配管用鋼管

配管用鋼管とは

配管用鋼管

配管用鋼管 (英: Steel Pipes for Piping) とは、さまざまな鋼管 (金属製パイプ) の中でも主に流体輸送のための鋼管です。

配管とは、流体を使用する機器間を連絡するための流路として、管 (パイプ) で各機器を連結することです。この配管に使用される鋼管を「配管用鋼管」と呼びます。

配管用鋼管は、火力・原子力発電所や石油化学工場などさまざまな工場で敷設され、さまざまな流体を輸送・分配しています。また、身近な生活環境でも、ガス・水や蒸気を供給するために、鋼管は重要な役割を担っています。

配管用鋼管の使用用途

配管用鋼管_図1

図1. 配管用鋼管の使用例

下記は、配管用鋼管の代表的な使用例です。

1. 水配管

空調用、排水用水の水配管として使用される配管用鋼管は、一般的にJIS G3442 水配管用亜鉛めっき鋼管 (SGPW) などを使用します。溶融亜鉛めっきを施し、防錆 (保護皮膜作用) と防食 (犠牲的防食作用) に優れています。

  • 保護皮膜作用
    亜鉛めっき表面の亜鉛酸化皮膜が、空気・水が浸透し難く安定していて、錆が発生し難くする作用
  • 犠牲的防食作用
    亜鉛めっきにが傷つき、鉄が露出しても傷の周囲の亜鉛が鉄より先に溶け出し、電気化学的に保護し鉄を腐食させない作用

2. 高温・高圧流体用配管

高温・高圧の蒸気、高圧のガスなどの配管は、高温・高圧に対応した鋼管を使用します。例えば、JIS G3454 圧力配管用鋼管 (STPG)、JIS G3455 高圧配管用炭素鋼管 (STS)、JIS G3456 高温配管用炭素鋼管 (STPT)、JIS G3458 配管用合金鋼鋼管などを使用します。

耐腐食性が必要な場合は、JIS G3459 配管用ステンレス鋼鋼管も使用されます。 

3. 消火設備、工業用水用配管

消火水や工業用水用鋼管は、流体の温度も圧力も高くない場合、JIS G3452 配管用炭素鋼鋼管 (SGP) などを使用します。設備の機能上で防錆が必要なため、SGP-W (白管) という亜鉛めっきを施した鋼管を使用します。

なお、工業用水とは、製造業、電気供給業、ガス供給業および熱供給業などで使用する水 (水力発電用、飲用を除く) のことです。流体の圧力が高い場合は、JIS G3454 などを使用します。

配管用鋼管の原理

1.  寸法

配管用鋼管_図2

図2. 配管用鋼管の寸法

呼び径と呼び厚さ (スケジュール番号 Sch) は、流体の温度・圧力および流量によって選定します。スケジュール番号は、使用流体の圧力P と 配管の許容応力S によって肉厚を体系化したもので、以下記式で使用するスケジュール番号を求められます。

   スケジュール番号 (Sch) = (P/S)  x 10

P: 設計圧力 (kg/cm2)
S: 設計温度におけるパイプ材料の許容応力 (kg/mm2)

鋼管の実寸法は、管の外径 (OD) は呼び径、管の肉厚 (t) は呼び厚さからです。

2.  製造方法

配管用鋼管_図3

図3. 配管用鋼管の製造方法

配管用鋼管は、管の構造により「継目あり」と「継目無し」があり、それぞれに上図のような製造方法があります。

配管用鋼管の種類

配管用鋼管_図4

図4. 配管用鋼管の種類 (1)

配管用鋼管_図5

図5. 配管用鋼管の種類 (2)

配管用鋼管の種類は、主に用途や材質により種類が分類されています。

1. 流体の種類による分類

配管用鋼管は、流体の種類 (特に水用) に特化した水用配管や流体の温度・圧力に応じた高温・高圧用配管があります。

2. 材質による分類

配管用鋼管は、主に下記3つの材質があります。

炭素鋼
炭素鋼は、主成分の鉄に炭素を添加した鋼材です。コストが安いため、水やガス、空気、油、蒸気など多くの汎用的用途に使用します。 

合金鋼
合金鋼は、炭素鋼にクロムニッケルモリブデンマンガン、バナジウムなどの元素を添加した鋼材です。この鋼材は引張強度が高く、高温・高圧の流体配管に使用します。

ステンレス鋼
ステンレス鋼は、主にクロム・ニッケル系のオーステナイト系ステンレス鋼が使用されています。耐食性に優れ、温度変化による強度低下が起こり難く、溶接性も優れているため、薬品や腐食性ガスなどの流体配管に使用します。

