有限要素法シミュレーション

有限要素法シミュレーションとは

有限要素法シミュレーション

有限要素法シミュレーションとは、有限要素法を利用してコンピュータによる数値解析により、構造物・流体・熱・電磁気などの分野で設計の最適化や挙動解析などを行うことです。

有限要素法とは、解析的に解くことが難しい微分方程式の近似解を数値的に得る方法です。有限要素法では、方程式が定義された領域を小さな部分 (要素) に分割し、各要素内で単純な関数を用いて近似します。そして、各要素の境界で連続性や力の釣り合いなどの条件を満たすように、全体の解を求めます。

数値解析の手法として差分法と比較すると、複雑な形状の解析が容易になり汎用プログラムが作りやすい点が特徴です。構造物の強度設計をベースに、コンピュータ技術の進歩と相まって、動的解析、塑性加工、衝突挙動、大変形解析、大規模流体・熱計算などへと発展しています。

有限要素法シミュレーションの使用用途

有限要素法シミュレーションは、構造力学や流体力学などの分野で多岐にわたって応用されています。

1. 構造物

構造物では、溶接変形の予測や残留ひずみの計算、骨組み構造の崩壊、き裂伝播の解析、薄板接合の熱伝導・熱応力・ひずみ解析、自動車の衝突大変形シミュレーションなどがあります。

2. 電子関連

電子関連では、電子部品の熱疲労強度把握、蛍光ランプのモデル化、プリント配線板の設計、スピーカシステムの音響特性、アンテナの特性解析などがあります。

3. 建築・土木

建築・土木では、高層ビルの振動特性、ホールの音響特性、ダムや地盤の強度設計、地すべり運動の解析、表層地質による地震波増幅シミュレーションなどが実用されています。

4. 流体・熱

流体・熱の分野では、流体力学・粘性流動、ポリマーの大変形挙動、鋳造の凝固シミュレーションなどに応用されています。

有限要素法シミュレーションの原理

有限要素法シミュレーションの流れ

図1. 有限要素法シミュレーションの流れ

有限要素法がもっともよく用いられている材料力学の分野を例にとって説明します。商用の有限要素解析ソフトは、モデル作成部分と、シミュレーション実行部分、さらにポスト処理部分がセットになっていることが多いですが、シミュレーション実行部分 (ソルバ) だけのものやモデル作成部分専用のソフトなどもあります。

さらに、3DCADや2DCADソフトと一体となった形式のものもあり、設計者でも手軽に扱えるとして人気を集めています。

1. 前処理・モデル作成部分

モデル作成とは、CFDシミュレーションを行う形状を作成する工程です。多くの場合、3DCADでつくったSTEPやIGES,Parasolidなどのファイル形式を利用できます。

計算を実行するためにはモデルの形状を、メッシュとよばれる格子で表現します。このメッシュを綺麗に作成することが解析の速度を上げ精度を高める重要な要素です。

モデル作成ソフトでは、大きさなどを簡単に選択して、自動的に品質の高いメッシュを生成する機能が備わっています。

2. シミュレーション実行部分

Fig2有限要素法シミュレーションの原理

図2. 有限要素法シミュレーションの原理

ここでは、通称ソルバと呼ばれる部分を指しています。昨今はより複雑なモデルを解く機能が備わっていたり、コンピュータの性能の向上に対応しで計算を高速で行えるようになっています。ソルバでは以下の手順で計算を行っています。

  • 要素を構成する節点の変位成分を { ue } であらわす。
  • 節点の変位成分から要素内の任意点の変位を求める形状関数 [ N ] を作る。一次や二次の式で内挿されています。
  •  
  1. 節点の変位成分から要素内の任意点のひずみ { ε } を求める変位-ひずみマトリクス [ B ] を作る。変位を距離で微分したものです。
  2. 要素内の任意点のひずみ { ε } から応力 { σ } を求める応力-ひずみマトリクス [ D ] を作る。ヤング率とポアソン比など材料力学から求められます。
  3. { σ } = [ D ] { ε } = [ D ] [ B ] { ue } により、節点の変位成分 { ue } から応力 { σ } が得られます。
  4. 仮想仕事の原理 (物体が外力の下で釣り合い状態にある時、物体に微小な仮想変位を与えても、物体内に生じる内部仕事: 仮想変位によるひずみ × 応力 ) と外力がなす外部仕事 (外力 × 仮想変位 ) は等しい) より剛性マトリクス [ Ke ] を作ります。

3. ポスト処理部分

解析結果を3Dモデルなどで可視化することで、より直感的に解析結果を理解することができます。

有限要素法シミュレーションのその他情報

限要素法シミュレーションの比較

Fig3 有限要素法シミュレーション-の種類

図3. ソフトによって異なる機能のポイント

有限要素法シミュレーションと一口に言っても、その内容は多岐にわたるため機能や使い勝手などには差があります。

大きく分けて、以下の3つがあります。

  1. 設計者が手軽に使用できるようにモデル作成・ポスト処理などを使いやすくした設計者用のソフト
  2. 複雑で高度な解析ができる汎用ソフト
  3. 電磁気や振動、構造解析などに特化した専用ソフト

1のタイプは前述したとおり3DCADと一体になったものや、2次元解析機能に絞ることで費用を抑えたものなどがあります。その代わり、シミュレーションの知識がなくてもほとんど直感的に使えるように設計されています。

2のものは高度な解析ができるよう自らプログラムを記述できるサブルーチンの機能や、熱と構造、流体など複数の物理を同時に扱えるマルチフィジクスが扱えるものなどがあります。3のものは、例えば多くの材料モデルを備えるなどよりその分野に特化した機能が備わっています。                                                              

参考文献
https://www.engineering-eye.com/rpt/column/2017/1220_structural.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspmee/7/1/7_14/_article/-char/ja/
https://staff.aist.go.jp/tezuka.akira/FEM.intro.pdf
https://d-engineer.com/cae/fem.html
http://www.nissuicon.co.jp/jigyou/kouzou/fem/

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