アモルファス金属

アモルファス金属とは

アモルファス金属

アモルファス金属とは、非晶質構造を持つ金属です。

アモルファス金属は急速冷却によって、原子が結晶化せずにランダムに配置された非晶質構造が得られます。非晶質であり結晶粒界に起因する欠陥がなく、より高い強度を持っているため、強度が非常に高いです。また、非常に弾性が高くて変形に強い特性を持ち、電気伝導性や熱伝導性も高いです。

アモルファス金属の使用用途

1. 自動車産業

自動車用サイレンサーや煙突の対候性処理などが挙げられます。

自動車用サイレンサーは、自動車のエキゾーストシステムの一部であり、エンジンから排出される排気ガスの騒音を減少させるための装置です。煙突の対候性処理とは、煙突が外部環境にさらされることで発生する腐食や劣化を防止するための処理のことです。

2. エレクトロニクス産業

磁気センサー、太陽電池セル、電子回路、メモリなどが挙げられます。

磁気センサーとは、磁場を感知してその情報を電気信号に変換するセンサーの一種です。太陽電池セルとは、太陽光を受け取り、その光エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスのことです。太陽電池セルは、太陽光の強さに応じて直流電力を発生させます。

3. 電力・エネルギー産業

柱上変圧器や産業用変圧器の鉄心、中小型モータの鉄心などが挙げられます。柱上変圧器は、送電線からの高圧電力を低圧電力に変換するための変圧器の一種です。

4. 機械産業

ベアリング、歯車、シャフト、ノズルなどが挙げられます。

5. 磁気デバイス産業

磁気ヘッドの素子、HDD用磁気ヘッドなどが挙げられます。磁気ヘッドの素子は、磁気媒体 (ハードディスクなど) の表面に接触して磁気情報を読み取るための部品であり、通常は非常に微小なサイズで作られています。

6. 化学・医療産業

触媒特性を活かした触媒材料、超伝導性を活かした電磁石、MRIの磁石などが挙げられます。

アモルファス金属の性質

アモルファス金属は通常の金属が持つ結晶構造を持たず、原子が不規則に配列された非晶質の構造を持ちます。このため結晶性の金属と比較して異なる物理的特性を持ちます。非常に高い強度と硬度を持っており、通常の金属よりも強度が約2倍で硬度が約3倍もある材料です。また耐食性にも優れており、金属ガラス表面に酸化被膜を形成することで金属表面の耐食性を向上できます。

アモルファス金属は結晶性の金属が持つような異方性を持たないため、磁気特性に優れた (磁場に対して優れた磁気応答を示す) 軟磁性材料 です。非晶質構造を持ち高い熱可塑性をもつため、複雑な形状の部品や製品を製造できます。

アモルファス金属の中で触媒特性を持つものは燃料電池や化学反応の触媒として利用され、また水素吸蔵能力を持つものは水素エネルギーの蓄積や運搬に利用されます。

通常の金属は規則的な格子状の構造を持ち、変形すると結晶粒同士が移動して変形しますが、アモルファス金属は結晶構造を持たず変形時には結晶粒の移動がないため、分子間の結合力によって強度を保持しやすくなります。分子間距離は非常に短く弾性率が高いため、変形しても強度を維持でき、脆性破壊に対する耐性も高いため、繰り返し変形に対しても強度を保てます。

アモルファス金属は原子がランダムに配列されていて結晶粒界や格子欠陥が存在しないため、自由電子の流れが制限されません。よって電気抵抗が非常に低く高い導電性を持っています。またアモルファス金属は非晶質構造を持っているため熱伝導率が高く、高温環境下での使用にも適しています。

アモルファス金属のその他情報

1. 超伝導材料としての利用

一部のアモルファス金属は超伝導材料としても利用されます。超伝導とは、ある一定の温度以下で電流を通すと電気抵抗が完全になくなる現象のことです。アモルファス金属の一部は、この超伝導現象を示します。

2. ガラス金属としての利用

アモルファス金属は非晶質構造を持つ金属ガラスの一種です。金属ガラスは通常のガラスとは異なり、熱膨張率が非常に小さいため熱衝撃に強くて耐久性が高いという特性を持っています。

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