クロム酸

クロム酸とは

クロム酸とは、H2CrO4で表される化合物です。

酸化クロム (Ⅵ) が、水に溶けてクロム酸塩を生成する物質を総称して指すこともあります。分子量が118.0g/mol、融点が197℃、密度が1.201g/cm3、CAS番号は7738-94-5です。この分子は、三酸化クロムに水が一分子付加したものに等しくなっています。

クロム酸の使用用途

一般に、クロム酸ナトリウム原料、酸化剤、触媒として使用されています。

1. 酸化剤

クロム酸やそのほかのクロム酸塩、三酸化クロムなどの六価クロムを含む化合物は強力な酸化剤であり、有機合成においてよく使用されています。主に、第一級アルコールに作用させてカルボン酸を得たり、第二級アルコールに作用させてケトンを得たりする際に使用される場合が多いです。

試薬や溶媒の条件によってジョーンズ酸化、サレット酸化、コリンズ酸化という名前が付けられています。クロム酸は非常に強い酸化剤であるので、目的物がさらに酸化されて予期せぬ化合物が得られるといった副反応が起きる可能性があり、十分な注意が必要です。

また、クロム酸イオンの水素原子を塩素原子に置き換えたクロロクロム酸イオンとピリジニウムイオンで形成させた塩であるPCCは温和な酸化剤であり、第一級アルコールをアルデヒドに酸化させることができます。これらの酸化反応を行うと、クロム酸は3価のクロムに還元されます。

2. 表面処理剤

写真、メッキ、顔料、皮なめし、染料、染色剤として使用されます。また、金属の化成処理法の1つであるクロム酸処理用としても有用です。処理液に浸漬または陰極電解を行うことによって、耐食性皮膜を付与することができます。このクロム酸処理は、耐食性、塗装の密着性の向上および変色防止の効果があります。

使用時に注意が必要なのは、クロム酸塩および重クロム酸塩 (6価のクロム) は強い酸化性をもち、皮膚・粘膜を強く腐食し、皮膚炎、クロム潰瘍を起こすことです。

クロム酸の性質

クロム酸は、常温常圧では赤色の固体で、250℃がこの物質の分解点です。また、通常の濃度のクロム酸溶液は黄赤色ですが、高濃度になると赤色ないし濃赤色を呈して、黒っぽい色になります。

水溶液中では、2分子のクロム酸と2分子のオキソニウムイオンが結びついて、1分子の二クロム酸イオンと3分子の水分子に変化するという平衡が成り立っています。pHが1以下の強酸性条件あるいは塩基性条件においては、クロム酸が生成する方向に平衡は傾いているということに気を付ける必要があります。

クロム酸のその他情報

1. 六価クロムの危険性

クロム酸を含む六価クロムは、非常に毒性が強いことで有名です。クロムのイオンには三価のものと六価のものが存在し、三価のものが自然界に広く安定して存在しているのに対して、六価のものは一部の鉱石などに限定して存在しています。

六価クロムは人間に皮膚に付着すると皮膚炎などの原因になることがあり、体内に摂取してしまうと嘔吐を引き起こします。さらに、DNAを損傷させる作用を持つことから発がん性を持ち、吸入すれば肺がんの原因に、長期間の摂取は大吊架や胃がんの原因になる可能性を持っています。

そのため、六価クロムを粉末状で取り扱う場合には周囲への飛散を防いだ上に、目や鼻、口に入らないよう厳重に管理し、皮膚や衣服にも付着したままで置かないように管理することが必要です。

2. さまざまなクロム酸塩

酸化数が6であるクロムイオンを六価クロムと呼び、水溶液中ではCrO42-、HCrO4-、Cr2O72-などの形でイオンが存在しています。また、これらのイオンは重合してポリ酸イオンCr3O102-、Cr4O132-を生じます。

これらのイオンは、通常ナトリウムやカリウムの塩 (K2Cr2O7やNa2Cr2O7など) の形で用いられており、通常は黄色や赤色などに呈色していることが特徴です。

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