メタノール燃料電池

メタノール燃料電池とは

メタノール燃料電池とは、メタノールを燃料として直接用いるタイプの燃料電池のことです。

燃料電池と聞くと水素が燃料のものが一般的ですが、水素ガスを発生させるために大がかりな装置が必要であることや、爆発性のある水素ガスを運搬・貯蔵するための設備には大きなコストがかかるため、燃料電池の導入はハードルが高くなっていました。

しかし、メタノールは液体であるため水素ガスよりも小さな体積で貯蔵することができ、燃料電池の小型化が実現可能です。また水素ガスよりも取り扱いが容易なため、手軽に燃料電池の導入が可能になります。このようなことからモバイル機器への応用などが期待されています。

メタノール燃料電池の使用用途

メタノール燃料電池は電池の発電さえできれば通常の電池と同様に使用が可能です。

現在では二酸化炭素の排出量を減らすためにガソリン車から燃料電池車への切り替えが始まろうとしていますが、現在の燃料電池車は水素で動くものがほとんどです。これにはメタノール燃料電池による発電にまだいくつかの課題があるためです。

しかし、メタノール燃料電池がより一般的になれば、車の動力源やより小さなスマートフォンなどの二次電池などにも使用される可能性もあります。

メタノール燃料電池の原理

メタノール燃料電池には、大きく分けて直接型と改質型の2種類が存在します。

1. 直接型メタノール燃料電池

メタノール燃料電池の反応式

図1. メタノール燃料電池の反応式

メタノールを直接燃料として用いる燃料電池であり、一般的にメタノール燃料電池というとこちらの燃料電池を指すことが多いです。メタノールが反応する燃料極 (負極) と、空気中の酸素が反応する空気極 (正極) で構成されています。各電極での反応式を図1に示します。

燃料極中の白金などの触媒の働きにより、メタノール水溶液内のメタノールが反応することで電子を発生させるので、この燃料が続く限り反応し続けます。メタノールを供給しながら発電することで、長期間にわたり利用することができます。

2. 改質型メタノール燃料電池

メタノールの改質

図2. メタノールの改質

改質とは、メタノールから水素を取り出すことを指します。取り出した水素を燃料として発電するため、発電の原理は一般的な水素を燃料とする燃料電池と全く同様ですが、出発原料がメタノールのためこの電池も含めてメタノール燃料電池と呼ばれることがあります。

メタノールの改質は、メタノールと水蒸気を混合し、や酸化亜鉛、酸化アルミニウムなどの触媒と反応させることで最終的に水素と二酸化炭素に分解されます。

この反応は吸熱反応であるために、反応を進めるには外部から熱を供給する必要があります。反応の進行を促進するためには高温で反応させることが好ましいですが、上記触媒は300℃以上では触媒活性が失活してしまいます。

メタノール燃料電池のその他情報

1. メタノール燃料電池の特徴

メタノール燃料電池の代表的な特徴は以下の通りです。

  • 小型
  • 導入コストの小ささ
  • 動作音が静か
  • 低メンテナンス

一般的な燃料電池では水素タンクも併せて準備する必要がありますが、メタノール燃料電池はその必要がないので小型化することができます。また、火力発電や原子力発電のようにタービンを回さないため、静かな動作音で発電できます。

2. メタノール燃料電池の課題

メタノール燃料電池の被毒

図3. メタノール燃料電池の反応性の低下

メタノール燃料電池は、メタノール水溶液と触れ合う負極側の触媒が、中間生成物の一酸化炭素によって汚染されてしまい反応性が低下してしまう課題があります。これにより燃料電池自体の寿命も短くなります。

また、メタノールが電解質を透過して空気極に達してしまい、発電効率の低下や電池電圧の低下をもたらすメタノールクロスオーバー現象も大きな課題の一つです。安価で安定しやすい一方で製品寿命の短いメタノールを使用した燃料電池は普及までに時間がかかるといえるでしょう。

金属研磨剤

金属研磨剤とは

金属研磨剤

金属研磨剤とは、研磨剤が配合された液体またはペースト剤のことです。

金属研磨剤を金属の上に垂らし、布などで拭き上げることによって金属に付着した酸化被膜や汚れなどを削り取り、金属の表面を滑らかにすることができます。垂らして拭き上げるだけの作業なので、比較的手軽に誰でも使用できます。

金属研磨剤に入っている研磨剤は種類やその粒子が様々で、金属の種類や仕上がりによって適するものを選ぶ必要があります。

金属研磨剤の使用用途

金属研磨剤を使用する場所は磨き上げたい金属がある場所です。

例えばステンレスシンクなどで、はじめ磨かれた状態のものになっていますが、使用していくうちに水垢が付着したり、食器とのこすれ合いによって細かな傷がつき輝きや撥水性を失います。金属研磨剤でこの傷や汚れを取ることによって、きれいな状態になり、撥水性も回復することがあります。

