実験用容器

実験用容器とは

実験用容器

実験用容器とは、理科・科学実験に用いられる容器全般を指します。

実験器具には、物質や試薬を入れて実験を行うための容器、物質や試薬の量を計るための計量器具、実験器具を洗浄するための洗浄器具、物質や試薬を保存するための保存容器などがあります。

実験用容器は、実験を行う際に用いられるビーカーフラスコなどの容器と、保存に用いられるバイアル瓶やネジ口瓶などの容器を指します。

ガラス製、樹脂製(合成樹脂製)、金属製のものがあり、用途によって使い分けられます。 

実験用容器の使用用途

実験用容器は、化学・生物学・医学などの科学実験・研究に用いられます。

医療や製薬における研究開発、農業・畜産における研究や現場など、使用される分野は多岐にわたり、小学校から大学までの教育課程における理科実験にも用いられます。

ガラス・樹脂量器類は、ビーカーなど液体を計量するときに使用される容器および器具です。

樹脂製容器は主に試料などの保存に、金属製容器は液体や固形物の保存、貯蔵、秤量、輸送に使用されます。

樹脂製特殊容器は、洗浄瓶など特別な用途に用いられ、用途に応じて様々な形状をしています。 

実験用容器の特徴

液体の計量に用いられるビーカーは、ガラス製、ポリプロピレン製、ステンレス製のものがあり、一般に注ぎ口がついています。耐熱性の高いものは、液体の加熱にも使用されます。

粉末物や液体の保存に用いられるガラス製容器は、頑丈で化学反応にも強く、中身の確認が容易です。特に、硼珪酸ガラス製容器は、耐熱性、耐薬品性が高いことが特徴です。ネジ式のキャップがついたネジ口瓶には、遮光性の高い褐色瓶や飛散防止コーティングが施されたものもあります。ゴム製の栓があるバイアル瓶は、無菌状態で薬液を保存することができます。

樹脂製容器には、ポリエチレンポリプロピレンが使われています。ポリエチレンは、強酸性・強アルカリ性のものにも耐性があり、耐寒性、耐水性にも優れています。ポリプロピレンは、最も軽く、物理的な強度もあって変形しにくく、耐熱性もあり、食品の保存にも用いられます。

金属製容器は、ステンレス、スチール、ホーロー、アルミなどが使われた容器で、ガラスや樹脂より耐久性や洗浄性が高いです。カップタイプ、蓋のないバットやトレー、蓋つきのタンクやボトルタイプがあります。 

自動調心玉軸受

自動調心玉軸受とは

自動調心玉軸受

自動調心玉軸受とは、軸芯が傾いた状態でも回転することができる軸受のことです。

大きなラジアル荷重が作用し軸がたわみやすい場合や、軸受部品の取り付け部品の寸法精度によって芯ズレが生じる場合に有効な軸受です。しかし、アキシアル荷重 (軸に平行な荷重) が大きい箇所への使用には適しません。

軸受とは、家電や車、工業用機械などの回転部に生じる摩擦を最小限に抑える機構要素です。機械の滑らかな動作を支援し、摩擦によって生じる異音や焼きつき、故障なども防げます。機械の正常な動作を損なうことなく、軸を安定した状態に保てることから、今や不可欠な部品の1つと言っても過言ではありません。 

自動調心玉軸受の使用用途

自動調心玉軸受は、軸がたわんだり、傾いたりしやすい木工機械や、紡績機械の伝導軸などで使用されます。また、軸とハウジングの芯合わせが困難な箇所でも使用可能です。とはいえ、アキシアル荷重の負荷能力はそこまで高くないため、汎用性は落ちてしまいます。

同じく調心性を持つものに、自動調心ころ軸受があります。こちらはころを使用した軸受であり、ラジアル荷重やアキシアル荷重を支持できる仕様です。一般機械や圧延機、製紙機械など、幅広い分野で使用されています。

自動調心玉軸受の原理

軸受には様々な種類がありますが、大まかに「転がり軸受」と「滑り軸受」に分けることができます。このうち、車や工業用機器など、多くの機械装置に使用されるのは「転がり軸受」です。主に、転がり軸受は次の3つの要素から構成されています。

  • 軌道輪 (玉やころが転がる内輪・外輪部分)
  • 転動体 (内輪・外輪に挟まれて転がる「玉」または「ころ」)
  • 保持器 (転動体同士が衝突したり、軌道輪から抜け落ちたりするのを防ぐ部分)

自動調心玉軸受の外輪の軌道面は球面になっており、曲率中心が軸受中心と一致しています。そのため、内輪と転動体、そして保持器は同時に軸受中心の周りを多少傾いても回転することが可能です。ただし、許容調心角は軸周りの構造によっては制限される場合もあります。

軸受の選定には専門知識も問われますが、設置する際は、「軸にどのように荷重がかかり、どのように支えるのが的確か」をよく考えたうえで、用途や目的に合ったものを選ぶことが重要です。

自動調心玉軸受の種類

自動調心玉軸受には、一般的な開放形以外にも、シール付きやテーパー穴形があります。

1. シール付きの自動調心玉軸受

シール付きは玉の両側にゴムの接触シールがついているものです。ごみなどが多い環境でも耐久性確保できます。また、グリースを封入することで潤滑機能を向上させることも可能です。

