セシウム

セシウムとは

セシウム (英: Cesium) とは、室温またはその付近で軟らかく黄色がかった銀色をした液体です。

セシウムの元素記号はCsで、原子番号は55番、CAS登録番号は7440-46-2のアルカリ金属の1つです。天然にはポルサイトとして、他のアルカリ金属に伴って産出しますが、極少量です。鉱物としてはポルサイトやロジサイトなどがあり、紅雲母、緑柱石、カーナル石などにも含まれています。

空気中で急速に酸化し、また湿った空気中では自然発火します。金属中最も陽性の高い元素で、水と反応して水素を発生し自然発火します。

セシウム137は、人工放射性同位体で核分裂生成物の1つです。核爆発実験によって発生する、「死の灰」中に主成分として含まれています。

セシウムの使用用途

セシウムは、光があたると電子を放出しやすい性質を持っています。アンチモンとの合金は光電管、ストロボ放電管に用いられています。

セシウムの工業用途では、ほかの金属酸化物触媒の機能を著しく向上させる触媒のプロモータが あります。硝酸セシウム は光学ガラスの材料となり、また、融解セシウム塩中にガラスを浸すことで強 度を増加させることも行われます。ヨウ化 セシウムやフッ化セシウムは X線や γ線,素粒子などを吸収して光を放つシンチレーション効果をもっていて、放射線計測や医療診断などに広く用 いられています。

超微細エネルギー準位間の電子遷移にて放出されるマイクロ波の振動周期は、セシウム原子時計として、秒の定義に用いられています。

セシウムの性質

セシウムの融点は28.5℃、沸点は705℃であり、密度は1.873g/mLの非常に延性のある金属です。室温で固体のすべての元素の中で、セシウムは最も柔らかくモース硬度はわずか0.2です。セシウム金属は非常に反応性が高く、自然発火性のため空気中で自然発火し、他のアルカリ金属よりも低温でも水と爆発的に反応します。

セシウムの構造

セシウムにはα、β、γ型の結晶多形があり、常温常圧では他のアルカリ金属と同様に体心立方格子構造を有する立方晶のα-Csで、空間群はIm3m、格子定数a=614pmです。41kbarの高圧下で面心立方格子構造で格子定数a=598pmのβ型へと相転移し、さらに高温高圧下になると菱面体系のγ型になります。

セシウムのその他情報

1. セシウムの製法

セシウムは主に、酸やアルカリによる分解または、直接還元法により、ポルサイト鉱石から抽出されます。鉱石に由来するセシウム化合物から製造されることもあり、塩化セシウムなどのハロゲン化物がカルシウムやバリウムにより700~800℃で還元され、蒸留により金属セシウムが得ることができます (2CsCl+Ca→2Cs+CaCl2)。他にも、シアン化セシウム (CsCN) の電気分解や、アジ化セシウム (CsN3) の熱分解、重クロム酸セシウム (Cs2Cr2O7) とジルコニウムとの反応などによっても、セシウムを得ることができます。

2. 法規情報

セシウムは、消防法において「第3類:自然発火性物質及び禁水性物質, アルカリ金属 (カリウム及びナトリウムを除く) 及びアルカリ土類金属, 危険等級I, 第一種自然発火性物質及び禁水
性物質」に指定されており、取り扱いには注意が必要です。その他の毒物及び劇物取締法、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) などの主要な法規制には該当していません。

3. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、乾燥した換気の良い冷暗所に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 不活性ガス雰囲気下で取り扱い、貯蔵する。
  • リン、ハロゲン類、アルコール類、酸素、水と激しく反応するため、接触を避ける。
  • 使用時は保護手袋、保護衣、保護眼鏡、保護面を着用する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、速やかに水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/product/aldrich/239240

ジクロロ酢酸

ジクロロ酢酸とは

ジクロロ酢酸とは、化学式CHCl2COOHで表される酢酸の類似形態です。

無色の刺激臭のある液体で、酸性は酢酸より強く潮解しやすいです。水に可溶で、アセトン、エーテルおよびエタノールと混和します。

ジクロロ酢酸は、浄水過程において、水道原水中の有機物質や臭素および消毒剤 (塩素) とが反応し生成される消毒副生成物質の1つです。毒物及び劇物取締法では、劇物に該当し、消防法では第4類引火性液体、第三石油類水溶性液体に該当します。

ジクロロ酢酸の使用用途

ジクロロ酢酸の主な用途は、有機合成原料中間体および製薬です。ジクロロ酢酸の塩やエステルなど、他の化学物質を作るための中間体として使用されたり、繊維分析用の試験試薬や消毒剤として使用されています。

ジクロロ酢酸塩およびエステルは、医薬品の有効成分として有用です。また、ジクロロ酢酸ナトリウムは、抗がん特性があるとして研究が進められており、治療効果が期待されています。

