シリコンカーバイドとは
シリコンカーバイド (英: silicon carbide) とは、ケイ素 (Si) と炭素 (C) で構成される炭化ケイ素 (SiC) のことです。
隕石中に存在する以外に、天然には存在しません。高硬度や耐摩耗性に優れているため、研磨剤や耐火物など幅広く使用されています。純粋なシリコンカーバイドは無色透明ですが、工業用は黒色が一般的です。
特に高純度のシリコンカーバイドは、従来のシリコン半導体を超えるパワー半導体の材料として開発が進められており、注目されています。
シリコンカーバイドの使用用途
シリコンカーバイドの特徴として、高硬度、耐摩耗性、高熱伝導性、耐食性などが挙げられます。メカニカルシール、シャフトなどの摺動部品だけでなく、分級機などの粉砕機部品に加えて、高温試験機、金属溶融用のるつぼのような耐熱部品に利用可能です。
また、近年は電源の変換効率が従来の半導体より高いパワー半導体 (SiCパワー半導体) の材料として注目されています。SiCパワー半導体は、HEV (ハイブリッド車) にも使用されています。
シリコンカーバイドの性質
シリコンカーバイドは水に不溶です。液体にはならず、2,545°Cで昇華し、2,800°C以上で熱分解します。モース硬さは9.5であり、ダイヤモンドや炭化ホウ素に次いで硬いです。屈折率は2.65と大きいため、大きな結晶は鏡のように輝きます。
純粋なシリコンカーバイドは無色透明です。工業製品は緑色や黒色を呈し、製造の環境を清浄にすると色は薄くなります。シリコンカーバイドの着色は、アルミニウムや窒素のような元素が、結晶格子に入り込むためです。結晶の電気抵抗は薄い色ほど高くなり、発熱体の原料では緑色が用いられています。
シリコン原子は炭素原子よりも大きいです。そのためC<SiC<Siの順で原子間距離が広がり、熱伝導率は小さくなり、柔らかくなります。
シリコンカーバイドの構造
シリコンカーバイドのCとSiは、周期表上で同じ14族に属しています。共有結合性ですが、電気陰性度が異なるためイオン性も有します。したがって、安定に1対1の定比化合物として存在します。モル質量は40.097g/molで、密度は3.22g/cm3です。
一方の原子の周囲に他方の原子が四面体型に配置され、層構造の繰り返しパターンによって、200種類以上が存在します。基本的には、六方晶系のα型と立方晶系のβ型に分けられます。
電気炉で2,100°C以上にコークスとけい石を熱すると、α型のシリコンカーバイドの粉末を生成可能です。アルゴン気流中でカーボンブラックとケイ素を1,800°Cに加熱するとβ型が生じます。
シリコンカーバイドのその他情報
1. シリコンカーバイドの歴史
1891年にアメリカのエドワード・グッドリッチ・アチソン (英: Edward Goodrich Acheson) が、コークスと粘土の混合物を炭素弧光灯で熱して製造しました。これをきっかけにカーボランダム社 (英: Carborundum Abrasives Co.) が設立され、工業的に製造されるようになったため、カーボランダム (英: Carborundum) と呼ばれる場合もあります。
1905年にアリゾナ州の隕石中で、フェルディナン・フレデリック・アンリ・モアッサン (英: Ferdinand Frédéric Henri Moissan) がシリコンカーバイドを発見しました。鉱物学上、モアッサン石 (英: Moissanite) とも呼ばれます。
2. シリコンカーバイドの反応
シリコンカーバイドは化学的に不活性です。水、酸、アルカリに溶けず、王水や熱濃硝酸とも反応せず、N2、H2、COなどとも反応しません。大気中で800°C以上で酸化しますが、表面にSiO2が生じ、保護被膜として酸化を遅くします。Cl2と800°C以上で反応し、CとSiCl4が生成します。