ジャイロトロン

ジャイロトロンとは

ジャイロトロンとは、超電導コイルにて発生させた磁場に電子を巻き付け高速の回転エネルギーにて加速し、空胴共振器にて高出力のミリ波帯のマイクロ波へ変換放出させる真空管装置のことです。

ジャイロは、「回転」という意味でつけられたもので、CRM現象を利用しています。このCRMとは「Cyclotron resonance maser (サイクロトロン共鳴メーザー現象) 」と呼ばれる電磁力で回転させた電子の運動エネルギーがマイクロ波という電磁波へ変換される現象です。

ミリ波帯とは、波長で1mm~10mm、周波数では30GHz~300GHzの電波帯域を指し、直進性が高く多量の情報を載せられる周波数帯域です。

ジャイロトロンの使用用途

ジャイロトロンの使用用途は、以下の通りです。

  • 産業分野
    セラミック焼結
  • 研究開発分野
    実験室レベルにおける核融合実験装置のプラズマ関連 (加熱・計測など)
  • サブTHz帯
    衛星通信、簡易無線、加入者系無線アクセス (38GHz帯) 、車載用各種レーダー、LiDAR、ADAS、自動運転など

ジャイロトロンは、ミリ波帯というこれからBeyond 5G/6G通信用途に向けて増々その活用が期待されている電波の比較的大電力の発信源となることから、各方面で応用の検討が繰り返されています。

ジャイロトロンの原理

ジャイロトロンの原理は、内部の電子銃から放出された電子が、超電導磁場を通過する際にらせん状の回転運動エネルギーを得て、空胴共振器内部でミリ波帯の高出力電磁波エネルギーに変換される「サイクロトロン共鳴メーザー現象」にあります。

高電圧 (100kV程度) をかけた電子銃から発射された電子を超電導磁石 (10T(テスラ)以下) で作られた磁場を通過させることにより、電子に高速の回転エネルギーを与えます。回転エネルギーを得た電子は、らせん状になりながら最終的に電子を取り込む真空管内のコレクターに向かいます。

らせん状になって進む電子は、経路の途中に置かれた共振器を通過することで、電子のエネルギーを共振させます。共振した電子の一部のエネルギーが、運動エネルギーを失い、失ったエネルギーが電磁波に変換されるという仕組みです。

発生した電磁波は、その後反射を繰り返し、最終的に人工ダイヤモンドといったジャイロトロンに設けられた窓を経由して、ジャイロトロンから放射されます。これによって、高出力なミリ波帯の電磁波として使用することが可能です。

ジャイロトロンのその他情報

1. 核融合の開発とジャイロトロン

未来の発電技術として有望視されている核融合技術ですが、その動作のためには、ジャイロトロンから得た高出力なサブTHz帯のミリ波を約100m先の核融合炉まで伝送し、プラズマに打ち込んでプラズマを加熱します。その結果、核融合反応が始まります。

近未来のクリーンエネルギー発電のために世界各国の研究機関が主導する国際的な共同プロジェクト「ITER(国際熱核融合実験炉)」の運転開始も2025年に現在予定されており、核融合施設の実験のために、加熱や各種計測用ジャイロトロンの開発もまた活性化している状況です。

2. ジャイロトロンの周波数

核融合施設で現在有望視されているのが、「トカマク型核融合炉」です。この炉体の施設では、非常に強力な超電導磁場で内部のプラズマを超高温に加熱しなければなりません。その際、核融合炉体の中心と端部で超電導磁場の磁力の大きさが異なるため、炉体内部をできるだけ広く有効活用するために、ジャイロトロンの共振発振周波数も、複数選択できるような構成が望まれています。

2022年に日本の国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構が発表したところによると、開発中のジャイロトロン内部の機器の改良で170GHz/137GHz/104GHzという3つのミリ波帯周波数で1メガW級の300秒連続運転動作を実現し、核融合の実用化に向け、ジャイロトロン技術開発で一歩前進を遂げました。

また、ジャイロトロンの発振周波数の高周波数化という観点では、国立福井大学の遠赤外開発領域センターでの研究開発で2005年に1013GHz (THz帯へのブレークスルー) が実現されており、国内外の様々な研究分野への応用展開に向けた共同研究開発が加速している状況です。

キャピラリーチューブ

キャピラリーチューブとはキャピラリーチューブ

キャピラリーチューブ (英: capillary tube) とは、内径が0.6〜2mm程度の細い毛細管のことです。

エアコンや冷蔵庫などに使用される冷凍サイクル用のキャピラリーチューブは、や鋼で作られた細い管で、冷媒の流れを制御する機器です。細い通路を冷媒が通ると、流れの抵抗により圧力が低下する絞り膨張と呼ばれる機能が働きます。この冷媒の圧力低下により、冷媒が蒸発し、周囲から熱を吸収します。

同じような役割を有するものに膨張弁があります。膨張弁の方が制御性に優れていますが、価格が高いのが難点です。なお、キャピラリーチューブと呼ばれる高精度のガラス毛細管は、X線回折や研究用に使われます。

キャピラリーチューブの使用用途

キャピラリーチューブは冷却装置として、主に小形冷凍機、 ルームエアコン、電気冷蔵庫などに使用されます。また、ガス機器、石油ファンヒーター、火災報知器、端子関連などにも有用です。主に運転条件が比較的安定している小形の冷凍サイクルに使われる場合が多いです。

同じエアコンでも自動車用のカーエアコンは、運転条件が広いので、一般に膨張弁が使われます。外気温度が低温から高温まで、エンジン駆動の圧縮機が低速から高速まであり、幅広い条件で性能を発揮させるのはキャピラリーチューブでは困難なためです。

