グルコサミン

グルコサミンとは

グルコサミンの基本情報

図1. グルコサミンの基本情報

グルコサミン (Glucosamine) とは、単糖類に分類される有機化合物です。

グルコースの2位の炭素に付いている水酸基がアミノ基に置換された構造をしていることから、単糖類の中でも特にアミノ糖に分類されます。化学式はC6H13NO5、CAS登録番号は 3416-24-8です。

分子量は179.17、融点150℃、密度は1.563g/mL、酸解離定数pKaは7.5です。一般的に単離生成されるグルコサミン塩酸塩の場合、白色の結晶または結晶性粉末の外観をしています。

塩酸塩は水に溶けやすく、エタノールおよびアセトンに溶けにくい性質です。なお、塩酸塩のCAS登録番号は66-84-2です。

グルコサミンの使用用途

グルコサミンは、関節軟骨の主要成分の一つです。加齢によって生成量が減少することが知られているため、近年ではサプリメントなどに多く使用されています。

自然界ではカニやエビなどのキチン質の主要成分として多量に存在していることが知られている物質です。サプリメントや食品から摂取する場合は、軟骨の主成分ともなるコンドロイチンとともに摂取することで、より膝軟骨の摩耗などを予防できるといわれています。

このため、コンドロイチンとグルコサミンを両方含有する製品も多いです。なお、研究開発用試薬製品は、生理作用の研究用に利用されることがしばしばあります。

グルコサミンの特徴

キチンの構造

図2. キチンの構造

グルコサミンは、キチン (多糖高分子の一つ) の加水分解によって得られます。工業生産の場合、エビやカニの殻よりキチンが抽出されます。

グルコサミンはこれらのキチンを塩酸で加水分解した後、結晶化させるために塩酸塩の形で製品化されている物質です。

グルコサミンの種類

グルコサミンはサプリメント・機能性表示食品として市場で広く一般に販売されています。様々なメーカーから販売されており、カプセル・錠剤やドリンクなど、形状も様々です。

グルコサミン単体で商品化されているもののほか、コンドロイチンと混合されているものや、コラーゲンやプロテオグリカンと混合されているものなど、多様な製品があります。また、これらの健康食品の製造用に工業用原料としても製造販売が行われています。

化学・生化学などの学術的分野においては、研究開発用試薬としても販売されています。試薬製品の場合は、通常D-グルコサミン塩酸塩として提供されています。

常温で取り扱いが可能な試薬製品です。容量の種類は、10mg , 25 g , 100g , 500g , 1kgなどがあり、実験室で取り扱いやすくなっています。

グルコサミンのその他情報

1. グルコサミンの生化学

グルコサミンの生合成

図3. グルコサミンの生合成

D-グルコサミンは生化学的には、全ての窒素含有糖の生化学的前駆体です。代謝経路ではグルコサミン-6-リン酸の形で合成されます。

具体的には、グルコサミン-6-リン酸は、グルコサミン-6-リン酸デアミナーゼによってフルクトース-6-リン酸とグルタミンから合成されます。ヘキソサミン生合成経路の第一段階です。

この生合成経路の最終産物はウリジン二リン酸-N-アセチルグルコサミン (UDP-GlcNAc) であり、グリコサミノグリカンやプロテオグリカン、糖脂質の合成に使われます。ヒアルロン酸やコンドロイチンをはじめ様々な成分をつくる原料となっています。

2. グルコサミンの臨床的効果

関節の軟骨が破壊される変形性関節症において、グルコサミンを含むサプリメントを単体でまたは他剤と併用して利用した際の効果を調査する研究が行われています。変形性膝関節症に対するグルコサミンの主な研究では、改善のエビデンスが見られるものと、有意な改善が見られなかったものとがあり、相反する結果となっています。

グルコサミンが変形性膝関節症の痛みに有効かどうか、他関節の変形性関節症の痛みを軽減するかどうかは議論の余地があり、決定的な結論は未だ得られていません。

参考文献
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/21.html

グルコマンナン

グルコマンナンとは

グルコマンナンを構成する単糖類

図1. グルコマンナンを構成する単糖類

グルコマンナン (Glucomannan) とは、水溶性中性多糖に分類される有機化合物です。

D-グルコースとD-マンノースが1:1.6の割合でβ-1,4結合している多糖類であり、50~60個の糖に対し1個の割合で分岐を有しています。分岐においては、β-1,6結合を形成するとされます。

