電磁界解析

電磁界解析とは

電磁界解析とは、シミュレータを用いたEMC解析のことです。

EMCとは、Electromagnetic Compatibilityの略で、電磁両立性の意味を持ちます。電子機器は、他の機器への電磁的妨害とならないようにノイズの放出を避け (英: Electromagnetic Interference, EMI) 、妨害を受けないようにノイズに対する耐性を持つ (英: Electromagnetic Susceptibility, EMI)必要があります。

近年電子機器を設計するうえで、EMCを満足させるために電子機器の電磁会解析を行い設計にフィードバックするケースが増えています。

電磁界解析の使用用途

電磁界解析は、電子機器の製品設計や不具合動作の解析など、様々なシーンで用いられます。

例えばホールセンサーなど磁気センサーを用いる電子機器は、磁界の大きさによって位置を検出するため、使用環境などやセンシング対象によって、センサーの配置などを考慮する必要があります。その際磁束密度分布を求める解析などが用いられます。

また、SPMモーターやIPMモーターなど、永久磁石を用いており、トルクやモーターの特性を算出する際にも電磁界解析などがよく用いられます。

電磁界解析の原理

電磁界解析やノイズ解析などに用いられる手法は様々なものがあり手法ごとに特徴が異なります。解析手法の特徴を生かし設計にフィードバックすることが重要になります。

例えば束縛の無い放射問題のEMC解析に有効なモーメント法 (英: Method of Moments, MoM) は、一様な誘電物質の構造への解析には優れていますが、不均一な構造への解析には適しません。

有限要素法 (英: Finite Elements Method, FEM) と呼ばれる手法では、解析構造の全面積をメッシュし解析を行い、不均質構造へのモデリングには適していますが、モーメント法ほど効果的には放射問題をモデル化はできません。

また、有限差分領域法 (英: Finite Difference Time Domain, FDTD) と呼ばれる手法では全空間のメッシュを行い、モーメント法や有限要素法と異なり時間領域での解析を行います。そのため過渡解析に適しており、複雑な不均質構造のモデリングに優れています。

参考文献
https://cend.jp/emc_primer/basic/emcsimu.html
https://www.cybernet.co.jp/ansys/case/animation/electromagnetic/
https://cend.jp/emc_primer/basic/emc.html

磁界解析

磁界解析とは

磁界解析とは、数値解析法を利用して電子機器等に生じる磁界をシミュレーションすることです。

磁界解析の方法として、時間領域での解析法や周波数領域での解析法、等価集中定数回路網法などがあります。電子機器の設計段階から電子機器同士の干渉などを避けるために磁界解析が行われ、これをEMC対策といいます。

計算機上で構造物や与える電流の条件などを再現し、マクスウェル方程式を数値的に解くことで磁界を再現します。

磁界解析の使用用途

磁界解析は、EMC対策を行うために、電子機器などの製品設計・開発に広く導入されていますEMCとは「Electromagnetic Compatibility (電磁両立性)」 の略で、電磁的妨害を生じたり、干渉を受けたりしないこと、干渉を受けても正常に動作するよう設計することを表すものです。

電子機器の開発が短期間で進められる中、EMCフリーな性能を計算機上でただちに確保する必要があります。そこで回路や基板、筐体などの設計段階において、磁界解析によるシミュレーションが重要な役割を担っています。 

磁界解析の原理

下記では、有限差分時間領域法を例に磁界解析の原理を解説します。

1. 有限差分時間領域法

マクスウェル方程式を差分法を用いて簡略化し (有限時間による時間分割) 、数値計算によって電磁界の時間応答を求めます。解析する全空間をメッシュ状に分割し、分割されたブロックごとにマクスウェル方程式と差分法を適用します。磁界の過渡応答や不均質構造のモデリングを行う点で優れています。

2. 差分法

微分を差分近似 (差分商) で置き換える離散化手法の1つです。数値解析法として、古くから用いられる方法です。微分方程式の微分を差分に置き換えたものを差分方程式と呼びます。

有限差分時間領域法では、マクスウェル方程式を差分方程式に展開することで、電磁界の時間応答を数値的に求めています。

3. マクスウェル方程式

電磁場を説明する古典電磁気学の基礎方程式です。以下で説明する4つの式から成り立ちます。

  • 第1式
    ガウスの法則といって、電荷が存在するとその周囲から電気力線が発生することを示しています。
  • 第2式
    磁束はループしており、湧きだした磁束は必ず元に戻ることを示しています。
  • 第3式
    ファラデーの電磁誘導の法則といって、磁束が変化するとその変化を妨げるように電界が発生して起電力が発生することを示しています。
  • 第4式
    アンペールの法則といって、電流が流れるとその周囲に磁界が発生する法則を示しています。