キャピラリーチューブの原理

エアコンや冷蔵庫などの冷凍サイクルは、圧縮機、凝縮器、蒸発器、受液器、膨張機構などから構成されます。膨張機構に使用されるのが、膨張弁やキャピラリーチューブです。

圧縮機で冷媒ガスを圧縮し凝縮器で冷却すると、高圧の液冷媒になります。凝縮器はエアコンでは室外ユニットに、冷蔵庫ではキャビネットにあるものです。そして、高圧の液冷媒は、膨張弁やキャピラリーチューブにより減圧されて蒸発器に入ります。エアコンでは室内ユニットに、冷蔵庫では庫内の冷却器にあるのが蒸発器です。

一方、圧縮機が蒸発器の冷媒を吸引するので、蒸発器の圧力は低圧になり、液冷媒が蒸発してガスになります。蒸発器は冷媒と空気との間の熱交換器であり、冷媒の蒸発熱により、空気が冷却されます。膨張弁やキャピラリーチューブは、絞り効果により、蒸発器の圧力や冷媒流量を制御して、冷却能力を調整します。

キャピラリーチューブの種類

キャピラリーチューブには、細さや長さなど、多くの種類があります。キャピラリーチューブの接続には、銅フレア管を使用する場合と、ろー付けで接続する場合があります。銅フレア管を使用する際には、すでにキャピラリーチューブの両端にナットがついている両端ナット付きを選びます。

1. ストレートタイプ

ストレートキャピラリーチューブは、一定の内径であり、冷媒の流れが定常的である単純な冷凍システムで使用されます。

2. コイルタイプ

コイルタイプのキャピラリーチューブは、チューブをらせん状に巻いたもので、スペースがせまい場合に使われます。

3. マルチポートタイプ

マルチポートのキャピラリーチューブは、長さに沿って複数のポートがあり、複数の蒸発器又は圧縮機があるシステム用です。

4. ロープロファイルタイプ

ロープロファイルのキャピラリーチューブは、非常に薄いタイプで、スペースが限られている場合に使用されます。

5. 絶縁タイプ

キャピラリーチューブの外側に断熱層があり、冷媒がチューブを流れる際に温度を維持する効果があります。

キャピラリーチューブの選び方

キャピラリーチューブを選定する場合、最適な性能と効率を得るために、いくつかの検討事項があります

1. 冷媒の種類

キャピラリーチューブは、使用する冷媒用のサイズを選定する必要があります。

2. 冷媒の流量

キャピラリーチューブは、冷凍システムの必要冷媒流量を処理可能なサイズを選定します。

3. 使用圧力

キャピラリーチューブは、冷凍システムの作動圧力に対応したサイズにします。

4. 過熱度

蒸発器出口での冷媒の過熱度が、適切な値になるようなキャピラリーチューブのサイズを選定します。過熱度とは、冷媒の圧力に相当する飽和温度と実際の冷媒ガスの温度との差のことです。

蒸発器出口での過熱度が小さいと蒸発器で十分蒸発していますが、液冷媒の一部が圧縮機へ吸入されると圧縮機の故障の原因になります。また、過熱度が大きすぎると、蒸発器での蒸発機能が不十分で性能不足になるため注意が必要です。

ガルバリウム鋼板

ガルバリウム鋼板とは

ガルバリウム鋼板

ガルバリウム鋼板とは、アルミニウム亜鉛・シリコンでめっきされた金属鋼板のことです。

アルミ亜鉛合金めっき鋼板とも呼ばれます。ガルバリウム鋼板の建材は金属素材でありながら錆びにくく、耐久年数が長い特徴があります。

また、堅牢であり耐震性が高い点もメリットの一つです。太陽熱の日射熱反射率が高く、特に夏季には表面温度や屋内温度を抑制することが可能です。 

ガルバリウム鋼板の使用用途

ガルバリウム鋼板は優れた耐久性・耐熱性・加工性から建材として広く使用されます。また、デザイン性も高いため、住宅としては外装材として利用されることも多いです。防食性が高い特徴から、主に建物の外壁や屋根などに用いられます。

ガルバリウム鋼板は、その他にも幅広い機械装置などに使用されます。以下はガルバリウム鋼板の使用箇所一例です。

  • 農業用のパイプや海上輸送パイプ
  • 高速道路の防音壁
  • 腐食環境にさらされる各種産業施設や産業機器
  • レンジや自動販売機などの電気機器
  • 自動車
  • 造船

ガルバリウム鋼板の優れた特性から、上記のように用途は多岐に渡ります。

ガルバリウム鋼板の特徴

ガルバリウム鋼板は圧延された鋼板の上からガルバリウムによるめっきを施した部材です。めっきは合金であることから、主に溶融によって行います。ガルバリウムの組成は、アルミニウムが55%、亜鉛が43.4%、そして、シリコンが1.6%です。

アルミニウムは長期耐久性と熱に強い特徴を持ちます。また、亜鉛はガルバニックアクションを発生させます。ガルバニックアクションとは、亜鉛が酸化することで酸化被膜を形成して防錆作用を持つことです。犠牲防食効果とも呼ばれます。

ガルバリウム鋼板は上記より、アルミニウムの耐久性・耐熱性と亜鉛による耐食性を有する鋼材となります。

ガルバリウム鋼板の種類

ガルバリウム鋼板は、一般ガルバリウム鋼板とスーパーガルバリウム鋼板に大別されます。一般ガルバリウム鋼板は、上記の通りの特徴を持つ鋼材です。建材から機械装置まで幅広く使用されます。

