構造材

構造材とは

構造材とは、建築物や構造物を支えるために使用される材料のことです。

主に木材、鉄骨、コンクリート、鉄筋コンクリートなどが使用されます。建築物や構造物の耐久性や安全性を確保するためには、最も重要かつ基本的な構成部分です。

現在では、新たな構造材としてCLT (直交集成板) の利用が増えており、また、CFRP (炭素繊維強化複合材) 製構造材の開発・研究も進められています。

構造材の使用用途

構造材は、建築物や構造物の骨格を支えるために使用されます。具体的には、住宅やビル、橋梁、ダム、道路など、あらゆる建築物や構造物の構造部材です。構造材の種類によって、使用用途も異なります。

構造材の特徴

長所

適切な構造材を使うことによって、建物などの構造物において外力を受け止め、建築物を保持できます。例えば、建築物においては、梁や柱などの構造材が外力を受け止め、荷重を分散することで、建物全体を支えられます。

また、道路や橋梁においても、舗装材や橋脚、橋桁などの構造材が、車両や人の荷重を支え、安定した走行や通行を実現できます。 さらに、構造材は、地震や台風などの自然災害に対しても耐性を持ち、構造物の被害を最小限に抑えることが可能です。

構造材の適切な選定や設計、施工によって、構造物全体の耐震性や風圧抵抗性を高められ、地震や台風などの災害に強い構造物を建てられます。

短所

1. 耐久性が低い材質もある
構造材の中には、劣化や腐食に弱いものがあります。木材などは湿気や水分によって腐朽しやすく、鋼材は錆びやすいなど、それぞれの材質によって問題が異なります。適切な保守管理が行われていない場合、耐久性に問題が生じることがあります。

2. 施工時の精度が重要となる
構造材を使用する際には、正確な寸法や位置関係が求められます。特に、鉄骨やコンクリートなどの重厚な構造材を扱う場合には、施工の精度が非常に重要です。誤った施工が行われた場合、構造の安全性に影響が出ることがあります。

3. 経年劣化する
時間が経過すると、構造材の性能は劣化します。例えば、木材は乾燥によって割れやすくなったり、鋼材は錆びが進んで強度が低下したりすることがあります。また、地震や風などの自然災害によって、構造材に負荷がかかり、劣化が進むことがあります。

4. コストがかかる
構造材の中には、高価なものもあります。例えば、鉄骨や鉄筋コンクリートなどは、素材のコストや施工費用が高くつくため、建設費用が膨らむことがあります。また、構造材の選定においては、耐用年数や施工方法、保守管理などを考慮する必要があり、総合的に判断する必要があるため、コスト面での課題が生じることがあります。

構造材の種類

1. 木材

木材は比較的加工がしやすく、軽量なため、取り扱いも容易です。自然素材であるため環境に優しく、弾力性があるため地震などの衝撃を和らげる効果があります。

また、断熱性能に優れており、冷暖房効果を高めることが可能です。加工が容易であるため、自由なデザイン性があります。ただし、湿気や虫害に弱いのが欠点です。

2. 鉄骨

鉄骨は、建築物の鉄骨造や橋梁の橋桁、鉄塔などに用いられます。重量物や高層建築物など、大規模な建築物に適しています。鉄骨は、強度が非常に高く、大規模な建築物に使用されることが多いです。

また、耐震性能にも優れており、地震に強い建物を構築することができます。さらに、耐火性に優れているため、火災にも強いです。ただし、錆びやすく、塗装などのメンテナンスに手間がかかるという欠点があります。

3. コンクリート

コンクリートは、セメント・砂・骨材 (砂利や砕石) などを混ぜ合わせて作られる建築資材で、建築物の基礎や構造物、道路の舗装などに用いられます。強度があり、防音性、耐火性、気密性にも優れています。

耐久性に優れており、長期間にわたって使用可能です。ただし、重量があるため、建築物の重量制限を考慮しなければなりません。

4. 鉄筋コンクリート

鉄筋コンクリートは、鉄筋をコンクリートの中に埋め込むことで、鉄骨とコンクリートのいいところを取り入れたものです。建築物の梁や柱、床板や基礎など、構造材として広く用いられています。

鉄骨と同様に強度が非常に高く、耐震性能にも優れています。さらに、耐火性が高く、火災に強い建物を構築することができます。ただし、コストがかかるのが欠点です。

構造材の選び方

構造材を選ぶ際には、以下のポイントをしっかり考える必要があります。

1. 使用用途

構造材は、用途によって異なる材料を選択する必要があります。たとえば、耐火性が必要な建物では、鉄骨構造を採用することが一般的です。また、柔軟性が必要な場合は木材を使うこともあります。