2. テーパー穴形の自動調心玉軸受

テーパー穴形は内輪の穴がテーパー形状になっているものです。軸を取り付ける際にアダプタを使うことで、組み付け性を改善させることができます。

自動調心玉軸受のその他情報

使用上の注意点

自動調心玉軸受を使用する際は、以下の点に注意する必要があります。

1. 許容できる芯ずれ量には限界がある
自動調心玉軸受であっても、許容できる芯ずれ量には限界があります。メーカーや製品によって異なりますが、0.07~0.15ラジアン (4~8°程度) です。また、同じ製品であっても、軸受の取り付け環境によっては許容範囲が小さくなる場合もあります。軸受メーカーの技術者に相談することをおすすめします。

2. 大きなアキシアル荷重は支持できない
通常の深溝玉軸受同様に、接触角が小さいために、大きなアキシアル荷重を支持することはできません。もし、大きなアキシアル荷重を支える必要がある場合は、自動調心ころ軸受の使用を検討します。

3. 玉が内外輪よりも軸方向に飛び出している
軸方向に玉が内外輪の幅よりも外側に広がっていることに気をつけなければなりません。大きいものでは両側に数mm程度広がっているので、軸受の配置を設計する際は注意が必要です。

参考文献
https://www.nsk.com/jp/products/ballbearing/selfaligning/
https://koyo.jtekt.co.jp/products/type/self-aligning-ball-bearing/

工業用ヒーター

工業用ヒーターとは

工業用ヒーターとは、産業や商業などの現場で使用される加熱装置です。

材料の加熱や乾燥などの目的で利用されています。工業用ヒーターは異なる種類や設計があり、特定の要件に合わせて選択することが可能です。特定の材料やプロセスに合わせて設計されたヒーターは、高い熱伝導性や効率を持つことがあります。

また、特定の要件に合わせてカスタマイズすることが可能で、異なる産業やプロセスに最適な設計を行えます。ただし、工業用ヒーターは高温を生成するため、適切な安全対策が不可欠です。適切な保護装置や安全ガイドラインを守る必要があります。

工業用ヒーターの使用用途

工業用ヒーターはさまざまな産業やプロセスで幅広い用途に使用されています。以下は工業用ヒーターの使用用途です。

1. プロセス加熱

工業プロセスにおいて、材料や液体を一定の温度に加熱することは非常に一般的です。この加熱により、材料の性質や化学的な反応が変化することがあります。

例えば、金属の鍛造プロセスでは金属を柔らかくし、形状を変えやすくするために加熱されます。また、化学反応を促進するためにも工業用ヒーターが使用されることも多いです。

2. 融解

金属やプラスチックの融解は、金属鋳造やプラスチック成形などのプロセスに欠かせないものです。ヒーターによって加熱された材料は液体となり、成形される形状に合わせて流れることが可能になります。

3. 乾燥

湿った材料や製品を乾燥するためには、適切な温度と時間が必要です。塗装工程においても、塗装された表面を加熱して塗料を乾かすことが行われます。また、セラミックの焼成プロセスも乾燥と高温の組み合わせによって行われます。

4. 暖房

工場内部や建物内部の暖房は、労働者の快適さや設備の適切な動作のために重要です。冷暖房システムで使用されるヒーターは、適切な温度を維持する役割を果たします。

工業用ヒーターの原理

工業用ヒーターは、さまざまな原理に基づいて熱を生成します。以下は工業用ヒーターに用いられる加熱原理です。

1. 抵抗加熱

電気抵抗を利用して熱を生成する原理です。電流が抵抗体を通ると、抵抗体の中で電子が移動すると、電気エネルギーが熱エネルギーに変換されます。これにより、抵抗体自体が加熱され、周囲に熱が放射させることが可能です。

2. マイクロ波加熱

マイクロ波加熱は、電磁波の一種であるマイクロ波を使用して加熱する方法です。マイクロ波は水分子や脂肪分子などの極性分子に吸収されやすく、これらの分子の振動や回転を励起して熱を発生させます。食品加工や化学プロセスなどで使用され、比較的均一な加熱が可能です。

3. 誘導加熱

誘導加熱は、電磁誘導の原理を利用して導体材料を加熱する方法です。高周波の交流電流がコイルに流れることで、コイルの周りの導体材料内に渦電流が発生し、その電流が材料を加熱します。誘導加熱は金属や導電性の高い材料を加熱するために使用され、鋳造や表面硬化などのプロセスで利用されます。

工業用ヒーターの選び方

工業用ヒーターを選ぶ際には、さまざまな要素を考慮する必要があります。以下は選定要素の一例です。

1. 加熱方式

加熱方式は、どのような方法で加熱を行うかを決定します。抵抗加熱や誘導加熱などの種類があります。加熱する材料やプロセスに合わせて適切な原理を選ぶことが重要です。

2. 加熱容量

加熱容量は、ヒーターが発生する熱の量を示す指標です。プロセスで必要な加熱量に合わせて適切な加熱容量を選びます。大きな容量のヒーターは高い温度を迅速に実現できますが、エネルギーコストも増加します。

3. 温度範囲

使用するプロセスで必要な温度範囲を確認し、ヒーターの耐久性や制御性を考慮して選ぶことが重要です。一部のヒーターは高温環境での使用に適している一方で、低温プロセスには適さないこともあります。