スーパーガルバリウム鋼板は、SGL鋼板とも呼ばれる次世代鋼板です。ガルバリウム鋼板の耐久性をさらに高めるために開発された鋼材で、めっきの中にマグネシウムを2%程度投入して製作されます。マグネシウムの作用によってめっきがさらに緻密な構造となり、高い耐食性を有します。

ガルバリウム鋼板のその他情報

1. ガルバリウム鋼板の使い方

ガルバリウム鋼板は、トタン屋根や鉄管と同様の設置・敷設します。ただし、ガルバリウム鋼板には必要なメンテナンスがあり、その一つが水洗です。雨水があたりにくい場所を重点的に水洗することによって、防錆効果を高めることができます。

また、道路が凍結しやすい山間部などでは、凍結防止のために塩化ナトリウム塩化カルシウムが撒かれることがあります。これらの物質が屋根に付着すると錆びが進みやすくなる恐れがあります。そのため、凍結防止剤の散布後は、十分な水洗いが必要です。

2. ガルバリウム鋼板の歴史

ガルバリウム鋼板の開発される前には、トタンなどが外装材として使用されてきました。トタンとは溶融亜鉛によってめっきされた鋼材です。亜鉛によるガルバニックアクションによって耐食性を持つ素材であり、世界中で普及していました。

1960年代には工業化による公害などによる酸性雨が社会問題となりました。耐食性を有するトタンもPHが低い雨が降ると腐食するため、耐久年数が低くなってしまう問題が発生しました。この問題を背景に、ガルバリウム鋼材が登場しました。

ガルバリウム鋼板は1972年にアメリカの製鋼会社ベスレヘム・スチールによって開発されました。設置条件などにより異なるものの、ガルバリウム鋼板はトタンの3倍以上の耐久年数を有する鋼材です。そのため、トタンに代わり世界中に広く普及しました。

3. ガルバリウム鋼板の寿命

ガルバリウム鋼板はトタンと比較して高い耐用年数を有することで知られています。トタンによる外装材の寿命は10年~20年程度です。それに対して、ガルバリウム鋼板の寿命は25年~35年程度とされます。

メーカーや使用環境によっても実寿命は異なり、50年以上使用可能な場合もあります。また、近年ではスーパーガルバリウム鋼板(SGL鋼板)と呼ばれる鋼材も普及中です。SGL鋼板はガルバリウム鋼板からさらに耐久性を高めた部材で、30~50年の寿命が期待できるとされます。

オーステナイト系ステンレス鋼

オーステナイト系ステンレス鋼とは

オーステナイト系ステンレス鋼

オーステナイト系ステンレス鋼とは、ステンレスの中でも常温でオーステナイトと呼ばれる結晶構造を有する合金の総称です。

主要な成分として鉄以外にクロムとニッケルを含むことから、クロム・ニッケル系ステンレスに分類されます。鋼種によって組成は異なりますが、オーステナイト構造を安定させるためのニッケルを主成分として含むことが特徴的です。ステンレス鋼種の中でも最も一般的に用いられている材料であり、その生産量は全ステンレス鋼のうち約60%を占めるとされています。

特に代表的なオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304は、非常に幅広い用途に用いられています。SUS304にモリブデンを添加したSUS316なども、高い耐食性を有する合金です。

オーステナイト系ステンレス鋼の使用用途

オーステナイト系ステンレス鋼は鋼種にもよりますが、一般に磁性を持たず高い耐食性を有するため、幅広い用途に使用されます。外部の温度環境によって強度の低下が起こりにくく、溶接や塑性加工に優れているため、建築材やプラント設備などの過酷な条件下や信頼性が必要となる場所でも利用可能です。

一般的に用いられている鋼種はSUS304であり、加工硬化を防止したSUS305のほか、耐食性をより向上させたSUS316なども広く用いられています。

オーステナイト系ステンレス鋼の性質

オーステナイト系ステンレス鋼は靭性や延性に優れており、冷間加工やプレス成形に適しています。溶接性が良く、熱処理で高い硬度を示し、ステンレス鋼の中で最も耐食性が優れています。基本的には磁性を持ちません。

磁性を持たない理由は、結晶構造が面心立方格子であるためです。塑性加工を行った際などに加工箇所の構造がマルテンサイトに変態すると、まれに磁性を持つ可能性があります。

オーステナイト系ステンレス鋼は焼き入れによる強度の増加は見込めない材料ですが、固溶化熱処理、焼きなまし、安定化処理によって物性を変化できます。その中でも固溶化熱処理はほぼすべてのオーステナイト系ステンレスに実施される処理であり、高温に加熱した後に急冷すると耐食性の向上、鋭敏化の抑制、加工硬化の除去が可能です。

オーステナイト系ステンレス鋼の構造

ステンレス鋼の金属組織は常温でオーステナイトになります。純鉄ではオーステナイトになるのは高温状態だけであり、常温ではフェライト組織です。クロムを純鉄に加えると、オーステナイトが安定的に存在する最低温度がおよそ830°Cになります。

フェライト生成元素とは、クロムなどのフェライトの安定存在温度領域を広げる元素のことです。クロムの含有量が7%程度以上になると温度領域は小さくなり、クロムの含有量が増えると最終的にはオーステナイトの安定存在温度領域が消えます。

ニッケルなどのオーステナイトの安定存在温度領域を広げる元素のことは、オーステナイト生成元素と呼ばれます。純鉄にニッケルを加えると、オーステナイトの安定存在温度領域は広がって、最低温度はニッケルが30%でおよそ500°Cです。