グルコマンナンの部分構造の例

図2. グルコマンナンの部分構造の例

分子量は100万を超えるものもあり、非常に大きい物質です。常温では無臭の白色粉末です。食塩、pH、熱に比較的安定で、影響を受けにくい性質を示します。

コンニャクの主成分であることから、別名はコンニャクマンナン (Konjac glucomannan) です。CAS登録番号は37220-17-0です。

水溶性食物繊維の1種であり、吸水による膨張や、アルカリ条件下における加熱によってゲル化する性質が知られています。

グルコマンナンの使用用途

グルコマンナンの主な用途は、食品や飲料におけるゲル化剤、増粘剤、保水剤などです。一般飲食物添加物 (増粘安定剤、製造用剤) として、食品添加物としての使用が認められています。

吸水によって膨張することから、少ない量で満腹感を得られるよう近年ではダイエット食品などに含まれていることも多い物質です。化粧品の成分としては、皮膚コンディショニング剤、皮膚保護剤に用いられることがあります。

グルコマンナンの特徴

グルコマンナンは、吸水して大きく膨潤する性質を持っています。例えば、1%溶液では30,000mPa・s以上の高い粘性を示します。

食品添加物として使用されますが、味や臭いはほとんどありません。

グルコマンナンの種類

グルコマンナンの種類としては、コンニャクマンナンの他、木材のグルコマンナンなどがあるとされていますが、一般に販売されているもののほとんどはコンニャクマンナンです。

グルコマンナン粉として、様々な製品が販売されていますが、基本的にはこんにゃく芋から抽出・精製して製品化されています。精製度などは製品によって異なるため、用途に合わせた選択を行うことが必要です。

また、形状も、粉末、ジェルなど様々なものが販売されており、幅広いニーズに合わせて製品提供がなされています。

グルコマンナンのその他情報

1. グルコマンナンのゲル化

グルコマンナンのゲル化の原理

図3. グルコマンナンのゲル化の原理

グルコマンナンの溶液に凝固剤 (水酸化カルシウム) を添加し加熱すると、熱不可性のゲルを形成します。この反応のメカニズムは次の通りです。一般的なこんにゃくの製法も同じ原理です。

  1. グルコマンナンを水に溶かすと、まず親水性のコロイドを形成してゾルの状態になります。すなわち、高分子間に多くの水分子が水和した状態です。
  2. ここに塩基性の塩溶液を加えて加熱することにより、高分子同士が凝集して不可逆性のゲルを形成します。

2. グルコマンナンと他の多糖類との相互作用

グルコマンナンはカラギナンと水素結合によって相互作用し、架橋領域を形成します。実際にキサンタンガム+カラギナンのゲルにグルコマンナンを併用することで、相乗的にゲル強度が上昇することがわかっています。

また、一般にこんにゃくゼリーとして販売されているものは、グルコマンナンとカラギナンの水素結合による架橋を利用した製品です。前項で述べた通常のこんにゃくの製法 (グルコマンナンのアルカリ条件下による不可逆的ゲル化) と異なり、製造の際は凝固剤を用いずに熱湯に混ぜて溶かし、冷やして固めます。

また、再加熱によって再度溶解する点も、こんにゃくとは異なります。

3. グルコマンナンの健康効果

グルコマンナンは食物繊維の1種でもあることから便通を改善する効果が知られています。人の消化酵素では消化できず、また胃の中で水を吸って何十倍にも膨れると言われています。ただし、過剰に摂取すると下痢の原因となったり、消化管の中で膨張しすぎて害を及ぼすことがあるので摂取量については注意が必要です。

最近では、LDLコレステロールや血糖値の低下を助ける作用があることも報告されており、生活習慣病の原因となるこれらの因子の改善においてもグルコマンナンに効果があることが示唆されています。

グリチルリチン酸

グリチルリチン酸とは

グリチルリチン酸とはグリチルレチン酸に2分子のグルクロン酸が結合した構造をもつトリテルペン配糖体です。

グリチルリチンとも呼ばれ、英名はglycyrrhizic acidです。マメ科の植物である甘草 (カンゾウ) に含まれていことが知られており、多くの漢方に用いられています。

グリチルリチン酸の使用用途

有しています。また、解毒作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、鎮咳作用などの生理活性も報告されています。これらの特徴から、食品添加物や医薬品として広く用いられています。