2. 使用環境

建物や構造物の立地や使用環境によっても、適切な構造材は異なります。たとえば、海岸部や湿地帯に建てる場合は、腐食に強い材料を選ぶ必要があります。また、地震の多い地域では、耐震性の高い材料を選ぶことが必要です。

3. コストバランス

構造材の選択にあたり、材料の性能とコストをバランスよく考えることが大切です。高性能な材料を使えば耐久性や強度は高くなりますが、コストが高くなりがちです。

一方、低コストの材料を選ぶと、コストを削減できますが、性能が制限される場合があります。

土壌改良材

土壌改良材とは

土壌改良材とは、農作物や園芸植物に適した土壌になるように、土壌の性質を改良する資材をいいます。
土壌用資材として肥料がありますが、肥料は、植物が必要とする栄養分を土壌に補給するのを目的としているのに対し、土壌改良材は、耕地として最適な土壌づくりを目的としています。ただし、肥料取締法上では肥料とされる資材であっても、土壌自体に作用する資材も含まれており、特にバーク堆肥や腐植酸質資材は、地力増進法上の土壌改良資材にも含まれています。

土壌改良材の使用用途

土壌の持つ性質は、物理的要素、化学的要素、生物的要素、これら3つの要素によっておおよそ決まります。土壌改良材の投入によって各要素を変化させ、作物に最適な性質の土壌をつくります。土壌改良材は、多種多様なため、土壌の状況に応じて、どの要素について改善が必要なのかを見極め、選択しなければなりません。

各要素の改善例と主な土壌改良材には、次のようなものがあります。

透水性や保水性、通気性などを改善する(物理的要素の改善):パーミライト、ベンナイトなど

保肥力の改善やph調整をする(化学的要素の改善):腐植酸質資材、石灰、ピートモスなど

微生物を利用して作物の生育を助けたり、土中の微生物環境を改善する(生物的要素):VA菌根菌資材など

トルクコンバータ

トルクコンバータとは

トルクコンバータ

トルクコンバータとは、エンジンから発生する回転力 (トルク) を適切な力として、車輪に伝える装置です。

車の自動変速装置 (オートマチックトランスミッション:AT) を構成する部品の1つで、流体による動力伝達機構を利用しています。

「トルコン」と略されることも多く、エンジンとトランスミッション (ギアボックス) の間に位置します。

トルクコンバータの使用用途

トルクコンバータは、特に自動車のAT車 (オートマチックトランスミッション車) で使われています。MT車 (マニュアルトランスミッション車) では、クラッチと呼ばれる部品がエンジンの力を車輪に伝える役割を果たしていますが、AT車ではその役割をトルクコンバータが担っています。

AT車は、運転が楽で初心者にも扱いやすい点がメリットです。これはトルクコンバータが、エンジンの力をうまく調節してくれいるからです。エンジンの力をうまく調節すれば、車はスムーズに加速したり、ゆっくりと停止したりすることが可能となります。

トルクコンバータの原理

トルクコンバータの構成要素は、大きく分けてインペラー、タービン、ステーターの3つです。インペラーの回転が、フルード (油) を通じて、タービンに伝わることで、エンジンの力を車輪に伝えます。 インペラーはエンジンから力を受け取り回転する部分です。エンジンが回転すると、インペラーも一緒に回転します。

インペラーが回転すると、トルクコンバータの中にあるフルードが回転方向と同じ方向に動きます。タービンは、フルードの流れを受けて回転するします。ステーターは、インペラーからタービンへ伝わったフルードの流れを調節し、タービンが力を効率よく受け取れるように助ける働きをします。

このように、トルクコンバータを介することで、エンジンの力 (トルク) を車輪にうまく伝えることが可能です。そして、これが車がスムーズに走るための大切な役割を果たしています。トルクコンバータは、エンジンの回転数に応じて力の伝え方を調節することができます。

エンジンがゆっくり回転している時は力を弱めに伝え、逆にエンジンが速く回転している時は力を強めに伝える仕組みです。これにより、車はスムーズに加速したり、ゆっくりと停止することができます。また車が停止する際は車輪の回転は停止しますが、エンジンが止まらずに回転を続けられるのも、トルクコンバータがあるおかげです。 

トルクコンバータのその他情報

1. トルクコンバータのメリット

最大の特長は運転のしやすさです。トルクコンバータのおかげで、車はエンジンの回転数に応じてスムーズに力を伝え、ギアの切り替えも自動で行われます。これにより、運転者はアクセルとブレーキに集中でき、運転がしやすくなります。

