クレゾールとは
クレゾール(Cresol)は、分子式C7H8O、分子量108.14で、ベンゼン核の水素原子をメチル基に置換された化合物であり、フェノールの異性体です。オルト、メタ、パラの3つの異性体があり、メチルフェノールとも呼ばれています。外観は無色又は黄色~黄褐色の澄明な液で、やや粘稠性があります。フェノールのような特有のクレゾール臭を有します。
水に溶けにくく、エタノール(95)またはジエチルエーテルなどの有機溶媒、そして水酸化ナトリウム溶液に溶けます。空気や光に触れると次第に暗褐色に変化しますので、遮光・密封環境で保存します。
コールタールや木タールから得られますが、現在は石油分解物の蒸留による方法や化学的合成によってつくられています。
クレゾールの使用用途
クレゾールは、殺菌消毒剤、溶剤、物質の製造過程における中間体など、広く使用されています。また、香料、酸化防止剤、染料、殺虫剤、農薬の原料、合成樹脂などにも使われています。他にも、潤滑油、モーターの燃料、ゴムポリマーの生産、爆薬の製造などにも利用されています。
医療分野でのクレゾールの使い方
クレゾールは水に対する溶解度が低いことが問題でしたが、1884年Hager により石けんと混和することによって溶かすことが報告され、1890 年 Schottelius が殺菌力を証明したことから、広く石けん液の形で消毒薬として利用されるようになりました。
手指・皮膚の消毒、手術する部位の皮膚の消毒、医療機器の消毒、手術室や病室の家具、医療器具、医療物品などの消毒には0.5〜1%で使用します。また排泄物の消毒には1.5%、膣の洗浄には0.1%で使用します。
希釈する際に水を用いると次第に混濁して沈殿することがあります。このような場合は上澄み液を使用することが推奨されています。
また、消毒とはいえ、炎症の強い部位や粘膜など刺激に弱い部位に使用する場合は、通常の濃度よりも低い濃度で使用することが望ましいとされています。損傷した皮膚(ざ瘡など)に使うと、体内に吸収され、中毒症状を起こすおそれがありますので、使用する際には傷の内部に入り込まないよう配慮が必要です。
クレゾールの殺菌効果について
殺菌力はフェノールよりやや強く、毒性はやや弱いです。
上記の使用濃度では、抗酸菌を含む通常の細菌に対しては有効ですが、芽胞や大部分のウイルスに対する殺菌効果はほとんど期待できません。
市販されているクレゾール石鹸は、植物油を鹸化してクレゾールに溶かしたもので消毒に利用されています。クレゾールせっけんは、現在医療機関ではほとんど使用されていません。しかし、水害後の感染症予防、鶏インフルエンザなどの家畜伝染病の予防などに使用されています。
有害大気汚染物質に指定されています。過敏症として紅斑等の過敏症状(頻度不明)があらわれることがあります。
クレゾールの保管について
気密容器かつ遮光して室温で保存します。長期保存により、容器の材質によっては若干の変形を起こすことや、色が濃くなることがありますが、これはクレゾールの物性で、品質の劣化ではありません。またクレゾール臭の移行を避けるよう保管には注意が必要です。