アクリルアミドとは
アクリルアミドとは、アクリロイル基 (-COCH2) とカルバモイル基 (-CONH2) を有する有機化合物です。
常温では無臭白色の結晶の物質です。別名、アクリル酸アミド、アクリルアミドモノマーとも呼ばれます。
アクリルアミドの使用用途
アクリルアミドは、ほぼ全量がアクリルアミドポリマー (ポリアクリルアミド) の原料として使用されています。アクリルアミドがそのまま別の用途に使用されるケースとしては、他のポリマーに少量モノマー成分として使用される以外はほとんどありません。なお、クリルアミドポリマーの使用用途は以下のとおりです。
1. 凝集剤
ポリアクリルアミドは、汚水処理などで凝集剤として利用されます。ポリアクリルアミドは、水と混合すると、水の表面張力を減少させるため、水中の不純物や浮遊物を凝集させ、ろ過によって取り除くことができます。このため、水処理においては、混凝処理や浄水場でのろ過工程前に添加されます。
2. 接着剤
ポリアクリルアミドは、接着剤の原料としても利用されます。ポリアクリルアミドをモノマーとする重合体は、熱可塑性や粘着性に優れているため、接着剤として使用されます。例えば、木材やプラスチックなどの素材を接着する際に使用されます。
3. 農業分野
ポリアクリルアミドは土壌改良用途用、特に土壌の保水性や透水性を改善するため、農業分野で利用されています。具体的には、農地に散布することで、土壌中の水分や栄養素を保持し、作物の生育を促進することができます。
4. 医療分野
ポリアクリルアミドは、医療用品などの原料としても使用されます。具体的には、血液や体液を凝固させる作用があるため、手術や出産時の止血剤として使用されることがあります。
5. その他
アクリルアミドポリマーは、紙力増強剤や繊維加工、漏水防止剤、染料、UV塗料、レンズ材料など、シェービングジェルや整髪剤などの化粧品にも利用されます。化粧品に使用する場合、保湿剤や増粘剤としての用途が多いです。アクリルアミドポリマーは、核酸およびタンパク質解析におけるPAGEゲル電気泳動で、マトリックスとしても使用されています。
アクリルアミドの性質
アクリルアミドは、分子式 (CH2=CHCONH2) 、分子量71.08の無色透明な結晶状の粉末で、水に溶解しやすく、エタノールやジエチルエーテルにも溶解します。室温では安定した物質ですが、紫外線を受けることで重合が起こることがあります。また、水やアルコール、アセトン等に可溶ですが、ベンゼンやヘプタンには不溶です。
加熱すると84.5℃で溶融し、急激に反応してポリアクリルアミドになります。アクリルアミドは、発がん性物質である可能性があるため、長期的な摂取や曝露には注意が必要です。特に、炭水化物を多く含む食材を高温加熱した食品に含まれていることが多く、食品安全上の問題となっています。
また、アクリルアミドは皮膚や目に刺激性があり、吸入すると呼吸器系に影響を与えるため、取り扱いには十分な注意が必要です。
アクリルアミドのその他情報
アクリルアミドの製造方法
アクリロニトリルを酸触媒 (硫酸や塩酸など) の存在下で加水分解する方法です。この反応は以下のように表されます。
CH2=CHCN + H2O → CH2=CHCONH2
この反応では、アクリロニトリルと水が反応してアクリルアミドが生成します。また、酸触媒によってニトリル基の加水分解が促進されます。
その他、アクリロニトリルの加水分解反応をニトリルヒドラーゼという微生物由来の酵素を用いて合成することも可能です。ニトリルヒドラーゼはニトリルを加水分解する酵素で、製造効率の観点で優れているため、工業的にも採用されています。