ジクロロ酢酸の性質

ジクロロ酢酸は、分子量128.94、CAS番号79-43-6で表される無色~薄い赤褐色の刺激臭のある液体です。融点は5~6℃、沸点又は初留点及び沸騰範囲は194℃、引火点や可燃性に関するデータはありません。密度及び、又は相対密度は1.563です。

通常の状態において安定ですが、光により変質する恐れがあります。混触危険物質は強酸化剤です。危険有害な分解生成物として、一酸化炭素 (CO) 、二酸化炭素 (CO2) 、ハロゲン化物を発生させる可能性があります。

ジクロロ酢酸のその他情報

1. 安全性

GHSにおいて、金属腐食性化学品、急性毒性 (経皮)、皮膚腐食性・刺激性、眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性区分、特定標的臓器毒性(単回・反復暴露) 、水生環境有害性 (急性) に分類されます。

人体に接触すると、重篤な皮膚の薬傷および眼の損傷を引き起こします。また、遺伝子疾患のおそれ、発がんのおそれ、生殖能または胎児への悪影響のおそれがあるため、取り扱いには注意が必要です。

その他、呼吸器系への障害の危険性や、長期にわたるまたは反復暴露により中枢神経系への障害、肝臓、膵臓、腎臓、男性殖器へ影響を及ぼす危険性があります。

2. 応急手当

吸入した場合は、新鮮な空気のある場所に移し、症状が続く 場合は医師に連絡します。コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外します。

皮膚に付着した場合は、直ちに汚染された衣類をすべて脱ぎ、石鹸と大量の水で洗浄し、症状が続く場合は医師への連絡、診断が必要です。

飲み込んだ場合は、口をすすぎ、意識がない場合は口には何も与えず、速やかに医師もしくは毒物管理センターに連絡が必要です。搬送時は、薬品のSDS等の取扱説明書を持参します。

3. 取扱い方法

屋内作業場で使用する場合は、発生源の密閉化、または局所排気装置を設置します。取扱い場所の近くには安全シャワー、手洗い・洗眼設備を設け、その位置を明瞭に表示します。

作業者は、保護マスク、不浸透性保護手袋側板付き保護眼鏡 (必要によりゴーグル型または全面保護眼鏡) 、長袖作業衣の着用が必要です。

内容物および容器は承認された廃棄物処理場にて廃棄を行います。取扱い時は、喫煙、飲食を避け、取扱い後は手、顔をよく洗いうがいを行います。

4. 保管

容器は遮光し、換気のよいなるべく涼しい場所で、密閉、施錠して保管します。容器は耐腐食性、耐腐食性のあるガラス等を用い、混触危険物質と離れた場所で保管します。

5. 水質基準

水道水は、水道法第4条の規定に基づき、水質基準に関する省令で規定する水質基準に適合することが必要です。水質基準項目と基準値 (51項目) の物質にジクロロ酢酸は指定されています。

基準値は0.03mg/L以下とされています。ジクロロ酢酸は、浄水過程において生成される消毒副生成物質であることから、水道水への含有を0%にすることは難しいです。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/cas-79-43-6.html

ジアセチル

ジアセチルとは

ジアセチル (英: Diacetyl) とは、特有の強い臭いを持つ黄緑色の液体です。

化学式はC4H6O2で、分子量は86.09、CAS登録番号は431-03-8で表されます。2つのアセチル基が、カルボニル基の炭素同士で結合した構造を有する有機化合物です。ジアセチルのIUPAC名は2,3-ブタンジオン (英: 2,3-Butanedione)で、ダイアセチルと呼称されることもあります。

ジアセチルはアルコール飲料に自然に存在し、希釈するとバターに似た香りになることから、一部の食品にはバター風味を付与するために香料として添加されています。

ジアセチルの使用用途

ジアセチルは、食料品製造分野で使用されます。主に食品にフレーバーをつけるための香料として使用され、具体的にはマーガリン、バター・チーズ風味のスナック菓子、ワインやビネガーなどに添加されます。

食品以外では、電子タバコに使用される液体の香味料としてもジアセチルは有用です。なお、ビールをはじめ、アルコール飲料においては、醸造の過程で微生物の働きによって自然にジアセチルが生成されます。しかし、この生成量が多すぎると飲料の香りに悪影響を及ぼすため、ジアセチルの生成量をコントロールしながら醸造されています。

ジアセチルの性質

ジアセチルの融点は-2℃、沸点は88℃、密度は0.99g/mLです。ジアセチルの引火点は6℃、自然発火点は365℃で、引火性があり、空気との混合蒸気は爆発性を有します。ジアセチルの水への溶解度は20g/100mLでよく溶け、他の主要な有機溶媒にも易溶です。