3. 用途による分類

ボイラ・熱交換器用、加熱炉など、用途に特化した配管用鋼管があります。

配管用鋼管のその他情報

規格

配管用鋼管が規定されたJIS規格は以下の通りで、JIS規格以外に多く使用される代表的な規格は、ISO、ASTM、DIN規格などがあります。

  • ISO
    国際標準化機構 International Organization for Standardization
  • ASTM
    米国試験材料協会 American Society for Testing and Materials
  • DIN
    ドイツ工業規格 Deutsche Industrie-Norm

参考文献
https://haikanko.net/types-and-usage-of-iron-pipe-commonly-used

板ばね

板ばねとは

板ばね

板ばねとは、薄板の形状をしたばね材のことです。

板材を弾性範囲で押すまたは引く作用で使用し、材質は主に、鉄、鋼、ステンレス、などが用いられます。材質だけでなく、板厚や形状を利用し、曲げ加工や寸法を用途に応じて変えることで、さまざまな曲げ強さを作り出すことができます。

板ばねの種類は、一枚の板だけで構成される薄板ばねだけでなく、何枚も板を重ねた重ね板ばねもあります。また、円形をした皿ばねも板ばねの一種であり、ぜんまいなどの渦巻きばねも板ばねに分類されます。

板ばねの使用用途

板ばねの使用範囲は広く、産業機器、自動車、航空機、宇宙衛星、医療機器、建築金物、玩具等、広範囲に使用されているため、我々の暮らしに重要な役割を果たします。

板ばねは、弾性力を利用した緩衝用としての用途、ぜんまいに代表されるように復元力を利用した復帰用としての用途、弾性力を利用して物を押さえつける締結用の3つが主な使用用途になります。これらに加え、金属の導電性を利用した電気的な接点として用いられることもあります。

板ばねの原理

板ばねは、金属などのを薄板形状を弾性範囲内の荷重をかけて使用しているものです。製造にはレーザ切断機やタレットパンチャによる切断、プレスブレーキによる曲げ加工などで形成することができるため、コイルばねと異なり形状や大きさの制限が少なく、用途や使用箇所に合わせたものを作成できます。

板ばねに荷重が加わった際の応力やたわみ量は計算で求めることができます。板ばねの適切な箇所での使用や形状をするために、許容応力や変形量は設計時に計算する必要があります。しかし、板ばねは形状が複雑になるほど、形状や固定方法、負荷のかかる方向などで特性が変化しやすくなり机上の計算結果の誤差が大きくなります。

複雑な形状をした板ばねは計算によるシミュレーションだけでなく試作品での品質評価を求められますが、板ばねは重要な部品でありながら製造コストをかけられない部品でもあるため、似たような形状の板ばねが使用できる箇所では部品を流用することが望ましく、設計データの蓄積が重要となります。

参考文献
https://www.kodama-tec.com/case/landing/003885.html

汎用旋盤

汎用旋盤とは

汎用旋盤

旋盤は、金属加工用の工作機械の一種です。チャックと呼ばれる回転土台に加工物を固定し、バイトと呼ばれる切削工具を当てて加工物を削り取り、目的の形状を削り出します。

旋盤にはさまざまな種類がありますが、一般的には、加工作業を人の手で行う汎用旋盤と、数値制御プログラムで自動加工するNC旋盤とに分類されます。

汎用旋盤は、普通旋盤とも呼ばれ、主軸台、ベッド、心押台、送り装置、往復台などで構成される最も基本的な旋盤です。

汎用旋盤の使用用途

旋盤は、円柱状や棒材の材料を用いて、円筒形・円錐形を作る加工、中ぐり、ねじ切りなどの加工に使われます。

工場などの製造現場では、NC(Numerical Control)という数値制御装置が搭載されたNC旋盤が主流です。プログラム通りに設定した座標の加工を行うため、大量生産に適しているからです。