2. トルクコンバータのデメリット

エネルギーの損失が挙げられます。トルクコンバータはエンジンの力をフルードを介して伝えるため、その過程で一部のエネルギーが損失してしまいます。これが燃費の悪化につながることもあります。

3. トルクコンバータのメンテナンス

トルクコンバータは、頻繁なメンテナンスを必要とする部品ではありませんが、中に含まれるフルードは定期的に交換することが推奨されます。長時間使用すると、油が劣化して力をうまく伝えられなくなり、燃費が悪くなったり、車の性能が低下したりする可能性があります。

フルード交換のタイミングや方法は、車のメーカーや車種により異なるため、具体的な取扱説明書や専門家のアドバイスに従うことが大切です。トルクコンバータに問題が発生した場合、車は正常に動かなくなる可能性があります。異常な振動やノイズ、燃費の急激な悪化、アイドリング時のエンジン停止などが起こった場合は、トルクコンバータの問題の可能性があるため、専門家に診てもらうことを推奨します。

トルクコンバータは車をスムーズに運転するための重要な部品です。その働きを理解し、適切なメンテナンスを行うことで、車の性能を保ち、長く快適に運転することが可能になります。

酪酸エチル

酪酸エチルとは

酪酸エチル (英:Ethyl butanoate) とは、分子式C6H12Oで表される有機化合物で、カルボン酸エステルの1種です。

硫酸の存在下で酪酸とエタノールを反応 (脱水縮合: エステル化) させ、蒸留等で分離することで得られます。酪酸エチルは、ブタン酸エチルと表記されることもあります。

また、エステルであることを明確にするため、酪酸エチルエステル、ブタン酸エチルエステルと表記される場合もあります。酪酸エチルは無色透明の液体で、空気中に容易に拡散し、甘い果実香を発する物質です。

酪酸エチルの使用用途

酪酸エチルの主な用途は、食品や飲料に添加される香料です。石鹸や化粧品の香料やラッカー等の溶媒、接着剤の溶剤なども用途として挙げられます。まれに、悪臭のマスキング目的で用いられることもあります。

酪酸エチルの果実香は、多くの人にバナナやパイナップルを連想させるような匂いです。同じカルボン酸エステルの仲間で酢酸エチルより分子量の小さい酢酸エチルが、リンゴの香りに例えられるのに比べ、やや力強いと表現されることもあります。

酪酸エチルの性質

酪酸エチルの示性式は、C3H7COOC2H5です。常温では無色透明な液体として存在し、分子量は116.16、密度は25℃で0.875g/mL、融点は-93.3℃、沸点は120~121℃、引火点は約25℃です。アルコールや油類の有機溶媒にはよく溶けますが、水にはほとんど溶けません。

酪酸エチルには引火性があるため、火気や熱源近くでの使用は避け、使用時の安全管理や保管には十分に配慮する必要があります。酪酸エチルは日本の消防法において、危険物第4類・第2石油類に分類されている物質です。

酪酸エチルのその他情報

1. 酪酸エチルの安全性・毒性

酪酸エチルは、天然由来成分としてイチゴの果汁、リンゴのみつなどにも存在が確認されている物質です。食品添加物にも使用されることから、低濃度の使用において毒性はありません。

その他の用途においても、大きな危険性は認められていない物質です。ただし、原液などが直接皮膚などに触れた場合は刺激を受ける可能性があり、蒸気状の気体を吸うことによる呼吸器への刺激のおそれがあります。したがって、高濃度で取り扱う場合には注意が必要です。

なお、酪酸エチルの環境に対する有害性は認められていないため、厚生労働省の安全データシートにおいても、水生環境急性有害性、水生環境慢性有害性はいずれも区分外となっています。

2. 酪酸エチルと同じ分子式をもつ物質

酪酸エチルと同じC6H12Oの分子式を持つ異性体には、酢酸ブチル、ギ酸ペンチル、プロピオン酸プロピルがあります。これらの物質はいずれも、本項の酪酸エチルと同じくエステル類であり、香料や溶媒などの用途に使われる物質です。

3. 酪酸エチルとフルーツフレーバー

酪酸エチルのように、低級または中級のカルボン酸とアルコールからなるエステル類は、空気中に拡散するといずれも果実などを連想させるような香りになります。これらの物質の大半は、植物の精油や果汁の中から検出されており、天然に広く存在している物質です。