金属研磨剤の原理

金属研磨剤には、研磨剤となる素材が配合されています。金属などを研磨する場合、砥石などを思い浮かべることも多いですが、金属研磨剤に入っているものは、固めていない砥石素材が分散して配合されているようなイメージです。

金属研磨剤の種類

一般的に以下の3種類が使用されることが多いです。

1. グリーンカーボランダム

グリーンカーボランダムは、材質の中で最も硬度が高いダイヤモンドに次ぐ硬さの材質で、刃物のような硬い金属からなどの柔らかい金属まで幅広く対応できます。

2. カーボランダム

カーボランダムは黒色炭化ケイ素系の研磨材で、グリーンカーボランダムには硬度は劣るものの耐久性があるため、柔らかい金属の研磨に合う材質といえます。

4. ホワイトアランダム

ホワイトアランダムは、白色高純度アルミナ系の研磨材で、3種の中では最も硬度の低い材質です。金属だけでなくガラス・水晶などの研磨にも適しています。

固体コンデンサ

固体コンデンサとは

固体コンデンサ

固体コンデンサとは、コンデンサの一種で、誘電体と接触させた電解質に固体を用いた素子です。

従来のコンデンサは電解液に液体 (湿式) もしくはペースト状 (乾式) のものを用いており、コスト面で優れています。しかし、電解液のドライアップ現象や液漏れによる性能劣化、温度変化への脆弱性が課題でした。

これに対して、固体コンデンサは電解質に固体を用いることにより、ドライアップ現象や液漏れを防止し、温度変化や応答性の改善を実現しています。

固体コンデンサの使用用途

固体コンデンサはコンピューターの中でも特に高温で動作し、信頼性や耐電圧性が求められるCPUの周辺に用いられています。大きく分けて無極性コンデンサと有極性コンデンサがあり、前者はセラミックやプラスティックフィルムを用いたもの、後者は導電性高分子や二酸化マンガンを用いたものが知られています。

近年の小型化、高集積化の流れにより、小型かつ大容量が実現可能な有機高分子を用いたものが着目され、開発が進められている状況です。

固体コンデンサの原理

固体コンデンサは陰極に電解液を使用せず、固体の素材を使用しています。固体の素材には導電性高分子等、導電性が高いものを使用することで電荷を溜めたり、放出したりすることが可能です。

コンデンサは金属板で誘電体を挟んだ構造です。誘電体は絶縁体を使用します。この構造からなるコンデンサは、電荷を金属板に溜めることが可能です。電解コンデンサは陰極側の金属板の代わりに電解液を使用しているため、コンデンサの内部に液体を持つ構造をしています。

なお、コンデンサの静電容量は電極の表面積に比例し、電極間の距離に反比例する性質を持ちます。電極の表面積に多孔質の孔を持たせる加工を行い、静電容量を上げている固体コンデンサもあります。

固体コンデンサの特徴

固体コンデンサは電極及び誘電体、電解質から構成されており、求められる容量に応じて積層して使用されます。

1. 無極性の固体コンデンサ

無極性の固体コンデンサは電極に金属、誘電体として酸化チタンやフィルムを使用し、電解質は不要です。極性が存在せず正負いずれの電圧も印加可能なため、交流回路にも使用可能であることが特徴です。

特にプラスティックフィルムを用いたものは高価ですが、耐熱性等にも大変優れているため、携帯電話等、耐熱性の高い製品への利用に向いています。

2. 有極性の固体コンデンサ

有極性の固体コンデンサは極性があるため、電圧の向きに制限が生じます。電極には金属、グラファイト等が用いられ、誘電体に金属酸化物、電解質に導電性高分子、二酸化マンガンが用いられます。

有極性の固体コンデンサは無極性のものと比較して定格電圧が低いといったデメリットはあるものの、耐熱性は同様に優れていること、またコンデンサ自体の電気伝導率が高く低発熱であること、大容量の設計が可能であることから、特に導電性高分子を用いたものが主流となりつつあります。

固体コンデンサのその他情報

アルミニウム固体電解コンデンサ

陽極の金属板にアルミニウムを使用しており、電極版の間に使用する誘電体にアルミニウム酸化被膜を使用した固体コンデンサもあります。電極に電圧を印加することで、陽極の表面にアルミニウム酸化被膜を生成できる点がメリットです。酸化被膜生成時には電圧を加えた方向に電流が流れますが、生成と共に流れる電流は減少していきます。