しかし、NC旋盤は作業中の変更や追加工に対応することができないため、試作品や特注品など個別に調整しながら加工を行う必要がある場合は、汎用旋盤が使われます。

また、汎用旋盤は加工用のプログラムを作成する必要がないため、小ロット生産にも適しています。 

汎用旋盤の特徴

汎用旋盤を使った切削加工の手順は次の通りです。

まず、加工物の大きさ・材質・形状・加工の内容などによって、適切な切削工具(バイト)を選定し、主軸の回転数などの加工条件を決定します。

次に、加工物をチャックに固定します。往復台に設置された刃物台に、バイトを刃先の高さがセンター高さに合うように調整して固定します。

加工物の端面を削って平らにした後(面削り)、心押台にセンタドリルをセットして加工物に近づけ、加工物の中心にドリルをセットして(心立て)加工の基準を定めた後、図面に従って旋盤加工を行います。

汎用旋盤では、NC旋盤のように加工プログラムを作成する必要がないため、すぐに作業に取りかかることができます。汎用旋盤では加工作業中に変更や追加工することができるため、ミスをすぐに修正することができ、また、人の手で加工するため、バイトの摩耗や不具合に素早く気づき対応することができるという長所があります。

その一方で、汎用旋盤では、人の手で加工するため高い技能が求められ、作業者の技能レベルによって作業スピードや加工精度に差が出ます。また、加工品やバイトのセット、旋盤加工まですべて手作業で行うため作業効率が悪く、大量生産に向いていません。

参考文献
https://sakusakuec.com/shop/pg/1lathe/
https://www.i-o-m.jp/manage/processing/520/
https://surfeng.co.jp/service/lathe-solution/column-lathe

普通旋盤

普通旋盤とは

普通旋盤

旋盤は、金属加工用の工作機械の一種です。チャックと呼ばれる回転土台に加工物を固定し、バイトと呼ばれる切削工具を当てて加工物を削り取り、目的の形状を削り出します。

旋盤にはさまざまな種類がありますが、その中で最も基本的な旋盤が普通旋盤です。一般的に旋盤というと、普通旋盤のことを意味します。

普通旋盤は、主軸台、ベッド、心押台、送り装置、往復台などで構成されており、加工物にバイトを当てて削る作業は人の手で行います。バイトの種類を変えることで、一台でさまざまな加工ができます。

普通旋盤の使用用途

旋盤は、加工物を回転させて削るため、円柱状や棒材の材料を用いた加工に使われます。旋盤加工では、加工物を回転軸に対して対称的な形状にするため、旋盤は円筒形、円錐形を作る加工、ねじ切りなどの加工に使われます。

工場などの現場では、数値制御によって自動的に加工を行ってくれるNC旋盤が最も普及しています。普通旋盤は人の手で作業するため、NC旋盤に比べると作業効率が悪く大量生産には向いていませんが、NC旋盤では対応できないような複雑で難しい加工や、試作品、オーダーメイド品など小ロット加工に適しています。

また、普通旋盤を使うことによって旋盤の原理がよく理解できるため、工業系の高校や専門学校などで教育・実習用に使われています。

普通旋盤の特徴

普通旋盤は主軸台、ベッド、心押台、送り装置、往復台などで構成されます。

主軸台には、加工物を回転させる主軸やモーター、主軸速度の変換機、始動レバーなどが備わっています。主軸には加工物を固定するチャックがついています。チャックで加工物をつかむ方式には、機械式、磁気式、真空式などがありますが、一般的なものは機械式です。

心押台は、主軸台の反対側に設置された可動式の台で、加工物の長さに応じた位置に固定することができます。心押台の軸に支持用センタをセットして加工物を支持することや、ドリルをセットして穴開け加工に使うことができます。

往復台は主軸台と心押台の中間に位置し、サドル、エプロン、バイトを取付ける刃物台で構成されます。往復台の上部には送り装置があり、刃物台を縦送り・横送りします。

ベッドは旋盤の本体で、主軸台、心押台、往復台その他の装置を支持します。切削加工の際には大きな切削抵抗が発生するため、ベッドにはその抵抗を受ける高い剛性が必要です。また、加工の品質を上げるために、モーターによる振動を抑える必要もあります。

普通旋盤を使ってできる加工には、加工物の外側を円筒形に切削する外丸削り、加工物を円錐形にするテーパー削り、材料を切り離す突っ切り加工、円筒の内側を加工する中ぐり加工、ねじ切り加工などがあります。

参考文献
https://sakusakuec.com/shop/pg/1lathe/
https://www.i-o-m.jp/manage/processing/520/
https://surfeng.co.jp/service/lathe-solution/column-lathe