また、ジアセチルは発酵の副産物として自然に発生します。一部の発酵細菌では、ピルビン酸とアセチルCoAのチアミンピロリン酸 (TPP) 媒介縮合を介して形成されます。

ジアセチルの構造

ジアセチルをはじめとする、隣り合うジケトン (ビシナルジケトン) 構造を有する化合物の際立った特徴は、2つのカルボニル中心を繋いでいる長い炭素-炭素結合です。この結合距離は1.54Åで、1,3-ブタジエン中の対応する炭素-炭素結合の1.45 Åと比較して長くなっています。この伸びは、分極したカルボニル炭素中心間の反発力に起因しています。

ジアセチルのその他情報

1. ジアセチルの製造法

ジアセチルは、工業的にはアセトインを中間体とする2,3−ブタンジオールの脱水素反応により製造されます。

   (CH3CHOH)2 → (CH3CO)2 + 2H2

あるいは、メチルエチルケトンという化学物質に、亜硝酸ナトリウム塩酸を加え、加水分解することで製造することもできます。

2. 法規情報

ジアセチルは、毒物及び劇物取締法や化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) には指定がありませんが、消防法では危険物第4類の引火性液体、第一石油類・非水溶性に分類されており使用の際には注意が必要です。

労働安全衛生法では、名称などを表示・通知すべき危険物及び有害物 (法第57条第1項、法第57条の2)、危険物・引火性の物 (施行令別表第1第4号)、危険性又は有害性を調査すべき物 (法第57条の3) に該当しています。

3. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密閉し、涼しく乾燥し換気の良い場所に保管する。
  • 熱・火花・火炎など着火源から遠ざける。
  • 引火性が高く、火災及び爆発の危険があるため、加温の際は注意する。
  • 混触すると激しく反応して危険を伴うため、強酸、強塩基、酸化剤との接触を避ける。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 加熱により分解し、刺激性のヒュームが発生するので注意する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
  • 使用後は適切に手袋を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 本物質にばく露した労働者の不可逆性閉塞性肺疾患が多く報告されているため、ばく露した場合には直ちに医師の診断を受ける。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/431-03-8.html

シリコンカーバイド

シリコンカーバイドとは

シリコンカーバイド (英: silicon carbide) とは、ケイ素 (Si) と炭素 (C) で構成される炭化ケイ素 (SiC) のことです。

隕石中に存在する以外に、天然には存在しません。高硬度や耐摩耗性に優れているため、研磨剤や耐火物など幅広く使用されています。純粋なシリコンカーバイドは無色透明ですが、工業用は黒色が一般的です。

特に高純度のシリコンカーバイドは、従来のシリコン半導体を超えるパワー半導体の材料として開発が進められており、注目されています。

シリコンカーバイドの使用用途

シリコンカーバイドの特徴として、高硬度、耐摩耗性、高熱伝導性、耐食性などが挙げられます。メカニカルシール、シャフトなどの摺動部品だけでなく、分級機などの粉砕機部品に加えて、高温試験機、金属溶融用のるつぼのような耐熱部品に利用可能です。

また、近年は電源の変換効率が従来の半導体より高いパワー半導体 (SiCパワー半導体) の材料として注目されています。SiCパワー半導体は、HEV (ハイブリッド車) にも使用されています。

シリコンカーバイドの性質

シリコンカーバイドは水に不溶です。液体にはならず、2,545°Cで昇華し、2,800°C以上で熱分解します。モース硬さは9.5であり、ダイヤモンドや炭化ホウ素に次いで硬いです。屈折率は2.65と大きいため、大きな結晶は鏡のように輝きます。

純粋なシリコンカーバイドは無色透明です。工業製品は緑色や黒色を呈し、製造の環境を清浄にすると色は薄くなります。シリコンカーバイドの着色は、アルミニウムや窒素のような元素が、結晶格子に入り込むためです。結晶の電気抵抗は薄い色ほど高くなり、発熱体の原料では緑色が用いられています。

シリコン原子は炭素原子よりも大きいです。そのためC<SiC<Siの順で原子間距離が広がり、熱伝導率は小さくなり、柔らかくなります。

シリコンカーバイドの構造

シリコンカーバイドのCとSiは、周期表上で同じ14族に属しています。共有結合性ですが、電気陰性度が異なるためイオン性も有します。したがって、安定に1対1の定比化合物として存在します。モル質量は40.097g/molで、密度は3.22g/cm3です。

一方の原子の周囲に他方の原子が四面体型に配置され、層構造の繰り返しパターンによって、200種類以上が存在します。基本的には、六方晶系のα型と立方晶系のβ型に分けられます。