4. 加熱の均一性

加熱対象が均一に加熱される必要がある場合、放射熱や対流熱の原理を検討します。均一な加熱が要求されるプロセスでは、選択したヒーターが均一な加熱を提供できることを確認することも重要です。

参考文献
https://www.heat-technology.co.jp/type/
https://www.nippon-heater.co.jp/hint/

複列アンギュラ玉軸受

複列アンギュラ玉軸受とは

複列アンギュラ玉軸受_図0

複列アンギュラ玉軸受 (英: Double Row Angular Contact Ball Bearings) とは、アンギュラ玉軸受の一種です。

「複列」とは、内輪と外輪転動面の2本の溝に沿ってボールを2列に配置している軸受です。その他、「単列」があり、内輪と外輪の溝は1本でボールを1列に配置しています。

単列アンギュラ玉軸受は、ラジアル荷重のみを支持できますが、複列アンギュラ玉軸受はラジアルとスラスト両荷重を支持します。特に、高速回転と大荷重の条件においての性能に優れています。

複列アンギュラ玉軸受_図1

図1. 転がり軸受の体系

複列アンギュラ玉軸受の使用用途

複列アンギュラ玉軸受_図2

図2. ラジアル荷重とスラスト荷重

複列アンギュラ玉軸受は、ラジアルとスラスト両方向の荷重を支持し、適用幅広く多くのケースに使用できます。例としては、航空機のランディングギアや鉄道車両の台車などです。

高回転数で高負荷の用途に最適で、その他工業用プリンターや産業機械の動力システムがあります。下図は、生産設備でのフィルム製品送り機構の一部で、ローラー側からのラジアルとスラスト荷重の支持目的で複列アンギュラ玉軸受が使用されるケースです。

複列アンギュラ玉軸受_図3

図3. 複列アンギュラ玉軸受の使用例

複列アンギュラ玉軸受の原理

複列アンギュラ玉軸受_図4

図4. 接触角と内部隙間

アンギュラ玉軸受はボールと内輪・外輪の接触点を結んだ線が、回転中心線と90度に交差せず接触角を持ち、接触角により片方向のスラスト荷重を効果的に支持します。複列アンギュラ玉軸受は、単列アンギュラ玉軸受の性能に加え、両方向のスラスト荷重とモーメントを支持できます。

複列アンギュラ玉軸受は、内輪か外輪の一方を固定し、固定していない側を軸中心方向に移動させて組み立てます。この移動量がアキシアル内部隙間です。

複列アンギュラ玉軸受_図5

図5. 複列と単列の比較

複列のメリットは、荷重の分散による安定性や耐久性の向上で、単列の組合せに比べ幅寸法が小さいことです。複列アンギュラ玉軸受は、単列アンギュラ玉軸受の背面組合せと同じ機能を持ち、単列2個の内輪と外輪を一体化した構造です。

単列アンギュラ玉軸受は、「背面組合せ」以外に「正面組合せ」と「並列組合せ」がありますが、正面や背面と同じ機能の構造はありません。

複列アンギュラ玉軸受の構造

複列アンギュラ玉軸受_図6

図6. 複列アンギュラ玉軸受の構造

複列アンギュラ玉軸受は、内輪、外輪、ボール、リテイナ (保持器) で構成されています。また、密封構造のない開放形と、密封構造のあるシールド形、シール形 (非接触、接触)があり、用途や環境に応じて選定します。

密封構造の目的は、ボール部に充填したグリースの漏洩防止、外部からの粉塵や水分浸入防止です。

密封種類

密封装置

防塵性

潤滑方法

摩擦抵抗

開放形

なし

低い

グリースを外部から供給、飛沫や油浴潤滑

低い

シールド形

金属シールド板

ある程度高い

グリースを軸受内に密封

低い

非接触シール形

鋼板、合成ゴムの接着シール板

シールド形より高い

低い

接触シール形

最も高い

やや高い

複列アンギュラ玉軸受のその他情報

1.  予圧

マイナスの内部隙間が予圧状態で、JIS B0104転がり軸受用語 「Rolling bearings-Vocabulary」で下記のとおり定義されています。

  • 実際の荷重がかかる前に、例えば他方の軸受に対するスラスト方向の位置の調整によって軸受に加わる力
  • “負のすきま”になる軌道寸法と転動体の寸法との関係によって軸受内に生じる力、前者を外部予圧といい、後者を内部予圧という

また、予圧にはその方法によって、スペーサでの加圧の定位置予圧、ばねでの一定加圧の定圧予圧があります。

一般的に、予圧を行う目的とは下記のようなものがあります。

  • シャフト剛性の向上
  • 位置精度とシャフトの回転精度の向上
  • ボールのスリップとスミアリングの低減
  • 振動、異音の低減
  • 外部振動によるフレッチングの防止

なお、スミアリングとは、スリップや油膜不足での微細焼き付きに伴う転動面の損傷のことで、フレッチングとは静止状態での外部振動に伴う転動面の摩耗を指します。

2.  規格

下記は、複列アンギュラ玉軸受関連の規格です。

  • JIS B1522 転がり軸受-アンギュラ玉軸受Rolling bearings-Angular contact ball bearings
  • DIN 628-3 Rolling Bearings-Angular Contact Radial Ball Bearings-Part 3: Double Row
  • ISO 15 Rolling bearings-Radial bearings-Boundary dimensions, general plan

