レオメーター

監修: 株式会社アントンパール・ジャパン

レオメーターとは

レオロジーとは、物質の流動と変形に関する学問です。レオメトリーとは、物質のレオロジー特性を評価する方法であり、レオメーターとは、その評価装置です。

レオメーターにセットしたサンプルに、回転、あるいは振動運動を与え、そのときに生じる応力を測定することで、さまざまな特性を定量化することができます。

サンプルの種類に応じ、サンプルセット部の治具を交換することで、液体から固体まで、様々なサンプルを測定することができます。

レオメーターの使用用途

以下に、使用例の一部を列挙します。

  • 食品食感や化粧品の使用感等、感触の定量化
  • 塗料等の分散性、沈降性評価や塗工性評価、
  • 高分子の溶融挙動や成型加工性の評価
  • 熱硬化接着剤やUV硬化樹脂の硬化挙動の評価
  • 製造過程における流動性評価
  • 温度に依存する物性変化

このように、レオメーターは多岐にわたる分野で使用されています。測定によって得られた粘度や粘弾性特性を研究開発の指標として用いられるだけでなく、品質管理にも用いられています。

また、高分子化学などの基礎研究分野においては、レオメーターを用いて得られた測定結果から分子構造を元に考察することで、高機能性材料の探索、安全性や効果の高い材料や製品の開発に繋がる研究もすすめられています。

レオメーターの原理

レオメーターとは、物質の粘度や粘弾性特性を測定する装置です。

サンプルセット部の治具には、様々なサイズ、形状のものがあります。ここではコーンプレートという治具を紹介いたします。コーンプレートは、円錐と円板の組合せであり、下図のように、上下プレート間にサンプルを挟む形でセットします。上側の治具を回転、あるいは振動させ、サンプルの粘弾性特性を測定します。また多くの場合、サンプルの温度も制御することができます。

 

レオメーターの原理

 

粘度は、上側の治具をある一定の速度で回転させた際の回転抵抗(トルク)から算出します。

粘弾性特性は、上側の治具を右回転→左回転→右回転→…と振動させた際に発生する応力から求めることができます。治具は正弦波状に振動変形させると、サンプルからの応答として正弦波状の応力=応力波が得られます。この応力波の位相が、液体と固体で異なることを利用します。サンプルを振動変形させた際の正弦波と応力波の位相差から、どの程度液体的か?どの程度固体的か?を評価し、応力波の振幅の大きさから固さを定量化することができます。

コーンプレートは、上下プレート間にセットできる、流動性のあるサンプルが測定対象となりますが、クランプ型の治具を用いることで、短冊状に成型した固体的なサンプルを測定することができます。この他にも、サンプルに応じた様々な種類の治具があるため、固体から液体まで、幅広いサンプルを測定対象となります。この他にも、緩和弾性率やクリープコンプライアンス、降伏応力等も測定可能です。

レオメーターの応用測定

レオメーターには様々なオプションがあります。これを用いると、上記のように粘度や粘弾性特性を評価する際に、①湿度やUV照射など、サンプルの環境を制御、②ラマン分光や小角光散乱、顕微鏡、インピーダンス測定器などを組み合わせ、粘度や粘弾性特性との同時測定、③レオメーターの機能を応用した粉体の流動性や表面の摩擦抵抗を測定することもできます。

特に②の同時測定オプションでは、サンプルの温度変化や変形速度の変化に伴う物性の変化と同時に、インピーダンスやラマンスペクトルなどの変化も測定できるため、粘度や粘弾性特性等のマクロ物性だけでなく、サンプルの内部情報も同時に取得することができます。

本記事は高精度のラボ装置及びプロセス測定システムを製造・販売する株式会社アントンパール・ジャパン様に監修を頂きました。

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ラインポンプ

ラインポンプとは

ラインポンプ

ラインポンプとは吸込口と吐出口が配管と一直線になっているポンプで、液体を直線的に移送するポンプです。

配管の途中に取り付けることで強制的な送液が可能であり、インラインポンプとも呼ばれます。また、液体を循環させることに適しているため循環ポンプとも呼ばれています。構造は比較的単純で、筐体のケーシング内に組み込まれたローターをモーターで回転させ、遠心力を利用して配管内の液体を移動させる仕組みです。

