ダイヘッドとは
ダイヘッド (英: Die heads) とは、ビルの配管などに使用されるパイプのねじ切り機に取り付けるドーナツ形状をした工具です。
異なる太さのパイプを扱う場合、ダイヘッドを交換するだけで、幅広いパイプに対応可能です。この工具にはパイプのねじを切る刃 (チェーザ) が取り付けられており、手動式や自動式のねじ切り機に簡単に固定できます。ねじ切り機を効率よく活用できるほか、工具の交換が簡単で手間を削減できる点がメリットです。
ダイヘッドの使用用途
ダイヘッドは、水道管の接続やエアコンの配管、ガス管の取り付けなどが使用用途です。
1. 水道管の接続
キッチンシンクに取り付けられた蛇口と配管を接続する際、ねじ付きのパイプが使われます。このねじ部分の適切な加工により、水漏れのない確実な接続が可能です。
2. エアコンの配管
エアコンの冷媒配管には銅製のパイプが使われます。接続部分にねじを作る際、ダイヘッドが使用されます。ねじが正しく取り付けられていれば、冷媒ガスが漏れる心配はありません。
3. ガス管の取り付け
ガスコンロや給湯器などのガス配管も、ダイヘッドで加工されたねじ部で接続されます。ガスコンロを設置する際、パイプに作られたねじがぴったりかみ合うことで、安全なガス供給が可能になります。
ダイヘッドの原理
ダイヘッドの原理は、回転運動とチェーザの組み合わせによる切削です。
1. ねじ切り機による回転運動
ねじ切り機に固定されたダイヘッドは、モーターや手動ハンドルによって回転します。この回転運動により生じた力によって、パイプの外周にねじ山を形成可能です。回転数やトルクは、パイプの材質やサイズに応じて調整されます。
2. チェーザによる切削
ダイヘッドの内部には、4枚またはそれ以上の刃 (チェーザ) が等間隔に配置される構造です。これらの刃が回転するダイヘッドの内側でパイプと接触し、パイプの外周を削りながらねじ山を形成します。チェーザの形状や角度は、JIS (日本工業規格) やANSI (米国規格) などの規格に適合しており、精度の高いねじ加工が可能です。
3. 切削屑の排出
パイプの表面を削る際、金属の削り屑 (バリ) が発生します。バリをスムーズに排出するために、ダイヘッドには切削屑の排出溝が必要です。またねじ切り油 (切削油) の使用により、摩擦を低減し刃の寿命を延ばせます。
ダイヘッドの種類
ダイヘッドは、仕上げ方式、パイプ材質、対応サイズによってそれぞれ分類されます。
1. 切上げ方式による分類
ねじ切り作業の終わり方によって2つに分類されます。
- 自動切上げ
作業が設定したねじの長さに達すると、自動的に切削が終わる仕組みです。作業効率が良く、ねじを大量に加工する際に便利です。建設現場や工場の生産ラインなど、繰り返し作業が求められる環境に適します。 - 手動切上げ
作業者が終了タイミングを判断して操作する方式です。柔軟性が高く、特殊なねじ加工や現場ごとに異なる仕様のねじを加工する設備配管やメンテナンス作業に利用されます。
大量加工が必要なら自動切上げ方式、柔軟な調整が必要なら手動切上げ方式を選びます。
2. パイプ材質による分類
加工するパイプの材質に応じて使い分けます。
- 鋼管用
一般的な鉄製のパイプに使用されるタイプです。耐久性が高く、住宅の給水・排水配管、機械の冷却水配管など幅広い用途に利用できます。 - ステンレス管用
硬度が高く耐食性に優れたステンレス管に対応可能です。食品加工や化学工場など、腐食しやすい環境での配管に使用されます。 - 塩ビ管用
柔らかいプラスチック製パイプの加工に調整されたタイプです。水道や排水管など、軽量で取り扱いやすい配管に適します。
汎用的な鉄製パイプなら鋼管用、耐食性が必要ならステンレス管用、軽量なパイプなら塩ビ管用を選びます。
3. 対応サイズによる分類
対応するパイプのサイズによって種類があります。
- 単一サイズ対応型
特定のパイプ径専用で、簡単な操作と高い精度が特徴です。同じ径のパイプを繰り返し加工するケースに適します。 - 多サイズ対応型
調整機構を備えており、さまざまなパイプ径に対応可能です。異なる径のパイプを扱う現場では、工具を使い分ける手間が省けます。
特定のサイズを加工するなら単一サイズ対応型、異なるサイズのパイプを扱うなら多サイズ対応型を選びます。