3. モデルの作成

解析を行う際には、解析する領域をメッシュ分割してモデルを作成します。モデル作成は、メッシュの細かさ及び規模が解析悔過に影響を与えます。

メッシュを細かく分割するほど、精度の高い計算結果を取得することが可能です。一方で、計算処理負荷が高くなるため、処理能力の高さが求められたり、処理時間がかかってしまったりするデメリットがあります。

適切な粗さのメッシュを設定する必要はありますが、メッシュの間は計算から除外されるため注意が必要です。

磁界解析の種類

磁界解析で使われる代表的なシミュレーション法として、時間領域もしくは周波数領域での解析法が挙げられます。前者には有限差分時間領域法 (FDHD) 、後者にはモーメント法 (MoM) や有限要素法などがあります。

1. 有限差分時間領域法

時間領域での解析のため、過渡状態の解析に優れている。計算が直感的でわかりやすい特徴を持ちます。一方、大きな空間が計算対象となるため必要メモリが大きく、計算時間が長い特徴があります。

2. モーメント法

解析する導体等をメッシュ状に分割し、ブロック同士の電磁的相互作用を考慮して、価格ブロックの電流値を計算します。一様な導体のEMC解析に適していますが、不均一構造のモデリングは困難です。アンテナからの放射の計算によく利用される手法です。

3. 有限要素法

解析する構造の全面積をメッシュ状に分割する手法です。不均一構造のモデリングもできるメリットがありますが、モーメント法のように放射の計算まで拡張することが難しいという点があります。 

参考文献
https://sei.co.jp/technology/tr/bn178/pdf/sei10651.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejias1987/115/1/115_1_1/_pdf
https://cend.jp/emc_primer/basic/emcsimu.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1998/4/5/4_5_354/_pdf/-char/ja

文書管理

文書管理とは

文書管理とは、重要な文書や情報を効率的に取り扱うための管理方法のことです。

文書管理を行うことで、情報共有や検索の効率化、情報セキュリティの確保などが可能となります。文書管理には、紙媒体の文書を電子化する「デジタル化」、文書の分類・整理・保存を行う「分類管理」、文書の利用状況やアクセス権限の管理を行う「アクセス管理」、文書の廃棄や保管期限の管理を行う「廃棄・保管管理」などの機能があります。

また、文書管理は法令や規則に基づいて適切に行うことが重要です。例えば、個人情報保護法や会計法などの法令や、企業内部で定められた情報セキュリティポリシーに従って文書管理を行うことが求められます。

近年では、クラウドサービスを利用した文書管理や、人工知能 (AI) を活用した文書分類・検索システムなどが注目されています。これらの技術を活用すると、より高度な文書管理が可能です。

文書管理の使用用途

文書管理は、企業や組織の様々な場面で活用されます。ここでは、文書管理の使用用途を紹介します。

1. 情報共有の効率化

文書管理を行うことで、情報を一元化し、社内での情報共有を効率化ができます。文書が分散していたり、手書きの文書が多かったりする場合でも、デジタル化や分類管理を行うことで、必要な情報をすぐに見つけることができます。

2. 情報セキュリティの確保

重要な文書や情報を適切に管理して、情報漏洩や不正アクセスなどのリスクの軽減ができます。アクセス権限の管理や、廃棄・保管管理などを行うことで、情報漏洩や不正利用を防止ができます。

3. コンプライアンスの遵守

法令や規則に基づいた文書管理を行うことで、コンプライアンスの遵守が求められる場面で役立ちます。例えば、個人情報保護法や会計法などの法令に適合する文書管理を行うことで、法的なトラブルを回避ができます。

 4. ワークフローの改善

文書管理を活用して、業務のワークフローを改善ができます。例えば、文書の共有や承認プロセスの自動化を行うことで、業務の効率化やミスの防止につながります。

5. 業務改善のための分析

文書管理を行うことで、業務の改善に役立つデータを収集ができます。例えば、文書の利用状況やアクセスログを分析して、業務の改善案を導き出すことができます。

文書管理の原理

文書管理は下記の機能によって成り立っています。

1. 文書管理ルールの策定

文書管理ルールの策定は、文書管理の基盤となる重要なステップです。文書の種類や保存期間、アクセス権限、廃棄基準などを明確に定めることで、文書の管理を一元化し、情報漏洩や不正利用の防止ができます。

2.  文書の分類

文書の分類には、業務プロセスや文書の種類に応じた方法があります。分類方法を適切に設定して、必要な情報を迅速に検索できるようになります。また、文書の分類には、分類規則の共通化や分類マスターの定期的な見直しを行います。