オーステナイト系ステンレス鋼の種類

オーステナイト系ステンレス鋼は構成元素にニッケルとクロムを含み、その他のステンレスと比較して高い耐食性を有します。代表的な鋼種であるSUS304では、孔食や粒界腐食などの局部腐食が問題となる場合がありますが、添加物の量や種類を変えることで対応可能です。具体的には炭素含有量が0.03%以下のSUS304Lやモリブデンを添加したSUS316などは、SUS304と比較して高い耐食性を有します。

オイルステイン

オイルステインとは

オイルステインとは、木材に染み込むことによって着色される「ステイン塗料」の一種です。

このステイン塗料には、水ベースで作られる水性のものと、オイルベースで作られるもの油性のものがあります。オイルステインは名前の通り、油分をベースに作られている塗料です。

オイルステインは油性ならではのツヤ感や木目の輝きが出ることがメリットである一方で、匂いの強さや、後処理のしにくさなどがデメリットとして挙げられます。

オイルステインの使用用途

オイルステインは、屋内外の木製製品の塗装に使われています。着色しながら木目を残した場合は、オイルステインを選択する必要があります。

さらに、オイルステインを塗布することによって、塗布した木材に深いツヤなどが出るため、屋外であればウッドデッキ、屋内であれば無垢材のフローリングや木製家具の仕上げにも広く使用されています。DIYとして使用されることも多い塗料です。

オイルステインの原理

オイルステインは、塗膜形成成分、添加剤、溶剤、顔料・染料で構成されています。いわゆるペンキのような一般的なペイント材は「造膜系塗料」に分類され、塗布された材料の表面に膜を形成します。オイルステインは材料の表面に膜を形成しません。オイルステインは木材に浸透することによって、木材が持つ木目を残しながら、着色することができます。

ただし、表面に膜を形成していない分、木材の保護機能は強くありません。オイルステインの成分は、塗膜形成成分、添加剤、溶剤、顔料・染料で構成されています。

塗膜形成成分は樹脂です。具体的にはアクリルウレタン、さらに天然油としてヒマワリ油、亜麻仁油、ひまし油などが含まれています。溶剤はエタノールやテレピン油などで、目的は塗料の流動性を調整することです。添加剤として、顔料分散剤、防かび剤などが含まれています。

オイルステインの種類

オイルステインには、種類がいくつかあります。従来の一般的なオイルステインは、木材を着色するというためだけの塗料で、余分な成分は入っていませんでした。しかし、最近は仕上げ材であるニスを含んだニス入りのオイルステインや、オイルステインに防虫剤や防腐剤を含んだものも販売されています。

1. ニス入りのオイルステイン

ニス入りのオイルステインは、作業の省略を目的にした製品です。一般的なオイルステインでは、木材を保護する目的で仕上げにニスを塗る必要がありました。しかし、ニス入りのオイルステインでは、ニス塗り作業は不要です。

しかし、着色の際、ムラになりやすく取り扱いが難しいことがデメリットとして挙げられます。そのため、初心者はニスなしを選んだ方が無難です。

2. 殺虫剤や防腐剤を含んだオイルステイン

防虫剤や防腐剤を含んだオイルステインは、屋外で使用する際に木材の保護、耐久性向上を目的にした塗料です。主にウッドデッキなどの、エクステリア製品に使用されています。ただし、発色が悪いというデメリットもあります。塗布する対象物の使用場所によって、塗料を使い分けることが大切です。

オイルステインのその他情報

オイルステインの塗り方

オイルステインは塗布する木材に浸透して着色するため、下地処理が大切です。また、ニス入りのオイルステイン以外の場合は、仕上げ材の塗布も必要となります。基本的な塗布手順は以下の通りです。

まず、オイルステインを塗布する前に、塗布面の木材をやすりを使って整えます。オイルステインは木材に浸透しますが、塗布する表面にごみや油分が付着していると、オイルステインが染み込みにくく、色むらの原因になってしまうためです。

具体的には、最初に#240程度のサンドペーパーを使い、次に#400程度のサンドペーパーで仕上げます。あまり細かいサンドペーパーで仕上げると、表面が滑らかになり過ぎ、オイルステインが浸透しにくくなってしまいます。次に、木材に付着した木屑を丁寧に除去します。布や紙などで拭くのがおすすめです。

以上の前処理を行なってから、オイルステインを塗布します。塗布する際はオイルステインをよく撹拌し、必要に応じて薄め液で粘度を調整しましょう。オイルステインを塗布したら、ウエスで拭き取ります。この作業はオイルステインを木材へ擦り込むために必要となる工程です。最後に仕上げ材を塗布します。仕上げ材として、ニスやワックスなどが販売されています。

アルミニウム青銅

アルミニウム青銅とは

アルミ青銅

アルミニウム青銅とは、アルミニウムと銅を主要な成分とする合金です。

アルミニウムと銅の組み合わせにより、それぞれの良い特性を組み合わせることができるため、多くの工業分野で使用されています。アルミニウムは軽量で耐食性があり、熱伝導性が高いです。

一方、銅は優れた電気伝導性を持ち、耐食性もあるため、電気工業や熱交換器などの分野で重要な役割を果たしています。アルミニウム青銅は、これらの特性を組み合わせて、強度や耐蝕性、耐摩耗性を高めることができます。

