塩化オキサリル

塩化オキサリルとは

塩化オキサリル (英: Oxalyl chloride) とは、刺激臭のある無色の発煙性液体です。

化学式は (COCl)2、分子量は126.93、CAS番号は79-37-8です。ホスゲンにカルボニル基が1つ挿入された構造をしていますが、急性毒性などは大きく違います。

1892年にフランスの化学者アドリアン・フォーコニエが、シュウ酸ジエチルと五塩化リンを反応させることで初めて調製されました。

塩化オキサリルの使用用途

塩化オキサリルは、塩化チオニルと同じ様に塩酸などの揮発性の生成物を発生し、塩化チオニルなどに比べて比較的マイルドで、より選択性のある試薬です。対応するカルボン酸から塩化アシルを調製するための有機合成においては、微量のジメチルホルムアミドを触媒として加えることが多いです 。

   RCOOH + (COCl)2 → RCOCl + CO2 + CO

塩化オキサリルは、酸塩化物の合成、芳香族化合物のアシル化、ジエステルの合成、アルコールの酸化に必要な薬剤です。特に、芳香族化合物のアシル化の反応は、フリーデル・クラフツ反応として知られており、得られた塩化アシルを加水分解することで、カルボン酸が得られます。また、アルコールと反応するとエステルを与えることが出来ます。

   2RCH2OH + (COCl)2 → RCH2OC(O)C(O)OCH2R + 2HCl

塩化オキサリルの性質

塩化オキサリルの融点は-12℃、沸点は65℃、密度は1.48g/mLです。エーテル、ベンゼンクロロホルムに溶けますが、水とは激しく反応し、塩化水素を発生します。

加熱によりホスゲン一酸化炭素に分解する塩素化剤でもあります。吸入による毒性がありますが、関連化合物であるホスゲンと比べると1桁以上急性毒性は低いです。

塩化オキサリルのその他情報

1. 塩化オキサリルの製法

無水シュウ酸に五塩化リンを処理することによって製造できます。商業的には、エチレンカーボネートを塩素化して得られる四塩化物を分解させて製造しています。

   C2H4O2CO + 4Cl2 → C2Cl4O2CO + 4HCl
   C2Cl4O2CO → C2O2Cl2 + COCl2

2. 塩化オキサリルの反応

塩化オキサリルは、水と反応して、塩化水素、二酸化炭素、および一酸化炭素などのガス状生成物のみを放出します。

   (COCl)2 + H2O → 2HCl + CO2 + CO)

これは、元のカルボン酸を形成しながら加水分解する他の塩化アシルの特徴とは異なります。塩化オキサリルとDMSOを含む溶液をトリエチルアミンでクエンチすると、アルコールを対応するアルデヒドとケトンに変換可能です (Swern酸化)。

また、塩化アルミニウムの存在下で芳香族化合物と反応し、対応する塩化アシルを生成します (フリーデルクラフツアシル化)。他の酸塩化物と同様、アルコールと反応するとエステルが発生します。

3. 法規情報

労働安全衛生法や化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)、毒物及び劇物取締法、消防法などいずれの主要な法令においても指定がありません。

4. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 保管容器は不活性ガスを封入し、冷蔵庫 (2~10℃) で保管する。
  • 耐腐食性の素材、あるいは耐腐食性の内張りのある容器に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
  • 激しく反応するため、強酸化剤、アルコール類、金属類および水との接触を避ける。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 吸入した場合、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させる。
  • 皮膚に付着した場合は、すぐに多量の水と石鹸で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗い、直ちに医師の手当てを受ける。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0115-0164JGHEJP.pdfhttps://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/75-44-5.html

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