このときに流れる電流を漏れ電流と呼びます。この電流が生じているため、酸化被膜は完全な絶縁体ではありません。しかし、特徴として酸化被膜が作られる電圧以下では電流をほとんど通さず、逆方向に印加した場合も一定の電圧までは電流を流さないのが特徴です。

完全な絶縁体ではありませんが、コンデンサ内の誘電体としては十分に機能します。

歯厚マイクロメーター

歯厚マイクロメーターとは歯厚マイクロメーター

歯厚マイクロメーターとは、平歯車はすば歯車の歯厚を測定するために用いられる特殊マイクロメーターの一つです。

マイクロメーターの両測定子が歯車の測定に適した特殊な形状をしているのが特徴で、複数の歯を挟んで測定する「またぎ歯厚」の測定に使われています。

種類によって寸法表示を目盛りで見る「アナログ式」と、数値がデジタルで表示される「デジタル式」があり、ラチェットストップを用いて定圧で測定します。

歯厚マイクロメーターの使用用途

主に平歯車やはすば歯車のまたぎ歯厚を測定するために使用されています。

また、同じ用途で使われるもう一つの測定方法に「オーバーピン法」と呼ばれる方法があり、測定子に精密加工された鋼球が用いられる「ボール歯車マイクロメーター」を使い、相対する歯の溝に鋼球を挟んで測定する方法もあります。

歯厚マイクロメーターの測定子は、細長い形状をしていて繊細なので、測定する際には取り扱いに十分注意しなければなりません。

歯厚マイクロメーターの特徴

歯厚マイクロメーターを用いたまたぎ歯厚の測定は、測定子の当たり具合や、左右の圧力角の違いによって測定結果に誤差が生じます。

また、歯車のピッチや歯の形状の影響を受けるので、歯車の全周を複数にわたり測定しなければならないので、測定に手間がかかるというデメリットがある一方、歯車の製作時に測定し、測定した値を工作機械の工具追い込み量に換算することができますので、歯厚の測定には最も一般的な測定方法として用いられています。

一方、オーバーピン法は、鋼球を当てて測定するので当たり具合による誤差が生じにくいですが、適切に測定するには歯車の大きさやピッチに合わせた直径の鋼球を用意する必要があり、計算して適切な直径を算出する手間があります。

偶数歯の場合は、相対する歯の溝に当てて測定し、奇数歯の場合は180/z(°)偏った溝にピンを当てて測定します。

内歯車の内径測定は、「ヴィトイーンピン法」とも呼ばれています。

半自動アーク溶接機

半自動アーク溶接機とは

半自動アーク溶接機

半自動アーク溶接機とは、溶接機の中でも溶接のために使用する金属が自動で供給されるタイプの溶接機のことです。

通常金属を溶接する際は、溶接のために必要な溶融金属をトーチと呼ばれる加熱器具で加熱して溶かしながら作業を行いますが、手動で行うと溶融金属を持つ手とトーチを持つ手で両手がふさがってしまい、溶接したい金属の固定がしにくいです。そのため、この溶融金属を溶かす作業のみを自動で行う半自動アーク溶接機が生まれました。

半自動アーク溶接機の使用用途

半自動アーク溶接機は一般的に金属同士を溶接したい時に使用します。溶けた溶融金属が自動的に供給されるため、手動で溶接作業を行うよりもかなり早いスピードでの溶接が可能です。

たくさんの部分を溶接したい時に使用することで作業の効率化が図れますが、手動で溶接するよりも仕上がりは悪くなるデメリットがあるため、トラックの荷台の溶接や構造物を組み立てるためのアングルやパイプの溶接など目につきにくい部分の溶接に使用されることが多いです。

半自動アーク溶接機の原理

半自動アーク溶接機は、トーチと呼ばれる溶融金属を溶かすことができる先端器具と、溶融金属を供給する装置、これらをコントロールする電源で構成されています。トーチにはスイッチレバーが取り付けられており、レバーを押すことによって電流が流れ、溶接したい金属や溶融金属に熱が伝わり溶接ができるようになります。

溶融金属は酸素と反応しないようにする必要があります。そのため一般的な半自動アーク溶接機の先端からはガスが噴出するような設計となっています。

半自動アーク溶接機は噴出するガスの種類によって溶接機の種類も変わります。

シールドガスに二酸化炭素などの炭酸ガスを使用するCO2溶接やアルゴンまたはヘリウムを使用するMIG溶接、炭酸ガス20%とアルゴン80%の混合ガスを使用するMAG溶接などが挙げられます。