酢酸エチルも、日本で人気のある「リンゴのみつ部分」の香り成分の中心となる物質です。したがって、エステル類の香りの組み合わせを工夫することで、人工的にさまざまなフルーツフレーバーを作り出すことができます。天然果汁を補強する香料として、用いることも可能です。

一方で、このようなよい香りのエステル類の構成成分であるギ酸、酢酸、酪酸、イソ吉草酸などの炭素数の少ないカルボン酸は、多くの人にとって不快に感じられる悪臭を放つことで有名です。「エステル化するだけで劇的に臭いが変わってしまう」という点に目をつけると、比較的安全で安価な実験材料を用いて面白い化学実験を作ることができます。そのため、この手の実験は教育目的の学校実験などでもよく採用されています。

水素化マグネシウム

水素化マグネシウムとは

水素化マグネシウムとは、化学式MgH2で表される無機化合物です。

灰色または白色のの結晶性固体で、水または湿った空気と接触すると発火する可能性があります。水素化マグネシウムは、最大 7.6 重量%の水素を吸蔵可能です。

他の水素吸蔵合金や水素吸蔵物質と比較し吸蔵量が多いこと、また地球上に原料が豊富に存在することから、水素貯蔵体として研究が進められています。水素化マグネシウムを加水分解することで、水素が得られます。

水素化マグネシウムの使用用途

1. 水素貯蔵材料

水素化マグネシウムは、常温・常圧で安定し、安全性が高く、多くの水素を貯蔵できる性質です。水素貯蔵材料として、盛んに研究が行われています。

高い放出温度や放出速度の遅さなどにより、実用化には至っていませんが、マグネシウムは、資源量が豊富で安定調達が可能となっています。生産プロセスも確立していることから、工業化へのハードルが低いことが特徴です。

実用化の際は、まずはポータブル等の小型電源から、さらには大型の水素ステーションへの使用などが検討されています。

2. 燃料電池車 (FCV)

燃料電池車は、水素と酸素の化学反応で発電し、排出物が水のみであることから、クリーンエネルギーとして認知されています。マグネシウムタブレットや、マグネシウム粉末などを水素化炉にて高温・高圧環境下で水素と反応させることで製造します。固体やペースト場にすることで、カートリッジに格納可能となり、水素キャリアとすることができます。

また、水素化マグネシウムは金属系吸蔵材料ですが、従来型よりも軽量である点が特徴です。アルミよりもさらに軽量であることから、将来的な実用化が期待されています。

3. 民生用用途

水素化マグネシウムは、産業用への利用の他に、水素水、水素風呂、入浴剤、美容・理容用途などへの適用も進められています。

水素化マグネシウムの性質

水素化マグネシウムは、分子量26.32、CAS番号7693-27-8で表わされます。密度は1.45、融点/凝固点は100℃で、引火点、沸点など可燃性に関するデータはありません。

光により変質するおそれがあり、水と激しく反応する性質があります。また高温と直射日光、水を避ける必要があります。危険有害な分解生成物は、金属酸化物、および水素です。

水素化マグネシウムのその他情報

1. 安全性

GHSは、水反応可燃性化学品 (区分1) 、皮膚腐食性/刺激性 (区分2) 、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 (区分2A) に分類されます。水に触れると自然発火するおそれのある可燃性ガスを発生させる危険性があり、皮膚刺激性および眼刺激性が強いことから、使用時は注意が必要です。

廃棄時は残余物、廃液、汚染容器および包装を、地域、 国、 現地の適切な法律、規制に則り処理が必要です。

2. 応急処置

眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗い、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外し、洗浄を続ける必要があります。眼の刺激が続く場合は、直ちに医師の診察/手当てを受け、皮膚に付着した場合は、多量の水と洗剤で洗浄し、炎症が出た場合は、医師の診断、処置が必要です。

万が一飲み込んだ場合は、直ちに口をすすぎ、意識がない場合は、口には何も与えません。直ちに医師もしくは毒物管理センターに連絡し、医師の指示がない場合には、 無理に吐かせません。

3. 取扱方法

作業場所は、局所排気装置を設置し、不活性ガス下で作業を行います。火気厳禁とし、水および湿気と接触すると激しい反応と出火の可能性があるため、いかなる接触可能性も絶つ必要があります。

作業者は、防塵マスク、保護手袋、側板付き保護眼鏡 (必要によりゴーグル型または全面保護眼鏡) 、長袖作業衣の着用が必要です。取扱い後は顔や手など、ばく露した皮膚を洗浄します。

4. 保管

容器は遮光し、換気のよいなるべく涼しい場所で、密閉して保管します。また容器内は、不活性ガスを封入し、ガラス製の容器を使用します。

混触危険物質は水であることから、水との接触を避けて保管が必要です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0113-1739JGHEJP.pdf

