グルコサミンとは
図1. グルコサミンの基本情報
グルコサミン (Glucosamine) とは、単糖類に分類される有機化合物です。
グルコースの2位の炭素に付いている水酸基がアミノ基に置換された構造をしていることから、単糖類の中でも特にアミノ糖に分類されます。化学式はC6H13NO5、CAS登録番号は 3416-24-8です。
分子量は179.17、融点150℃、密度は1.563g/mL、酸解離定数pKaは7.5です。一般的に単離生成されるグルコサミン塩酸塩の場合、白色の結晶または結晶性粉末の外観をしています。
塩酸塩は水に溶けやすく、エタノールおよびアセトンに溶けにくい性質です。なお、塩酸塩のCAS登録番号は66-84-2です。
グルコサミンの使用用途
グルコサミンは、関節軟骨の主要成分の一つです。加齢によって生成量が減少することが知られているため、近年ではサプリメントなどに多く使用されています。
自然界ではカニやエビなどのキチン質の主要成分として多量に存在していることが知られている物質です。サプリメントや食品から摂取する場合は、軟骨の主成分ともなるコンドロイチンとともに摂取することで、より膝軟骨の摩耗などを予防できるといわれています。
このため、コンドロイチンとグルコサミンを両方含有する製品も多いです。なお、研究開発用試薬製品は、生理作用の研究用に利用されることがしばしばあります。
グルコサミンの特徴
図2. キチンの構造
グルコサミンは、キチン (多糖高分子の一つ) の加水分解によって得られます。工業生産の場合、エビやカニの殻よりキチンが抽出されます。
グルコサミンはこれらのキチンを塩酸で加水分解した後、結晶化させるために塩酸塩の形で製品化されている物質です。
グルコサミンの種類
グルコサミンはサプリメント・機能性表示食品として市場で広く一般に販売されています。様々なメーカーから販売されており、カプセル・錠剤やドリンクなど、形状も様々です。
グルコサミン単体で商品化されているもののほか、コンドロイチンと混合されているものや、コラーゲンやプロテオグリカンと混合されているものなど、多様な製品があります。また、これらの健康食品の製造用に工業用原料としても製造販売が行われています。
化学・生化学などの学術的分野においては、研究開発用試薬としても販売されています。試薬製品の場合は、通常D-グルコサミン塩酸塩として提供されています。
常温で取り扱いが可能な試薬製品です。容量の種類は、10mg , 25 g , 100g , 500g , 1kgなどがあり、実験室で取り扱いやすくなっています。
グルコサミンのその他情報
1. グルコサミンの生化学
図3. グルコサミンの生合成
D-グルコサミンは生化学的には、全ての窒素含有糖の生化学的前駆体です。代謝経路ではグルコサミン-6-リン酸の形で合成されます。
具体的には、グルコサミン-6-リン酸は、グルコサミン-6-リン酸デアミナーゼによってフルクトース-6-リン酸とグルタミンから合成されます。ヘキソサミン生合成経路の第一段階です。
この生合成経路の最終産物はウリジン二リン酸-N-アセチルグルコサミン (UDP-GlcNAc) であり、グリコサミノグリカンやプロテオグリカン、糖脂質の合成に使われます。ヒアルロン酸やコンドロイチンをはじめ様々な成分をつくる原料となっています。
2. グルコサミンの臨床的効果
関節の軟骨が破壊される変形性関節症において、グルコサミンを含むサプリメントを単体でまたは他剤と併用して利用した際の効果を調査する研究が行われています。変形性膝関節症に対するグルコサミンの主な研究では、改善のエビデンスが見られるものと、有意な改善が見られなかったものとがあり、相反する結果となっています。
グルコサミンが変形性膝関節症の痛みに有効かどうか、他関節の変形性関節症の痛みを軽減するかどうかは議論の余地があり、決定的な結論は未だ得られていません。