亜硝酸リチウム

亜硝酸リチウムとは

亜硝酸リチウムの基本情報

図1. 亜硝酸リチウムの基本情報

亜硝酸リチウム (英: Lithium nitrite) とは、示性式LiNO2で表される、無機リチウム化合物です。

陽イオンであるリチウムイオンと、陰イオンである亜硝酸イオンから構成されます。CAS登録番号は、13568-33-7です。分子量は52.947、融点は222℃であり、常温では吸湿性の白色結晶です。加熱により185℃で分解します。

毒物及び劇物取締法により、劇物に指定されている物質です。水質汚濁防止法で有害物質に指定されているため、廃棄方法・廃液には注意が必要です。

亜硝酸リチウムの使用用途

亜硝酸リチウムの主な用途は、鉄筋コンクリートの防錆、塩害対策です。そのため、コンクリートの補修混和剤の成分として使用されます。

亜硝酸イオンは鉄表面に存在する不動態被膜を再生するため、塩害や中性化など、鉄筋腐食に対して有効です。一方、リチウムイオンはASR劣化の補修に作用する成分です。リチウムイオンの作用によって、アルカリシリカゲルの膨張化が抑制されることが理由として挙げられます。このとき、亜硝酸リチウムはコンクリート全体に浸透します。

亜硝酸リチウムの原理

亜硝酸リチウムの原理を製造、合成の観点から解説します。

1. 亜硝酸リチウムの製造・合成

亜硝酸リチウムの合成方法

図2. 亜硝酸リチウムの合成方法

工業的には、亜硝酸リチウムはリシア輝石とナフサを原料として製造されます。その他の合成方法としては、硝酸リチウム (LiNO3) の熱分解 (約500 ℃) や、一酸化窒素 (NO) と水酸化リチウム (LiOH) の反応などがあります。

2. 亜硝酸リチウムの鉄筋腐食抑制効果の原理

亜硝酸リチウムの鉄筋腐食抑制効果

図3. 亜硝酸リチウムの鉄筋腐食抑制効果の原理

鉄筋腐食においては、不動態皮膜が損傷するとアノード部から2価の鉄イオン (Fe2+) が流出し、酸素や水と反応して赤錆 FeOOHなどが生成します。亜硝酸イオンは、Fe2+と反応してアノード部からのFe2+の溶出を防止し、同時に不動態被膜 (Fe2O3) を再生します。このような原理により、鉄筋腐食反応を抑制します。

3. 亜硝酸リチウムのコンクリートの劣化抑制効果の原理

リチウムイオンは、ASR (アルカリ骨材反応) によるコンクリートの劣化を抑制する効果があることが知られています。ASRでは、コンクリートのアルカリ分が骨材中のシリカ鉱物と化学反応を起こし、反応生成物であるアルカリシリカゲルを生成します。アルカリシリカゲルは強力な吸水膨張性がある物質です。そのため、膨張によって反応性骨材周囲のセメントペーストが破壊されてしまいます。

リチウムイオンの存在下では、アルカリシリカゲルの膨張を抑制することができます。アルカリシリカゲル (Na2O・nSiO2) にリチウムイオン (Li+) を供給すると、リチウムモノシリケート (Li2・SiO2) 或いはリチウムジシリケート (Li2・2SiO2) に置換されます。

置換されたこれらの物質は水溶液や吸湿性を持たないため、膨張しません。このような原理で吸水膨張反応が収束し、コンクリートのひび割れは進行しなくなるのです。

亜硝酸リチウムの種類

亜硝酸リチウム製品には、化学試薬や工業用化学製品などの種類があります。化学試薬としての亜硝酸リチウムは、n水和物 (LiNO2・nH2O) の状態で販売されています。5g , 25g , 500gなど、実験室スケールで扱いやすい容量の製品が一般的です。

工業用製品は、コンクリート補修用混和剤などの用途で用いられます。通常、40%程度の亜硝酸リチウム水溶液として製品化されており、色は薄い黄色の透明な水溶液です。前述の通り、塩害や中性化などの鉄筋腐食に起因する劣化、及びASR劣化の両方に有効な薬品として汎用されます。製品容量は、20kgの一斗缶などが一般的です。

参考文献
https://www.rehabilitate.jp/rehabilitate-pics/10002514.pdf
https://okazakigrp.xsrv.jp/iconst/repair/asr_koho2/

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