内部のローターを複数個組み合わせることで送液圧を高めることも可能です。配管内に取り付けられることから、小型軽量、最小限のスペースで設置できるよう設計されています。

ラインポンプの使用用途

ラインポンプは、様々な産業分野における給水ラインや循環ラインに組み込まれます。主な用途には下記のようなものがあります。

  • 冷温水の循環 (エアコン冷却水、クーリングタワーの冷却水、温水暖房システム、熱源機器で作られる冷水や温水)
  • ビル給水
  • 上水道加圧
  • 温水器からの給湯
  • 井戸水の配水
  • 工業用水加圧
  • 各種機械セット
  • 一般給水
  • 産業排水

そのほか特殊な用途として、給水系配管内の洗浄のため配管に併設された閉ループ型循環洗浄システムに組み込まれて使われることもあります。

ラインポンプの原理

1. 概要

ラインポンプは、配管中に直接つなぎ込んで使用されるため、小型軽量であり、最小限の占有スペースでの設置が可能な構造です。

密閉されたケーシング内に羽根車 (ローター) が組み込まれており、このローターをモーターで回転させ、発生する遠心力を利用して液体を移送します。ローターと回転軸はケーシング内で液体に直接接触して動作します。ローターを二段、三段あるいは複数段重ねることで高い圧力での送液も可能です。羽根車にブロンズを用いたり、回転軸にステンレス軸を用いるなど、耐久性のある素材が用いられるなどの工夫がなされます。

2. ケーシング外の機構

ケーシング外では回転軸をモーターに接続しローターを回転させています。接続部分からの液漏れを防ぐため回転軸にはメカニカルシールが取り付けられています。

メカニカルシールは、セラミックとカーボンを材料として製造されている部品です。ばねにより圧着されて水の膜を作り出し、擦り合わさって回転します。メカニカルシールやローターは長時間の使用で劣化するため、定期的なメンテナンスが必要です。また、モーターの加熱劣化を防ぐため、モーターには、通常、サーマルスイッチが採用されます。

ラインポンプの種類

1. 基本情報

ラインポンプは様々なメーカーから販売されており、複数の種類があります。吐水量 (揚水量) は15L/minから140L/min程度が中心ですが、中には1200L/minのハイパワー製品もあります。揚程は、小型製品では2.0m程度のものもありますが、5.0m前後の製品も多く、強力なものでは50m程度です。屋内外での使用が可能な製品も多いですが、一部製品は屋内のみで使用可能であるため注意が必要です。

使用可能な水温・液温は、0℃~80℃、0℃~90℃、0℃~100℃などの範囲であることが主流です。ケーシングや羽根車素材には、鋳鉄、砲金などが用いられ、回転軸にはステンレスが使用されます。

2. 詳細仕様

ラインポンプは、各社製品によって独自の工夫が施されています。耐腐食性を持つ特殊素材が用いられた製品や、分解メンテナンスが容易な設計がなされている製品などがあります。例えば、バックプルアウト方式のポンプは、配管を外さず分解することができ、組立が容易です。

防爆モータータイプのラインポンプでは、引火性の液移送、防爆エリアでの使用が可能です。回転体露出部にプロテクタが取り付けられた製品は、より安全性が強化されています。低騒音志向の製品では、軸受けに低騒音のボールベアリングが使用されている場合があります。目的に合わせたものを選定することが必要です。

参考文献
https://facilities.blog.fc2.com/blog-entry-1187.html
https://pump.acquainc.com/archives/294

マルチクランプ

マルチクランプとは

マルチクランプは支柱や配管、作業現場の足場などを組む際に使う固定具です。表面が滑らかな円筒形の部品(送液パイプ、金属製の足場パイプ、支柱など)どうしを交差させ、交点をマルチクランプで固定することで強固に組み立てられます。