アルミニウム青銅は、船舶、自動車、航空機、機械部品など幅広い用途で利用されており、特に耐食性が求められる環境や高温にさらされる部品などで重要です。また、美しい外観と耐食性を兼ね備えているため、建築やデザイン分野でも利用されることがあります。

アルミニウム青銅の使用用途

アルミニウム青銅の主な使用用途は、以下の通りです。

1. 船舶

耐食性が高く、海水中での耐久性があるため、海洋環境での使用に適しています。船のプロペラや船体部品、船の装飾などに使用されます。

2. 自動車

耐食性や軽量性が求められる部品に使用されます。エンジン部品、車体の外装、サスペンションなどで利用される場合があります。

3. 航空機

軽量さが特に重要な分野で、航空機の構造部品やエンジン部品などに使用されます。

4. 機械部品

高い強度と耐摩耗性が求められるシチュエーションで使用されます。歯車、軸受、ボルトなどの機械部品に使われます。

5. 熱交換器

アルミニウム青銅の熱伝導性の高さを活かし、熱交換器の管やフィンに利用されます。

6. 建築材料

耐食性や美観を兼ね備えているため、建築用の装飾や外装材料として使用されることがあります。

7. 電気工業

電気伝導性が優れているため、電気コネクターや電気導体部品などに利用されます。これ以外にも、化学工業、医療機器、スポーツ用具、美術品などでも使用されます。

アルミニウム青銅の原理

アルミニウム青銅は、アルミニウムと銅を主成分とする合金です。アルミニウム青銅の特性や性質は、その成分比率や微細な組織、結晶構造によって決まります。

1. 成分比率

アルミニウム青銅は通常、アルミニウムと銅の割合によって異なる合金グレードがあります。多くの場合、銅の含有量が10~15%程度とされていますが、これは具体的な使用目的に応じて調整されます。成分比率は合金の特性に影響を与えるため非常に重要です。

2. 相分離

アルミニウム青銅の合金化に際して、アルミニウムと銅の原子が混ざり合うことで新たな結晶構造が形成されます。この際、アルミニウムと銅は微細な粒子や結晶として共存し組織を形成することで合金の強度や硬度、耐摩耗性などの特性に影響を与えます。

3. 相互作用

アルミニウムと銅は、それぞれの特性を組み合わせることで、合金全体として両方の性質を持っています。例えば、アルミニウムは軽量で耐食性が高く、銅は高い電気伝導性を持っています。

4. 硬化

アルミニウム青銅は、冷間加工や熱処理によって硬化し、材料の強度や耐摩耗性を向上させることができます。硬化のメカニズムには、結晶の強化や微細な析出物の形成などが含まれます。

アルミニウム青銅の種類

アルミニウム青銅の種類は、以下の通りです。

1. アルミンシリコン青銅

この種類のアルミニウム青銅は、銅とアルミニウムにシリコンを添加した合金です。高い耐腐食性と機械的強度を持ち、耐摩耗性にも優れています。摺動部品や耐食性が必要な環境で使用されることが多いです。

2. アルミンニッケル青銅

銅とアルミニウムにニッケルを添加した合金です。優れた耐蝕性、耐摩耗性、耐熱性を持ち、高い強度も兼ね備えています。海水中での使用や高温環境での使用に適しています。

3. アルミン鉄青銅

銅とアルミニウムに鉄を添加した合金です。耐蝕性、耐摩耗性、耐熱性に優れており、高い強度も持っています。機械部品や摺動部品などで使用されることがあります。

4. アルミン鋳造青銅

銅とアルミニウムに鉛と錫を添加した合金です。これにより鋳造性が向上し、耐食性と摺動性があります。適した形状の部品を鋳造できるため、機械部品や軸受などで使用されることも多いです。

 

これ以外にも、特定の要件に合わせて調整される多くのアルミニウム青銅合金が存在します。アルミニウム青銅はその用途に応じて適切な種類を選ぶことが重要で、異なる特性を持つ各種類の合金が工業や製造分野で幅広く利用されています。

参考文献
http://www.shouei-shouten.com/14503331351940
http://www.yamatogokin.co.jp/?page_id=27
http://www.nishida-kinzoku.co.jp/product/aluminium.html
https://kikakurui.com/h5/H5120-2016-01.html
https://www.pn-kiden.co.jp/press-machining/alumium/

アルミナ繊維

アルミナ繊維とは

アルミナ繊維

アルミナ繊維とは、アルミナ(酸化アルミニウム)を主成分とする繊維状の材料です。

高温に強く、耐火性が高いため、さまざまな産業分野で使用されています。アルミナ繊維はアルミナを原料とし、高温で紡糸後に高温で焼成されて繊維化されます。一般的に繊維径が数マイクロメートル程度であり、非常に軽く、耐火性があり、高い強度を持っています。高温下での使用が多いため、耐熱性や断熱性に優れています。また、化学的に安定であり、腐食に対しても強い耐性を持っています。

アルミナ繊維の使用用途

アルミナ繊維の主な使用用途は下記の通りです。

1. 耐火材料

ガラス炉、セラミック炉、鉄鋼用高炉、セメント窯、耐火れんが、耐火セメントなどが挙げられます。アルミナ繊維は高温に強く耐火性に優れているため、耐火材料として使用されます。また、繊維化されたアルミナは柔軟性があり加工しやすいため、形状に合わせてカットや貼り付けができます。

2. 高温断熱材

熱処理炉、鋳造用炉、製紙機械、ガラス炉、溶融金属用保温材、タンク、パイプラインなどが挙げられます。アルミナ繊維は高い断熱性能を持ち、高温下での熱伝導を低減するために使用されます。また、繊維化されたアルミナは、軽量で柔軟性に優れており、形状に合わせて自由に加工できるため、様々な形状に適応できます。