門型マシニングセンター

門型マシニングセンターとは門型マシニングセンター

門型マシニングセンターは「マシニングセンター」の1種であり、主軸、テーブル、コラム、NC装置、オートツールチェンジャー(ATC)などからなる加工機です。

他のマシニングセンターと比較すると、主軸が門型のスライドに搭載されていて、テーブルの前後方向に主軸が移動することで、長物の加工が可能なマシニングセンターです。

門型マシニングセンターは、大型設備なので国内で製造しているメーカーは限られています。 一方で、半導体設備の大型化や、電気自動車の金型製作などで需要が増加しています。

門型マシニングセンターの使用用途

門型マシニングセンターは、設備サイズが大きく、導入コストが高いため限られた生産工場で使用されています。

そのため大物・長物の加工する用途で多用されています。 国内で見られる門型マシニングセンターは、長さ12m以上、幅4m以上、高さ1m以上の製品を加工できます。

具体的には、発電設備用の回転体や、航空機部品、大型船舶用部品、大型の真空チャンバ、半導体製造装置など大型の部品加工によく用いられています。

門型マシニングセンターの原理

マシニングセンターは複数のツールを自動交換する装置(ATC)を持った、1台で平面加工や穴あけ加工など複数の機械加工をこなせる加工機です。 マシニングセンターには「立型マシニングセンター」「横型マシニングセンター」「門型マシニングセンター」があり、主軸の構造によって分類されています。 その中で門型マシニングセンターは主軸がコラム(門)の前方に配置されている構造になっています。 コラムとテーブルの動作でいくつかの種類に分類が分かれています。

  1. クロスレール固定型 テーブルが前後方向、主軸が上下左右方向に動く
  2. クロスレール移動式 クロスレール固定型の動きに加えて、主軸を支えるレールが上下方向に動く
  3. ガントリー式 クロスレール固定式の動きに加えて、主軸を支える門が前後方向に動く 門型マシニングセンターは、その構造から長物のワークの加工ができるメリットがあります。 一方で設備のサイズが大きく、導入に大きなコストが必要になります。

参考文献 https://www.kousakukikai.tech/machiningcenter/#i-9 https://metoree.com/categories/3481/

薬品庫

薬品庫とは

薬品庫

薬品庫とは、大学の実験室、企業の研究室や工場など、研究や製造時に使用する試薬を常時保管するための密閉式のキャビネットまたは倉庫のことです。

試薬に関係する法律などにより、特定の機能や運用上のルールが必要とされる場合があります。例えば、毒物および劇物取締法、労働安全衛生法、消防法などです。

大学や企業はこの法律をもとに、薬品庫による試薬の保管・運用ルールを個別に策定しています。適切な保管・運用を実現するため、薬品庫を設置、薬品の保管場所を指定して管理しています。

薬品庫の使用用途

薬品庫の使用用途は、薬品の保管と管理です。管理方法は関連法令をもとに、実用性や管理方法を勘案して定めます。法令上高頻度に要求され、実務上も盗難を避けるために必須な機能は施錠です。

関係者以外が取り出して悪用したり、環境中に放出されてしまうようでは問題となります。毒物または劇物であれば、法令上も施錠を行い、鍵を管理することが必須です。

薬品庫に収める試薬の保管方法や関係法令は、購入した試薬容器に記載されているラベルと購入時に添付されるSDS (Safety Data Sheet) と呼ばれる書類で判断します。

薬品庫の原理

薬品の管理に共通して求められるものは、施錠ができること、堅牢なものであるであること、腐食しにくいことです。試薬瓶の盗難や落下による破損があってはならず、試薬には腐食性のものが多いことから来ています。

そのため、薬品庫の1つの形態は鍵付きのステンレス製のキャビネットです。ステンレスは腐食に強いためです。また、施錠できるコンクリート造の倉庫に堅牢な棚を設けて薬品庫とされることもあります。

薬品庫の種類

薬品庫と言っても、その種類は多数存在します。収納する試薬と管理方法を勘案して選択することが必要です。

1. 前面がガラス張りのキャビネット

前面がガラス張りになっているステンレス製キャビネットの薬品庫が最も一般的です。ガラス張りになっているため、薬品庫のドアを開けなくても試薬の種類が分かり、かつ試薬の消失などないか運用管理の面でも把握がしやすい構造となっています。

ただし、大きな地震が発生した場合などは、転倒や他のものが倒れかかってくることにより、ガラスを突き破って試薬が飛び出してくる可能性があります。そのため強酸・強アルカリや毒物・危険物などの試薬を保管することはあまりありません。

