磁界解析

磁界解析とは

磁界解析とは、数値解析法を利用して電子機器等に生じる磁界をシミュレーションすることです。

磁界解析の方法として、時間領域での解析法や周波数領域での解析法、等価集中定数回路網法などがあります。電子機器の設計段階から電子機器同士の干渉などを避けるために磁界解析が行われ、これをEMC対策といいます。

計算機上で構造物や与える電流の条件などを再現し、マクスウェル方程式を数値的に解くことで磁界を再現します。

磁界解析の使用用途

磁界解析は、EMC対策を行うために、電子機器などの製品設計・開発に広く導入されていますEMCとは「Electromagnetic Compatibility (電磁両立性)」 の略で、電磁的妨害を生じたり、干渉を受けたりしないこと、干渉を受けても正常に動作するよう設計することを表すものです。

電子機器の開発が短期間で進められる中、EMCフリーな性能を計算機上でただちに確保する必要があります。そこで回路や基板、筐体などの設計段階において、磁界解析によるシミュレーションが重要な役割を担っています。 

磁界解析の原理

下記では、有限差分時間領域法を例に磁界解析の原理を解説します。

1. 有限差分時間領域法

マクスウェル方程式を差分法を用いて簡略化し (有限時間による時間分割) 、数値計算によって電磁界の時間応答を求めます。解析する全空間をメッシュ状に分割し、分割されたブロックごとにマクスウェル方程式と差分法を適用します。磁界の過渡応答や不均質構造のモデリングを行う点で優れています。

2. 差分法

微分を差分近似 (差分商) で置き換える離散化手法の1つです。数値解析法として、古くから用いられる方法です。微分方程式の微分を差分に置き換えたものを差分方程式と呼びます。

有限差分時間領域法では、マクスウェル方程式を差分方程式に展開することで、電磁界の時間応答を数値的に求めています。

3. マクスウェル方程式

電磁場を説明する古典電磁気学の基礎方程式です。以下で説明する4つの式から成り立ちます。

  • 第1式
    ガウスの法則といって、電荷が存在するとその周囲から電気力線が発生することを示しています。
  • 第2式
    磁束はループしており、湧きだした磁束は必ず元に戻ることを示しています。
  • 第3式
    ファラデーの電磁誘導の法則といって、磁束が変化するとその変化を妨げるように電界が発生して起電力が発生することを示しています。
  • 第4式
    アンペールの法則といって、電流が流れるとその周囲に磁界が発生する法則を示しています。

3. モデルの作成

解析を行う際には、解析する領域をメッシュ分割してモデルを作成します。モデル作成は、メッシュの細かさ及び規模が解析悔過に影響を与えます。

メッシュを細かく分割するほど、精度の高い計算結果を取得することが可能です。一方で、計算処理負荷が高くなるため、処理能力の高さが求められたり、処理時間がかかってしまったりするデメリットがあります。

適切な粗さのメッシュを設定する必要はありますが、メッシュの間は計算から除外されるため注意が必要です。

磁界解析の種類

磁界解析で使われる代表的なシミュレーション法として、時間領域もしくは周波数領域での解析法が挙げられます。前者には有限差分時間領域法 (FDHD) 、後者にはモーメント法 (MoM) や有限要素法などがあります。

1. 有限差分時間領域法

時間領域での解析のため、過渡状態の解析に優れている。計算が直感的でわかりやすい特徴を持ちます。一方、大きな空間が計算対象となるため必要メモリが大きく、計算時間が長い特徴があります。

2. モーメント法

解析する導体等をメッシュ状に分割し、ブロック同士の電磁的相互作用を考慮して、価格ブロックの電流値を計算します。一様な導体のEMC解析に適していますが、不均一構造のモデリングは困難です。アンテナからの放射の計算によく利用される手法です。

3. 有限要素法

解析する構造の全面積をメッシュ状に分割する手法です。不均一構造のモデリングもできるメリットがありますが、モーメント法のように放射の計算まで拡張することが難しいという点があります。 

参考文献
https://sei.co.jp/technology/tr/bn178/pdf/sei10651.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejias1987/115/1/115_1_1/_pdf
https://cend.jp/emc_primer/basic/emcsimu.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1998/4/5/4_5_354/_pdf/-char/ja

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