グリチルリチン酸とは
グリチルリチン酸とはグリチルレチン酸に2分子のグルクロン酸が結合した構造をもつトリテルペン配糖体です。
グリチルリチンとも呼ばれ、英名はglycyrrhizic acidです。マメ科の植物である甘草 (カンゾウ) に含まれていことが知られており、多くの漢方に用いられています。
グリチルリチン酸の使用用途
有しています。また、解毒作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、鎮咳作用などの生理活性も報告されています。これらの特徴から、食品添加物や医薬品として広く用いられています。
1. 医薬品
グリチルリチン酸は甘草 (カンゾウ) の成分として、多くの漢方処方に含まれています。甘草の乾燥物に対してグリチルリチン酸を 2.0%以上を含んだものが医薬品として用いられ、生薬としては、末やエキス、粗エキス、あぶったシャカンゾウなどが日本薬局方に収載されています。
また、甘草が配合されグリチルリチン酸が含有された漢方処方としては、以下の通りです。これらの品質試験には、それぞれグリチルリチン酸を必要とします。
- 乙字湯
- 葛根湯
- 加川芎辛夷
- 加味逍遙散
- 加味帰脾湯
- 柴胡桂枝湯
- 柴朴湯
- 柴苓湯
- 芍薬甘草湯
- 十全大補湯
- 小柴胡湯
- 小青竜湯
- 大黄甘草湯
- 釣藤散
- 桃核承気湯
- 麦門冬湯
- 半夏瀉心湯
- 白虎加人参湯
- 防已黄耆湯
- 防風通聖散
- 補中益気湯
- 麻黄湯
- 六君子湯
また、その他にもうがい薬やのどの炎症用のトローチ、外用鎮痛薬、皮膚を柔らかくする薬、鼻炎用の薬、点鼻薬、目薬、胃腸薬などに配合されています。
2. 医薬部外品
医薬部外品原料規格には、以下の物質が収載されており、医薬部外品に配合可能です。
- グリチルリチン酸
- グリチルリチン酸三ナトリウム
- グリチルリチン酸ジカリウム
- グリチルリチン酸モノアンモニウム
- α-グリチルリチン酸モノアンモニウム
- カンゾウ抽出末
これらは、肌荒れなどへの効果があるとされ、薬用石けんや、シャンプー、日焼け止めに使用されています。
3. 食品添加物
食品添加物公定書には、グリチルリチン酸を含む物質として、カンゾウ抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、酵素分解カンゾウが収載されています。これらは、いずれも甘味料として、使われています。
グリチルリチン酸が含まれる甘草抽出物は、その独特の甘みから天然甘味料として用いられています。その甘みは砂糖の50~200倍程度とされており、特に塩みを和らげる効果があります。食品添加物としての利用には使用基準が設けられており、醤油、みそにしか使用が許可されていません。
4. 化粧品
グリチルリチン酸は、いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストに載っています。グリチルリチン酸を配合した化粧品は、いわゆる薬用化粧品という取り扱いを受けます。
グリチルリチン酸の性質
1. 構造
図1. グリチルリチン酸の構造
2. 分子式 C42H62O16
3. 分子量 822.94
4.INCI名 Glycyrrhizic Acid
5. 融点 220℃(分解)
6.CAS 1405-86-3
グリチルリチン酸のその他情報
1. グリチルリチン酸の作用
グリチルリチン酸の作用はさまざまで、主に以下のようなものがあげられます。
- 抗炎症作用
- 抗アレルギー作用
- 免疫調節作用
- 肝細胞の障害抑制作用
- 肝細胞増殖促進作用
- ウイルス増殖抑制作用
- 皮膚炎修復作用
2. グリチルリチン酸の副作用
グリチルリチン酸の最も有名な副作用は、偽性アルドステロン症です。昭和53年2月13日に厚生労働省から薬発第一五八号として「グリチルリチン酸等を含有する医薬品の取扱いについて」が出されています。
偽性アルドステロン症は、頻度は非常に稀な疾患です。しかし、手足のだるさ、しびれ、つっぱり感、こわばりなどのほか、力が抜ける感じ、こむら返り、筋肉痛などがあらわれることがあります。甘草は多くの漢方製剤に配合されているので、薬剤の併用には注意が必要です。
3. グリチルリチン酸の配合上限
医薬部外品や化粧品に配合される場合、医薬部外品の添加物リストにグリチルリチン酸及びその塩類並びにグリチルレチン酸及びその誘導体としての合計として、以下の配合上限が設けられています。
- 薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 0.8%
- 育毛剤 0.3%
- その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.3%
- 薬用口唇類 0.2%
- 薬用歯みがき類 0.2%
- 浴用剤 0.2%
また染毛剤やパーマネントウエーブ剤としては、グリチルリチン酸、グリ チルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸ジ カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、 β-グリチルレチン酸、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸ステアリル、ステアリン酸グリチルレチニルをグリチルリチン酸及びグリチルレチン酸に換算して、グリチルリチン酸及びグリチルレチン酸の合計が0.8%と定められています。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/KAG_DET.aspx?joho_no=36185