3. アクセス管理

文書の閲覧や利用について、アクセス権限を設定して、情報漏洩や不正利用を防止します。アクセス権限は、役職や業務内容に応じて設定されます。また、アクセスログの記録や、アクセス権限の定期的な見直しを行います。

4. 廃棄・保管管理

文書の廃棄や保管期限を管理により、情報漏洩や情報管理の負担を軽減できます。廃棄・保管期限は、法令や企業内部の規則に基づいて決定されます。

文書管理のその他情報

1. ISO9001の定義

文書とは、ISO9001では「情報およびそれが含まれている媒体」と定義されます。情報には、文章、プログラムのコード、設計図などさまざまな形式があり、媒体にも紙、電子媒体などがあります。

文書と似ているものに記録があります。記録は文書の一形態で、ISO9001では「達成した結果を記述した、または実施した活動の証拠を提供する文書」と定義され、エビデンスとも呼ばれます。

2. 文書のライフサイクル

一般的に、文書管理で管理される文書は記録以外の文書です。記録は、事実の証拠としての性質を持つため、変更は「改ざん」であり、禁止されています。一方、契約書や仕様書などの文書は状況に応じて変更される場合があり、「更新」「改訂」などと呼ばれます。

文書管理では、作成した文書を発行する前に、その文書が適切であるかどうかをレビューし、承認します。発行後、必要に応じて更新する場合も、レビューを行って再承認します。また、文書の変更箇所、変更履歴、有効なバージョンが識別できるよう、変更管理も必要です。

発行した文書を社内外に発信・配付して情報共有する際は、誰が文書を利用できる状態になっているかを管理しておくことが必要です。また、保管の期限を定め、保管期限が過ぎた文書を廃棄する方法もあらかじめ決めておきます。

文書管理では、このように文書の作成から配付、保管、廃棄に至るまでのライフサイクルの各段階で、ルールを明確にしての管理が重要です。

参考文献
https://www.jiima.or.jp/basic/manual_sec1/

帳票クラウドサービス

帳票クラウドサービスとは

帳票クラウドサービスとは、帳票の作成から管理までクラウド上で一括して行うことができるサービスのことです。

企業や団体、個人事業主などが、請求書や納品書などの帳票を作成、管理を行うために使用します。法改正による影響から、帳票は従来の紙媒体から電子データとして管理することが可能となりました。会社法により帳票は一定の保存期間が定められており、多くの電子データを安全に管理し、必要に応じて送受信することが求められます。

帳票クラウドサービスは、帳票データ管理の容易化へとつながり、業務時間の改善やコスト削減といった効果が期待されます。

帳票クラウドサービスの使用用途

帳票クラウドサービスは、見積書や請求書、納品書、支払明細といったあらゆる帳票の作成、管理業務を効率化するために使用されます。上述した帳票を扱う大手企業から中小企業に至るまで、幅広く導入されています。

クラウドを利用することで社内にサーバーを必要とせず、常に最新のソフトウェアへと更新することが可能です。帳票をデータで管理するために、担当者の余計な負担を軽減したい企業などにとって、帳票クラウドサービスの導入が進められています。 

帳票クラウドサービスの原理

帳票クラウドサービスは、帳票の作成、変換、管理、共有などの機能によって成り立っています。Webブラウザ上にサービスがあるため、専用のソフトウェアの購入やインストールが不要です。

Webブラウザからアクセスするだけでこれらの機能を使えるので、外出先でもアクセスできる利点があります。

1. 帳票の作成機能

帳票の作成機能では、テンプレートを利用した帳票作成をすることができます。テンプレートには様々な種類があり、帳票の種類に合わせたテンプレートで作成することで、帳票作成にかける工数削減や管理フォーマットの統一化にもつながります。

印刷用にレイアウトの自動調整を行う機能もあります。クラウドサービスによって搭載される機能は異なるため、必要な機能をあらかじめ明確にしておくことが重要です。

2. 帳票の変換機能

帳票の変換機能では、ExcelやWord形式のファイルをPDFに変換することができます。PDFに変換することで、改ざん防止、メール送信の簡易化、データ容量の圧縮といったメリットがあります。

3. 帳票の管理・共有機能

帳票の管理・共有機能では、保存した帳票の履歴や検索、複数ユーザとの共有を行うことができます。パソコンと同じ感覚でフォルダ分けをし、部署や役職ごとに権限設定 (編集可・閲覧のみ など) をすることでより精密な帳票管理となります。