2. 引き出し型の試薬ラック

他のタイプの薬品庫として、ステンレス製の引き出し型ラックに試薬を収納するものもあります。ステンレス製の引き出しを引いて試薬を出し入れします。

ガラス張りではないため、大抵の衝撃などでは試薬が外に飛び出すことはなく、人体に被害を及ぼすことはありません。溶媒瓶を収納したときを想定し、溶媒蒸気を逃がす換気扇を備えたもの、その排気の浄化のために活性炭フィルターなどを備えたものもあります。

デメリットとしては、外から中の状態が見えないため試薬を紛失している場合すぐに気づかない可能性があるので、定期的に試薬の在庫を確認するなどルール決めが必要なことです。

3. 薬品庫

特定の部屋を薬品庫として運用することもできます。出入口が限定され、施錠できることが重要です。実験棟を新築するときに初めから設けることもあります。部屋の中に固定された試薬棚を設けます。

一定の換気が必要で、危険物を収納する場合には照明や換気扇を防爆とする配慮も欠かせません。指定数量以上の危険物を保管する場合は危険物貯蔵所に、政令・条例で定める指定数量倍数 (多くの地域で5分の1) 以上指定数量未満の危険物を保管する場合は少量危険物貯蔵取扱所とする必要があります。

試薬が漏出したときに浸透しないよう、床材に配慮することも重要です。例えば、塩ビシート張りとする、耐溶剤性の塗装仕上げとする方法が挙げられます。

薬品庫のその他情報

1. 試薬の収め方

薬品庫への試薬の収め方に決まったルールはありませんが、大抵は性状的に似通った試薬同士、例えば酸、アルカリ、有機溶剤などをグルーピングして同じ棚に保管していきます。

混蝕危険がある場合には、離して管理します。試薬によっては蒸気が問題となることもあるので、基本的には異なる棚に置くことが望ましいです。

2. 災害対策

地震対策として転倒防止が重要です。転倒によって試薬瓶の破損、試薬の漏洩、漏洩した試薬の混触発火につながるためです。試薬瓶が転倒・落下しないように、仕切りラックを活用するなどして適切な固定をします。

火災対策としては、危険物に該当する試薬を適切に管理するほか、消防活動阻害物質に指定されている試薬を把握しておくことも重要です。

参考文献
http://www.epc.osaka-u.ac.jp/yellow/Chemicals&Laws.htm
https://www.monotaro.com/s/c-9864/

漏斗

漏斗とは

漏斗

漏斗とは容器内の液体を別の容器に移動させるために用いる器具のことです。

主に化学実験において使用されます。最も一般的でなじみ深い例としては、ガラス漏斗が挙げられます。その形状は、上部が広い開口部になっており、下部にいくほど細くなっていく逆三角形の形です。下部先端には細い管が付いています。

一般的な漏斗の形状

図1. 一般的な漏斗の形状

漏斗の使用用途

漏斗の使用用途は、大きく2種類に分類されます。1つ目は液体を移動するための使用です。ある容器から別の容器に液体を直接注ぐと、うまく移せずこぼす可能性があります。水などなら大丈夫ですが、危険な液体の場合は問題が発生します。

そこで、容器の開口部に漏斗を刺し、漏斗の開口部に液体を流すことで、こぼさず安全に液体を移すことが可能です。2つ目は、懸濁液中の液体と固体を分離する用途です。使用方法としては、漏斗に濾紙を敷き、そこに固体が分散した液体を流し込むことで、液体は濾紙を通過して漏斗の細い管を通り下に落ちます。一方で、固体は濾紙上に残り、液体から分離することができます。

漏斗の原理

漏斗の原理は、種類によって異なります。代表的な漏斗の原理は以下の通りです。

1. ガラス漏斗による固体と液体の分離

ガラス漏斗による固液分離方法は、まずガラス製の逆三角形の漏斗に濾紙を置きます。漏斗の開口部から固体が分散した懸濁液を注ぐことで、不溶物は濾紙上に残渣として得られ、液体は濾紙を通過して濾液として分離されます。

ガラス漏斗による固液分離は、固体と液体を分離するための最も単純な漏斗の使用例であり、小学校の理科実験で多くの方が使用した経験があるはずです。

2. 分液漏斗による2液の分離

分液漏斗による2液の分離は、まず分液漏斗のナス型容器部分へ混ざり合わない2種の混合液を入れて静置します。すると、上層に比重の小さい溶液 (例えば油) が、下層に比重の大きい溶液 (例えば水) が2液として明瞭に分離します。