3. 電気絶縁材

電気炉、変圧器、コンデンサ、ヒューズ、電線などが挙げられます。アルミナ繊維は高い耐電圧性能を持ち、電気を通しにくいため、電気絶縁材として使用されます。また、繊維化されたアルミナは、耐久性に優れているため、長期間の使用に耐えられます。

4. 機械部品の補強材

航空機、自動車、鉄道車両などが挙げられます。アルミナ繊維は高い強度を持っており、軽量かつ耐久性に優れているため機械部品の補強材として使用されます。また、耐摩耗性や耐腐食性にも優れているため、機械部品の寿命を延ばせます。

アルミナ繊維の性質

アルミナ繊維の性質は下記の通りです。

1. 耐熱性

アルミナは融点が約2,072℃と非常に高いため、高温下でも安定しています。また、アルミナ繊維は緻密な結晶構造を持っており、繊維自体が非常に細くなっているため高温下でも繊維が変形せずに強度を保てます。

2. 軽量・強靭

アルミナ繊維は非常に軽量かつ強靭です。アルミナは非常に硬い材料であり、緻密な結晶構造を持ちます。硬く強靭な性質を持ち、繊維自体が非常に細くなっていることから軽量化が可能です。

3. 電気絶縁性

アルミナは絶縁性に優れた材料であり、繊維にしても絶縁性を保てます。イオン結晶性の材料で絶縁性に優れています。イオン結晶性の材料とは、陽イオンと陰イオンから成るイオンの配列が規則的に並んでいる結晶構造を持つ物質のことを指します。

イオンとは、電気的に帯電した原子または分子のことで、陽イオンは電気的にプラスの電荷を持ち、陰イオンは電気的にマイナスの電荷を持ちます。イオン結晶性の材料は、通常、金属と非金属のイオンから構成されています。イオン結晶性の材料は高い結晶性を持ち、強い結合力を持つため、高い硬度と融点、電気絶縁性、熱伝導性などの特性があります。また、イオン結晶性の材料は化学的に安定であり、酸やアルカリなどに対しても耐性があります。

4. 耐食性

アルミナは非常に化学的に安定な材料であり、耐食性に優れています。アルミナ繊維も同様に、耐酸化性や耐腐食性に優れています。

アルミナの化学的な安定性は、その結晶構造によるものです。アルミナはアルミニウムと酸素の化合物であり、結晶構造は三方晶系に属しています。三方晶系の構造は非常に堅固であり、化学的な攻撃に対して高い耐性を発揮するのが特徴です。さらに、アルミナは非常に高い融点を持ち、高温においても化学的に安定であるため、高温環境下でも耐食性が維持されます。

5. 耐摩耗性

アルミナの持つ三方晶系の結晶構造は、最も密に詰まった構造の一つであるため、原子同士の結合が非常に強く、アルミナは硬度が高い材料です。よって、アルミナは、機械的な負荷に対しても、高い耐性があります。

また、アルミナは、非常に緻密な結晶構造を持っているため、表面にある微小な欠陥が少なく、摩擦や磨耗に対しても、高い耐性を発揮できます。よってアルミナ繊維は、繊維同士の摩擦や磨耗に対しても、高い耐性を発揮できるのが特徴です。

アルミナ繊維のその他情報

アルミナの加工性

アルミナ繊維は非常に硬く、繊維の直径が極めて微細であるため切削や加工が困難です。切削すると繊維が短くなってしまうため、加工には特別な技術や装置が必要です。また、繊維が非常に細いため、扱いには注意が必要です。加工すると繊維が飛び散ってしまう可能性もあります。

アルミナ繊維は、長期間高温環境下に置かれると脆くなる傾向があります。理由は、繊維が高温環境下で酸化することで微細な結晶粒子が増え、繊維が脆くなるためです。そのためアルミナ繊維を使用する際には使用環境に応じた注意が必要です。例えば、繊維を高温環境に長期間曝すことを避ける、繊維を保護するためのコーティングを施す、定期的な点検やメンテナンスを行うなどが必要です。

アモルファス金属

アモルファス金属とは

アモルファス金属

アモルファス金属とは、非晶質構造を持つ金属です。

アモルファス金属は急速冷却によって、原子が結晶化せずにランダムに配置された非晶質構造が得られます。非晶質であり結晶粒界に起因する欠陥がなく、より高い強度を持っているため、強度が非常に高いです。また、非常に弾性が高くて変形に強い特性を持ち、電気伝導性や熱伝導性も高いです。

アモルファス金属の使用用途

1. 自動車産業

自動車用サイレンサーや煙突の対候性処理などが挙げられます。

自動車用サイレンサーは、自動車のエキゾーストシステムの一部であり、エンジンから排出される排気ガスの騒音を減少させるための装置です。煙突の対候性処理とは、煙突が外部環境にさらされることで発生する腐食や劣化を防止するための処理のことです。

2. エレクトロニクス産業

磁気センサー、太陽電池セル、電子回路、メモリなどが挙げられます。

磁気センサーとは、磁場を感知してその情報を電気信号に変換するセンサーの一種です。太陽電池セルとは、太陽光を受け取り、その光エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスのことです。太陽電池セルは、太陽光の強さに応じて直流電力を発生させます。