検索ではファイルやフォルダ名での検索だけでなく、帳票の中身の文言に対する検索も可能です。

帳票クラウドサービスのその他情報

帳票の保存について

帳票とは、帳簿と伝票を指す会計用語で、会社法により10年間保存することが義務付けられています。これまでの帳票書類は紙媒体での保存が基本とされ、会計データ管理の煩雑さや、管理スペース確保の困難さなどにつながっていました。

税務調査の際には求められた帳票を明示しなければならず、帳票データの管理を効率的に実行することが求められてきました。しかし、経済社会のデジタル化が進む中で、電子帳簿保存法の改正がなされ、一定の要件を満たした帳簿書類は電子データとしての保存が認められることとなりました。

そのような社会的な変化の中で、帳票類は電子データとして保存されることがスタンダードとなり、帳票クラウドサービスの利用が進んでいます。大量の帳票データをクラウド上で管理し、高速で処理し、必要に応じてデータの作成・送付することができます。

また、万一のセキュリティ対策として監視・保守体制が構築され、天災などが発生した場合のバックアップ体制にも配慮がなされています。

参考文献
https://it-trend.jp/cloud_form_service
https://www.unirita.co.jp/solution/marutto/chohyo.html

有限要素法シミュレーション

有限要素法シミュレーションとは

有限要素法シミュレーション

有限要素法シミュレーションとは、有限要素法を利用してコンピュータによる数値解析により、構造物・流体・熱・電磁気などの分野で設計の最適化や挙動解析などを行うことです。

有限要素法とは、解析的に解くことが難しい微分方程式の近似解を数値的に得る方法です。有限要素法では、方程式が定義された領域を小さな部分 (要素) に分割し、各要素内で単純な関数を用いて近似します。そして、各要素の境界で連続性や力の釣り合いなどの条件を満たすように、全体の解を求めます。

数値解析の手法として差分法と比較すると、複雑な形状の解析が容易になり汎用プログラムが作りやすい点が特徴です。構造物の強度設計をベースに、コンピュータ技術の進歩と相まって、動的解析、塑性加工、衝突挙動、大変形解析、大規模流体・熱計算などへと発展しています。

有限要素法シミュレーションの使用用途

有限要素法シミュレーションは、構造力学や流体力学などの分野で多岐にわたって応用されています。

1. 構造物

構造物では、溶接変形の予測や残留ひずみの計算、骨組み構造の崩壊、き裂伝播の解析、薄板接合の熱伝導・熱応力・ひずみ解析、自動車の衝突大変形シミュレーションなどがあります。

2. 電子関連

電子関連では、電子部品の熱疲労強度把握、蛍光ランプのモデル化、プリント配線板の設計、スピーカシステムの音響特性、アンテナの特性解析などがあります。

3. 建築・土木

建築・土木では、高層ビルの振動特性、ホールの音響特性、ダムや地盤の強度設計、地すべり運動の解析、表層地質による地震波増幅シミュレーションなどが実用されています。

4. 流体・熱

流体・熱の分野では、流体力学・粘性流動、ポリマーの大変形挙動、鋳造の凝固シミュレーションなどに応用されています。

有限要素法シミュレーションの原理

有限要素法シミュレーションの流れ

図1. 有限要素法シミュレーションの流れ

有限要素法がもっともよく用いられている材料力学の分野を例にとって説明します。商用の有限要素解析ソフトは、モデル作成部分と、シミュレーション実行部分、さらにポスト処理部分がセットになっていることが多いですが、シミュレーション実行部分 (ソルバ) だけのものやモデル作成部分専用のソフトなどもあります。

さらに、3DCADや2DCADソフトと一体となった形式のものもあり、設計者でも手軽に扱えるとして人気を集めています。

1. 前処理・モデル作成部分

モデル作成とは、CFDシミュレーションを行う形状を作成する工程です。多くの場合、3DCADでつくったSTEPやIGES,Parasolidなどのファイル形式を利用できます。

計算を実行するためにはモデルの形状を、メッシュとよばれる格子で表現します。このメッシュを綺麗に作成することが解析の速度を上げ精度を高める重要な要素です。

モデル作成ソフトでは、大きさなどを簡単に選択して、自動的に品質の高いメッシュを生成する機能が備わっています。

2. シミュレーション実行部分

Fig2有限要素法シミュレーションの原理

図2. 有限要素法シミュレーションの原理

ここでは、通称ソルバと呼ばれる部分を指しています。昨今はより複雑なモデルを解く機能が備わっていたり、コンピュータの性能の向上に対応しで計算を高速で行えるようになっています。ソルバでは以下の手順で計算を行っています。