電気炉で2,100°C以上にコークスとけい石を熱すると、α型のシリコンカーバイドの粉末を生成可能です。アルゴン気流中でカーボンブラックとケイ素を1,800°Cに加熱するとβ型が生じます。

シリコンカーバイドのその他情報

1. シリコンカーバイドの歴史

1891年にアメリカのエドワード・グッドリッチ・アチソン  (英: Edward Goodrich Acheson) が、コークスと粘土の混合物を炭素弧光灯で熱して製造しました。これをきっかけにカーボランダム社 (英: Carborundum Abrasives Co.) が設立され、工業的に製造されるようになったため、カーボランダム (英: Carborundum) と呼ばれる場合もあります。

1905年にアリゾナ州の隕石中で、フェルディナン・フレデリック・アンリ・モアッサン (英: Ferdinand Frédéric Henri Moissan) がシリコンカーバイドを発見しました。鉱物学上、モアッサン石 (英: Moissanite) とも呼ばれます。

2. シリコンカーバイドの反応

シリコンカーバイドは化学的に不活性です。水、酸、アルカリに溶けず、王水や熱濃硝酸とも反応せず、N2、H2、COなどとも反応しません。大気中で800°C以上で酸化しますが、表面にSiO2が生じ、保護被膜として酸化を遅くします。Cl2と800°C以上で反応し、CとSiCl4が生成します。

シラノール

シラノールとは

シラノールとは、広義には、ケイ素原子に水酸基(–OH)が結合した化合物の総称です。狭義には、シリルアルコールと言われる、化学式SiH3OHで表される化合物で揮発性のある無色の液体です。

クロロシランやアルコキシシランを加水分解することで得られる、シロキサン(シリコーン)化合物の中間体です。シラノールは脱水縮合しやすい不安定な物質であり、単離が難しいものとされていましたが、近年安定的に単離できる手法の開発が進められております。

シラノールの使用用途

シラノールは、シロキサンをアルコキシシラン等の加水分解する過程で得られる中間体であり、脱水縮合しやすいため不安定な物質です。そのため、シラノールを工業的に合成することは困難であり、シラノール自体が利用されるということはありませんでした。

しかし近年、シラノールの1種であるオルトケイ酸(Si(OH)4)およびそのオリゴマーの安定的な合成が成功したことから、このような物質を原料としたシリコーン化合物の製造が進められることが考えられます。

参考文献
NEDO「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」
https://www.nedo.go.jp/content/100804667.pdf

シアナミド

シアナミドとは

シアナミド (英: Cyanamide) とは、シアンのアミド化物です。

IUPAC名はシアナミド、別名として、シアンアミドやアミドシアノゲン (英: Amidocyanogen) 、シアノゲンアミド (英: Cyanogenamide) 、カルバモニトリル (英: Carbamonitrile) 、カルバミン酸ニトリル (英: Carbamic nitrile) などとも呼ばれます。

シアナミドの使用用途

1. 医薬品

シアナミドは、アルコール依存症患者に対し、断酒や節酒のための酒量抑制剤として使用されます。アルコールを摂取すると、体内でアセトアルデヒド酢酸へと順に分解されます。分解物のうち、アセトアルデヒドは顔面潮紅や悪心、めまい、頻脈、血圧低下など悪酔い症状を引き起こす有害物質です。

シアナミドは、アセトアルデヒドの分解を抑制するため、飲酒により、体内にアセトアルデヒドが分解されずに蓄積していきます。シアナミド服用後に少量でもアルコールを摂取すると、直ちに悪酔いの不快感をもたらします。この不快感により、服用者の飲酒欲求をなくし、断酒や節酒を促すことが可能です。効果は、服薬から5分後に表れ、12〜24時間ほど続きます。

吐き気や頭痛、倦怠感、不眠などが主な副作用です。皮膚・粘膜の障害や血液成分の異常、肝機能の低下など重い副作用が見られる場合は、直ちに医師に相談してください。

2. 肥料

シアナミドのカルシウム塩は、農業分野で農薬や肥料として用いられます。殺虫・殺菌・除草作用を持つことに加え、散布されると徐々に尿素、最終的にアンモニア態窒素や硝酸態窒素へ変換され、農作物の肥料成分になります。

シアナミドの性質

化学式はCH2N2で表され、分子量は42.04です。CAS番号は420-04-2で登録されています。シアナミドは融点45°C、沸点は260°Cで、密度1.282g/ml (20℃) 、常温で無色の結晶性固体です。

斜方晶や針状晶、板状結晶など、様々な結晶形を有します。141°Cに引火点を持ち、空気中の水分を吸収して溶けだす潮解性があります。水やアルコール、エーテルなど極性溶媒によく溶け、ベンゼンシクロヘキサンなどの非極性溶媒にはあまり溶けません。

