ACF熱圧着とは
ACF熱圧着とは、ACF (Anisotropic conductive film:異方性導電膜) を使用した電気回路の接続加工方法です。
ACFの大きさは、膜厚10~45μm、幅は0.5~20mmとなる特殊膜です。この特殊膜は、上下の基板を張り付けるための熱硬化性樹脂と多数の微小な導電粒子から構成されています。
ACF中の導電粒子は、直径3~6μm程度のプラスチック製粒子の表面にニッケル、金、絶縁膜が薄くコーティングされた構造です。ACFを用いてガラス基板と外部基板を熱圧着すると、電極上の導電粒子が押されて変形し上下の電極間に電気が流れます。なお、上下に対抗する電極がない部分では電気は流れません。
この上下方向で電気を通し水平方向で絶縁する特性は導電異方性と呼ばれ、ACFの大きな特長です。
ACF熱圧着の使用用途
ACF熱圧着は、半導体業界などで広く使用される加工方法です。基本的には、基板やフィルム同士を接合する際に使用します。具体的なACF熱圧着の使用用途は、以下の通りです。
- 液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのガラス基板と外部電気回路接続用
- プリント基板(PCB)などの制御基板修理用
- 半導体製品の開発用または研究用
主に接続される基板はフレキシブルプリント配線板 (FPC) やリジッド基板です。基板同士の接続に使用される場合や、基板とフィルムの接続に使用される場合があります。
基板と接続されるフィルムには、PETフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムがあります。ACF熱圧着は電気回路接続用の加工方法であるため、フィルム同士の圧着には使用されません。フィルムと基板の接続に使用されます。
また、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのガラス端子上にドライバーICを実装する際に、IC (金バンプ) とガラス基板の接合に使用される場合もあります。
ACF熱圧着の原理
ACF熱圧着を行う前に、まずは基板の洗浄を実施します。洗浄が不十分であった場合、接合面に接触抵抗が発生したり導通箇所同士の絶縁が不十分となる危険性があるため注意が必要です。洗浄には主にUV洗浄やプラズマ洗浄が使用されます。
次に、ACFをガラス基板やリジット基板上にヒーターヘッドで仮圧着します。ACFには剥離フィルムと呼ばれるフィルムが付いて販売されており、仮圧着では剥離フィルムを付けたまま圧着します。仮圧着用加熱装置と本圧着用加熱装置が分かれている場合もあります。
剥離フィルムを剥がした後に本圧着です。圧着したい基板やICをACF上に置いて位置決めし、ヒーターヘッドを下ろして熱と圧力を加えます。本圧着時にヒーターが過熱したり熱が不足したりすると、未圧着個所が発生してしまうため熱管理が重要となります。
ACF熱圧着の種類
ACF熱圧着は過熱方式の違いによって、常時加熱方式とパルスヒート方式の2種類に分類されます。
1. 常時加熱方式 (コンスタントヒート方式)
ヒーターヘッドを所定の温度で常に加熱し続ける方法です。仕組みは単純で構造が簡単ですが、温度制御が難しくなるのが特徴です。
2. パルスヒート方式
ACFを熱圧着する瞬間だけ加熱する方法です。 ヒータヘッド温度を常に監視しワーク接合時の温度低下を検出して、瞬時に所定の温度設定に戻します。パルスヒート用の制御機器が必要になりますが、温度管理を自動で行ってくれるため過熱や不完全圧着を防止できます。
ACF熱圧着のその他情報
ACF熱圧着の注意点
ACF熱圧着を実施する際に、以下の注意点を押さえる必要があります。
- 接合面 (特にガラス基板上) はプラズマ洗浄やUV洗浄で清浄度を保ちます。
- 熱圧着に使用するヒーターヘッドの温度管理を徹底します。
- ヒーターヘッドとガラス基板は常に平行になるように管理を行います。
- 接合品質を確保するため、接合後の導電粒子形状を常に管理します。