  • 要素を構成する節点の変位成分を { ue } であらわす。
  • 節点の変位成分から要素内の任意点の変位を求める形状関数 [ N ] を作る。一次や二次の式で内挿されています。
  •  
  1. 節点の変位成分から要素内の任意点のひずみ { ε } を求める変位-ひずみマトリクス [ B ] を作る。変位を距離で微分したものです。
  2. 要素内の任意点のひずみ { ε } から応力 { σ } を求める応力-ひずみマトリクス [ D ] を作る。ヤング率とポアソン比など材料力学から求められます。
  3. { σ } = [ D ] { ε } = [ D ] [ B ] { ue } により、節点の変位成分 { ue } から応力 { σ } が得られます。
  4. 仮想仕事の原理 (物体が外力の下で釣り合い状態にある時、物体に微小な仮想変位を与えても、物体内に生じる内部仕事: 仮想変位によるひずみ × 応力 ) と外力がなす外部仕事 (外力 × 仮想変位 ) は等しい) より剛性マトリクス [ Ke ] を作ります。

3. ポスト処理部分

解析結果を3Dモデルなどで可視化することで、より直感的に解析結果を理解することができます。

有限要素法シミュレーションのその他情報

限要素法シミュレーションの比較

Fig3 有限要素法シミュレーション-の種類

図3. ソフトによって異なる機能のポイント

有限要素法シミュレーションと一口に言っても、その内容は多岐にわたるため機能や使い勝手などには差があります。

大きく分けて、以下の3つがあります。

  1. 設計者が手軽に使用できるようにモデル作成・ポスト処理などを使いやすくした設計者用のソフト
  2. 複雑で高度な解析ができる汎用ソフト
  3. 電磁気や振動、構造解析などに特化した専用ソフト

1のタイプは前述したとおり3DCADと一体になったものや、2次元解析機能に絞ることで費用を抑えたものなどがあります。その代わり、シミュレーションの知識がなくてもほとんど直感的に使えるように設計されています。

2のものは高度な解析ができるよう自らプログラムを記述できるサブルーチンの機能や、熱と構造、流体など複数の物理を同時に扱えるマルチフィジクスが扱えるものなどがあります。3のものは、例えば多くの材料モデルを備えるなどよりその分野に特化した機能が備わっています。                                                              

参考文献
https://www.engineering-eye.com/rpt/column/2017/1220_structural.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspmee/7/1/7_14/_article/-char/ja/
https://staff.aist.go.jp/tezuka.akira/FEM.intro.pdf
https://d-engineer.com/cae/fem.html
http://www.nissuicon.co.jp/jigyou/kouzou/fem/

仕分けピッキング

仕分けピッキングとは

仕分けピッキングとは、工場や倉庫内において、商品を配送先ごとに分類すると同時に、必要に応じて商品を収集する作業のことです。

近年では商品を消費者に配送する物流事業が盛んとなっており、衣料品や食品、医薬品、PC関連製品など、あらゆる商品の仕分けピッキングが行われています。

従来は人手を活用した方法が主流でしたが、AIを用いたロボットによる自動仕分け、ピッキングが導入されており、業務の効率化が進められています。 

仕分けピッキングの使用用途

仕分けピッキングは、物流における軽作業の一つとして多くの工場や倉庫で行われています。大量の商品を保有する企業では、商品の出荷作業を迅速かつ正確に行うことが求められています。

近年では物流事業に対するニーズが高まっていることから、仕分けピッキングはその工程の一つとして重要な役割を担っています。慢性的な人手不足が進む中で、ロボットによる仕分けピッキングが海外を中心に進んでおり、日本にも広がりつつあります。 

仕分けピッキングの原理

工場や倉庫での作業として、出荷する商品の仕分けや検品、ピッキング、梱包といった工程があります。仕分けピッキングはこれらの工程の中で、商品の収集と出荷先ごとに分類する作業となり、シングルピッキングとトータルピッキングの2種類の方法があります。

1. シングルピッキング

ピッキングの中で基本的な作業方法で、受注ごとに商品をピッキングするものです。商品の種類が多く発送先も多い場合には、個別に商品を集める必要があるため、シングルピッキングが適しています。

2. トータルピッキング

これは複数の注文をまとめて受けてから商品を一度に収集し、その後仕分け作業を行う効率的な方法です。限られた品種を大量出荷する場合に適した方法です。これらは従来人手によって行われてきました。一方、ロボットによるピッキングシステムでは、AIによる画像解析により様々な商品を認識します。さらにグリッパーが搭載され、商品を高速でピックし、安定して移動可能です。つかめなかった場合でも学習し、ピックの信頼性を向上させることができます。 

