真空圧力計とは
真空圧力計 (英: vacuum pressure gauge) とは、大気圧以下の負圧を測定する圧力測定器のことです。
圧力測定器には、圧力計、連成計、真空計の3種類があり、真空計のことを真空圧力計と呼びます。これらの測定器はそれぞれ測定できる圧力の範囲が異なっており、圧力計は正圧のみ、連成計は限られた範囲の正圧と負圧、真空計は負圧のみを測定できます。
したがって、真空計を負圧以外の測定に使用すると、故障の原因になるので注意が必要です。
真空圧力計の使用用途
真空圧力計は、半導体製造装置のプラズマエッチング空間、冶金、有機合成などの実験設備などに使用されます。また、イオンビーム装置、蒸着装置、表面清浄度が必要な加工設備などの用途もあります。
配管の中の空気を抜いて、真空にした上でガスを充満させるような作業の場合、真空圧力計で真空度を測定します。身近な使用例は、エアコンの新規取付時です。
エアコンの配管内を冷却ガスのみで満たすことで、故障なくエアコンを稼働させられます。
真空圧力計の原理
真空圧力を測定する方式は、大きく分けると機械的な現象、気体の輸送現象、及び気体の電離現象の3つがあります。
1. 機械的な現象
機械的現象を利用する測定は、U字管マノメーター、マクラウド真空計、ダイヤフラム真空計、ブルドン管真空計、重錘型真空計などで測定が可能です。
U字管マノメータ
ガラス製のU字管の一方を真空に排気して封じた差圧計です。圧力差によって生じる液柱の高さから、気体の圧力差を読み取ることが可能で、気体の種類に左右されないのが特徴です。このため、圧力の絶対値を測定できます。
マクラウド真空計
高真空の圧力を計測するための水銀液柱圧力計です。気体を圧縮して圧力を拡大する機構を備えており、絶対圧力を測定できます。
ダイヤフラム真空計
ダイヤフラムの圧力による変形量を機械的、光学的、電気的に読み取る方式です。
2. 気体の輸送現象
気体の輸送現象を利用した真空圧力計が熱伝導真空計です。気体の熱伝導率は圧力によって変化するという性質を利用しています。
熱伝導真空計にも多くの種類があり、ピラニ真空計、サーミスタ真空計、熱電対真空計などです。熱伝導真空計の注意点は、高真空になると熱伝導率よりも熱放射の影響が大きくなることです。そのため、熱伝導真空計は高真空の測定には利用できないというデメリットがあります。
ピラニ真空計は、電気抵抗の変化を検出する計測器です。細い白金の抵抗線に電流を流し、気体分子の衝突によって奪われる熱による白金抵抗の変化をブリッジ回路で検出する方式です。
3. 気体の電離現象
気体の電離現象を利用して真空を測定する方式です。熱陰極電離真空計、冷陰極電離真空計、放射線真空計などの種類があります。
熱陰極電離真空計
熱陰極から熱電子を放出することにより、気体を電離し、生成したイオンを測定します。
冷陰極電離真空計
冷陰極放電により気体を電離し、イオンを測定する方式です。
放射線真空計
放射線によって生成されたイオンを測定します。
真空圧力計の選び方
真空圧力計には数多くの種類があるため、目的に合った真空計を適切に選択する必要があります。計測する目的の真空空間の真空度は、低真空、中真空、高真空、超高真空などの区分があります。
- 低真空 (low vacuum) : 105Pa~102Pa
- 中真空 (medium vacuum) : 102Pa~10-1Pa
- 高真空 (high vacuum) : 10-1Pa~10-5Pa
- 超高真空 (ultra high vacuum) : 10-5Pa~10-8Pa
- 極高真空 (extremely high vacuum) : 10-8Pa以下
U字管水銀マノメータややダイヤフラム真空計は、低真空の領域で測定できます。マクラウド真空計は、高真空から低真空までの測定が可能です。
ピラニ真空計は、低真空から中真空の領域、電離真空計は中真空から超高真空までの領域を測定します。