酸解離定数 (pKa) は10.3 (25 °C) です。酸解離定数とは、酸の強さを定量的に表すための指標の1つです。pKaが小さいほど強い酸であることを示します。

シアナミドの種類

シアナミドとカルボジイミドは互換異性体の関係にあります。カルボジイミドは仮想化合物であり、単離することはできません。塩基性溶液中では、シアナミドとカルボジイミドの反応により二量体のジシアンジアミドを生成します。

シアナミドのその他情報

1. シアナミドの製造法

カルシウムシアナミドに水を作用させ、二酸化炭素を吹き込むとシアナミド水溶液が得られます。この水溶液に対し、硫酸を用いて中和し、その後濃縮することにより、針状結晶のシアナミドが生成します。

また、カルシウムシアナミドと酢酸の反応や塩化シアンとアンモニアの反応、チオ尿素と酸化水銀 (II) の反応などによっても合成可能です。水などの溶媒から、再結晶にて精製できます。

2. 法規情報

シアナミドは、以下の国内法令に指定されています。

  • 毒物及び劇物取締法
    劇物 包装等級3
  • 労働安全衛生法
    名称等を表示すべき危険物及び有害物 (法57条、施行令第18条) 、名称等を通知すべき危険物及び有害物 (法第57条の22、施行令第18条の2別表第9) No. 204
  • 危険物船舶運送及び貯蔵規則
    毒物類・毒物 (危規則第3条危険物告示別表第1)
  • 航空法
    毒物類・毒物 (施行規則第194条危険物告示別表第1)
  • 化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)
    第1種指定化学物質 (法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
  • 改正化学物質排出管理促進法
    第2種指定化学物質 (法第2条第3項、施行令第2条別表第2)
  • 大気汚染防止法
    有害大気汚染物質

3. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い時の対策
強酸化剤は、シアナミドの混触危険物質です。取り扱いおよび保管の際、接触させないよう気を付けてください。直接皮膚に触れると炎症を起こすため、取り扱いには注意が必要です。使用の際は、長袖の保護衣とネオプレンの保護手袋、側面付きの保護メガネを必ず着用し、ドラフトチャンバ内で使用してください。

火災の場合
熱や火にさらすと軽度の発火の危険があり、また燃焼により一酸化炭素や二酸化炭素、窒素酸化物 (NOx) 、シアン化物などの有毒なフュームを生成することがあります。

小火災の場合は、二酸化炭素や粉末消火剤、噴霧水、耐アルコール性泡消火剤を用いて消火してください。大火災の場合は、噴霧水や耐アルコール性泡消火剤を使用し、棒状注水は行わないでください。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0749.html
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0103-1523JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Cyanamide

クロロシクロヘキサン

クロロシクロヘキサンとは

クロロシクロヘキサンとは、シクロヘキサンの水素原子1つが塩素に置き換わった有機塩素化合物の1種です。

化学式はC6H11Clです。塩化シクロヘキシルとも呼ばれ、常温では刺激臭のある液体状態として存在します。

クロロシクロヘキサンの使用用途

クロロシクロヘキサンは、農薬原料用、ゴム原料用、医薬品用などの中間合成物として、様々な用途に使用されます。このうち、ゴム原料向けの合成材料としての用途例を示します。

クロロシクロヘキサンは、N-シクロヘキシルチオフタルイミドという物質の生成に使用されます。ゴムが貯蔵中や成型作業中に硬化してしまい加工が困難になる現象を「スコーチ現象」と呼びますが、N-シクロヘキシルチオフタルイミドは、ゴム加工においてスコーチ現象の防止剤として作用します。

クロロシクロヘキサンの性質

1. 可燃性

シクロヘキサン、クロロシクロヘキサン、リンダンの構造式図1. シクロヘキサン、クロロシクロヘキサン、リンダンの構造式

クロロシクロヘキサンは極めて燃えやすく、引火しやすい性質を持っています。火炎や熱、火花で簡単に発火します。クロロシクロヘキサンの組成には塩素が含まれているため、燃えると刺激臭や毒性のある塩素を含むガスを発生させる恐れがあります。

シクロヘキサンも引火性の強い物質で、シクロヘキサンと構造が似ているクロロシクロヘキサンも燃えやすい性質を持っています。クロロシクロヘキサンはシクロヘキサンより燃焼性が低くなっていますが、これは塩素が結合しているためです。実際にシクロヘキサンの水素6つが塩素と置き換わったリンダンは不燃性になっています。