参考文献
https://jobty.net/information/info-178332
https://www.kantsu.com/terms/2555/

ロボットピッキング

ロボットピッキングとは

ロボットピッキング

ロボットピッキングとは、ピッキング作業にロボットを活用する手法です。

ピッキングは倉庫や工場などで伝票やリストに基づき商品や部品を取り出して検品や梱包などの次工程へ受け流す作業です。

作業員が商品を取り出してロボットに載せて積み終えた商品を次の工程までロボットが運ぶ比較的単純なシステムから、ロボットが作業者のいる場所へ商品を運ぶシステムや次工程である梱包や送り状の貼り付け業務を自動で行うシステムまであります。 

ロボットピッキングの使用用途

ロボットピッキングは物流センターや倉庫などで活用され、主に大規模な物流倉庫や近年急激に需要が高まっているECの出荷倉庫などで利用可能です。

ピッキングは、部品を製造現場に運んで商品を出荷するために欠かせない作業です。製造業、運輸・物流、小売店などの幅広い産業分野の倉庫で行われます。

労働力不足が深刻な物流業界では、作業効率を上げて人的ミスを削減し、人手不足を解消できるロボットピッキングの普及が進んでいます。

ロボットピッキングの原理

商品を出荷するためにロボットピッキングを行うピッキングロボットは、物流ロボットや搬送用ロボットと呼ばれています。運搬だけのロボットや対象の商品を認識してピッキングできるロボットなど、ロボットの機能は多種多様です。一般的なピッキングロボットは、カメラ、ロボットアーム、制御システムで構成されています。

1. カメラ

レーザーセンサーやカメラで個別に対象の商品の位置や形を認識します。

2. ロボットアーム

ロボットアームは商品を掴むために、先端に吸着式やチャック式のロボットハンドを持っています。

3. 制御システム

ピッキングロボットは制御システムにより、倉庫内の物品などにぶつからないように移動します。

ロボットピッキングの特徴

ロボットピッキングのメリットは作業効率の向上とミスの削減などです。ロボットの導入によって作業者が移動する通路をなくし、倉庫の空間を有効活用できる場合があります。

デメリットは導入コストが非常に大きく、導入時に業務フローを見直す手間がかかる点です。ロボットにトラブルが起きるとロボットの運用を停止し、手作業でピッキングする必要があります。

ロボットピッキングの種類

ロボットピッキングに使用されるロボットには、AGV (英: Automated Guided Vehicle) 、AMR (英: Autonomous Mobile Robot) 、GTP (英: Goods to Person) 、ピースピッキングロボット (英: Piece Picking Robots) などの種類があります。

1. AGV

AGVは単純な構造のロボットで、無人搬送ロボットとも呼ばれます。磁気テープなどで指定されたラインを自走して荷物を運び、ロボットよりもピッキングカートに近いです。ピッキング作業自体は作業者が行います。

2. AMR

AMRは自立走行搬送ロボットとも呼ばれています。自動で商品棚まで自走して作業者がAMRの指示に従ってピッキングを行い、積み終えた商品はAMRが次工程に運びます。AGVと違ってAMRは最適なルートを移動し、障害物を自動で迂回可能です。複数のAMRが協調作業するとピッキング作業全体の効率が最適化されます。

3. GTP

GTPは棚搬送型ロボットとも呼ばれ、指定された棚ごと作業者の位置まで運びます。作業者がピッキングのために倉庫内を移動する必要がなく、作業効率が大幅に向上します。

4. ピースピッキングロボット

ピースピッキングロボットはAIやディープラーニングなどの技術を用いて指定された商品をピースごとにピッキング可能です。カメラやセンサーで対象商品を認識し、ロボット制御のアームを伸ばして、商品を把持または吸着して取り出します。ピースピッキングロボットにAGVやAMRを連携させると作業員の手作業に頼ることなくピッキング作業を行えます。

参考文献
https://service.openlogi.com/openlogi_mag/logistics-robot/
https://groundinc.co.jp/solution/amr/
https://www.rapyuta-robotics.com/ja/2020/11/17/logistics-and-robots-002/

マイクロデバイス

マイクロデバイスとは

マイクロデバイス

マイクロデバイスとは、チップ上に微小流路や反応セルを作成し、溶液の混合や反応、抽出、相分離といった化学反応を起こすものです。

流路の幅はマイクロメートル程度であることから、そこを流れる試薬の量も少なく抑えることができ、また反応時間も短縮化できます。後述するMEMS技術を応用したもので、デバイスの大量生産が可能となり、使用したチップの使い捨て利用が可能です。低コストの実験が可能となり、化学や生化学といった学術分野の発展に寄与しています。 