塩化オキサリル

塩化オキサリルとは

塩化オキサリル (英: Oxalyl chloride) とは、刺激臭のある無色の発煙性液体です。

化学式は (COCl)2、分子量は126.93、CAS番号は79-37-8です。ホスゲンにカルボニル基が1つ挿入された構造をしていますが、急性毒性などは大きく違います。

1892年にフランスの化学者アドリアン・フォーコニエが、シュウ酸ジエチルと五塩化リンを反応させることで初めて調製されました。

塩化オキサリルの使用用途

塩化オキサリルは、塩化チオニルと同じ様に塩酸などの揮発性の生成物を発生し、塩化チオニルなどに比べて比較的マイルドで、より選択性のある試薬です。対応するカルボン酸から塩化アシルを調製するための有機合成においては、微量のジメチルホルムアミドを触媒として加えることが多いです 。

   RCOOH + (COCl)2 → RCOCl + CO2 + CO

塩化オキサリルは、酸塩化物の合成、芳香族化合物のアシル化、ジエステルの合成、アルコールの酸化に必要な薬剤です。特に、芳香族化合物のアシル化の反応は、フリーデル・クラフツ反応として知られており、得られた塩化アシルを加水分解することで、カルボン酸が得られます。また、アルコールと反応するとエステルを与えることが出来ます。

   2RCH2OH + (COCl)2 → RCH2OC(O)C(O)OCH2R + 2HCl

塩化オキサリルの性質

塩化オキサリルの融点は-12℃、沸点は65℃、密度は1.48g/mLです。エーテル、ベンゼンクロロホルムに溶けますが、水とは激しく反応し、塩化水素を発生します。

加熱によりホスゲン一酸化炭素に分解する塩素化剤でもあります。吸入による毒性がありますが、関連化合物であるホスゲンと比べると1桁以上急性毒性は低いです。

塩化オキサリルのその他情報

1. 塩化オキサリルの製法

無水シュウ酸に五塩化リンを処理することによって製造できます。商業的には、エチレンカーボネートを塩素化して得られる四塩化物を分解させて製造しています。

   C2H4O2CO + 4Cl2 → C2Cl4O2CO + 4HCl
   C2Cl4O2CO → C2O2Cl2 + COCl2

2. 塩化オキサリルの反応

塩化オキサリルは、水と反応して、塩化水素、二酸化炭素、および一酸化炭素などのガス状生成物のみを放出します。

   (COCl)2 + H2O → 2HCl + CO2 + CO)

これは、元のカルボン酸を形成しながら加水分解する他の塩化アシルの特徴とは異なります。塩化オキサリルとDMSOを含む溶液をトリエチルアミンでクエンチすると、アルコールを対応するアルデヒドとケトンに変換可能です (Swern酸化)。

また、塩化アルミニウムの存在下で芳香族化合物と反応し、対応する塩化アシルを生成します (フリーデルクラフツアシル化)。他の酸塩化物と同様、アルコールと反応するとエステルが発生します。

3. 法規情報

労働安全衛生法や化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)、毒物及び劇物取締法、消防法などいずれの主要な法令においても指定がありません。

4. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 保管容器は不活性ガスを封入し、冷蔵庫 (2~10℃) で保管する。
  • 耐腐食性の素材、あるいは耐腐食性の内張りのある容器に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
  • 激しく反応するため、強酸化剤、アルコール類、金属類および水との接触を避ける。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 吸入した場合、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させる。
  • 皮膚に付着した場合は、すぐに多量の水と石鹸で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗い、直ちに医師の手当てを受ける。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0115-0164JGHEJP.pdfhttps://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/75-44-5.html

亜硫酸カルシウム

亜硫酸カルシウムとは

亜硫酸カルシウムはカルシウムの亜硫酸塩です。亜硫酸カルシウム0.5水和物として販売されることが多く、ほとんど白色の結晶または粉末です。

水には溶けにくいですが亜硫酸水や希塩酸には溶け、二酸化硫黄を発生します。また、分解により亜硫酸ガスを発生することもあるため扱いには注意してください。

酸化カルシウム、炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムと二酸化硫黄を反応させることで得ることができます。空気中で徐々に酸化されて硫酸カルシウムになります。