参考文献
https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/jik/radial_t/0104a.htm
https://koyo.jtekt.co.jp/2019/02/column01-04.html

マイクロフォトセンサー

マイクロフォトセンサーとはマイクロフォトセンサー

マイクロフォトセンサーとは、光を利用して物体の有無や位置を調べるデバイスです。

光センサーの一種であり、微小なサイズと高感度な光検出能力を特徴としています。マイクロフォトセンサーは非常に小型で、さまざまなデバイスに組み込むことが容易です。これにより、デバイスのデザインや機能性を向上させることが可能です。

また、高速な光検出が可能であり、高速なセンサーとしての用途に向いています。さらに、微弱な光を検出する能力が高く、暗い環境でも効果的に動作するため、暗所での撮影や環境モニタリングなどの用途に最適です。

一般的に透過型のフォトインタラプタと反射型のフォトリフレクタに分けられます。発光素子としては、赤外のLEDが使用されるのが一般的です。また、性能の割に安価なため広く用いられています。

マイクロフォトセンサーの使用用途

マイクロフォトセンサーは、その高感度と小型化された特性からさまざまな用途で活用されています。以下はマイクロフォトセンサーの使用用途一例です。

1. カメラ

デジタルカメラやスマートフォンのカメラで使用されています。これらのセンサーは、光を検出して画像をキャプチャする役割を果たします。高感度と小型化された特性により、暗所での撮影や高品質な画像の取得が可能です。

現金やチケットなどの高い精度が求められる対象物の検出に用いられることもあります。

2. 自動車運転支援

自動車の運転支援システムでは、マイクロフォトセンサーが使用されて周囲の照明条件を監視します。これにより、適切なヘッドライトの制御や運転支援を行うことが可能です。

夜間やトンネル内などの暗い環境では自動的にヘッドライトを点灯させる機能に利用されます。また、周囲の車両や障害物を検知し、適切なタイミングで警告を発するセンシングシステムにも使用されることが多いです。

3. 医療機器

医療分野においても、さまざまな用途に使用されています。内視鏡やエンドスコープに組み込まれて、体内の観察や手術の支援に利用される場合も多いです。また、組織の光学的特性を測定するためにも使用され、組織の状態や疾患の診断に役立ちます。

マイクロフォトセンサーの原理

マイクロフォトセンサーは、光を検出して電気信号に変換するためのセンサーデバイスです。光が当たると、光エネルギーがセンサー内の半導体材料に吸収されて電荷が生成されます。この電荷の生成と変換プロセスによって、光の強度や特性に関する情報が電気信号として取得される仕組みです。

半導体材料は、光の特定の波長範囲に対して感度を持つ場合が多いです。光がセンサーに入射すると、光エネルギーが半導体中の電子に吸収されます。光エネルギーによって励起された電子は、エネルギーバンドから伝導帯へと移動します。

この励起された電子は、伝導帯における自由電子として振る舞うことが可能です。同時に、励起されることで価電子帯に電子が不在となります。これらの電子の移動が電気信号として取得されます。

信号は、アナログまたはデジタルの形式で読み取ることが可能です。光の強度や特性に応じて生成される電荷の量が変化し、それに伴って電気信号の強さやパターンも変化します。

マイクロフォトセンサーの種類

マイクロフォトセンサーには、透過型と反射型の2種類が存在します。

1. 透過型マイクロフォトセンサー

片側から光を放ち、もう片側で光を受け取る方法です。フォトインタラプタとも呼ばれます。物体が間を通過すれば光が遮られるため、対象の有無を検知することが可能です。

単純な構造をしており、精度が高い方法です。ただし、発光部分と受光部分との距離は測定装置によって決まっているため、間を通る物体の大きさは限られます。この問題を解決するために発光部分と受光部分を切り離した、分離型のマイクロフォトセンサーも存在します。

2. 反射型フォトマイクロセンサー

測定対象に光を反射させて計測する方法です。フォトリフレクタとも呼ばれます。放たれた光は測定対象で反射し、受信部で受け取られます。

また、反射してくる光量の違いで測定対象の位置を測ることも可能です。装置から測定物までの距離がある程度あっても計測することができます。

参考文献
https://www.omron.co.jp/ecb/sensor/pms-basics/basics?sectionId=basic#basics01
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/24/20/index.html#3
https://www.photosensor-blog.jp/blog/2018/11/21/firstphotosensor/2/

画像処理用照明

画像処理用照明とは

画像処理用照明

画像処理用照明とは、画像処理において撮影対象物や撮影環境を適切に照らすために使用される照明です。

画像処理では撮影された画像から情報を抽出し、解析や特定の目的に応じた処理を行います。そのため、照明条件が画像品質の取得に大きな影響を与える重要な要素です。画像処理用照明を使用することで、適切な照明条件を得られ、画像の品質が向上します。均一な照明を提供することで、撮影対象物の詳細な情報を抽出しやすくなります。

また、特定の特徴を強調するための照明が使用されることで、欠陥や重要な部分を視覚的に際立たせることが可能です。これにより、不良品検査や品質管理などで重要な役割を果たします。