マイクロデバイスの使用用途

マイクロデバイスは微量のサンプル試薬を用いて、様々な化学・生化学実験を行うために使用されています。

チップ状のマイクロ構造を利用して、細胞や微生物を一つ一つハンドリングし、観察、培養などができるようになりました。その結果、細胞組織がもつ様々な生化学的特性が明らかにされています。

また、二種の溶液 (水や油など) を混合し、形成される液滴の特性などを調べる研究に利用されており、生物学などへの応用が期待されています。 

マイクロデバイスの原理

マイクロデバイスはMEMSと呼ばれる微細加工技術を応用して、チップ上に微量流路や反応セルを作成したものです。

MEMSとはMicro-Electro-Mechanical Systemの略で、半導体集積技術などに応用されています。エッチングや紫外線照射、成膜といった技術を応用して様々な構造物を作成します。さらに化学反応や熱処理も組み合わせて行うことで加工の精度を高めます。これらの技術により、マイクロメートルからサブマイクロメートルという微細な構造物を基板上に作成することができます。

電子機器の場合、シリコン基板などにセンサやアクチュエータ、回路などが集積化されます。その結果、車で用いる加速度センサやディスプレイ用のミラーデバイスなどの開発が進みました。マイクロデバイスもまたこれらの高度な集積技術を利用して登場したものです。

流路の作成は任意に行うことができ、使用用途に応じて高速度での並列処理や複数プロセスの連続処理なども行うことができ、様々な学術研究に応用可能なデバイスとして注目されています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/50/1/50_1_038/_pdf
http://www.hybrid.iis.u-tokyo.ac.jp/research/microfluidics
https://optipedia.info/laser/process_handbook/pro_handbook_9th_section/9th_2/

ボイスピッキング

ボイスピッキングとは

ボイスピッキング

ボイスピッキングとは、ピッキングの作業指示に音声システムを利用する方法です。

作業者はイヤホンとマイクを搭載したヘッドセットを装着し、音声によるピッキング指示を受け、音声による返答で確認を行います。紙やペン、バーコードリーダーハンディターミナルなどを持たずに作業ができるため、両手を使い、効率のいいピッキング作業が可能です。

そもそもピッキングとは、倉庫や工場などで伝票やリストをもとに商品や部品を取り出し、検品や梱包などの次工程へと受け流す作業です。後工程に続く大事な作業でありミスが許されないため、ピッキングの作業には正確性や速度が求められます。

ボイスピッキングの使用用途

ボイスピッキングは、製造業や運輸・物流、小売店など、さまざまな産業分野の倉庫で行われます。ボイスピッキングも物流センターや倉庫などで活用されますが、特に作業指示と作業確認をハンズフリーで行えるというボイスピッキング最大の特長を活かし、重量物や両手で持ち運ぶケース品を扱う倉庫での作業、フォークリフトを使った作業、ハンディターミナルを使用できない冷凍庫での作業などで行われる場合が多いです。

ボイスピッキングの特徴

ボイスピッキングは、作業の指示に音声システムを利用するピッキング手法です。作業者はヘッドセットを頭に装着し、音声によるピッキング指示 (アナウンス) を聞き、音声による応答によって確認します。

従来の紙のリストを使うピッキング作業では手にリストとペンを持ちながら作業しますが、ボイスピッキングではリストやペン、バーコードリーダーやハンディターミナルなどを持つ必要がないため両手が自由に使えます。従来手法や他のピッキング手法に比べても、作業効率が高いです。また、紙のリストが不要になることから、ペーパーレス化によるコスト削減にもつながります。

ボイスピッキングは、棚に表示器を設置するデジタルピッキングに比べ導入が簡単で、現場のレイアウトが自由に変更できるのがメリットです。また、指示受けと応答の簡単なルールを覚えるだけで作業ができるため、バーコードリーダー、ハンディターミナル、タブレット端末などの操作方法を覚えることに比べ、作業者の教育が容易になります。

ボイスピッキングの選び方

自社に最も合うボイスピッキングを選び、効果的に運用するためには、下記について注意する必要があります。

1. プロセスの評価

ボイスピッキングを導入する前に、現行のピッキングプロセスを評価することが必要です。どの作業がボイスピッキングに適しているか、どの作業者が最も効果的に活用できるかを把握することが重要です。また、現場の作業者の声のはっきりとした発音や聞き取りやすさも評価する必要があります。

2.ソフトウェア

ボイスピッキングを実現するためには、特定のソフトウェアを利用する必要があります。ソフトウェアの選択では、企業のニーズに合ったものを選びます。音声認識の精度や機能、システムの適合性などをしっかり検討します。