亜硫酸カルシウムの使用用途

亜硫酸カルシウムは還元剤としての性質を持っており、主に水道水中の残留塩素の除去に使用されます。

水道水中には殺菌のために塩素を付与しているのですが、この塩素のために水道水にはカルキ臭があります。亜硫酸カルシウムは含まれている遊離残留塩素を瞬間的に除去することができます。従来使用されていた活性炭や木炭よりも還元剤の使用量が少量で済みかつ反応時間が極めて早いため、吐水量が多い浄水器に使われることが多いです。

お湯でも塩素の除去が可能な性質を生かし、浄水シャワーヘッドに使われることもあります。

参考文献
https://www.aquas5.com/knowledge/37/000415.php
https://cica-web.kanto.co.jp/CicaWeb/msds/J_07110.pdf

亜硫酸

亜硫酸とは

亜硫酸 (英: Sulfurous acid) とは、二酸化硫黄の水溶液中に存在すると考えられている、化学式H2SO3で表される酸です。

硫黄のオキソ酸の1つに分類される物質であり、CAS登録番号は7782-99-2です。ただし、遊離酸は不安定であるため、単離はできません。かつては水溶液中にH2SO3の状態で含有されていると考えられていましたが、実際は亜硫酸水素イオンHSO3が生じていると考えられています。

多くは亜硫酸水の状態で販売されており、また二硫化硫黄 (英: Sulfur dioxide) の気体を亜硫酸ガスと呼ぶ場合もあります。

亜硫酸の使用用途

亜硫酸、及び、二酸化硫黄は、還元剤・漂白剤として用いられる物質です。食品添加物としてとしての用途があり、ドライフルーツや酒の保存料、漂白剤、酸化防止剤として使われています。

その他の産業用途では、殺菌剤 (食品加工、器具の消毒など)、農業用くん蒸剤、殺虫剤、消毒剤、防腐剤、保存剤 (果物及び野菜の防腐) を挙げることができます。製紙、繊維及び織物、麦わら、ゼラチン、グルー、てん菜糖の漂白剤としても使用されている物質です。

亜硫酸の性質

亜硫酸の基本情報

図1. 亜硫酸の基本情報

亜硫酸/亜硫酸水は、水と二酸化硫黄の混合物として扱われます。無色の澄明な液体で、密度は1.03g/mLです。刺激臭を有し、水やエタノールと任意で混和します。

亜硫酸の種類

1. 亜硫酸水

亜硫酸水は通常研究開発用試薬製品として販売されています。主な想定用途は一般分析用試液、還元剤などです。

濃度は二酸化硫黄の濃度で5%や6%程度が多く、容量の種類は、100g、500g、2kg、500mLなどです。通常室温で保管可能な試薬製品として扱われますが、二酸化硫黄臭が強いのでドラフト中で取り扱うこととされます。

2. 亜硫酸ガス

産業用製品の中には、二酸化硫黄のガス製品を亜硫酸ガスと呼んでいるものがあります。漂白剤、還元剤、金属製造用、工業薬品製造用などに用いられますが、通常高圧ガス・液化ガスであるため、安全な取り扱いには注意が必要です。

亜硫酸のその他情報

1. 亜硫酸水の平衡

亜硫酸の平衡

図2. 亜硫酸水の平衡

かつては亜硫酸水には亜硫酸H2SO3が溶解していると考えられていましたが、今日では亜硫酸水素イオン、亜硫酸イオンがそれぞれ平衡状態にあると考えられています。

さらに、水溶液中では、亜硫酸水素イオンは2量化した構造との平衡にあると考えられており、亜硫酸イオンは溶液中の酸素と反応して生じる硫酸イオンとの平衡関係にあると考えられています。

2. 亜硫酸の物理的危険性

亜硫酸や二酸化硫黄は、加熱によって、破裂の危険を伴う圧力の上昇が起こり危険があります。水溶液は中程度の強酸で、アンモニアアクロレインアセチレン、アミン類、アルカリ金属類、塩素、酸化エチレン、ブタジエンと激しく反応します。

また、水や水蒸気とは反応して腐食の危険をもたらす物質です。ハロゲンとの接触にも注意が必要となります。

3. 亜硫酸の人体への有害性

亜硫酸の人体への有害性

図3. 亜硫酸の人体への有害性

亜硫酸は、人体への有害性のある物質です。具体的には、以下の危険性が指摘されています。

  • 重篤な皮膚の薬傷
  • 重篤な眼の損傷
  • 吸入すると有害
  • 臓器の障害のおそれ
  • 長期にわたる、又は反復ばく露による臓器の障害のおそれ

また、GHS分類では下記のように分類されています。

  • 急性毒性-吸入 (蒸気) : 区分4
  • 皮膚腐食性/刺激性: 区分1
  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性: 区分1
  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) : 区分2
  • 特定標的臓器毒性 (反復ばく露) : 区分2