3. 電力・エネルギー産業

柱上変圧器や産業用変圧器の鉄心、中小型モータの鉄心などが挙げられます。柱上変圧器は、送電線からの高圧電力を低圧電力に変換するための変圧器の一種です。

4. 機械産業

ベアリング、歯車、シャフト、ノズルなどが挙げられます。

5. 磁気デバイス産業

磁気ヘッドの素子、HDD用磁気ヘッドなどが挙げられます。磁気ヘッドの素子は、磁気媒体 (ハードディスクなど) の表面に接触して磁気情報を読み取るための部品であり、通常は非常に微小なサイズで作られています。

6. 化学・医療産業

触媒特性を活かした触媒材料、超伝導性を活かした電磁石、MRIの磁石などが挙げられます。

アモルファス金属の性質

アモルファス金属は通常の金属が持つ結晶構造を持たず、原子が不規則に配列された非晶質の構造を持ちます。このため結晶性の金属と比較して異なる物理的特性を持ちます。非常に高い強度と硬度を持っており、通常の金属よりも強度が約2倍で硬度が約3倍もある材料です。また耐食性にも優れており、金属ガラス表面に酸化被膜を形成することで金属表面の耐食性を向上できます。

アモルファス金属は結晶性の金属が持つような異方性を持たないため、磁気特性に優れた (磁場に対して優れた磁気応答を示す) 軟磁性材料 です。非晶質構造を持ち高い熱可塑性をもつため、複雑な形状の部品や製品を製造できます。

アモルファス金属の中で触媒特性を持つものは燃料電池や化学反応の触媒として利用され、また水素吸蔵能力を持つものは水素エネルギーの蓄積や運搬に利用されます。

通常の金属は規則的な格子状の構造を持ち、変形すると結晶粒同士が移動して変形しますが、アモルファス金属は結晶構造を持たず変形時には結晶粒の移動がないため、分子間の結合力によって強度を保持しやすくなります。分子間距離は非常に短く弾性率が高いため、変形しても強度を維持でき、脆性破壊に対する耐性も高いため、繰り返し変形に対しても強度を保てます。

アモルファス金属は原子がランダムに配列されていて結晶粒界や格子欠陥が存在しないため、自由電子の流れが制限されません。よって電気抵抗が非常に低く高い導電性を持っています。またアモルファス金属は非晶質構造を持っているため熱伝導率が高く、高温環境下での使用にも適しています。

アモルファス金属のその他情報

1. 超伝導材料としての利用

一部のアモルファス金属は超伝導材料としても利用されます。超伝導とは、ある一定の温度以下で電流を通すと電気抵抗が完全になくなる現象のことです。アモルファス金属の一部は、この超伝導現象を示します。

2. ガラス金属としての利用

アモルファス金属は非晶質構造を持つ金属ガラスの一種です。金属ガラスは通常のガラスとは異なり、熱膨張率が非常に小さいため熱衝撃に強くて耐久性が高いという特性を持っています。

ぶりき

ぶりきとは

ぶりき

ぶりきとは、低炭素鋼板に錫 (Sn) めっきを施したもののことです。

JIS (日本産業規格) G 3303(ぶりき及びぶりき原板)では、電気めっきぶりき (SPTE) と熱せきぶりき (SPTH) が規定されています。電気めっきぶりきは、電気すずめっきを施したぶりきです。熱せきぶりきは、溶融すずめっきを施したぶりきです。ぶりきは表面が美しく、溶接やハンダにも適していますが、錫めっきの表面は柔らかく、傷つきやすく汚れやすい欠点もあります。高湿度の環境では錆が発生することがあります。

ぶりきの使用用途

ぶりきは主に下記のような用途で使用されます。

1. 缶詰

トマト缶、コーン缶、豆缶などの食品用の缶詰が挙げられます。

2. 食品用の缶

クッキーなどを入れる缶、コーヒー豆や粉を保存する際に使用される缶、お茶を保管する際に使用される缶などが挙げられます。

3. 電気部品

スイッチ、端子台、コネクターなどが挙げられます。端子台とは、電気回路の接続部分で、複数の電線をまとめて接続するための装置です。通常、金属製の台座に、複数の接点部分 (端子) が付いており、各端子に複数の電線を接続できます。

4. 玩具

自転車、三輪車、鉄道模型、ミニカーなどが挙げられます。

5. 油保管用の缶

灯油缶、ガソリン缶、潤滑油缶などが挙げられます。

6. 雑貨・文具

ペンケース、ホッチキスなどが挙げられます。

ぶりきの性質

1. 錆びに強い

錫めっきは、優れた耐食性を持ち、錆の発生を防止する効果があります。錫は水に溶け出しにくく、錫めっきが剥がれない限り、鉄の酸化を防止できるのが特徴です。ただし、錫めっきが剥がれて鉄が水に触れると、鉄は錫よりもイオン化傾向が大きいため、鉄が水に溶け出し、鉄が錆びます。

イオン化傾向とは、元素がイオンとなるときにどの程度容易に電子を失うか、つまり、イオンを生成する際に電子を放出する傾向のことです。イオン化傾向が大きいほど、元素は電子を失いやすく、より強い陽イオンを生成する傾向があります。

2. 表面が美しい

錫めっきによって、鋼板表面に均一に錫がめっきされ、滑らかな表面に仕上がります。また錫は光をよく反射するため、美しく輝く仕上がる点が外観上の特徴です。

3. 溶接やはんだ付けに適している

ぶりきの錫めっき膜は、鉄と錫が混ざり合っているため、溶接やはんだ付けがしやすくなるのが特徴です。錫めっき層が鉄と錫の混合物であるため、溶接・はんだ付けした場合、金属同士が混ざり合ってつながり、強固な接合面を形成します。