しかし、ガスを使用する場合は風の影響を受けやすいため屋内で使用する必要があるため、屋外でも使用できるように近年ではノンガスタイプの半自動溶接機も増えてきています。

半自動アーク溶接機の種類

半自動アーク溶接機には、下記のような種類があります。

1. CO2溶接

二酸化炭素を使用するのでコストが安いのがメリットとして挙げられる他、溶け込みが深く強度にも優れているのが特徴です。仕上がりの面は可も不可もない仕上がりになりますが、スパッタ (火花) が多く出るため火傷のリスクが高いのがデメリットです。

また、CO2は非鉄金属と化学反応を起こすためアルミやステンレスの溶接には使用することができません。建築から自動車のボディ組み立てまで幅広く使用されています。

2. MIG溶接

不活性ガスを使用するのでスパッタが発生しにくく、非常に綺麗な溶接面が実現できるメリットがあります。また、アルミやステンレスといった非鉄金属はMIGでしか溶接できません。

デメリットは不活性ガスのコストが高価であることが挙げられる他、不活性ガスはアークが広がりやすい性質を持つため、溶け込みが浅くなる傾向があります。

したがって強度が他のガスアーク溶接よりも劣るといったデメリットもあります。主に外観の品質に関わる部分の溶接に使われます。

3. MAG溶接

不活性ガスとCO2の混合ガスを用いた溶接で、CO2よりもスパッタが少ない上、MIGと比較するとランニングコストを抑えることができるメリットが挙げられます。

溶け込みも深いので強度にも優れた工法と言えます。一方、CO2を含んでいるためアルミやステンレスの溶接には使えないデメリットがあります。

半自動アーク溶接機のその他情報

半自動アーク溶接機の特徴

溶融するワイヤーが自動で供給されるため、溶接に不慣れな技術者でも比較的溶接がしやすいといったメリットがあります。手溶接の代表である被覆アーク溶接は溶接棒が溶接しているうちに短くなっていくため、母材との距離を最適に保ちながら溶接箇所の終点まで一定の速度で送る必要があります。

半自動アーク溶接機は、母材との距離を自動で保ってくれるため、送り速度のみに注視すれば最適な加工をすることができるのが強みと言えます。

真空圧力計

真空圧力計とは

真空圧力計

真空圧力計 (英: vacuum pressure gauge) とは、大気圧以下の負圧を測定する圧力測定器のことです。

圧力測定器には、圧力計連成計真空計の3種類があり、真空計のことを真空圧力計と呼びます。これらの測定器はそれぞれ測定できる圧力の範囲が異なっており、圧力計は正圧のみ、連成計は限られた範囲の正圧と負圧、真空計は負圧のみを測定できます。

したがって、真空計を負圧以外の測定に使用すると、故障の原因になるので注意が必要です。

真空圧力計の使用用途

真空圧力計は、半導体製造装置のプラズマエッチング空間、冶金、有機合成などの実験設備などに使用されます。また、イオンビーム装置、蒸着装置、表面清浄度が必要な加工設備などの用途もあります。

配管の中の空気を抜いて、真空にした上でガスを充満させるような作業の場合、真空圧力計で真空度を測定します。身近な使用例は、エアコンの新規取付時です。

エアコンの配管内を冷却ガスのみで満たすことで、故障なくエアコンを稼働させられます。

真空圧力計の原理

真空圧力を測定する方式は、大きく分けると機械的な現象、気体の輸送現象、及び気体の電離現象の3つがあります。

1. 機械的な現象

機械的現象を利用する測定は、U字管マノメーター、マクラウド真空計、ダイヤフラム真空計、ブルドン管真空計、重錘型真空計などで測定が可能です。

U字管マノメータ
ガラス製のU字管の一方を真空に排気して封じた差圧計です。圧力差によって生じる液柱の高さから、気体の圧力差を読み取ることが可能で、気体の種類に左右されないのが特徴です。このため、圧力の絶対値を測定できます。

マクラウド真空計
高真空の圧力を計測するための水銀液柱圧力計です。気体を圧縮して圧力を拡大する機構を備えており、絶対圧力を測定できます。

ダイヤフラム真空計
ダイヤフラムの圧力による変形量を機械的、光学的、電気的に読み取る方式です。

2. 気体の輸送現象

気体の輸送現象を利用した真空圧力計が熱伝導真空計です。気体の熱伝導率は圧力によって変化するという性質を利用しています。

熱伝導真空計にも多くの種類があり、ピラニ真空計、サーミスタ真空計、熱電対真空計などです。熱伝導真空計の注意点は、高真空になると熱伝導率よりも熱放射の影響が大きくなることです。そのため、熱伝導真空計は高真空の測定には利用できないというデメリットがあります。