4. 亜硫酸の法規制情報

亜硫酸は、前述の有害性のため法令で規制を受ける物質です。労働安全衛生法において、特定化学物質第3類物質、名称等を表示すべき危険物及び有害物、名称等を通知すべき危険物及び有害物に指定されています。

法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
http://www.etosanso.co.jp/sds/pdf/sds027.pdf
https://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.display?p_lang=ja&p_card_id=0074&p_version=2

亜酸化窒素

亜酸化窒素とは

亜酸化窒素とは、組成式N2Oで表される常温で気体の窒素酸化物の一種です。

別名として、次亜硝酸無水物、笑気ガス、酸化二窒素、一酸化二窒素もあります。

亜酸化窒素の使用用途

亜酸化窒素は、歯科及び外科、産婦人科の麻酔に多く用いられます。半導体用材料や原子吸光分析用キャリアガスなど工業用にも使用されるほか、漏えい検知、冷媒、風船やタイヤへのガス充填にも使われます。

スペインの有名レストランがソーダサイフォンを使って食品に亜酸化窒素ガスを添加し、空気のように軽い泡の料理を開発しました。亜酸化窒素ガスを食品添加物扱いとし、液状の食材に亜酸化窒素を混ぜてムース状にする料理法をエスプーマと呼びます。日本でも流行した料理法です。

また、亜酸化窒素ガスは大気よりも酸素の存在比率が大きく、熱分解した時に大気よりも酸素分圧の高い混合気体が得られます。そのため、レース車のエンジンなどの内燃機関のブースト用に用いられる場合もあります。

亜酸化窒素の原理

亜酸化窒素の原理

図1. 亜酸化窒素の分子構造と物性

亜酸化窒素は、常温だと特徴的な臭気をもつ無色の気体で、分子構造としては図1のような共鳴構造をとっています。不燃性で安定した気体で、他の窒素酸化物のような毒性はありません。特徴として麻酔作用、鎮痛作用があり、吸入すると顔面の筋肉が痙攣してしまい笑っているようにみえるところから、笑気ガスと呼ばれています。吸入式の全身麻酔に使用します。

650℃に加熱すると分解してNOxの蒸気を生成し、火災や爆発の危険をもたらします。無水亜硫酸、無定形ホウ素、ホスフィン、エーテル、アルミニウムヒドラジン、フェニルリチウム、炭化タングステンなど還元剤およびある種の可燃性物質などと激しく反応し、火災や爆発の可能性があるため、大変危険です。

また、この気体は 300℃以上の強酸化剤であり、アンモニア一酸化炭素、油などと爆発性混合物を生成することがあります。吸入すると多幸感が得られるとされ脱法ドラックとして乱用されたため、現在は指定薬物です。

労働安全衛生法で危険有害物に指定されているほか、2015年から指定薬物になっているので、保管・取り扱いには厳重注意が必要となります。

亜酸化窒素の製造方法

亜酸化窒素の工業的な製造方法としては、硝酸アンモニウムの熱分解法、アンモニア酸化法、スルファミン酸法の3通りがあります。

1. 硝酸アンモニウムの熱分解法

硝酸アンモニウムの熱分解法

図2. 硝酸アンモニウム熱分解法

硝酸アンモニウム熱分解法は、約250℃に保持した反応槽に原料の80%硝酸アンモニウム水溶液を、一定流量で滴下しながら分解させて亜酸化窒素を得る方法です。反応によって得られたガスは亜酸化窒素純度97~98%であり、不純物として、窒素、アンモニア、酸化窒素、二酸化窒素を含みます。

この粗製亜酸化窒素ガスから水を冷却器で凝縮留去後、強アルカリ水溶液、強酸で洗浄することにより、不純物が除去された精製亜酸化窒素が得られます。

2. アンモニア直接酸化法

アンモニア直接酸化法

図3. アンモニア直接酸化法

アンモニア直接酸化法はアンモニアを触媒により酸化して亜酸化窒素を得る方法です。反応生成物中の亜酸化窒素濃度が低いことと、触媒の寿命が短いことがプロセス上の課題でしたが、触媒の改良により現在は工業化されています。

不純物を含む粗製亜酸化窒素ガスを加圧下で水に吸収させ、減圧下で水より放散させることにより、酸素、窒素を分離して高純度の亜酸化窒素を得ます。

3. スルファミン酸法

スルファミン酸法はスルファミン酸と硝酸を80~100℃で反応させて亜酸化窒素を得る方法です。

NH2SO3H + HNO→ N2O  + H2SO+ H2O

参考文献
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/dl/s1217-11d.pdf
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0656.html
https://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.display?p_lang=ja&p_card_id=0067&p_version=2