マルチクランプの選定での注意点

1. 固定するパイプの本数と、交差させる角度

2本のパイプを直交させるのが一般的ですが、3本以上を並行に束ねたり、角度を任意で調整したりできるマルチクランプもあります。

2. 固定するパイプの外径

マルチクランプのパイプを通す環(クリップバンド)の内径が、固定するパイプの外径と同じかやや太くなるように選びます。

マルチクランプの使用用途

マルチクランプは円筒形のパイプどうしを交差させて交点を固定するのに使われ、以下のような場面で多用されます。

  • 建設作業現場の足場パイプの構築。
  • 農地で作物の蔓を這わせるための棚の作製。特にブドウ栽培棚の構築に使われます。
  • 簡易的な小屋を建てる際の、パイプ骨組みの固定。

表面が滑らかな金属製のパイプは、穴を空けてボルトで固定するのが困難です。そこで、マルチクランプで交点を固定することで、より簡単に強固な固定が可能になります。パイプに穴を開けたり釘を打ったりする必要がないので、解体も比較的容易でパイプの再利用もできます。

マルチクランプの原理

マルチクランプの基本的な構造は、クリンプバンド(パイプを通す環の部分)と締めネジから成ります。クリンプバンドは円形にカーブしており、円筒形のパイプを挟むのに適しています。使用時は締めネジを緩めてクリンプバンドにパイプを通し、養生テープで仮留めします。マルチクランプの位置や角度を微調整してから、締めネジを締めて固定します。

マルチクランプの選定では以下の点に留意してください。

  • 交差させるパイプの本数と角度:一般的なマルチクランプは2つのクリンプバンドどうしが直交しており、2本のパイプを直角に固定できます。製品によっては、3本以上のパイプを並行に束ねられるものや、クリンプバンドの角度を任意で調整できるものもあります。ただしクリンプバンドの角度が調整できるものは、繰り返し使ううちに可動部が劣化し強度が下がる危険性があります。足場のように安全性が求められる構造物を組み立てる際は、クリンプバンドが動かないマルチクランプが推奨されます。
  • パイプとクリンプバンドの径:パイプに対してクリンプバンドの径が大きすぎると、隙間ができてマルチクランプが動いてしまう場合があります。固定するパイプの外径を確認し、同程度かやや太いマルチクランプを選定してください。

参考文献
https://www.monotaro.com/k/store/マルチクランプ/

マイクロレンズアレイ

マイクロレンズアレイとはマイクロレンズアレイ

マイクロレンズアレイとは、ミクロン単位の大きさのレンズが複数配列されてできた光学レンズのことをいいます。英語表記ではmicrolensarrayと綴り、arrayは配置や配列といった意味を持ちます。

レンズの大きさが数ミクロンとかなり小さいので、その分レンズの焦点距離も数ミリ単位と極々短い距離になります。近頃はスマートフォンやデジタルカメラといった電子機器の薄型化・小型化が進んでいる影響もあり、需要は急速に増加しています。

マイクロレンズアレイの使用用途

マイクロレンズアレイは主に、光通信やディスプレイ、天文台望遠鏡、照明などの光学系の分野で多用されます。

マイクロレンズアレイの主な役割は、集光と拡散にあります。集光を目的として使用される機器の1つに、デジタルカメラが挙げられます。カメラのレンズで集めた光をさらにいっそう集めることで、より正確な光情報をイメージセンサーに届けることが可能です。

また、逆に微小な光を効率よく拡散することができることから、医療機器や航空機などにも使用されます。

マイクロレンズアレイの原理

マイクロレンズアレイは、配列された微小なレンズによって拡散された光を集光することで、集約された光情報を次の媒体に届けることができます。先述のとおり、これはカメラのイメージセンサーとセットで使用されることが多い機能です。

また、同様の機能は光ファイバーにも応用されています。光ファイバーの断面構造は、外側が回線を保護する保護層になっており、中心に「コア」と呼ばれる50µm程の細い管があります。ここは実際に光が通過する部分であり、光情報を伝達するには、光源から発せられた光をコア内に正確に入射させる必要があります。そこで、マイクロレンズアレイで光を集光しコアに目掛けて誘導することで、効率よくそして正確に光情報を伝達することができるようになります。

マイクロレンズアレイは、一つ一つのレンズの形状や大きさ、数、配置位置などによって、光の集光および拡散能力が変わってきます。使用目的や用途を考慮して、適切なものを選定することが重要です。