ピラニ真空計は、電気抵抗の変化を検出する計測器です。細い白金の抵抗線に電流を流し、気体分子の衝突によって奪われる熱による白金抵抗の変化をブリッジ回路で検出する方式です。

3. 気体の電離現象

気体の電離現象を利用して真空を測定する方式です。熱陰極電離真空計、冷陰極電離真空計、放射線真空計などの種類があります。

熱陰極電離真空計
熱陰極から熱電子を放出することにより、気体を電離し、生成したイオンを測定します。

冷陰極電離真空計
冷陰極放電により気体を電離し、イオンを測定する方式です。

放射線真空計
放射線によって生成されたイオンを測定します。

真空圧力計の選び方

真空圧力計には数多くの種類があるため、目的に合った真空計を適切に選択する必要があります。計測する目的の真空空間の真空度は、低真空、中真空、高真空、超高真空などの区分があります。

  • 低真空 (low vacuum) : 105Pa~102Pa
  • 中真空 (medium vacuum) : 102Pa~10-1Pa
  • 高真空 (high vacuum) : 10-1Pa~10-5Pa
  • 超高真空 (ultra high vacuum) : 10-5Pa~10-8Pa
  • 極高真空 (extremely high vacuum) : 10-8Pa以下

U字管水銀マノメータややダイヤフラム真空計は、低真空の領域で測定できます。マクラウド真空計は、高真空から低真空までの測定が可能です。

ピラニ真空計は、低真空から中真空の領域、電離真空計は中真空から超高真空までの領域を測定します。

漏れ電流クランプメーター

漏れ電流クランプメーターとは

漏れ電流クランプメーター

漏れ電流クランプメーター (英:leakage current clamp meter) とは、電気機器・回路などから漏れ出るわずかな電流を非接触で測定する装置です。

新規の電気回路自体に、電流が流れているかを確認するために使われるクランプメーターの1つで、調べたい回路の被覆電線を挟むことで電流の数値を調べます。電流を調べる場合は、通常、回路を一時切断して、電流計を入れますが、クランプメーターは切断せずに測ることが可能です。

漏れ電流が基準値を超えた場合は、感電や火災、電子機器の故障の恐れがあるため、直ちに処置を行います。

漏れ電流クランプメーターの使用用途

漏れ電流クランプメーターを使うのは電流が流れている場所で、調べる回路が直流か交流かによって使う装置が異なります。

回路を切断せず、家庭にあるものだけでなく、高圧電流も安全に計測できるため、電気工事の開始時にも重宝されます。具体的な用途は、建物の電気回路・電気設備、住宅の電気回路、工場の電気設備、変電設備、交通機関の電気設備など、広範囲です。

 

漏れ電流クランプメーターの原理

通常、電線に電気が流れている場合は、電流量がわずかであってもその電線の周辺に磁力線が発生します。この磁力線をクランプメーターの挟む部分のコアである鉄心が拾い、鉄心に巻いてあるコイルの電流量を測ります。

わずかな電流量も検知できるためかなり精度が高いですが、クランプメーターは回路の種類によっても使い分けが要ります。

回路の種類が違うものを測ると、正確な値を出すことができず、漏電の有無を判断できなくなります。種類が不明な場合は、どちらの回路でも計測可能な直交流クランプメーターを使います。

漏れ電流クランプメーターのその他情報

1. 漏れ電流の測定法

漏れ電流を測るには、複数線測定法と接地線測定法の2つ方法があります。

  • 複数線測定法

    3相の場合は3線を一括して、単相2線式は2線を一括して挟みます。漏れ電流が無いときは、負荷機器に対して往復する2線で同量の逆向きの磁界が発生し、2つの磁界は打ち消し合って、電流はゼロです。漏れ電流がある場合は、2つの磁界に差が生じ、漏れ電流が計測できます。

  • 接地線測定法

    アース線で接地する電気機器などがあります。機器からの漏れ電流がある場合は、接地線を通って大地へ流れるので、接地線を挟んで電流を測ることにより、漏れ電流が測れます。また、電源は降圧トランスから供給され、機器の漏れ電流はトランスの2次側の接地線へ戻ってきます。この接地線を挟んで漏れ電流を測る方法もあります。

    漏れ電流クランプメーターには、多くはフィルタ機能が付いています。例えば、インバータモーターの漏れ電流を測る場合、漏れ電流に高調波成分が多いと、全く違った数値が計測されます。この時、フィルタ機能をONにして50Hz,60Hzの基本波のみを取り出して測ります。