2. 溶解性

クロロシクロヘキサンはほとんど水に溶けません。定量的な溶解度は水1Lに対して500mlです。エタノールおよびアセトンには非常によく溶けます。

3. 毒性

クロロシクロヘキサンは人間を含め、動物および植物に対して毒性を持っています。その性質を利用して農薬や殺虫剤の原料として使われています。

クロロシクロヘキサンは「有機塩素化合物」の一種です。有機塩素化合物とは分子内に塩素を含む有機化合物の総称です。多くの有機塩素化合物は人工的に合成されたもので、自然界にはほとんど存在しません。

有機塩素化合物のほとんどは強い毒性を持ち、毒性のない有機塩素化合物はないと言われています。オゾン層を破壊するフロンや環境問題で注目されているダイオキシン、トリハロメタンなどは法律で使用や排出が規制されています。

クロロシクロヘキサンの構造

1. クロロシクロヘキサンの立体配座

いす型配座図2. いす型配座

シクロヘキサン環は、いす型配座 (英: chair conformation) というひずみのない三次元構造をもちます。背もたれ、座部、足のせ台があるラウンジチェアのような形状であることからいす型と呼ばれます。いす型のシクロヘキサン環ではすべてのC-C-C結合角が111.5°で、最も安定な四面体角の109.5°に近い結合角になっています。

シクロヘキサン環には、いす型の他に船型配座と呼ばれる立体配座があります。この船形配座は角ひずみはありませんが、隣接炭素原子間のC-H結合の電子軌道が重なるためねじれひずみがあります。そのため、いす型配座に比べて不安定です。

2. クロロシクロヘキサンのアキシアル結合とエクアトリアル結合

アキシアル結合とエクアトリアル結合図3. アキシアル結合とエクアトリアル結合

シクロヘキサン環についた塩素は2種類の位置、アキシアル位とエクアトリアル位を取ることができます。アキシアル (英: axial) 位は環の軸に並行、すなわち環に垂直であり、エクアトリアル (英: equatorial) 位は環の赤道周りで、おおよそ環と同一平面内にあります。アキシアル位の塩素はアクシアル位の水素との干渉によってねじれひずみがあるため、エクアトリアル位の方が安定しています。

クロロシクロヘキサンのその他情報

1. クロロシクロヘキサンの製造

シクロヘキサンの塩素化や、シクロヘキサノールを塩酸と加熱することにより生成されます。

2.クロロシクロヘキサンの安全性情報

消防法では、第4類引火性液体、第二石油類非水溶性液体に該当します。また、労働安全衛生法法では、危険物・引火性の物に該当しているため、取り扱いには注意が必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/542-18-7.html

クロム酸

クロム酸とは

クロム酸とは、H2CrO4で表される化合物です。

酸化クロム (Ⅵ) が、水に溶けてクロム酸塩を生成する物質を総称して指すこともあります。分子量が118.0g/mol、融点が197℃、密度が1.201g/cm3、CAS番号は7738-94-5です。この分子は、三酸化クロムに水が一分子付加したものに等しくなっています。

クロム酸の使用用途

一般に、クロム酸ナトリウム原料、酸化剤、触媒として使用されています。

1. 酸化剤

クロム酸やそのほかのクロム酸塩、三酸化クロムなどの六価クロムを含む化合物は強力な酸化剤であり、有機合成においてよく使用されています。主に、第一級アルコールに作用させてカルボン酸を得たり、第二級アルコールに作用させてケトンを得たりする際に使用される場合が多いです。

試薬や溶媒の条件によってジョーンズ酸化、サレット酸化、コリンズ酸化という名前が付けられています。クロム酸は非常に強い酸化剤であるので、目的物がさらに酸化されて予期せぬ化合物が得られるといった副反応が起きる可能性があり、十分な注意が必要です。

また、クロム酸イオンの水素原子を塩素原子に置き換えたクロロクロム酸イオンとピリジニウムイオンで形成させた塩であるPCCは温和な酸化剤であり、第一級アルコールをアルデヒドに酸化させることができます。これらの酸化反応を行うと、クロム酸は3価のクロムに還元されます。

2. 表面処理剤

写真、メッキ、顔料、皮なめし、染料、染色剤として使用されます。また、金属の化成処理法の1つであるクロム酸処理用としても有用です。処理液に浸漬または陰極電解を行うことによって、耐食性皮膜を付与することができます。このクロム酸処理は、耐食性、塗装の密着性の向上および変色防止の効果があります。

使用時に注意が必要なのは、クロム酸塩および重クロム酸塩 (6価のクロム) は強い酸化性をもち、皮膚・粘膜を強く腐食し、皮膚炎、クロム潰瘍を起こすことです。

クロム酸の性質

クロム酸は、常温常圧では赤色の固体で、250℃がこの物質の分解点です。また、通常の濃度のクロム酸溶液は黄赤色ですが、高濃度になると赤色ないし濃赤色を呈して、黒っぽい色になります。