1. 医薬品

グリチルリチン酸は甘草 (カンゾウ) の成分として、多くの漢方処方に含まれています。甘草の乾燥物に対してグリチルリチン酸を 2.0%以上を含んだものが医薬品として用いられ、生薬としては、末やエキス、粗エキス、あぶったシャカンゾウなどが日本薬局方に収載されています。

また、甘草が配合されグリチルリチン酸が含有された漢方処方としては、以下の通りです。これらの品質試験には、それぞれグリチルリチン酸を必要とします。

  • 乙字湯
  • 葛根湯
  • 加川芎辛夷
  • 加味逍遙散
  • 加味帰脾湯
  • 柴胡桂枝湯
  • 柴朴湯
  • 柴苓湯
  • 芍薬甘草湯
  • 十全大補湯
  • 小柴胡湯
  • 小青竜湯
  • 大黄甘草湯
  • 釣藤散
  • 桃核承気湯
  • 麦門冬湯
  • 半夏瀉心湯
  • 白虎加人参湯
  • 防已黄耆湯
  • 防風通聖散
  • 補中益気湯
  • 麻黄湯
  • 六君子湯

また、その他にもうがい薬やのどの炎症用のトローチ、外用鎮痛薬、皮膚を柔らかくする薬、鼻炎用の薬、点鼻薬、目薬、胃腸薬などに配合されています。

2. 医薬部外品

医薬部外品原料規格には、以下の物質が収載されており、医薬部外品に配合可能です。

  • グリチルリチン酸
  • グリチルリチン酸三ナトリウム
  • グリチルリチン酸ジカリウム
  • グリチルリチン酸モノアンモニウム
  • α-グリチルリチン酸モノアンモニウム
  • カンゾウ抽出末

これらは、肌荒れなどへの効果があるとされ、薬用石けんや、シャンプー、日焼け止めに使用されています。

3. 食品添加物

食品添加物公定書には、グリチルリチン酸を含む物質として、カンゾウ抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、酵素分解カンゾウが収載されています。これらは、いずれも甘味料として、使われています。

グリチルリチン酸が含まれる甘草抽出物は、その独特の甘みから天然甘味料として用いられています。その甘みは砂糖の50~200倍程度とされており、特に塩みを和らげる効果があります。食品添加物としての利用には使用基準が設けられており、醤油、みそにしか使用が許可されていません。

4. 化粧品

グリチルリチン酸は、いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストに載っています。グリチルリチン酸を配合した化粧品は、いわゆる薬用化粧品という取り扱いを受けます。

グリチルリチン酸の性質

1. 構造

グリチルリチン酸の構造

図1. グリチルリチン酸の構造

2. 分子式 C42H62O16

3. 分子量 822.94

4.INCI名 Glycyrrhizic Acid

5. 融点  220℃(分解)

6.CAS   1405-86-3

グリチルリチン酸のその他情報

1. グリチルリチン酸の作用

グリチルリチン酸の作用はさまざまで、主に以下のようなものがあげられます。

  • 抗炎症作用
  • 抗アレルギー作用
  • 免疫調節作用
  • 肝細胞の障害抑制作用
  • 肝細胞増殖促進作用
  • ウイルス増殖抑制作用
  • 皮膚炎修復作用

2. グリチルリチン酸の副作用

グリチルリチン酸の最も有名な副作用は、偽性アルドステロン症です。昭和53年2月13日に厚生労働省から薬発第一五八号として「グリチルリチン酸等を含有する医薬品の取扱いについて」が出されています。

偽性アルドステロン症は、頻度は非常に稀な疾患です。しかし、手足のだるさ、しびれ、つっぱり感、こわばりなどのほか、力が抜ける感じ、こむら返り、筋肉痛などがあらわれることがあります。甘草は多くの漢方製剤に配合されているので、薬剤の併用には注意が必要です。

3. グリチルリチン酸の配合上限

医薬部外品や化粧品に配合される場合、医薬部外品の添加物リストにグリチルリチン酸及びその塩類並びにグリチルレチン酸及びその誘導体としての合計として、以下の配合上限が設けられています。

  • 薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 0.8%
  • 育毛剤 0.3%
  • その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.3%
  • 薬用口唇類 0.2%
  • 薬用歯みがき類 0.2%
  • 浴用剤 0.2%