下の方にあるコックを開けて下層のみ取り出すことで、2液の分離操作が可能です。

3. ブフナー漏斗による固体と液体の分離

ブフナー漏斗の開口部には、円形で多数の細孔付きの濾過板が設置されています (図3参照) 。円形部分に濾紙を設置し、ブフナー漏斗の開口部から固体が分散した懸濁液をいれます。

注ぐ懸濁液としては、粘度が高いなどの理由から通常のガラス漏斗では固体と溶液の分離が難しいものを選ぶ場合が多いです。そのため、吸引濾過瓶と呼ばれる専用の装置にブフナー漏斗を設置し、アスピレータで吸引して溶媒を引っ張り落とすことで分離操作が行われます。

アスピレーターを使用した濾過は吸引濾過や減圧濾過と呼ばれ、自然流下と比較して濾過操作が短時間で完了するというメリットがあります。

漏斗の種類

化学実験で用いられる分離用漏斗には、用途に応じて様々な種類が存在しますが、特に「ガラス漏斗」「分液漏斗」「ブフナー漏斗」の3種類がよく用いられます。

1. ガラス漏斗

ガラス漏斗は、懸濁液中の固体成分と液体成分を分離する時に用いられる漏斗です。化学実験によく用いられる有機溶媒への耐性を考慮して、材質はガラスが一般的です。形状は図1に示した通りであり、逆三角形の開口部に濾紙を敷いて使用します。

2. 分液漏斗

分液漏斗

図2. 分液漏斗

分液漏斗は混合していない2種類の液体の分離に用いられる漏斗であり、液体を入れるナス型容器部分に細いガラス管部分が繋がった形状を有します。

ガラス管部分には液体を流下させるためのコックが取り付けられており、これを開けることで液体を通液して取り出す事が可能です。

3. ブフナー漏斗

ブフナー漏斗

図3. ブフナー漏斗

ブフナー漏斗は多量の固体を含む懸濁液や、粘度の高い懸濁液を短時間で濾過するための漏斗です。材質は有機溶媒耐性に優れた磁製であり、使用方法は吸引濾過瓶にセッテイングして使用します。有機合成化学の実験において、多量の結晶を短時間で溶媒から分離するなどの目的でブフナー漏斗がよく用いられます。

漏斗のその他情報

漏斗の材質と使用上の注意

漏斗の材質はプラスチックやステンレス、ガラスなど多岐に渡っており、分注する液体の化学的性質により使い分ける必要があります。

例えば、化学実験においては、プラスチック類との反応性が高い有機溶媒を使用するケースも多いため、有機溶媒耐性に優れたガラス製の漏斗が用いられます。

シャトル弁

シャトル弁とは

シャトル弁 (英: shuttle valve) とは、2つ以上の入り口と、1つの出口を持っている弁です。

油圧機器や空圧機器で広く活用されています。圧力の大きさによって、どの入口が出口と接続されるかが決まるバルブです。より高い圧力側と接続する製品と、低い圧力側と接続する製品があります。

シャトル弁は、流体の方向を制御するのに非常に有用です。入口ポートを簡単に切り替えることが可能で、特定のプロセスに適した流体方向を選択できます。また、一般的に単純な構造を持っており、故障が少なく、保守が比較的容易な点も特徴です。

シャトル弁の使用用途

シャトル弁は流体制御においてさまざまな使用用途があり、特定の用途において流体の方向制御を実現します。以下はシャトル弁の主な使用用途です。

1. 油圧ユニット

油圧システムでは、シャトル弁が流体の方向制御を担当します。具体的には、油圧ポンプからの流体を油圧シリンダーや油圧モーターなどに送るために使用されます。シャトル弁によってアクチュエータの動きを制御し、特定の操作を実行することが可能です。

2. 輸送機器

油圧ブレーキシステムは自動車や鉄道車両などの多くの輸送機器で広く使用されており、シャトル弁は油圧流体の方向制御に役立ちます。制動ペダルを踏んだ際、シャトル弁が制動圧力をブレーキシリンダーに伝え、ブレーキディスクに制動力をかけます。これにより、車両が制動することが可能です。

3. 化学プラント

特定の化学プロセスや製造プロセスにおいて、必要な液体の配合を調整するのに役立ちます。化学プラントで異なる化学物質を混合して特定の反応を促進する場合に使用されることも多いです。異なる流体源からの液体を正確に混合するために使用され、所定の割合で混合された流体を提供します。