ただし、撮影対象物や撮影環境に応じて適切な照明を選定することが重要です。特定の応用用途に適した照明を使用しないと、画像品質や解析結果に悪影響を及ぼす可能性があります。

画像処理用照明の使用用途

画像処理用照明は、さまざまな用途で使用されます。以下は代表的な使用用途の一例です。

1. 検品

工業分野において、製造された製品や部品の品質を保証するために画像処理が利用されます。例えば、電子機器の製造において、外観や寸法の欠陥を検出するために製品を撮影して画像処理を行うことも多いです。

適切な照明を使用することで、製品表面の欠陥や傷を明確に可視化して異常を検知することが可能です。欠陥が検出された場合は自動的に不良品として分類し、不適切な製品を排除することができます。

2. 自動認識システム

ロボティクスや自動化の分野では、画像処理を用いた自動認識システムが幅広く利用されています。バーコードやQRコードの読み取りや顔認識など、さまざまな自動認識用途で画像処理用照明を活用することが可能です。適切な照明条件を使用することでシステムの精度や信頼性を向上させ、高速で正確な認識を実現します。

3. 医療

医療分野では、X線やCTスキャンなどの画像処理において照明条件が重要です。例えば、X線撮影では被写体に適切な透過率を提供するためのX線管照明が使用されます。MRIやCTスキャンでは、画像のコントラストを向上させるための適切な照明が重要です。

照明を適切に調整することで、病変の視覚的な特徴をより鮮明に捉え、正確な診断や治療計画の立案に役立ちます。

画像処理用照明の原理

画像処理用照明の原理は、撮影対象物を適切に照らすことによってカメラが良質な画像を取得できるようにすることです。照明の均一性や色温度、方向性などが重要となります。

画像処理では撮影対象物の全体が均一に照らされていることが重要です。均一な照明を提供することで、撮影対象物の表面に生じる陰影や光の反射を最小限に抑えることが可能です。結果として、画像のコントラストを向上させることができます。

また、照明の色温度は画像の色合いに影響を与えます。特定の色温度の照明を使用することで、画像の色合いを調整することが可能です。また、画像処理では撮影時の照明条件によって色再現性が影響を受けるため、照明の一貫性を保つ必要があります。

照明の方向性も撮影対象物の表面の特徴を強調するために、重要な要素です。光源の角度調整によって、陰影や凹凸の特徴を明確に表現することが可能です。また、特定の方向からの光を反射させることで、撮影対象物の詳細な情報を取得できます。

画像処理用照明の選び方

画像処理用照明を選ぶ際には、撮影対象物の特性や電力要件、安定性などを考慮します。

1. 対象物の特性

照明の選択は、撮影対象物の特性に合わせて行うことが必要です。撮影対象物の色や形状、表面の仕上げなどが重要な要素です。対象物によっては特定の波長の光を使用したり、特殊な照明器具を必要としたりする場合があります。

2. 電力要件

画像処理用照明は電力を消費するため、電力要件を考慮する必要があります。また、一部の高出力照明器具は冷却が必要な場合も多いです。

3. 照明の安定性

照明の安定性は、画像の品質に影響を与えます。安定した光源を持つ照明器具を選択することが望ましいです。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/denkiseiko/79/4/79_4_299/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmehs/2002.39/0/2002.39_189/_pdf/-char/ja

凍結保存容器

凍結保存容器とは

凍結保存容器

凍結保存容器とは、生物学的試料を−60℃~−160℃の超低温条件下で長期保存するための専用容器です。

凍結保存とは、生物学的試料を液体窒素 (−196℃) を入れた専用の容器に格納して保存することを指します。簡便法としては、−80℃の冷凍庫を利用する場合もあります。凍結保存は、生物学的試料や医薬品を長期間保存するための効果的な方法です。

液体窒素や液体窒素蒸発器を使用して非常に低い温度で保存するため、試料の劣化が最小限に抑えられます。また、低温での保存により、生物学的反応や酵素活性が停止し、試料の品質が維持されます。このため、後の実験や解析において正確な結果を得ることが可能です。

ただし、凍結保存容器は非常に低い温度で使用されるので、容器の材質や耐久性が重要です。適切な材質でない容器を使用すると破損する可能性があります。

凍結保存容器の使用用途

凍結保存容器はさまざまな用途で使用されます。主な使用用途は以下の通りです。

1. 生物学研究

生物学研究では、細胞や組織などの生物学的試料を凍結保存することが一般的です。試料内の生物活性を保持しながら長期間保存します。凍結保存により、細胞の活性やタンパク質の構造が保存され、後の実験や解析に利用可能です。

また、バイオバンクでは大規模な生体試料の凍結保存が行われます。疾患研究や個別治療のためのリソースとして活用されています。

2. 医薬品開発

医薬品の製造プロセスでは生体材料や中間生成物を凍結保存することで、安定性を保ちつつ製品の品質を確保することが必要です。バイオ医薬品などの高度な製品は、温度の変動に敏感であるため、凍結保存が特に重要です。また、臨床試験用の試料も凍結保存され、後の分析や検証に使用されます。

3. 医療

臓器移植においては、一部の臓器や組織は非常に低い温度で保存することが必要です。心臓や腎臓のような臓器は液体窒素の温度で凍結保存され、移植時に生体活性を保持するための保存が行われます。凍結保存により、臓器提供者と受信者のマッチングが行われるまでの時間を延ばすことが可能です。

