アクリル酸メチル

アクリル酸メチルとは

アクリル酸メチルの構造

図1. アクリル酸メチルの構造

アクリル酸メチル (Methyl Acrylate) とは、アクリル酸エステルの一種である有機化合物です。

MAと省略形で表記されることもあります。IUPAC命名法では、プロペン酸メチル (methyl propenoate) と呼ばれます。

二重結合を有するエステル化合物で、分子式はCH2=CHCOOCH3です。自然界の果実などの匂いに近い、エステル臭と呼ばれる強い匂いのする無色透明の液体です。揮発性かつ引火性物質として、危険物第4類第1石油類非水溶性液体に指定されています。

アクリル酸メチルの使用用途

アクリル酸メチルは、各種化学反応の反応剤として汎用性の高い化合物です。そのため、他のアクリル酸エステル一般と同様に、広範な産業分野で製品原料として活用されています。

主な用途は、アクリル繊維、成型用樹脂、粘接着剤、塗料、エマルジョン、繊維処理剤、塗料等の原料です。また、他の樹脂の共重合原料などにも用いられます。

具体的な産業分野の例としては、自動車業界 (各種部品や成型用樹脂) 、皮革加工や紙加工、アクリルゴムの製造等が挙げられます。

また、アクリル酸メチルは、接着剤や粘着剤として透明性や耐熱性、耐溶剤性などにおいて優位です。そのため、液晶パネルやスマートフォンなどの保護シートなどへも応用されています。

アクリル酸メチルの原理

アクリル酸メチルは、分子式CH2=CHCOOCH3で表される、分子量86.1、融点-76.5℃、沸点80.3℃、引火点-2.8℃の化合物です。常温では無色透明の液体であり、密度は0.953〜0.959g/mL (20℃)、水に溶ける性質を示します (6g/100ml水, 20℃) 。CAS登録番号は、96-33-3です。

1. アクリル酸メチルの合成方法

アクリル酸メチルの合成方法

図2. アクリル酸メチルの合成方法

アクリル酸エステルは、オレフィン部分がエステル基の電子求引性によって活性化されており、求核剤と容易に反応可能です。また、自己重合を起こしやすいため、一般的には安定剤としてヒドロキノンモノメチルエーテルが添加されます。

アクリル酸メチルは、アクリル酸メタクリル酸系のエステルの中でも特に重合しやすい物質です。尚、不純物として酢酸メチルやプロピオン酸メチルが含まれることがあります。

アクリル酸メチルの種類

製品としてのアクリル酸メチルには、試薬用途としての小型製品や産業用の大型容量製品等の種類があります。化学試薬としての小型製品の容量は、1mL, 10mL, 25mL, 50mL, 100mLから、500mL, 1L, 2.5L程度までです。

通常、 重合防止剤として、ヒドロキノンモノメチルエーテルが約100〜300 ppm含まれます。産業用の大型製品には、15kg缶、180kgドラム缶、ローリー等の荷姿があります。

アクリル酸メチルのその他情報

アクリル酸メチルの安全性情報

アクリル酸メチルの蒸気と空気の混合気体は引火すると爆発を起こす危険性があるため、注意が必要です。アクリル酸メチル自体も引火性があります。

また、人体への有害性では下記をはじめとする様々な危険性が指摘されています。

  • 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷
  • 重篤な眼の損傷
  • 吸入すると有毒
  • 発がんのおそれ
  • 呼吸器の障害
  • 水生生物に毒性

取り扱いの際は、保護メガネや保護手袋などの保護具が必須です。各種法令では、下記の内容が定められています。

  • 消防法: 第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体
  • 労働安全衛生法: 危険物・引火性の物、健康障害防止指針公表物質、名称等を表示すべき危険物及び有害物、名称等を通知すべき危険物及び有害物、危険性又は有害性等を調査すべき物、作業場内表示義務
  • 化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法): 第1種指定化学物質

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/96-33-3.html

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