水溶液中では、2分子のクロム酸と2分子のオキソニウムイオンが結びついて、1分子の二クロム酸イオンと3分子の水分子に変化するという平衡が成り立っています。pHが1以下の強酸性条件あるいは塩基性条件においては、クロム酸が生成する方向に平衡は傾いているということに気を付ける必要があります。

クロム酸のその他情報

1. 六価クロムの危険性

クロム酸を含む六価クロムは、非常に毒性が強いことで有名です。クロムのイオンには三価のものと六価のものが存在し、三価のものが自然界に広く安定して存在しているのに対して、六価のものは一部の鉱石などに限定して存在しています。

六価クロムは人間に皮膚に付着すると皮膚炎などの原因になることがあり、体内に摂取してしまうと嘔吐を引き起こします。さらに、DNAを損傷させる作用を持つことから発がん性を持ち、吸入すれば肺がんの原因に、長期間の摂取は大吊架や胃がんの原因になる可能性を持っています。

そのため、六価クロムを粉末状で取り扱う場合には周囲への飛散を防いだ上に、目や鼻、口に入らないよう厳重に管理し、皮膚や衣服にも付着したままで置かないように管理することが必要です。

2. さまざまなクロム酸塩

酸化数が6であるクロムイオンを六価クロムと呼び、水溶液中ではCrO42-、HCrO4-、Cr2O72-などの形でイオンが存在しています。また、これらのイオンは重合してポリ酸イオンCr3O102-、Cr4O132-を生じます。

これらのイオンは、通常ナトリウムやカリウムの塩 (K2Cr2O7やNa2Cr2O7など) の形で用いられており、通常は黄色や赤色などに呈色していることが特徴です。

クリプトン

クリプトンとは

クリプトン (英: Kripton) とは、原子番号が36番の元素です。

周期表で18族の希ガス元素であり、化学反応を起こしにくく、不活性ガスとも呼ばれます。クリプトンの沸点は酸素より高いです。そのため、空気を冷却して、空気分離ガス (酸素、窒素、アルゴン) を製造する際の副産物として、クリプトンは製造されています。

クリプトンが含まれる液体酸素を精製装置によって成分を分離すると、純度の高いクリプトンが製造可能です。

クリプトンの使用用途

クリプトンは他の物質と反応しにくいため、不活性ガス・不燃性ガスとして幅広く用いられています。代表的な例として、照明やランプの封入ガスが挙げられます。クリプトンは熱伝導率が低く、電球のフィラメントからの放熱による熱損失を抑制可能です。

アルゴンが封入された電球と比べて、ランプ効率が10%程向上すると言われています。さらに、高い断熱特性を持つクリプトンは、建築材料としても活用されています。屋内全体の暖房効率を上げるために、クリプトンが封入された窓ガラスを使用可能です。

また、先端分野では半導体を製造する際のエッチングレーザーの光源として、KrFが広く用いられています。

クリプトンの性質

クリプトンの融点は-157.2°C、沸点は-152.9°Cであり、常温常圧で無色無臭の気体です。空気中に1.14ppmほど存在します。空気を液化して、分留によって得られます。

クリプトンの-157°Cでの比重は2.82です。重い気体であり、吸引した際には声が低くなります。最外殻には価電子がなく、化学的に安定です。

クリプトンの構造

クリプトンには、31種類の同位体が知られています。天然には、安定同位体が5種類と放射性同位体が1種類存在します。

水やヒドロキノンとは、包接化合物を形成可能です。化学式はKr・6H2OとKr・3C6H4(OH)2です。水素化クリプトン (Kr(H2)4) の結晶は、5GPa以上で得られます。

この結晶はランダムに配向された水素分子に、クリプトンの八面体が囲まれた面心立方構造を取っています。

クリプトンのその他情報

1. クリプトンの同位体

81Krは大気中での反応によって生じます。半減期は25万年であり、クリプトンの天然同位体の原料です。水面近くのクリプトンは非常に揮発しやすく、81Krは地下水の5万〜80万年の年代測定に利用されます。

78Krは二重電子捕獲が起こる核種です。ただし、確率は低く、半減期は1.1×1020年以上と見積もられています。不活性の放射性ガスである85Krの半減期は10.76年です。プルトニウムやウランの核分裂反応で生じ、原子炉の中で製造されて、燃料棒の再処理の過程で環境にすべて放出されます。

1940年代の85Krの大気中濃度は、1m3の空気に対して0.001ベクレル以下でした。しかし、現在の濃度は、1m3で1ベクレル以上です。南極より北極の方が30%も濃度が高いと報告されています。これは原子炉の多くが、北半球に位置するためです。85Krはベータ崩壊によって、85Rbになります。