また、再生医療は、幹細胞や組織工学的な治療法の開発を含む領域です。これらの治療法では、患者自身の細胞や組織を採取して加工し、再び利用する場合があります。この際、凍結保存により試料を長期保存し、必要な時に利用できるようにしています。

凍結保存容器の原理

冷凍保存容器の原理は、低温状態で試料や物質を保存することによって生物学的な反応や化学的な変化を停止し、劣化や変性を最小限に抑えることです。一般的な冷凍保存容器には、液体窒素や液体窒素蒸発器を利用して非常に低い温度を維持する仕組みが利用されます。

液体窒素は-196℃で沸騰する非常に低温の液体です。凍結保存容器には液体窒素が充填されており、試料や物質は液体窒素の蒸気によって冷却されます。液体窒素は蒸発する際に非常に冷たい気体を発生させるため、試料を非常に低温に保つことが可能です。

冷凍保存容器の中では試料や物質は実質的に液体窒素の温度に達するため、周囲の温度変化に対して安定しています。液体窒素の低温によって試料中の分子運動が大幅に低下し、生物学的な活性や化学的な変化を停止させることが可能です。これにより、試料の品質を長期間にわたって保つことができます。

凍結保存容器は、特殊な材料や設計がされており、液体窒素の蒸発を最小限に抑えるように工夫されています。また、密封性の確保や容器の耐久性なども重要な要素です。これらの要素が備わっていることで、試料の品質を劣化させずに効果的に冷凍保存できるようになります。

凍結保存容器の選び方

凍結保存容器を選ぶ際は、資料の種類や温度帯、容量などを考慮します。凍結保存する試料の種類や性質によって、適切な容器の種類を選ぶことが必要です。

細胞や組織の保存には、専用の細胞冷凍保存容器があります。また、液体試料を保存する場合には液体窒素耐性の容器が必要です。

凍結保存容器は非常に低温で使用されるため、対応範囲も確認します。液体窒素を使用する場合、容器は液体窒素の蒸気温度に耐えることが求められます。

その他、使用する試料の量や保存する量に応じて、適切な容量の容器を選ぶことが必要です。容器の大きさや形状が、試料を効率的に収容できるかどうかを判断する上で影響を与えます。

参考文献
https://www.labinox.co.jp/item_thermolyne_02.html
http://www.nikko-hansen.jp/download/Catalog/cat/cat_Locatour_201704.pdf
https://www.oakclinic-group.com/baiyoushitu/container.html
https://www.monotaro.com/s/c-85729/
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/news/docs/akiyama_190328.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/30/7/30_7_441/_pdf
https://assets.thermofisher.com/TFS-Assets/LPD/brochures/sample-storage-products-catalog-2019-ja.pdf?CID=Social_LAB
https://www.wakenbtech.co.jp/topics/post-7382 

電動昇降装置

電動昇降装置とは

電動昇降装置

電動昇降装置とは、電気を動力として作業台やテーブル、椅子やベッド等を昇降し高さを変更できる装置です。

工場やオフィス、病院など幅広い分野で、作業者の用途に合わせて作業の高さを調節することができため、使用されています。また、身長や個人に合わせて調節できるため、姿勢などの健康面でも注目されています。

スイッチのみで容易に操作できます。センサにより何か障害があった場合には、自動停止する機能もあり、安全面も考慮された設計がなされています。 

電動昇降装置の使用用途

病院、工場やオフィスなど、多岐にわたる分野で使用されています。

病院や介護施設では、診察する際の患者の診察用の椅子、診察台、ストレッチャー、介護用ベッド、車椅子に使用されています。

工場やオフィスなどでは、人間工学的な観点から机や作業台、椅子の昇降により作業者の疲れを緩和するために使用されています。また、船での電動シリンダーにも使用されています。

電動昇降装置の種類

電動昇降装置は、マルチリフト (産業用作業台など) や低騒音設計のスリムリフト、荷重が大きくても対応可能な構造を持つ高剛性タイプなどがあります。

1台で使用するものから、昇降動作を組み合わせて複数台でしようするシンクロタイプ等もあります。センサにより昇降の中に障害があった場合に電源が自動で停止するもの、最終地点で自動で停止するものなど、安全設計がなされていることも特徴です。以下は装置の種類や特徴です。

階段昇降機

階段に取り付ける自動昇降する椅子で、屋外用や屋外用などがあります。まっすぐな階段だけではなく、曲がった階段など色んな形状の階段に対応したものがあります。

BL1 (LINAK:BL1)

3段式電動昇降装置です。最大ストロークは400mmです。病院や介護施設のベッド、椅子 (診察椅子、デンタルチェア) 、診察台などに使用されます。コンパクトで、ストロークが長いのが特徴です。

DL5  (LINAK:DL5)

2段式電動昇降装置です。コンパクトな作りで、オフィスを中心としたデスクでの使用されています。 

金属検出機

金属検出機とは

金属検出機とは、サンプルに金属の異物が混入していないか確認する検出器です。

食品や医薬品の分野で多く使用されています。金属検出機を用いれば、目視では検品不能なサイズの金属を検出可能です。目視による検査よりも、確実に異物を検出できます。

なお、金属検出器で検査できる代表的な食品の種類は、ラーメンや菓子などのドライなもの、生肉や魚およびかまぼこなどの加工品のウエットなもの、冷凍食品やスナック菓子などのアルミ蒸着により包装しているものです。ただし、対象物の水分量や塩分量、温度が結果に影響を与える可能性があることに留意する必要があります。