また染毛剤やパーマネントウエーブ剤としては、グリチルリチン酸、グリ チルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸ジ カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、 β-グリチルレチン酸、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸ステアリル、ステアリン酸グリチルレチニルをグリチルリチン酸及びグリチルレチン酸に換算して、グリチルリチン酸及びグリチルレチン酸の合計が0.8%と定められています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/KAG_DET.aspx?joho_no=36185

クレゾール

クレゾールとは

クレゾール(Cresol)は、分子式C7H8O、分子量108.14で、ベンゼン核の水素原子をメチル基に置換された化合物であり、フェノールの異性体です。オルト、メタ、パラの3つの異性体があり、メチルフェノールとも呼ばれています。外観は無色又は黄色~黄褐色の澄明な液で、やや粘稠性があります。フェノールのような特有のクレゾール臭を有します。

水に溶けにくく、エタノール(95)またはジエチルエーテルなどの有機溶媒、そして水酸化ナトリウム溶液に溶けます。空気や光に触れると次第に暗褐色に変化しますので、遮光・密封環境で保存します。

コールタールや木タールから得られますが、現在は石油分解物の蒸留による方法や化学的合成によってつくられています。

クレゾールの使用用途

クレゾールは、殺菌消毒剤、溶剤、物質の製造過程における中間体など、広く使用されています。また、香料、酸化防止剤、染料、殺虫剤、農薬の原料、合成樹脂などにも使われています。他にも、潤滑油、モーターの燃料、ゴムポリマーの生産、爆薬の製造などにも利用されています。

医療分野でのクレゾールの使い方

クレゾールは水に対する溶解度が低いことが問題でしたが、1884年Hager により石けんと混和することによって溶かすことが報告され、1890 年 Schottelius が殺菌力を証明したことから、広く石けん液の形で消毒薬として利用されるようになりました。

手指・皮膚の消毒、手術する部位の皮膚の消毒、医療機器の消毒、手術室や病室の家具、医療器具、医療物品などの消毒には0.5〜1%で使用します。また排泄物の消毒には1.5%、膣の洗浄には0.1%で使用します。

希釈する際に水を用いると次第に混濁して沈殿することがあります。このような場合は上澄み液を使用することが推奨されています。

また、消毒とはいえ、炎症の強い部位や粘膜など刺激に弱い部位に使用する場合は、通常の濃度よりも低い濃度で使用することが望ましいとされています。損傷した皮膚(ざ瘡など)に使うと、体内に吸収され、中毒症状を起こすおそれがありますので、使用する際には傷の内部に入り込まないよう配慮が必要です。

クレゾールの殺菌効果について

殺菌力はフェノールよりやや強く、毒性はやや弱いです。
上記の使用濃度では、抗酸菌を含む通常の細菌に対しては有効ですが、芽胞や大部分のウイルスに対する殺菌効果はほとんど期待できません。

市販されているクレゾール石鹸は、植物油を鹸化してクレゾールに溶かしたもので消毒に利用されています。クレゾールせっけんは、現在医療機関ではほとんど使用されていません。しかし、水害後の感染症予防、鶏インフルエンザなどの家畜伝染病の予防などに使用されています。

有害大気汚染物質に指定されています。過敏症として紅斑等の過敏症状(頻度不明)があらわれることがあります。

クレゾールの保管について

気密容器かつ遮光して室温で保存します。長期保存により、容器の材質によっては若干の変形を起こすことや、色が濃くなることがありますが、これはクレゾールの物性で、品質の劣化ではありません。またクレゾール臭の移行を避けるよう保管には注意が必要です。

クレアチニン

クレアチニンとは

クレアチニンは、化学式C4H7N3Oで表せられる分子量113.1179の物質です。

筋肉のエネルギー源であるクレアチンリン酸が代謝された後に生じる代謝産物です。クレアチニンの大元の原料であるクレアチンは、肝臓、腎臓、膵臓で合成された後、筋肉に輸送されてクレアチンリン酸に変換されます。

筋肉がエネルギーを使用すると、クレアチンリン酸は分解され、筋収縮に必要なエネルギーを提供し、クレアチニンが生成します。筋肉で作られたクレアチニンは、血液中に入り、腎臓の糸球体で濾過され、尿として排出されます。

ほとんどのクレアチニンが尿中に排出される場合、腎臓の機能は正常です。そのため、クレアチニン濃度は、腎機能や筋肉量増減の指標となっています。

クレアチニンの使用用途

クレアチニンは、筋肉量増減や腎機能のバイオマーカーとして、生化学検査に用いられています。筋肉の代謝により作られるため、クレアチニン濃度はヒトの筋肉量に比例します。