2. 絶縁低下場所の見つけ方

漏れ電流が検出された場合、回路のどこが絶縁低下しているかを探します。最初に分電盤の1次側で漏れ電流の有無を調査します。次に分岐回路ごとに漏れ電流を測って、漏れ電流が発生している分岐回路を見つけます。そして、その分岐回路に沿って負荷側に計測点を移動させ、急に漏れ電流が無くなるか、小さくなる所を調べます。これにより、1つ前の負荷機器に絶縁低下があると判別します。

3. 漏れ電流の基準値

漏れ電流の基準値について、電気設備技術基準の第14条に、低圧回路の絶縁抵抗測定が困難な場合は、漏洩電流が1mA以下を保つように定められています。

4. 漏れ電流の分類

漏れ電流には、静電容量分漏れ電流と抵抗分漏れ電流があります。

  • 静電容量分漏れ電流

    静電容量分漏れ電流は、回路と対地の間には静電容量があり、常に流れている漏れ電流です。静電容量分では感電や火災の原因になりませんが、容量分漏れ電流が多いと高調波成分が多くなり、機器の誤動作などを起こす原因になります。

  • 抵抗分漏れ電流

    抵抗分漏れ電流は、機器や配線の劣化により絶縁が低下して発生する漏れ電流です。抵抗分漏れ電流は感電や火災などの原因になり、すぐ対処が要ります。

DCクランプメーター

DCクランプメーターとは

DCクランプメーターとは、クランプメーターの一種であり、直流 (DC) 電流を測定するものです。

他にも、交流 (AC) クランプメーターや交直流両用 (AC/DC) クランプメーターがあります。ただし、DC専用のクランプメーターは、微小電流測定等限られた製品しか見当たりません。通常は、交直両用のクランプメーターを利用して直流電流を測定します。

クランプメーターは、被測定回路の電線を挟むことでそこを流れる電流値の測定が可能です。通常、電流値を測定する場合は、一旦回路を切断して電流計を挿入する必要がありますが、クランプメーターでは電線をヘッド部に挟むだけなので、手軽な上安全性にも優れた方法です。

DCクランプメーターの使用用途

DCクランプメーターは前項で記した通り、微小電流測定に特化した機種があり、0.1mAから100mA程度の電流測定に対応します。一方、一般的な交直両用のクランプメーターは10mAから100A以上の測定レンジであることから、半導体電子回路で使うにはDCクランプメーターが適しています。

なお、直流高電圧回路用に特化したDCクランプメーターは製品化されておらず、交直両用のクランプメーターが利用されます。クランプメーターでは回路を切断せず電流を測定するため、高電圧回路でも比較的安全に作業可能で、特に電気工事の際は非常に便利です。

DCクランプメーターの原理

DCクランプメーターを含むクランプメーターでは、測定したい電線を挟むクランプ部とクランプ部が検出した磁界の強さを電流値に換算して表示する処理部から成ります。通常、電線に電気が流れている場合は、その電線の周辺に磁力線が発生しています。この磁力線をクランプ部のコアに閉じ込めます。

クランプ部の構成は、磁性体材料から成るコアとコア内の磁力線を検出する手段の2つです。また、コアの一部を分割できる構造で、そこを通して電線を挟みます。なお、測定時にはコアを閉じた状態にします。交流電流用のクランプ部では、コアにコイルを巻きトランスの原理を利用して挟んだ電線に流れる電流を検出するタイプが広く使われていますが、これだと直流電流を測定することはできません。

直流電流を計測するクランプ部は、ホール素子をコアの内部に埋め込んだものが主流となっています。ホール素子はコア内の磁力線の密度に応じた電圧を出力 (ホール効果) するため、直流であっても電流測定が可能です。また、交流電流にもホール素子は反応するので、その出力電圧を測定してケーブルに流れる電流値を算出することができます。

従って、ホール素子を使ったクランプ部は交直両対応のものが主流ですが、コアが磁化されるとその影響で電流値の測定誤差が大きくなる欠点があります。そのため、定期的にコアの残留磁気を除去するのが望ましいです。尚、ホール素子の出力電圧から電線に流れる電流を求める部分は処理部が対応します。

DCクランプメーターの使い方

1. クランプ方法

クランプテスタの操作は、ケーブルをヘッド部で挟むだけの至極簡単なものです。ケーブルをヘッドの中心に置くと測定誤差が小さくなりますが、多少ズレても大きな影響はありません。

2. 電流の向き

直流電流測定の際は、ケーブルに流れる電流の方向に注意が必要です。一般的なクランプテスタのヘッド部には”+”と”-“が表示がされています。これが電流の向きを示すガイドとなり、直流電流が”+”から”-“方向に流れる場合はプラスの電流値、”-“から”+”方向に流れる場合はマイナスの電流値となります。

