クリプトン

クリプトンとは

クリプトン (英: Kripton) とは、原子番号が36番の元素です。

周期表で18族の希ガス元素であり、化学反応を起こしにくく、不活性ガスとも呼ばれます。クリプトンの沸点は酸素より高いです。そのため、空気を冷却して、空気分離ガス (酸素、窒素、アルゴン) を製造する際の副産物として、クリプトンは製造されています。

クリプトンが含まれる液体酸素を精製装置によって成分を分離すると、純度の高いクリプトンが製造可能です。

クリプトンの使用用途

クリプトンは他の物質と反応しにくいため、不活性ガス・不燃性ガスとして幅広く用いられています。代表的な例として、照明やランプの封入ガスが挙げられます。クリプトンは熱伝導率が低く、電球のフィラメントからの放熱による熱損失を抑制可能です。

アルゴンが封入された電球と比べて、ランプ効率が10%程向上すると言われています。さらに、高い断熱特性を持つクリプトンは、建築材料としても活用されています。屋内全体の暖房効率を上げるために、クリプトンが封入された窓ガラスを使用可能です。

また、先端分野では半導体を製造する際のエッチングレーザーの光源として、KrFが広く用いられています。

クリプトンの性質

クリプトンの融点は-157.2°C、沸点は-152.9°Cであり、常温常圧で無色無臭の気体です。空気中に1.14ppmほど存在します。空気を液化して、分留によって得られます。

クリプトンの-157°Cでの比重は2.82です。重い気体であり、吸引した際には声が低くなります。最外殻には価電子がなく、化学的に安定です。

クリプトンの構造

クリプトンには、31種類の同位体が知られています。天然には、安定同位体が5種類と放射性同位体が1種類存在します。

水やヒドロキノンとは、包接化合物を形成可能です。化学式はKr・6H2OとKr・3C6H4(OH)2です。水素化クリプトン (Kr(H2)4) の結晶は、5GPa以上で得られます。

この結晶はランダムに配向された水素分子に、クリプトンの八面体が囲まれた面心立方構造を取っています。

クリプトンのその他情報

1. クリプトンの同位体

81Krは大気中での反応によって生じます。半減期は25万年であり、クリプトンの天然同位体の原料です。水面近くのクリプトンは非常に揮発しやすく、81Krは地下水の5万〜80万年の年代測定に利用されます。

78Krは二重電子捕獲が起こる核種です。ただし、確率は低く、半減期は1.1×1020年以上と見積もられています。不活性の放射性ガスである85Krの半減期は10.76年です。プルトニウムやウランの核分裂反応で生じ、原子炉の中で製造されて、燃料棒の再処理の過程で環境にすべて放出されます。

1940年代の85Krの大気中濃度は、1m3の空気に対して0.001ベクレル以下でした。しかし、現在の濃度は、1m3で1ベクレル以上です。南極より北極の方が30%も濃度が高いと報告されています。これは原子炉の多くが、北半球に位置するためです。85Krはベータ崩壊によって、85Rbになります。

2. クリプトンの化合物

クリプトンは不活性ですが、フッ素と酸化数が+2の不安定な化合物を生成可能です。二フッ化クリプトンは揮発性の固体で、化学式はKrF2と表されます。KrF2の分子構造は直線形で、Kr-F間の距離は188.9pmです。強酸との反応によって、KrF+やKr2F3+のような陽イオンが生じます。

KrF2とB(OTeF5)3の反応によって、クリプトン-酸素結合を含む不安定な化合物であるKr(OTeF5)2を生成可能です。クリプトン-窒素結合は、-50°C以下でKrF2と[HC=NH]+[AsF6]との反応で生じる[HC=N–Kr–F]+にも見られます。HKrCNやHKrC=CH は、40Kまで安定だと報告されています。

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