水素化マグネシウムとは
水素化マグネシウムとは、化学式MgH2で表される無機化合物です。
灰色または白色のの結晶性固体で、水または湿った空気と接触すると発火する可能性があります。水素化マグネシウムは、最大 7.6 重量%の水素を吸蔵可能です。
他の水素吸蔵合金や水素吸蔵物質と比較し吸蔵量が多いこと、また地球上に原料が豊富に存在することから、水素貯蔵体として研究が進められています。水素化マグネシウムを加水分解することで、水素が得られます。
水素化マグネシウムの使用用途
1. 水素貯蔵材料
水素化マグネシウムは、常温・常圧で安定し、安全性が高く、多くの水素を貯蔵できる性質です。水素貯蔵材料として、盛んに研究が行われています。
高い放出温度や放出速度の遅さなどにより、実用化には至っていませんが、マグネシウムは、資源量が豊富で安定調達が可能となっています。生産プロセスも確立していることから、工業化へのハードルが低いことが特徴です。
実用化の際は、まずはポータブル等の小型電源から、さらには大型の水素ステーションへの使用などが検討されています。
2. 燃料電池車 (FCV)
燃料電池車は、水素と酸素の化学反応で発電し、排出物が水のみであることから、クリーンエネルギーとして認知されています。マグネシウムタブレットや、マグネシウム粉末などを水素化炉にて高温・高圧環境下で水素と反応させることで製造します。固体やペースト場にすることで、カートリッジに格納可能となり、水素キャリアとすることができます。
また、水素化マグネシウムは金属系吸蔵材料ですが、従来型よりも軽量である点が特徴です。アルミよりもさらに軽量であることから、将来的な実用化が期待されています。
3. 民生用用途
水素化マグネシウムは、産業用への利用の他に、水素水、水素風呂、入浴剤、美容・理容用途などへの適用も進められています。
水素化マグネシウムの性質
水素化マグネシウムは、分子量26.32、CAS番号7693-27-8で表わされます。密度は1.45、融点/凝固点は100℃で、引火点、沸点など可燃性に関するデータはありません。
光により変質するおそれがあり、水と激しく反応する性質があります。また高温と直射日光、水を避ける必要があります。危険有害な分解生成物は、金属酸化物、および水素です。
水素化マグネシウムのその他情報
1. 安全性
GHSは、水反応可燃性化学品 (区分1) 、皮膚腐食性/刺激性 (区分2) 、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 (区分2A) に分類されます。水に触れると自然発火するおそれのある可燃性ガスを発生させる危険性があり、皮膚刺激性および眼刺激性が強いことから、使用時は注意が必要です。
廃棄時は残余物、廃液、汚染容器および包装を、地域、 国、 現地の適切な法律、規制に則り処理が必要です。
2. 応急処置
眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗い、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外し、洗浄を続ける必要があります。眼の刺激が続く場合は、直ちに医師の診察/手当てを受け、皮膚に付着した場合は、多量の水と洗剤で洗浄し、炎症が出た場合は、医師の診断、処置が必要です。
万が一飲み込んだ場合は、直ちに口をすすぎ、意識がない場合は、口には何も与えません。直ちに医師もしくは毒物管理センターに連絡し、医師の指示がない場合には、 無理に吐かせません。
3. 取扱方法
作業場所は、局所排気装置を設置し、不活性ガス下で作業を行います。火気厳禁とし、水および湿気と接触すると激しい反応と出火の可能性があるため、いかなる接触可能性も絶つ必要があります。
作業者は、防塵マスク、保護手袋、側板付き保護眼鏡 (必要によりゴーグル型または全面保護眼鏡) 、長袖作業衣の着用が必要です。取扱い後は顔や手など、ばく露した皮膚を洗浄します。
4. 保管
容器は遮光し、換気のよいなるべく涼しい場所で、密閉して保管します。また容器内は、不活性ガスを封入し、ガラス製の容器を使用します。
混触危険物質は水であることから、水との接触を避けて保管が必要です。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0113-1739JGHEJP.pdf