シャトル弁の原理

シャトル弁は、通常はシャトルと呼ばれる移動可能なバルブ要素、および2つ (ポートA、ポートA) の入力ポートと1つの出力ポートから構成されます。シャトル弁が初期状態ではシャトルが中立位置にあり、ポートAと出力ポートが接続され、ポートBは閉じられています。

ポートAから流体が流れてくる場合、シャトルが流体に押されてAと出口ポートが流通する仕組みです。ポートBから流体が流れてくる場合、シャトルが流体に押されてBと出口ポートが流通します。このような仕組みで、流体供給方向に応じて出力ポートへの流れを切り替えることが可能です。

材質はアルミなどが使用され、弁体にはナイロンや合成ゴムが使用されます。弁からは少量の漏れが発生する場合があるため、ストップ弁としての使用は不適です。単純な構造で信頼性が高く、制御プロセスの柔軟性を提供するため、さまざまな産業で広く使用されています。

シャトル弁の選び方

シャトル弁を選ぶ際には、使用環境や要件に合わせて慎重に選択する必要があります。以下は、シャトル弁の選定要素一例です。

1. 使用する流体

シャトル弁は、使用する流体に対応している製品を選定することが必要です。腐食性化学物質や高温流体など、特定の特性を持つ流体に適した材質を選択する必要があります。また、高粘度の流体では適切な製品が必要であるため、対応できるバルブを選ぶことが重要です。

2. 使用圧力

シャトル弁は、特定の圧力範囲で安全に運用する必要があります。選択するシャトル弁が、使用環境の最大圧力に耐えられるものである必要があります。シャトル弁の許容圧力を超過した場合、破損や人身災害の危険があるため注意が必要です。

3. 接続口径

接続口径は、シャトル弁を取り付ける配管に合わせて選定する必要があります。一般的にはRcやNPTなどのねじ込み接続の製品が多いです。レデューサなどを使用せずに接続できる口径を選定する方が経済的です。

4. 材質

材質は、使用流体や周囲配管との適合性に関係します。一般的な材質にはステンレス鋼や真鍮、アルミニウム、プラスチックなどがあります。適切な材質を選ぶことで、耐食性や耐摩耗性を向上させることが可能です。

参考文献
https://ja.finotek.com/shuttle-valve-structure-application/

フロアーバンド

フロアーバンドとは

フロアーバンドは配管支持器具の一種で、主に横走り管を床面に固定し支持するために使用される部品です。配管の高さ(レベル)を調整する機能もあるため、レベルバンドとも呼ばれることもあります。

配管支持器具を使わずに配管を行うと、配管同士が位置ずれを生じたり、荷重を受けた配管が破損したりするトラブルの恐れがあります。配管支持器具の一種であるフロアーバンドは、円形の金属で床面配管を包むように固定して、配管の位置ずれや過重による破損から配管を守るとともに、高さを調整して配管に勾配をつけることができます。

フロアーバンドの使用用途

フロアーバンドは、主に横走り管を床面に固定・支持するために使用されます。

フロアーバンドは、ナットを上下することで簡単に配管の高さを調整し、配管に勾配をつけることができるため、勾配を必要とする床下排水管によく使われます。また、床下の給水管、ガス管などに使用されることもあります。

フロアーバンドは、床面横走り管だけでなく、縦型配管を壁面に固定する用途や、天井固定の横走り配管を吊り下げて固定する用途にも使われることがありますが、製品によっては壁面固定や吊配管支持を禁止しているものもあるため、注意が必要です。 

フロアーバンドの特徴

フロアーバンドにはセットフロアー型、クロスバンド型、T型の3タイプがあります。

セットフロアー型は最も一般的なタイプで、台座から2本の棒状のネジが上方向へ伸び、ネジに半円型の金具(バンド)が上下に分かれて取り付けられているという構造をしています。

配管を半円型のバンドで挟み、ネジ部分のナットを締めることで配管を固定します。このとき、ナットの高さを調整することで、フロアーバンドとフロアーバンドとの間に勾配を作ることができます。

床下排水管の場合、排水速度・排水量を適切にするために、配管口径に合わせて勾配を設定する必要があります。

クロスバンド型は、上部で接続されて左右に分かれた半円型のバンドの下側がクロスする形で伸びて、山型の台座を形成する構造をしています。クロスバンド型は主に横走りガス管の配管に使用されます。

T型フロアーバンドは、上部で接続されて左右に分かれた半円型のバンドの下側が垂直に伸びて、台座を一体化した構造をしています。バンド直下でネジ止めして固定します。T型フロアーバンドは横走り配管と縦型配管の両方に使用されます。