3. ハードウェア

ソフトウェアに合わせてハードウェアも必要です。ヘッドセットやマイク、スピーカーなどの機器を選定し、作業者が快適に使用できるものを選びます。

音声のクリアな受信や送信が可能なハードウェアを選ぶことが重要です。価格が高いものが高性能とは限らないので、必要な性能を満たすかどうかを確認します。

4. 操作性

操作がしやすい方が、教育にかかる時間も短く済みます。また、作業員の負担も減らすことができます。

参考文献
https://www.otsuka-shokai.co.jp/words/voice-picking.html
https://www.fujielectric.co.jp/products/logistics/future/picking-hikaku/
https://www.ainix.co.jp/solution/type/logistics/voice_picking/

ピッキングカート

ピッキングカートとは

ピッキングカート

ピッキングカートとは、ピッキング作業の際に利用するカート (台車) のことです。

一般的な台車機能だけのカートから、ピッキング指示の表示画面やバーコードリーダーが付属しているカートや、無線LANで上位の管理システムと連携してピッキング作業を支援する機能を持つカートなど、さまざまなタイプがあります。

ピッキングは、倉庫や工場などで伝票やリストをもとに商品や部品を取り出し、検品や梱包などの次工程へと受け流す作業です。後工程に続く大事な作業でありミスが許されないため、ピッキングの作業には正確性や速度が求められます。

ピッキングカートの使用用途

ピッキングは部品を製造現場に運んだり商品を出荷したりするために欠かせない作業なので、ピッキングカートは製造業や運輸・物流、小売店など、さまざまな産業分野の倉庫で使用されています。商品のサイズ・重量が小さく、出荷量も少ない現場では、カゴなどを用いたピッキング作業で十分間に合う場合もあります。

しかし、商品のサイズ・重量が大きく、一度の出荷する量も多い場合はカゴ程度では足りず、ピッキングカートが必要です。ただし、ピッキングカートはある程度の大きさがあるため、カートが通る幅のある通路を確保できない倉庫では使用できません。

ピッキングカートの特徴

ピッキングカートの基本機能は台車機能です。作業者は、ピッキングカートを押して商品保管場所まで移動し、紙のリストを見ながら商品を指示された数量だけカートに乗せて運ぶのが基本的な作業です。

個別の受注ごとに商品を取り出す摘み取り方式のピッキングの場合、ピッキングカートに複数の箱を設置することで、受注別に商品を仕分けしながら、複数の納入先の商品をまとめてピッキングすることができます。このような利用方法では、1件ごとに作業するより作業効率が向上します。

また、ピッキングカートにピッキング指示を表示する画面やタブレット端末、商品を検品するバーコードリーダーを付属することで、ピッキング作業の効率向上、ピッキングミスの防止、物流品質の改善などの効果が期待できます。

近年では、無線LANで上位の管理システムと連携し、ピッキングと同時に重量検品・数量検品を行えるピッキングカートや、倉庫内を完全自立走行で移動するピッキングカートなど、ピッキング作業をより高度に支援するピッキングカートが登場しています。

ピッキングカートの選び方

ピッキングカートの種類を選ぶ際は、以下の点を検討することが大切です。

1. 作業環境

ピッキングカートを効果的に利用するためには、倉庫や作業スペースのレイアウトや床の状態、通路の幅など、作業環境を評価する必要があります。ピッキングカートがスムーズに移動できるようにするために、障害物の除去や通路の整備が必要なケースも多いです。通路幅の確保が困難なときは、幅に応じたサイズのピッキングカートを選びます。

2. 使用目的

ピッキングカートは、さまざまな種類やサイズがあります。導入する前に、企業のニーズや作業プロセスに合ったピッキングカートを選択することが重要です。

3. 使い勝手

ピッキングカートを使用する作業者は、正しい使い方や安全な操作方法についてトレーニングを受ける必要があります。作業者には、ピッキングカートの操作方法や荷物の積み方、バランスの取り方、安全に使用するためのガイドラインなどを教育することが重要です。しかし、経験の少ない作業者でも扱うことができる操作性も重要なポイントです。

4. メンテナンス性

ピッキングカートは、定期的なメンテナンスと保守が必要です。定期点検や潤滑、部品の交換などを行い、ピッキングカートの状態を良好に保ちます。

参考文献
https://www.daifuku-logisticssolutions.com/jp/product/picking/cart/
https://www.daifuku.com/jp/solution/technology/picking/
https://www.teraokaseiko.com/jp/l/logistics/products/picking/