転造ダイスとは
転造ダイスとは、金属素材に強い圧力を加えてねじ山などの精密な形状を成形する工具です。
被加工材である金属棒などを挟み込み、回転させながら表面に押し付けることで、素材を盛り上げて目的の形状へ加工します。一般的な切削加工が材料を刃物で削り取って形を作るのに対し、転造は粘土をこねるように材料を塑性流動させて変形させる点が特徴です。切り屑が発生しないため、材料の無駄が少なく、環境負荷の低減に貢献します。
転造ダイスによって加工された製品は機械的な強度が高くなります。また、強い圧力を受けることで金属組織が密になり、表面が硬化して磨耗しにくくなります。さらに、鏡面のように滑らかに仕上がるため、摺動性が求められる部品にも適しています。高精度なねじやスプライン加工を短時間で実現できる重要な工具です。
転造ダイスの使用用途
転造ダイスは以下のような用途で使用されます。
1. 締結用部品
最も代表的な用途はボルトやナットといった締結部品の製造です。転造ダイスを用いることで均一な品質のねじ山を高速で形成できるため、数万本単位の大量生産に適しています。建築現場で使われる太いアンカーボルトから、スマートフォンや眼鏡に使われる極小の精密ねじまで、幅広いサイズに対応可能です。
2. 自動車
自動車のエンジン回りや足回りなど、高い安全性と耐久性が求められる部品の加工にも転造ダイスが使用されます。ホイールを固定するハブボルトやステアリング部品などが一例です。これらの部品は、走行中に繰り返し大きな力がかかるため、折損することが許されません。転造加工によって高い疲労強度を付与することができ、こうした重要部品の信頼性を確保します。
3. 精密機器
産業用ロボットに使用されるボールねじやリードスクリューといった、精密な駆動部品の製造にも活用されます。これらの部品はモーターの回転運動を直線運動に変換する役割を担っており、極めて高い寸法精度と動作の滑らかさが求められます。転造ダイスによる加工は表面の粗さが小さく仕上がるため、摩擦抵抗を減らし、機器の動作精度を向上させる効果があります。