亜硝酸リチウム

亜硝酸リチウムとは

亜硝酸リチウムの基本情報

図1. 亜硝酸リチウムの基本情報

亜硝酸リチウム (英: Lithium nitrite) とは、示性式LiNO2で表される、無機リチウム化合物です。

陽イオンであるリチウムイオンと、陰イオンである亜硝酸イオンから構成されます。CAS登録番号は、13568-33-7です。分子量は52.947、融点は222℃であり、常温では吸湿性の白色結晶です。加熱により185℃で分解します。

毒物及び劇物取締法により、劇物に指定されている物質です。水質汚濁防止法で有害物質に指定されているため、廃棄方法・廃液には注意が必要です。

亜硝酸リチウムの使用用途

亜硝酸リチウムの主な用途は、鉄筋コンクリートの防錆、塩害対策です。そのため、コンクリートの補修混和剤の成分として使用されます。

亜硝酸イオンは鉄表面に存在する不動態被膜を再生するため、塩害や中性化など、鉄筋腐食に対して有効です。一方、リチウムイオンはASR劣化の補修に作用する成分です。リチウムイオンの作用によって、アルカリシリカゲルの膨張化が抑制されることが理由として挙げられます。このとき、亜硝酸リチウムはコンクリート全体に浸透します。

亜硝酸リチウムの原理

亜硝酸リチウムの原理を製造、合成の観点から解説します。

1. 亜硝酸リチウムの製造・合成

亜硝酸リチウムの合成方法

図2. 亜硝酸リチウムの合成方法

工業的には、亜硝酸リチウムはリシア輝石とナフサを原料として製造されます。その他の合成方法としては、硝酸リチウム (LiNO3) の熱分解 (約500 ℃) や、一酸化窒素 (NO) と水酸化リチウム (LiOH) の反応などがあります。

2. 亜硝酸リチウムの鉄筋腐食抑制効果の原理

亜硝酸リチウムの鉄筋腐食抑制効果

図3. 亜硝酸リチウムの鉄筋腐食抑制効果の原理

鉄筋腐食においては、不動態皮膜が損傷するとアノード部から2価の鉄イオン (Fe2+) が流出し、酸素や水と反応して赤錆 FeOOHなどが生成します。亜硝酸イオンは、Fe2+と反応してアノード部からのFe2+の溶出を防止し、同時に不動態被膜 (Fe2O3) を再生します。このような原理により、鉄筋腐食反応を抑制します。

3. 亜硝酸リチウムのコンクリートの劣化抑制効果の原理

リチウムイオンは、ASR (アルカリ骨材反応) によるコンクリートの劣化を抑制する効果があることが知られています。ASRでは、コンクリートのアルカリ分が骨材中のシリカ鉱物と化学反応を起こし、反応生成物であるアルカリシリカゲルを生成します。アルカリシリカゲルは強力な吸水膨張性がある物質です。そのため、膨張によって反応性骨材周囲のセメントペーストが破壊されてしまいます。

リチウムイオンの存在下では、アルカリシリカゲルの膨張を抑制することができます。アルカリシリカゲル (Na2O・nSiO2) にリチウムイオン (Li+) を供給すると、リチウムモノシリケート (Li2・SiO2) 或いはリチウムジシリケート (Li2・2SiO2) に置換されます。

置換されたこれらの物質は水溶液や吸湿性を持たないため、膨張しません。このような原理で吸水膨張反応が収束し、コンクリートのひび割れは進行しなくなるのです。

亜硝酸リチウムの種類

亜硝酸リチウム製品には、化学試薬や工業用化学製品などの種類があります。化学試薬としての亜硝酸リチウムは、n水和物 (LiNO2・nH2O) の状態で販売されています。5g , 25g , 500gなど、実験室スケールで扱いやすい容量の製品が一般的です。

工業用製品は、コンクリート補修用混和剤などの用途で用いられます。通常、40%程度の亜硝酸リチウム水溶液として製品化されており、色は薄い黄色の透明な水溶液です。前述の通り、塩害や中性化などの鉄筋腐食に起因する劣化、及びASR劣化の両方に有効な薬品として汎用されます。製品容量は、20kgの一斗缶などが一般的です。

参考文献
https://www.rehabilitate.jp/rehabilitate-pics/10002514.pdf
https://okazakigrp.xsrv.jp/iconst/repair/asr_koho2/