3. リーク電流測定

機器に流れる電流を測定する場合は、往路もしくは復路どちらかのケーブルをヘッドに通します。しかし、機器内部で漏洩電流があると、アース (大地) に電流の一部が流れるため、往路の電流に対して復路の電流が若干少なくなります。

そこで、アース線にクランプ部を挟んで流れる電流を測定すると、リーク電流と見なすことが可能です。なお、リーク電流は数mAから数十mA程度なので、微小電流測定に適したDC専用のクランプメーターはこの用途にも合致します。

レゾール樹脂

レゾール樹脂とは

レゾール樹脂とは、フェノール樹脂の1種です。

フェノールとホルムアルデヒドをアルカリ触媒で反応させ硬化させることで得られます。ノボラックと呼ばれる樹脂もあり、レゾール樹脂がアルカリ触媒を使うのに対し、ノボラック樹脂は酸性触媒で反応させます。

また、ノボラックが熱可塑性樹脂であるのに対し、レゾール樹脂は加熱によって架橋、硬化する熱硬化性樹脂です。

レゾール樹脂の使用用途

現在、レゾール樹脂は、単品で成形されることはあまりありません。ペレットのような形に加工され建材などに使用されるのが一般的です。具体的には、防音・断熱材、壁・天井パネル、床材、建築用塗料などが挙げられます。レゾール樹脂は熱に強く、防火性が高いことが使用されるポイントです。

また、さまざまな基材との相性が良いので、他の基材と組み合わせてそれぞれの特性を生かす形で使用されることが多いです。一般的には、基材となるものに混ぜ込んで強度を増したうえで成形されています。レゾール樹脂を含むフェノール樹脂は、安価な割に高い電気絶縁性を持っていることから、工業製品でも大量に使われています。

電子部品に塗料として使用すると、感電のリスクを抑えることが可能です。成型品として、電気器具のスイッチやボタンに用いられる場合もあります。そのほか、接着剤の原料として使用されることもあります。

レゾール樹脂を含む接着剤はフェノール樹脂系接着材に分類され、その他の樹脂系接着材と比較して耐水性や耐熱性に優れています。この用途では、単体で用いる場合も多いです。

レゾール樹脂の性質

レゾール樹脂には、以下のような長所があります。

  • 強度と硬度が高い
    レゾール樹脂は非常に硬く、耐久性が高く、圧縮、引張り、剪断強度に優れています。
  • 耐熱性が高い
    レゾール樹脂は耐熱性に優れており、高温下での使用に適します。
  • 耐薬品性が高い
    レゾール樹脂は耐薬品性に優れており、薬品や油、水などに対しての耐久性が高いです。
  • 難燃性が高い
    レゾール樹脂は難燃性に優れており、火災に対して耐久性が高く、防火性能にも優れています。
  • 粘着力が高い
    レゾール樹脂は、高い粘着力を持っており、接着剤や塗料としても利用されます。
  • 色調が美しい
    レゾール樹脂は、美しい色調を持ち、光沢のある表面を作ることが可能です。

一方で、フェノール樹脂は硬い分脆い性質があり、衝撃に弱いです。また、難燃性が高く防火・遮炎性は優れていますが、加熱や燃焼によって発生する煙や有害ガスは人体に害を及ぼす恐れがあります

レゾール樹脂のその他情報

1. レゾール樹脂の歴史

レゾール樹脂を始めとするフェノール樹脂は最も古い合成プラスチックであり、長い歴史を持ちます。1907年にアメリカのベークライトが発明し、当初はその高い光沢性から時計などの装飾用途で用いられました。

その後、金属の代替として1930年代には食器やキッチン用品として普及し、1940年代には銃器のグリップやハンドガード、電気プラグやスイッチ、自動車用パーツとしても使用されました。しかし、より安価で量産に向き、機能性も一定以上担保できるさまざまなプラスチック素材が登場したため、フェノール樹脂をそのまま使用することは少なくなっています。

2. レゾール樹脂の製法

レゾール樹脂の製造は、2段階の反応で進みます。アルカリ触媒による初期の重合と加熱による架橋です。まず、フェノールとホルムアルデヒドをアルカリ触媒の存在下で反応させます。この時点では、まだ架橋が進んでおらず、可融性を持った状態です。また、ヒドロキシメチル基を多く持ち、溶媒に溶かすことも可能です。

次に、レゾールに硫酸やクロム酸などの酸化剤を加えて加熱します。この反応では架橋が進み、不溶性不融性の樹脂となります。この段階での加熱によって、架橋が進みすぎないように注意が必要です。架橋が進みすぎると脆くなります。