はんだ付けとは、金属部品同士を接合する方法の一つで、はんだと呼ばれる合金を使用して行われます。はんだ (英: solder) は一般的には錫 (Sn) 、銅 (Cu) 、銀 (Ag) 、亜鉛 (Pb) などの金属を主成分としており、融点が低いため、加熱することで融解し、金属同士を接合できます。

はんだは、一般的に錫 (Sn) と鉛 (Pb) の合金です。しかし、現在は環境や健康への懸念から、鉛フリーはんだ (英: lead-free solder) が広く使用されています。鉛フリーはんだは、主に錫 (Sn) 、銀 (Ag) 、銅 (Cu) などの金属から作られる合金であり、鉛を含みません。

4. 耐食性がある

ぶりきは、低炭素鋼板に錫めっきを施した表面処理が施された材料です。錫めっき膜が鉄と錫の混合物となっており、鉄と錫が混ざり合うことで錫めっき層の強度が向上しています。

錫めっき層によって、ぶりきの表面は水分や酸素、酸性・アルカリ性などの化学物質に対して鉄よりも耐性が高くなります。特に、水分や酸素といった空気中に存在する化学物質による酸化や腐食を防ぎ、表面の錆びを防止できるのが特徴です。また、酸性・アルカリ性などの腐食性の高い化学物質にも耐性を持ち、ぶりきは耐久性に優れた材料です。

5. 固体潤滑材として機能する

ぶりきの錫めっき層は、滑りやすく表面を滑らかにし、鋼板の加工性を向上させます。特に、プレス加工などの大量生産には適しています。

ぶりきのその他情報

1. 化学物質に対する耐性

ぶりきの錫めっき層は、水分や酸素、酸性・アルカリ性などの化学物質に対して鉄よりも耐性が高いため、ぶりきは耐久性に優れた材料です。しかし、一部の化学物質に接触するとぶりきの表面に変色や劣化が生じることがあります。

例えば、塩酸や硝酸といった強い酸には、ぶりきの錫めっき層が耐えられない場合があることには注意が必要です。塩酸や硝酸にさらされると、錫めっき層が腐食し、表面に穴や剥がれが生じることがあります。また、アルカリ性の物質にさらされると、表面の錫めっき層が変色したり、膨張したりすることがあることにも注意が必要です。例えば、水酸化ナトリウムやアンモニア水といった強アルカリ性の物質は、ぶりきの錫めっき層に悪影響を与える可能性があります。

2. 錆の発生

錫めっきは優れた耐食性を持ち、錆の発生を防止する効果がありますが、高湿度の環境下での使用や錫めっき層が剥がれると鉄が水に触れることで錆が発生する可能性があります。

高湿度の環境下では表面に水分が付着しやすく、水分が付着すると表面にある錫めっき層に隙間が生じ、鉄が露出する可能性があります。鉄が露出すると錆の発生が促進され、錆が発生します。

また、錫めっき層が剥がれた場合にも、鉄が水に触れることで錆が発生する可能性がある点にも注意が必要です。錫めっき層が剥がれる原因は、ぶりきが衝撃や擦れにさらされた場合、またはぶりきを加工する際に表面が傷ついた場合などが挙げられます。錫めっき層が剥がれた場合、表面に隙間ができ、鉄が露出して水に触れると鉄が酸化し、錆が発生する可能性があります。

PC鋼より線

PC鋼より線とは

PC鋼より線

PC鋼より線とは、プレストレストコンクリート (PC) に緊張を与える緊張材のことです。

緊張材の中には、直径8mm以下の高強度鋼であるPC鋼線、直径10mm以上の高強度鋼であるPC鋼棒、PC鋼より線が存在しています。このPC鋼より線は、複数の鋼線がより合わされた状態であることが特徴です。

その他にも、引張強さが大きい、破断時の伸びが大きいこと、さらに、リラクセーション値が小さいことや伸直性が良く加工性が良いことなども特徴に挙げられます。

PC鋼より線の使用用途

PC鋼より線は、道路橋、鉄道橋をはじめ枕木、タンク、建築やグラウンドアンカーなど、幅広い分野に使用されています。

PC鋼より線は、プレストレストコンクリートの張力や曲げ、ねじりに対する抗力を強める効果があります。より合わせる本数が増えることで、引張強度が高くなるため、建築物の補強部材や建築物の補強部材に使用されることが多いです。一般的には、抗力を強めたい素材の5~6倍の強度を持つPC鋼より線を選択して使用します。

PC鋼より線の種類

PC鋼より線は、より合わせる鋼線の本数や強度によって種類が分けられています。これらは、JIS K 33536によって、品質規格が全て定められており、各規格では、呼び名、標準寸法径、公称断面積、単位当たりの質量をはじめ、0.2%永久伸びに対する試験応力や最大試験力、伸び、リラクセーション値、強度レベルが規程されています。

PC鋼より線には、2本より、3本より、7本より、19本よりがあり、7本よりはA種とB種に分類されます。基本的に本数が増えるほど、強度が高くなります。そして、その分断面積や質量も増える傾向にあります。また、同じ本数でも、普通強度のPC鋼より線と高強度のPC鋼より線にも分類されるものもあります。

例えば、同じ15.2mmの7本よりPC鋼より線でも、普通強度の最大試験力の基準が、240kN以上であるのに対し、高強度のPC鋼より線は、317kN以上と約1.32倍に設定されています。また、A種とB種では、引張強度の基準に差があり、B種は、A種に比べ、引張強度が100N/mm2程度高く設定されています。