血液中のクレアチニン濃度が正常値より低い場合、筋肉量の減少が示唆され、筋ジストロフィーなどの病気が疑われます。また、クレアチニンは、腎臓の糸球体で濾過され、尿中に排出されます。

そのため、腎臓の機能が低下して、クレアチニンが正常に濾過されないと、血液中のクレアチニン濃度が上昇します。血液中のクレアチニン濃度が正常値より高い場合、腎機能障害や糸球体腎炎などの病気が疑われます。

クレアチニンの性質

クレアチニンは、分子量113.12g/molの分子で、非タンパク質の窒素化合物です。水への溶解度が高く、体内で血漿タンパク質に結合していません。

前述した通り、肝臓で生成されたクレアチンを原料に筋肉で生成された後、腎臓でろ過され、尿中に排泄されます。なお、半減期は約2時間です。

クレアチニンは、腎臓の機能を評価するために用いられる生体指標の1つです。クレアチニン濃度は、腎臓が正常に機能しているかどうかを評価するために測定されます。また、体内の筋肉量と関連しており、高齢者や筋肉消耗症候群などの疾患の評価にも利用されます。

クレアチニンの構造

クレアチニンは化学式C4H7N3Oで表され、分子量は113.12g/molです。その化学構造は、DNAやRNAに存在する4つのヌクレオチド塩基の1つであるグアニンに類似しています。

化学構造的にグアニンと類似しており、5員環の環式化合物です。クレアチンから非酵素的脱水反応によって生成され、クレアチンのアミノ基が隣接する炭素原子が脱水反応によって二重結合を形成しています。

クレアチニンのその他情報

クレアチニンの製造方法

クレアチンは、人体の代謝物であるため、工業的な生産方法は限定されています。しかしながら、医療や科学研究などの分野で製造される場合があります。

クレアチニンの工業的な製造方法の一般的な手順は、以下の通りです。

1. クレアチンの調製
クレアチニンは、クレアチンの脱水反応によって生成されます。原料となるクレアチンは、グリシン、アルギニン、およびメチオニンを加熱処理することにより生成されます。

2. クレアチンの脱水反応
クレアチニンを製造するには、クレアチンの脱水反応を行う必要があります。この反応には通常、塩酸、硫酸、およびリン酸などの酸を使用します。これらの酸をクレアチンに加え、加熱することにより、クレアチン中のアミノ基が脱水され、クレアチニンが生成されます。

3. クレアチニンの精製
クレアチニンを合成によって得た後、純度を高めるために精製が必要です。精製には、クロマトグラフィーや再結晶などの方法が一般的に用いられます。

クマリン

クマリンとは

クマリンの概要

図1. クマリンの概要

クマリンは植物に分布する芳香成分であり、ラクトン(環状エステル)構造を有した芳香族化合物です(図1参照)。常温では固体の状態で安定していますが、アルコール、エーテル、クロロホルム、揮発油などに可溶であるため、溶解された状態で使用されることも多いです。本化合物は、桜の葉やシナモン、ミカン科、マメ科の植物に含まれています。特徴的なのはその香りにあり、桜餅の甘い香りの成分でもあります。

また、抗酸化作用や抗菌作用、抗血液凝固作用があり、むくみや老化の予防にも効果的であるとされています。

クマリンの分布と存在形態

セリ科、ミカン科、マメ科の植物に多く含まれており、植物生体内では配糖体として存在します。ここでいう配糖体とはクマリンと糖類が結合した存在形態を意味しています。興味深い事に、このような配糖体としてのクマリンは特有の芳香を有しません。上述の『桜餅に特有の甘い香り』は、クマリン配糖体ではなく、その加水分解により生じたクマリンに由来します。

クマリンの物理化学的諸性質

1. 名称

和名:クマリン
英名:coumarin

2. 分子式

C9H6O2

3. 分子量

146.14

4. 構造式

図1の通り。

5. 融点

72℃

6. 溶媒溶解性

ジエチルエーテル、クロロホルム、ピリジンに易溶、エタノールに可溶。

7. 蛍光性

紫外線照射により黄緑色の蛍光を発する。

クマリンの合成

サリチルアルデヒドと無水酢酸酢酸ナトリウムからパーキン反応によって合成されます。

クマリンの特徴と使用用途

1. 独特の香り

クマリンは、いわゆる『シナモンの香り』の構成成分の一つであり、桜餅の甘い香りはこれに由来します。また、この香りにはリラックス効果も報告されています。このような特徴から、芳香剤や香水の成分として使用されています。

