 品質

クロムバナジウム鋼など、丈夫で長持ちする高品質の材料で作られており、先端は、ネジやボルトの頭部にうまくフィットするように精密に研磨されているものが良いです。

四角ビット

四角ビットとは

四角ビットとは、先端の形状が正方形になっていて、ネジ頭部が四角にくり抜かれている四角ネジ専用のビットのことです。「スクエアビット」とも呼ばれています。

四角ネジは、高トルクをかけても折れにくいという点から主にサッシや筋交い金具など建築現場で使用されています。

電動ドライバーなどの電動工具に装着し、高速で回転させ、ビスをねじ込ませるなどの作業に便利です。

各メーカーからサイズや材質の違いにより、様々な種類の四角ビットが販売されています。

四角ビットの使用用途

四角ビットの主な用途は、四角ネジの締付、緩め作業です。

四角ネジは、たくさんネジを締める際にビットのすべりが少ない上にあまり磨耗や破損もしないという特性があります。そのため、高トルクをかけるネジによく使用されています。例えば「サッシ」「耐震金物(筋交いプレートなど)」「輸入建築」「合板床パネル」「LCボード」「足場つなぎ」などの場面で重宝されています。

四角ビットと四角ネジは、サイズが合わないと使用できません。そのため、購入する際には確認が必要です。サイズは、mm、インチ、SQ(SQUAREより)で表記されています。

四角ビットの選び方

四角ビットは、サイズと形状の違いにより選ぶことができます。

サイズ

刃先のサイズは、3種類です。サイズによって用途が変わります。

  • SQ NO.1[3/32インチ(2.4mm)]:細いビス全般
  • SQ NO.2[1/8インチ(3.0mm)]:スチールハウス、輸入住宅、ログハウスの組立ビス
  • SQ NO.3[9/64インチ(3.5mm)]:ALC床、ボード固定用ビス

サイズが合わないと使用できないため、購入する際はしっかりと確認してください。
長さは、25mm、65mm、110mm、150mmの4種類です。

形状

  • 方頭ビットと両頭ビット:両頭ビットとは両端にビットが付いているものです。両端とも四角ビットの場合と片方がプラスビットの場合があります。
  • トーションビット:両頭ビットの中央部分がくびれているビットです。ネジ締めの時の衝撃を吸収し緩和させることができ、ビスの折れや刃先が割れるのを防止できます。

その他

先端にマグネットが付いている四角ビットは、磁力によってしっかりキャッチしてくれるので落下の心配がありません。そのため、小さなビスや手の届きにくい狭い場所での作業に大変便利です。

効率的に安全に作業を行うためにも用途に合った種類の四角ビットを選びましょう。

ダイヘッド

ダイヘッドとは

ダイヘッド (英: Die heads) とは、ビルの配管などに使用されるパイプのねじ切り機に取り付けるドーナツ形状をした工具です。

異なる太さのパイプを扱う場合、ダイヘッドを交換するだけで、幅広いパイプに対応可能です。この工具にはパイプのねじを切る刃 (チェーザ) が取り付けられており、手動式や自動式のねじ切り機に簡単に固定できます。ねじ切り機を効率よく活用できるほか、工具の交換が簡単で手間を削減できる点がメリットです。

ダイヘッドの使用用途

ダイヘッドは、水道管の接続やエアコンの配管、ガス管の取り付けなどが使用用途です。

1. 水道管の接続

キッチンシンクに取り付けられた蛇口と配管を接続する際、ねじ付きのパイプが使われます。このねじ部分の適切な加工により、水漏れのない確実な接続が可能です。

2. エアコンの配管

エアコンの冷媒配管には銅製のパイプが使われます。接続部分にねじを作る際、ダイヘッドが使用されます。ねじが正しく取り付けられていれば、冷媒ガスが漏れる心配はありません。

3. ガス管の取り付け

ガスコンロや給湯器などのガス配管も、ダイヘッドで加工されたねじ部で接続されます。ガスコンロを設置する際、パイプに作られたねじがぴったりかみ合うことで、安全なガス供給が可能になります。

ダイヘッドの原理

ダイヘッドの原理は、回転運動とチェーザの組み合わせによる切削です。

1. ねじ切り機による回転運動

ねじ切り機に固定されたダイヘッドは、モーターや手動ハンドルによって回転します。この回転運動により生じた力によって、パイプの外周にねじ山を形成可能です。回転数やトルクは、パイプの材質やサイズに応じて調整されます。

2. チェーザによる切削

ダイヘッドの内部には、4枚またはそれ以上の刃 (チェーザ) が等間隔に配置される構造です。これらの刃が回転するダイヘッドの内側でパイプと接触し、パイプの外周を削りながらねじ山を形成します。チェーザの形状や角度は、JIS (日本工業規格) やANSI (米国規格) などの規格に適合しており、精度の高いねじ加工が可能です。

3. 切削屑の排出

パイプの表面を削る際、金属の削り屑 (バリ) が発生します。バリをスムーズに排出するために、ダイヘッドには切削屑の排出溝が必要です。またねじ切り油 (切削油) の使用により、摩擦を低減し刃の寿命を延ばせます。

ダイヘッドの種類

ダイヘッドは、仕上げ方式、パイプ材質、対応サイズによってそれぞれ分類されます。

1. 切上げ方式による分類

ねじ切り作業の終わり方によって2つに分類されます。

  • 自動切上げ
    作業が設定したねじの長さに達すると、自動的に切削が終わる仕組みです。作業効率が良く、ねじを大量に加工する際に便利です。建設現場や工場の生産ラインなど、繰り返し作業が求められる環境に適します。
  • 手動切上げ
    作業者が終了タイミングを判断して操作する方式です。柔軟性が高く、特殊なねじ加工や現場ごとに異なる仕様のねじを加工する設備配管やメンテナンス作業に利用されます。

大量加工が必要なら自動切上げ方式、柔軟な調整が必要なら手動切上げ方式を選びます。

2. パイプ材質による分類

加工するパイプの材質に応じて使い分けます。

  • 鋼管用
    一般的な鉄製のパイプに使用されるタイプです。耐久性が高く、住宅の給水・排水配管、機械の冷却水配管など幅広い用途に利用できます。
  • ステンレス管用
    硬度が高く耐食性に優れたステンレス管に対応可能です。食品加工や化学工場など、腐食しやすい環境での配管に使用されます。
  • 塩ビ管用
    柔らかいプラスチック製パイプの加工に調整されたタイプです。水道や排水管など、軽量で取り扱いやすい配管に適します。

汎用的な鉄製パイプなら鋼管用、耐食性が必要ならステンレス管用、軽量なパイプなら塩ビ管用を選びます。

3. 対応サイズによる分類

対応するパイプのサイズによって種類があります。

  • 単一サイズ対応型
    特定のパイプ径専用で、簡単な操作と高い精度が特徴です。同じ径のパイプを繰り返し加工するケースに適します。
  • 多サイズ対応型
    調整機構を備えており、さまざまなパイプ径に対応可能です。異なる径のパイプを扱う現場では、工具を使い分ける手間が省けます。

特定のサイズを加工するなら単一サイズ対応型、異なるサイズのパイプを扱うなら多サイズ対応型を選びます。