フロアーバンドには、バンド部内側にゴムなどを取り付け、防振機能を持たせたものもあります。

参考文献
https://www.showa-cp.jp/products-own/level/
https://www.nichieiintec.jp/pipe/
http://www.akagi-nt.co.jp/seihin_guide/g08.htm

薄板ばね

薄板ばねとは

薄板ばねとは、薄い金属板を使用して作られるばねです。

一般的にはプレス加工などによって製作されます。板の厚みはおおよそ1mm以下のものが多く、家庭用品などにも広く使用されます。

薄板ばねは薄板で、軽量な金属材料から作られることが多いです。比較的簡単な形状で製造可能で、大量生産に向いています。そのため、コスト効率の高い部品として使用されるのが一般的です。

ただし、薄い形状ゆえに強度が限られています。過度な荷重や使用条件の変化によって、バネが変形したり破損したりする可能性があります。したがって、適切な素材選択と設計が必要です。

薄板ばねの使用用途

薄板ばねはさまざまな産業や製品で使用されています。以下は薄板ばねの使用用途です。

1. 日用品・文房具

薄板ばねはピンセットやボールペンのクリップなどに使用されています。復元する力を利用することで、対象物を挟み込み込む仕組みです。薄板バネはピンセットなどの精密な作業道具において、操作性や機能性の向上に寄与する重要な部品です。

2. スポーツ関連

飛び込み台やスキー板・スノーボードなどに使用されています。飛び込み台においては、飛び込み選手が台に着地したときの衝撃を和らげる役割を持つ部品です。スキー板では、柔軟性や硬さを調整するために組み込まれることがあります。

3. 電子機器

電子機器のボタンスイッチでは、薄板バネがボタンの押し下げと解放を制御します。ボタンを押す力によって薄板バネが変形し、指を押し返す仕組みです。これにより、ユーザーはボタンが押されたことを感じることができます。

また、電子機器内の回路接点には信号の開閉を制御するための接点ばねが使用されます。薄板ばねは電気的な接続を確立し、信号の流れを調整することが可能です。接点バネの設計によって、信頼性のある電気的な接続が維持されます。

薄板ばねの原理

薄板バネは、一般的に平らな形状を持ちます。これは、バネが変形しやすくするために必要です。ただし、バネの形状は設計の要求事項や応用によって、波状や曲線を取ることもあります。

材質としては、高強度の金属材料が一般的に使用されます。ステンレス鋼や合金鋼、アルミニウムなどの材料が選ばれますが、ばねの用途に応じて選定されることが多いです。

バネの厚さは、その弾性特性や荷重容量に影響を与えるパラメータです。バネがどれだけ変形しやすいかや、どれだけの荷重を吸収できるかに関連します。薄板バネはその名の通り薄いため、比較的小さな荷重に対して柔軟に変形する部品です。

薄板ばねの原理ははり計算をモデルに考えることが可能です。はりの片側が固定された状態で、反対側に応力がかかると、はりがたわんで応力が発生します。具体的な計算方法は、JIS B 2713(薄板ばねの設計計算式および仕様の定め方)に記載があります。

薄板ばねの選び方

薄板ばねを選ぶ際には、その応用や要求事項に合わせて適切な特性を持つバネを選ぶことが重要です。以下の点を考慮したうえで選定します。

1. 荷重容量と変形量

れくらいの荷重を薄板バネが吸収する必要があるかを考慮して選びます。荷重が大きい場合、適切な厚さのバネが必要です。また、必要な変形量も考慮し、バネが設計要求に対応できるか確認します。

2. 材質

薄板バネの材料は、使用環境や要求事項によって異なります。耐食性が必要な場合はステンレス鋼を選ぶことが多いです。また、高強度が必要な場合は合金鋼などを選定し、適切な材料を選びます。

また、バネは環境条件による劣化を制御するため、保護策を講じることがあります。塗装やコーティング、防錆処理などを検討することでその寿命を延ばすことが可能です。

3. サイズ

ばねの幅や長さは設計において重要な要素です。要求される荷重や変形に応じて、適切なサイズを選びます。また、バネのサイズは取り付けスペースにも合致していることが大切です。

4. 取付方法

ばねは適切に取り付けられなければ正しく機能しません。溶接やねじ留めなど、バネの取り付け方法を検討し、バネが安定して装置や構造に固定されるようにします。これにより、適切な性能を得ることが可能です。