2. 健康への効果

クマリンには血流を改善する効果が報告されており、むくみ予防に効果的であると考えられています。また、抗酸化作用を有する事から生体内の活性酸素を除去する効果があります。このような特徴があるため、クマリンには老化防止機能も期待されます。一方で危険性としては、大量に摂取すると肝臓障害を引き起こす可能性があります。そのため、食品分野では香料の成分および香り付けの食品添加物としてのみ、その使用が認可されています。

3. 医薬品としてのクマリン関連化合物

ワルファリンの構造

図2. ワルファリンの構造

クマリン骨格を有する化合物には血液凝固阻害活性を有する物質も存在します。その代表例がワルファリンです。本化合物は、クマリンの代謝産物であるジクマロールをリード化合物として合成された生理活性物質であり、現在、血液凝阻害剤や殺鼠剤として利用されています。

4. 蛍光性と軽油識別剤としての利用

日本においては、軽油取引税の脱税防止を目的として、灯油とA重油中にクマリンが1ppm濃度になるように添加されています。市販の灯油がブラックライト照射により黄緑色の蛍光を発するのは、この『添加物としてのクマリン』に起因するものであり、灯油そのものの性質ではありません。このようなクマリンの使用例は、その脂溶性の高さと蛍光性という2つの化学的性質を上手く利用したものであるといえます。

ギ酸

ギ酸とは

ギ酸の基本情報

図1. ギ酸の基本情報

ギ酸とは、1つのカルボキシ基を有する有機酸です。

最初にアリの蒸留により得られたため、蟻酸 (ギ酸) という呼び名がつけられました。別名として、メタン酸とも呼ばれています。

高濃度のギ酸は、皮膚を腐食するなどの有害性があるため、取り扱いには注意が必要です。日本では90%以上のギ酸水溶液を毒物及び劇物取締法によって「劇物」に、消防法によって「危険物第4類」に、安衛法によって「文書交付対象物質」に指定されています。

ギ酸の使用用途

ギ酸は、染色やゴム、皮革、医療、香料、化学などの幅広い分野で利用されています。具体的な用途は以下のとおりです。

  • 家畜用飼料の防腐剤・抗菌剤
  • 金属処理
  • ゴムラテックス凝固剤
  • 半導体の洗浄剤
  • 繊維の漂白剤・染色助剤
  • 皮革加工用
  • 石灰スケール除去剤等の洗浄製品

ギ酸は、ギ酸化合物・ギ酸重合体・溶剤・合成樹脂触媒等の原料など、化学工業でも使用可能です。例えば、ギ酸をエステル化することで、果実の芳香を付与する香料や、医薬・農薬等にも利用されています。

ギ酸水溶液は、燃焼や爆発の可能性がなく、安全性に優れ、環境循環性が高いことから、燃料として利用する試みもあります。

ギ酸の性質

ギ酸は刺激臭のある無色の液体です。融点は8.40°C、沸点は100.75°Cです。水だけでなく、多くの極性溶媒や炭化水素にも溶けます。ギ酸の水溶液は1価の脂肪族カルボン酸の中で、最も酸が強い水溶液です。

そのため、酢酸よりも強い酸性を示します。ギ酸はカルボン酸として、独特の性質を有しています。例えば、アルケンと反応し、ギ酸エステルを得ることが可能です。ギ酸は加熱により、水と一酸化炭素に分解します。酸化によって炭酸を生成します。

ギ酸の構造

ギ酸の示性式はHCOOH、モル質量は46.025です。ギ酸は分子内にカルボキシ基とアルデヒド基の両方を有するため、酸性と還元性を持ち合わせています。還元性に由来する銀鏡反応は起こりますが、フェーリング反応はほとんど示しません。

炭化水素に溶けている場合や気体の場合には、水素結合によってカルボン酸の二量体を形成しています。

ギ酸のその他情報

1. ギ酸の合成方法

水酸化ナトリウムと一酸化炭素を用いたギ酸の合成法
工業的にギ酸は、高圧下で一酸化炭素と水酸化ナトリウムの反応によりギ酸ナトリウムを合成し、硫酸で酸性にすると得られます。

