グルコマンナンとは
図1. グルコマンナンを構成する単糖類
グルコマンナン (Glucomannan) とは、水溶性中性多糖に分類される有機化合物です。
D-グルコースとD-マンノースが1:1.6の割合でβ-1,4結合している多糖類であり、50~60個の糖に対し1個の割合で分岐を有しています。分岐においては、β-1,6結合を形成するとされます。
図2. グルコマンナンの部分構造の例
分子量は100万を超えるものもあり、非常に大きい物質です。常温では無臭の白色粉末です。食塩、pH、熱に比較的安定で、影響を受けにくい性質を示します。
コンニャクの主成分であることから、別名はコンニャクマンナン (Konjac glucomannan) です。CAS登録番号は37220-17-0です。
水溶性食物繊維の1種であり、吸水による膨張や、アルカリ条件下における加熱によってゲル化する性質が知られています。
グルコマンナンの使用用途
グルコマンナンの主な用途は、食品や飲料におけるゲル化剤、増粘剤、保水剤などです。一般飲食物添加物 (増粘安定剤、製造用剤) として、食品添加物としての使用が認められています。
吸水によって膨張することから、少ない量で満腹感を得られるよう近年ではダイエット食品などに含まれていることも多い物質です。化粧品の成分としては、皮膚コンディショニング剤、皮膚保護剤に用いられることがあります。
グルコマンナンの特徴
グルコマンナンは、吸水して大きく膨潤する性質を持っています。例えば、1%溶液では30,000mPa・s以上の高い粘性を示します。
食品添加物として使用されますが、味や臭いはほとんどありません。
グルコマンナンの種類
グルコマンナンの種類としては、コンニャクマンナンの他、木材のグルコマンナンなどがあるとされていますが、一般に販売されているもののほとんどはコンニャクマンナンです。
グルコマンナン粉として、様々な製品が販売されていますが、基本的にはこんにゃく芋から抽出・精製して製品化されています。精製度などは製品によって異なるため、用途に合わせた選択を行うことが必要です。
また、形状も、粉末、ジェルなど様々なものが販売されており、幅広いニーズに合わせて製品提供がなされています。
グルコマンナンのその他情報
1. グルコマンナンのゲル化
図3. グルコマンナンのゲル化の原理
グルコマンナンの溶液に凝固剤 (水酸化カルシウム) を添加し加熱すると、熱不可性のゲルを形成します。この反応のメカニズムは次の通りです。一般的なこんにゃくの製法も同じ原理です。
- グルコマンナンを水に溶かすと、まず親水性のコロイドを形成してゾルの状態になります。すなわち、高分子間に多くの水分子が水和した状態です。
- ここに塩基性の塩溶液を加えて加熱することにより、高分子同士が凝集して不可逆性のゲルを形成します。
2. グルコマンナンと他の多糖類との相互作用
グルコマンナンはカラギナンと水素結合によって相互作用し、架橋領域を形成します。実際にキサンタンガム+カラギナンのゲルにグルコマンナンを併用することで、相乗的にゲル強度が上昇することがわかっています。
また、一般にこんにゃくゼリーとして販売されているものは、グルコマンナンとカラギナンの水素結合による架橋を利用した製品です。前項で述べた通常のこんにゃくの製法 (グルコマンナンのアルカリ条件下による不可逆的ゲル化) と異なり、製造の際は凝固剤を用いずに熱湯に混ぜて溶かし、冷やして固めます。
また、再加熱によって再度溶解する点も、こんにゃくとは異なります。
3. グルコマンナンの健康効果
グルコマンナンは食物繊維の1種でもあることから便通を改善する効果が知られています。人の消化酵素では消化できず、また胃の中で水を吸って何十倍にも膨れると言われています。ただし、過剰に摂取すると下痢の原因となったり、消化管の中で膨張しすぎて害を及ぼすことがあるので摂取量については注意が必要です。
最近では、LDLコレステロールや血糖値の低下を助ける作用があることも報告されており、生活習慣病の原因となるこれらの因子の改善においてもグルコマンナンに効果があることが示唆されています。