2. クリプトンの化合物

クリプトンは不活性ですが、フッ素と酸化数が+2の不安定な化合物を生成可能です。二フッ化クリプトンは揮発性の固体で、化学式はKrF2と表されます。KrF2の分子構造は直線形で、Kr-F間の距離は188.9pmです。強酸との反応によって、KrF+やKr2F3+のような陽イオンが生じます。

KrF2とB(OTeF5)3の反応によって、クリプトン-酸素結合を含む不安定な化合物であるKr(OTeF5)2を生成可能です。クリプトン-窒素結合は、-50°C以下でKrF2と[HC=NH]+[AsF6]との反応で生じる[HC=N–Kr–F]+にも見られます。HKrCNやHKrC=CH は、40Kまで安定だと報告されています。

クマル酸

クマル酸とは

p-クマル酸の基本情報

図1. p-クマル酸の基本情報

クマル酸 (英: coumaric acid) とは、ケイ皮酸のヒドロキシ誘導体の一種です。

クマル酸には、フェニル基に結合しているヒドロキシ基の位置によって、異性体が存在します。p-クマル酸、m-クマル酸、o-クマル酸の3種類です。この中でp-クマル酸は天然に最も存在し、トマト、ピーナツ、ニンニク、ニンジンなどの食用植物にも含まれます。p-クマル酸は4-ヒドロキシケイ皮酸やβ-(4-ヒドロキシフェニル)アクリル酸とも呼ばれます。

国内でクマル酸は、消防法や毒物及び劇物取締法などの指定には該当しません。

クマル酸の使用用途

クマル酸は、主に化学研究分野で試薬として使用されます。p-クマル酸はタンパク質検出方法であるウェスタンブロッティング (英: Western blotting) で、タンパク質検出のための化学発光基質の成分として利用可能です。

またp-クマル酸は、発ガン性物質であるニトロソアミンの生成を抑制する働きがあります。ニトロソアミンは、食品添加物に含まれる亜硝酸塩とアミン類が反応して生成され、とくにヒトの胃で生成されやすいです。そのため、p-クマル酸は胃ガンのリスクを減少できると考えられており、研究が進められています。

クマル酸の性質

p-クマル酸は結晶性固体です。融点は210〜213°Cで、沸点は231.61°Cです。水に難溶ですが、ジエチルエーテルやエタノールにはよく溶解します。

クマル酸の構造

クマル酸の構造

図2. クマル酸の構造

クマル酸のモル質量は164.16g/molで、化学式はC9H8O3と表されます。化学式がC9H8O2であるケイ皮酸に、ヒドロキシ基が結合した構造を持つ化学物質です。ヒドロキシ基の位置の違いで、o-クマル酸、m-クマル酸、p-クマル酸の3つの異性体が存在します。

p-クマル酸には、トランス-p-クマル酸とシス-p-クマル酸の2種類があります。トランス-p-クマル酸の密度は1.1403g/cm3で、コニフェリルアルコールやシナピルアルコールとともに、リグニンの主要な構成要素の一つです。

p-クマル酸の誘導体であるp-クマル酸グルコシドはアマ種子を含んだパンに存在し、p-クマル酸ジエステルはカルナウバロウに含まれています。

クマル酸のその他情報

1. p-クマル酸の合成

p-クマル酸の合成

図3. p-クマル酸の合成

シトクロムP450 (英: Cytochrome P450) 依存性酵素のトランス-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼの作用で、ケイ皮酸からp-クマル酸が得られます。チロシンアンモニアリアーゼによって、L-チロシンからも生成します。

2. p-クマル酸の反応

p-クマル酸は4-エチルフェノールの前駆体です。4-エチルフェノールは、ワイン中でブレタノマイセス属酵母によって生産されます。4-ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼによって、p-クマル酸から4-ビニルフェノールに変換可能です。ビニルフェノールレダクターゼにより4-ビニルフェノールが還元され、4-エチルフェノールが生成します。

シス-p-クマル酸グルコシルトランスフェラーゼは、シス-p-クマル酸とUDP-グルコースを用いて、p-クマル酸グルコシドとUDPを合成します。シス-p-クマル酸グルコシルトランスフェラーゼは、グリコシルトランスフェラーゼのとくにヘキソシルトランスフェラーゼに分類される酵素です。

p-クマル酸の持つ2-プロペン酸側鎖に水素が付加すると、フロレト酸が得られます。フロレト酸は、干し草を食べる羊の第一胃に存在します。

3. mクマル酸とo-クマル酸の特徴

m-クマル酸やo-クマル酸は、酢に含まれています。3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン酸とNAD+から、2-クマレートレダクターゼによってo-クマル酸が生成します。2-クマレートレダクターゼは、フェニルアラニンの代謝に関与する酵素です。

参考文献
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/C0393#docomentsSectionPDP