濃縮するためには、まず水溶液を強く冷却して、ギ酸の結晶を析出させます。精留塔で分離し、ギ酸プロピルを加えて蒸留すると、蒸留液を二層に分けることが可能です。ギ酸プロピルの層を蒸留することで、純粋なギ酸が得られます。

メタノールと一酸化炭素を用いたギ酸の合成法

ギ酸の合成法

図2. ギ酸の合成法

ギ酸は一酸化炭素とメタノールからも生成可能です。まず、強塩基存在下で一酸化炭素とメタノールを反応させると、ギ酸メチルが生成します。そして、ギ酸メチルの加水分解によって、ギ酸を得ることが可能です。メチルエステルの生成反応は、工業的に高圧液相下で行います。具体的にはナトリウムメトキシドを用いて、80℃、40気圧で反応させます。

また、効率的なメチルエステルの加水分解のためには、大過剰の水が必要です。したがって、他の化合物を経由して、加水分解することも可能です。例えば、ギ酸メチルとアンモニアを反応させてホルムアミドを生成し、硫酸を使って加水分解する方法もあります。

2. ギ酸の関連化合物

ギ酸の関連化合物

図3. ギ酸の関連化合物

ギ酸は電離によって、ギ酸イオン (HCOO) を生じます。ギ酸イオンを含んだ塩のことを、ギ酸塩と呼びます。

ギ酸とアルコールの脱水縮合によって、ギ酸エステル (HCOOR) を得ることが可能です。ギ酸エステルには、果実の芳香の成分になっているものが存在します。具体例として、ギ酸エチル ( HCOOC2H5) は桃、ギ酸アミル (HCOOC5H11) はリンゴ、ギ酸イソアミル (HCOOCH2C2CH(CH3)2) は梨の香りの成分の一つです。

キシリトール

キシリトールとは

キシリトールとは、果実や野菜に含まれている天然甘味料の1種です。

英名をXylitol、別名をキシリットといいます。CAS番号は87-99-0、分子量152.15です。砂糖と同等の甘味と持ちながら、砂糖よりカロリーが低く冷涼な食味を持っています。

キシリトールの使用用途

キシリトールは後味がさっぱりとした甘味料として、医薬品分野では、錠剤や顆粒、シロップ、静注、内用液剤に使用されています。また、ガムなどの菓子類や、歯磨き、マウスウォッシュなどにも使用されています。

1. 虫歯予防

虫歯の原因とされるミュータンス菌は、口の中の糖分を分解して酸を作り出して虫歯の元を作ります。キシリトールはミュータンス菌に分解されず、酸がつくられないため虫歯の元を作りません。

また、カルシウムと結合して歯の修復 (再石灰化) も促します。そのため、キシリトールは虫歯ができないようサポート的役割をしていると言われます。ただし、歯磨きが必要ないわけではありません。

2. 糖尿病予防

キシリトールは、ほかの糖アルコールと同様に口に入れると甘いため唾液が出ます。吸収速度が遅く血糖値が急に上がらないことに加え、代謝にインスリンを必要としないため、糖尿病の人も比較的摂取しやすい糖類と言えます。

キシリトールの原理

キシリトールは糖アルコールに分類される物質ですが、虫歯を予防すると、北欧諸国で多用されてきました。世界保健機関(WHO)や 国連食糧農業機関(FAO)も認めています。

日本でも、チューイングガムやタブレットなどに使用されていますが、あくまでも食品であるため、特定保健用食品を除いて効果効能について表記することは不可能です。

キシリトールの構造

キシリトールは糖アルコールの一種です。

糖アルコールは、糖質が持つカルボニル基に水素を添加した糖質のことで、植物や動物の生体内に存在したり微生物によって作られたりして自然界に広く分布しています。構造的には還元等の持つカルボニル基 (-CHO) が還元され、ヒドロキシル基 (-CH2OH) になったものです。キシリトールのもとになる糖は、キシロースになります。

糖アルコールは、キシリトールやソルビトール、マンニトールと共通して以下のような特徴があります。

  1.  熱、酸、アルカリに強く安定
  2. 微生物が栄養としにくいので腐食しにくい
  3. 消化吸収されにくいので、太りにくい

キシリトールのその他情報

1. 法的分類

キシリトールは、日本薬局方、医薬部外品原料規格、食品添加物公定書に収載されています。食品添加物としては、食品衛生法第12条に基づき、厚生労働大臣が定めた指定添加物となっています。