金属検出機の使用用途

金属検出機は、食品や医薬品などの体内に入る製品の検査によく使用されています。特に食品安全を徹底する「HACCP (Hazard Analysis Critical Control Point). 」での衛生管理方法の完全義務化に伴って、食品工場での金属検出器の使用が増えています。

食品内の異物を検出する装置としては、金属検出器以外にX線異物検出器があります。金属検出機は金属の検出に特化しているため、比較的構造が簡単で価格が安価で小型化も可能なため、導入しやすい装置です。

これに対し、X選異物検出装置では、金属以外にガラスや樹脂なども検出可能ですが、構造が複雑であることや大型であることから比較的高価で、導入が難しいこともあります。そのため、対象物や予算に応じて、これらを単体で使用するあるいは組み合わせるなどして使用されています。

金属検出機の原理

金属検出機は検出原理により「交流型」と「直流型」に分類されます。

1. 交流型金属検出機

交流型金属検出機は、磁性体および非磁性体、両方の金属を検出できるのが大きな特徴です。交流型の金属検出機は、交流磁界を発する送信コイルと2つの差動構成の受信コイルが対向して設けられた構成です。そして、この送信コイルと2つの受信コイルの間の空間にサンプルを置いて金属検査をします。

送信コイルと受信コイル間のサンプル内に金属が無ければ、2つの受信コイルは送信コイルから同等の強さの磁力線を受けます。しかし、磁性を持つ金属があれば、送信コイルから発する交流磁界によって金属が磁化し、磁力線が金属側に引き寄せられて2つの受信コイルが受ける磁力線に差が生じるため、これにより金属の検出が可能です。なお、磁性をもつ金属としては、鉄、コバルト、ニッケルなどが挙げられます。

また、磁性を持たない非磁性金属がある場合には、送信コイルからの交流磁界により非磁性金属の周囲に渦電流が生じます。この渦電流により変化する非磁性金属付近の磁界を受信コイルで検出することで金属の検出が可能です。なお、非磁性金属としては、アルミニウムステンレス鋼などが挙げられます。

さらに、この交流型金属検出機では、送信コイルから複数種の周波数の磁力線を発信するものもあります。これは、金属の種類や形状によって検出に最適な周波数が異なるためです。複数種の周波数の磁力線を順次発することにより、最適な検出を可能としています。

2. 直流型金属検出機

直流型金属検出機は、包装材にアルミニウムを用いたレトルト食品やスナック菓子などの中に混入した磁性を持つ金属を検出できるのが大きな特徴です。直流型の金属検出機では、永久磁石を用いてサンプルに磁界を掛けます。

サンプル内に磁性を持つ金属が含まれていれば、金属は磁化されて内部のスピンが一方向にそろいます。サンプル中の金属のスピンが揃った状態でピックアップコイルと称される2つのコイルの間を通ると、ファラデーの電磁誘導の法則で起電力が起こるため、これを検出して金属の有無を判断する仕組みです。

なお、アルミニウムは非磁性体の金属なので、磁化されず、サンプル内の磁性を持つ金属だけが検出されます。

金属検出機のその他情報

金属検出機の校正

金属検出機では、性能や特性を定量的に確認するために、一般的に鉄やステンレス鋼よりなるテストピースを用いて校正を行います。テストピースのみを金属検出器にかけて校正を行うよりも、実際のサンプルと同じ容器に入れる、もしくはサンプルに取り付けた方が正確な校正が可能です。

サンプルにテストピースを固定する場合、サンプルの形状によっては必ずしも安定して固定できるとは限りません。テストピースの固定状態が変わってしまうと校正に影響を及ぼすため、サンプルにテストピースを固定する様々な方法が採用されています。

その一例として、ポケットを備えたビニール素材の袋のポケットにテストピース入れてサンプルにかぶせる方法があります。この方法では、サンプルとテストピースがビニール素材の袋で一緒にくるまれた状態となり、所望の位置でテストピースを固定可能です。また、ビニール素材は磁界に影響を与えにくいため、ビニール素材の袋を使用した方法が校正に適しています。

そのほか、輪ゴムを使ってサンプルにテストピースを固定する方法もあります。輪ゴムも磁界に影響を与えにくいため、校正に好適です。さらには、磁界に影響を与えにくい樹脂素材製のバスケットにテストピースを取り付け、バスケットにサンプルを入れて校正する方法もあり、サンプルに凹凸が多い場合などに採用されています。また、専用治具に固定する方法では、スタンドパウチなどの倒れやすい商品を支える専用の治具を作成してこれにテストピースを固定します。

参考文献
https://dl.cdn-anritsu.com/ja-jp/test-measurement/reffiles/About-Anritsu/R_D/Technical/89/89_088.pdf
https://haccp.shokusan.or.jp/wp-content/uploads/2016/02/h25manual_2_2.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sptj1978/39/6/39_6_441/_pdf/-char/en
https://www.thermofisher.com/
https://takuminotie.com/blog/2016/11/23/post-16322/2/