この2段階で進む反応を活かし、1段階目まで行った状態で射出成型してから加熱し架橋させるなど、加熱すると硬化して元の形には戻らないという熱硬化性樹脂であるにも関わらず、熱可塑性樹脂を加工する一般的な加工方法を用いることが可能です。なお、レゾール樹脂はアルカリ触媒の量や種類、フェノールとホルムアルデヒドの反応条件などによって、性質に差異が生じます。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/networkpolymer/35/5/35_218/_pdf/-char/ja

紙ベーク

紙ベークとは紙ベーク

紙ベーク (英:paper Bakelite) とは ベークライトの1種でフェノール樹脂に基材となる紙を混ぜ込んだ素材のことです。

ベークライトの中には紙ベーク以外にも布を基材とした布ベークなどがあり、使用シーンによって使い分けられます。紙ベークは比重が軽く、安価な割に電気絶縁性に優れています。また、切削加工や研磨加工など加工がしやすいため様々な形の部品を作ることができます。

紙ベークの使用用途

紙ベークを含むベークライトの素材は、強度が高く電気絶縁性に優れているため、電気絶縁のために使用されることが多いです。絶縁用ベースプレート、絶縁用途各種部品、電子部品、プリント配線基板、ハンドル、配電盤ブレーカーなどに使われます。また、取手・つまみ、機械部品、食器、建材などの用途もあります。

一般的には配電盤など機器の内部に使用されますが、電気のスイッチや音のボリュームを調節するつまみなどにも使用されます。これらは人が触る場所になるため、感電が起きないよう電気絶縁性が高く、形を加工しやすい紙ベークが使用されます。

紙ベークの原理

紙ベークライトはエンジニアリングプラスチックの1つで、紙を基材としたフェノール樹脂素材です。

フェノール樹脂はフェノールホルムアルデヒドを合成することで製造が可能です。フェノール樹脂だけでは強度が低いため、強化材となる紙の基材を積層させ加熱プレスすることによってベークライトにします。

フェノール樹脂は、熱硬化性の樹脂ですので、紙を積層させて、加熱することで硬化し、ベークライトの板ができます。原料のフェノール樹脂を紙に塗布して、熱によって硬化させます。基材に紙を使う場合を紙ベーク、布の場合を布ベークと呼びます。

フェノール樹脂は機械的強度、電気絶縁性、耐熱性に優れており、プリント配線基板などに使用されます。

紙ベークの特徴

1. 優れた耐熱性

ベークライトは熱硬化性樹脂の1つであり、大きな特徴は熱に強いことです。耐熱温度は150~180℃程度で優れており、高温でも強度が維持されます。ベークライトは積層板であり、層に対して垂直な面はかなり機械的強度が高いですが、層に対して平行な面は剥離が起きやすいのが欠点です。

2. 電気絶縁性に優れる

ベークライトは電気絶縁性が高い大きな特徴があり、絶縁材料としてプリント基板や遮断器、配電盤塗料などの用途に適しています。

3. 射出成形が可能

ベークライトを樹脂単体で成形する場合、熱可塑性樹脂と同様に射出成形加工が可能です。硬化しない程度の温度約50℃にベークライトを加熱した後、金型に射出し、150~180℃に加熱して硬化させます。

4. 機械加工が可能

紙ベークは、機械加工が可能です。加工を行う際は力がかかりやすい向きを確認しながら強度が保たれるように加工します。また、研磨加工も可能です。

5. 紙ベークのデメリット

・リサイクルが困難

ベークライトは、一度硬化させて成形した後は再成形できないため、リサイクルが難しい素材です。リサイクル技術の研究が行われています。

・吸水性が高い

ベークライトは基材に紙を使っているので、吸水性が高く、湿度が高い環境には不適です。

・耐候性が劣る

紙ベークは、紫外線に弱く、酸化すると赤黒く変色します。屋外使用は、推奨されません。また、アルカリに溶解しやすい欠点があります。さらに、衝撃に弱く、欠けやすく脆いのも短所です。

紙ベークのその他情報

1. 紙ベークの寸法

紙ベークの板材や丸棒には、寸法について規格品があります。

・板材:幅×長さは、1,000×1,000mmであり、板厚は0.5mmから60mmまで、多種類あります。

・丸棒:長さが1,000mmで、外径が3mmから70mmまで多くの種類が揃っています。

2. ベークライトの歴史

ベークライトは、1907年にベルギー生まれのアメリカ人のベークランド博士が発明したプラスチックで、商標となっています。世界で初めて植物以外の原料を使って人工的に合成されたプラスチックです。