また特定保健用食品を除くキシリトール入りガムについては、薬事監視における「健康食品」の監視において、薬事法第68条に抵触するため、身体の組織機能の増強および促進を目的とした表現は、医薬品的な効能効果に該当するため広告できません。

2. 製造方法

工業的にキシリトールは、白樺やトウモロコシの茎などを加水分解して得たキシロースを原料にしています。これを、ニッケルを触媒として高温・高圧で水素化します。

近年では、金属の使用抑止や収率の向上を目指して、微生物を使った方法も開発されています。

3. 人体への影響

キシリトールなどの糖アルコール類は、難消化性糖質と呼ばれることがあります。消化が難しいため一度に多量に摂取すると腹痛や下痢を引き起こす場合があります。これは乳糖不耐症の人が、牛乳を飲んでお腹が緩くなる現象と同じ原理で一過性のものです。小腸で消化吸収できなかった糖アルコール類が大腸にまで移行すると、大腸内の浸透圧が上昇するためと考えられます。

参考文献
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/04/s0423-6b5.html

キサンタンガム

キサンタンガムとは

キサンタンガム(xanthan gum)は多糖類の一つであり、その中でもでんぷんや砂糖溶液中で天然発酵によって作られる「バイオガム」に分類される物質です。グルコースの主鎖に、マンノース、グルクロン酸からなる側鎖が付いた繰り返し単位からなる温水、冷水に可溶な物質です。

このキサンタンガムは、添加量によって様々な粘度を作り出せることから増粘剤の中では最も扱いやすいものの1つとして知られています。

また、耐熱性・耐酸性・耐塩性・冷凍解凍耐性があり、さまざまな条件に対応できる性質を持ってるのも特徴です。しかし、天然物から作られるため、ロットによって粘度にブレが出てしまうことがデメリットとして挙げられています
キサンタンガム構成要素

キサンタンガムの使用用途

キサンタンガムは、増粘剤の1種ですが、単純な増粘目的とゲル化目的の2種類で使用されることがあります。天然発酵から作られる物質のため、合成物質よりも安全性が高く食品、化粧品などにもよく使われています。

増粘目的の場合、キサンタンガム単体で添加することによって、とろみを付けに利用されています。

ゲル化目的においては、ローストビーンガムなどと併用することで、ゲルを形成します。相乗的に増粘させることも可能なので増粘剤同士の組み合わせも重要になります。

キサンタンガム溶液の性質

キサンタンガム溶液は擬塑性流動という性質をもつ非ニュートン流体です。擬塑性流動とは、力を加えると粘度が低くなり、力を加えないで置いておいた状態では粘度が高くなる性質の事を言います。この性質はマヨネーズやケチャップなどチューブ容器に入った食品の多くがこの性質を持ちます。

カルノシン

カルノシンとは

カルノシンは、イミダゾールペプチドの一種で、2つのアミノ酸(β-アラニンとL-ヒスチジン)が結合した成分です。人間や動物の脳や筋肉中に多く存在します。特に動物の骨格筋に多く存在しています。これは、渡り鳥の長期間飛行や馬の瞬発力、マグロ、カツオなどが早く泳げるために使用される物質で、カルノシンの量が多いほど筋力が増加します。

また、カルノシンは、活性酸素の活動を抑制する抗酸化作用があり、疲労回復に期待できます。さらに、活性酸素の抑制は、疲れにくい体をつくり、アンチエイジング効果も期待できます。

カルノシンの抗酸化作用や運動能力向上作用の他にも、タンパク質の糖化を防ぐ抗糖化作用、脳の記憶機能改善効果など様々な効果が明らかになっています。

カルノシンの使用用途

カルノシンは、抗酸化作用、緩衝作用、抗疲労作用など多くの効果が期待できます。しかし、体内のカルノシンは加齢に伴って減少していきます。ですから、カルノシンを摂取することで、運動力の維持、活性酸素を抑えての疲労回復やアンチエイジング効果が期待できます。カルノシンは、鶏肉、牛肉、豚肉から多く摂取できます。また、サプリメントでも摂取できます。

カルノシンは、肉製品の褐色化を抑制します。また、銅イオンによるアスコルビン酸の酸化を阻害します。そのため、カルノシンとアスコルビン酸を肉製品に添加すると、品質を保ち、色調の安定に効果的です。