クリーンウェア

クリーンウェアとは

クリーンウェア

クリーンウェアとは、クリーンルームにおいて微粒子や微生物などが環境中に放出されることを防ぐための作業服です。

発じんを抑えるという機能から、防塵服または無塵服とも呼ばれます。発じん防止の観点から、ウェア自体の発じん性の低さに加え、気密性も重要です。

一方で、作業者の負担を軽減するために、長時間の作業にも適した通気性も求められます。これらの一見相反する特性を両立できるように、クリーンウェアは設計されています。

クリーンウェアの使用用途

クリーンウェアは半導体や医薬品、食品などを製造する工場で利用されます。これらはクリーンルームの使用が必須の分野です。使用する目的の1つに、浮遊菌のコンタミネーションを防ぐことが挙げられます。

浮遊菌とは、空気中を漂っている細菌やウイルスを含む微生物です。清浄度が高くない通常の空間には、浮遊菌が多数存在します。これらの浮遊菌は浮遊粒子表面に付着するため、浮遊粒子数が増加するほど浮遊菌混入の危険性が高まります。

クリーンウェアの着用により浮遊粒子の発生や人体由来の微生物放出を同時に抑制し、浮遊粒子と浮遊菌のコンタミネーションを予防することが可能です。

クリーンウェアの原理

クリーンウェアは、作業者からの発じんを防ぐ目的で設計されています。これに加えて、通気性が良く蒸れないこと、動きやすいことなど、衣服としての機能も要求されます。また、洗浄や蒸気滅菌処理にも耐えられるだけの耐久性も必要です。

クリーンウェア自体の発じん性やフィルター効果は、用いる素材の性質が影響します。一般的な材質はポリエステル長繊維やアラミド繊維などの合成繊維です。通常の衣服によく用いられる天然繊維 (綿や羊毛など) は発じんしやすく、クリーンルームでの使用には適していません。

静電気は微粒子の引き寄せや感電の原因となるため、クリーンルーム内では静電気対策が必要です。クリーンルームウェアには、静電気を放電するための特殊な素材やアクセサリーが組み込まれていることがあります。

クリーンウェアの構造

クリーンウェアには大きく分けて、上下分離のセパレート型と上下一体型の2つがあります。清浄度の高いエリアでは厳密な発じん制御が必要なため、上下一体型かつフード付きが選ばれる場合が多いです。

上下一体型のクリーンウェアは開口部が少なく、前面のチャックで脱着します。首元にはマジックテープが付いている場合は、首元の隙間をなくすことも可能です。手首・足首・フードには、衣類と体の隙間を無くすためにゴムが入っています。

クリーンウェアの種類

クリーンウェアは、使用する環境の清浄度に合わせて種類があります。清浄度とは、空気中の浮遊微小粒子や浮遊微生物などが、どの程度少ないかを客観的に数値で示した規格です。一般的に、単位体積に含まれる粒子の数で表現します。

清浄度の規格にはISO基準14644-1 (JIS準拠) があります。ただし、日本では業界によって使用する洗浄度の規格が異なることがあるため注意が必要です。米国連邦規格はISOの制定により既に廃止されていますが、日本国内では今でも慣習的に使用されている場合が多くみられます。

以下はクリーンウェアの種類一例です。前半のクラスが米国連邦規格を示しています。

1. クラス100,000以下/ISOクラス8以上

簡易的なクリーン対応として、上下セパレートタイプやガウンタイプのものが用いられます。フードの代わりに帽子で運用する事が多いです。自動車部品工場などの製造現場で求められる基準です。

2. クラス1,000~10,000/ISOクラス6~7

上下繋ぎタイプでフード一体型やフードセパレートタイプが用いられます。靴も専用のクリーンシューズを着用します。食品工場、医薬品製造現場などに求められる基準です。

3. クラス1~100/ISOクラス3~5

上下繋ぎタイプで、場合によってはインナーもクリーンタイプを着用します。フードはフェイスシールド付きを用います。半導体工場に求められる基準です。

なお、ISOクラス1~2のクリーンルームは、基本的に作業者の立ち入りはなく、自動化された機器やロボットが作業をします。

クリーンウェアのその他情報

クリーンウェアのクリーニング

クリーンウェアをクリーニングする場合には、使用するクリーンルームよりも清浄度の高いエリアで作業が行うことが必要です。洗濯には専用の洗剤と洗濯機が使用され、すすぎには純水や超純水が使用されます。また、乾燥はHEPAフィルタ付の乾燥機を使用するなど清浄な空気を通して行う場合も多いです。

ICタグシステムを導入することも有効で、クリーンウェアの在庫管理だけでなく、繊維の疲労度まで明らかにすることができます。したがって、クリーンウェアの交換時期の決定にも役立てることが可能です。

参考文献
https://www.tanimura.biz/catalog/clean_wear.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jje1965/26/Supplement/26_Supplement_380/_pdf/-char/en
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1944/42/10/42_10_P424/_pdf/-char/en
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2018.7/0/2018.7_25/_pdf/-char/ja 
https://www.airtech.co.jp/products/cleanroom/120/
https://www.anken.co.jp/uniform_creanroom/choice.html
https://www.ncc-nice.com/co_mame/b83f6435afa26dff3455f0ba-165.html