参考文献
https://www.nalux.co.jp/pro_microlensarray.html

ポリウレタンスポンジ

ポリウレタンスポンジとは

ポリウレタンスポンジ

ポリウレとは、ウレタン結合を含む高分子化合物です。ポリウレタンスポンジは、ポリイソシアネートとポリオールを反応させて得られ、多孔質状に成形されるスポンジのことを指します。このスポンジは液体を長時間含むことができるだけでなく、吸収することと放出することも可能です。

ポリウレタンスポンジは優れた断熱性と成形のしやすさが特長であり、軟質と硬質の2つのタイプに分類されます。かつては海綿を加工してスポンジとして使用されていましたが、現在ではポリウレタンから直接製造されるようになりました。

ポリウレタンスポンジの使用用途

ポリウレタンスポンジは泡の密度によって柔らかさを調整できる素材であり、低密度のものは柔らかくてクッション性に富んでいます。そのため、吸音材やクッション、衣類や家具などの製造に利用されます。特に洗浄用途にはよく使われるスポンジが代表的な例です。

一方、高密度のポリウレタンスポンジは優れた断熱性を持ち、断熱材や浮力剤として使用されます。また、半硬質のポリウレタンスポンジは高反発性と高い弾性を備えており、家具や寝具のマットレス、車両の部品などに適しています。

そのほか、フィルターやバクテリアを繁殖させる培地も用途の1つです。

ポリウレタンスポンジの原理

原料のポリイソシアネートとポリオールがウレタン結合によって高分子となり、目的によってその種類と添加剤を選択し生成します。ポリウレタンスポンジは触媒、発泡剤、整泡剤、難燃剤などを添加することによって製造可能です。

イソシアネートとポリオールの反応熱により発泡剤が気化し、1つ1つ独立した小さな泡が形成されます。気泡の膜をなくすことで無膜フォームとなり、通気性と乾燥性にすぐれたスポンジが完成します。

軟質フォームの発泡剤は主に水です。水とイソシアネートが反応する際に、発生する炭酸ガスを発泡に利用しています。硬質フォームではオゾン層破壊の懸念がないHFC化合物類、シクロペンタンなどの炭化水素系発泡剤や炭酸ガスが使用されています。

連続的に発泡させて大きなブロック状にし、切断加工して成形したり、鋳型などに注入して型どおりに成形するのも方法の1つです。紙や板の上に発泡させて一体に接着した状態に成形する方法もあり、目的によって容易に成形が可能です。

ポリウレタンスポンジの種類

1. 発泡ポリウレタンスポンジ

発泡ポリウレタンスポンジは、軽量で柔軟なスポンジ状の素材で、ポリウレタン樹脂に発泡剤を添加して発泡させたものです。発泡剤によって多数の微細な気泡 (セル) が生成され、これらのセルが均等に分散されることで、スポンジの軽さと柔軟性を生み出します。

クッション性に優れ、衝撃を吸収することが可能です。そのため、クッション材やパッキング材、座布団などの用途で幅広く使用されます。また、断熱性にも優れており、建築や工業分野でも利用されます。

2. 高密度ポリウレタンスポンジ

高密度ポリウレタンスポンジは、より密度の高い素材を使用して作られたスポンジです。スポンジの内部がより堅牢になり、強度が高く、押しつぶされにくい特性を持っています。

高密度ポリウレタンスポンジは、優れた防音効果や振動吸収性を発揮し、音響室や機械の振動制御などに幅広く活用されています。また、高密度な構造により耐久性が向上し、長期間の使用にも耐えることが可能です。建築や自動車部品、航空機などの分野で、衝撃吸収性が求められる場所や耐久性が必要な製品に適します。

3. 構造用ポリウレタンスポンジ

構造用ポリウレタンスポンジは、特殊なセル構造を持っています。通常、セルと呼ばれる多数の細かい空気孔が連続して配置され、軽量かつ高い耐衝撃性を実現する特性を持っています。建築や自動車部品、航空機などの分野で使用されることが一般的です。

建築では、耐震性や断熱性を向上させるために、壁や床の間に充填されます。自動車部品では、衝撃吸収材として使用されることで、安全性を高めます。航空機では、軽量ながら頑丈な素材として使用され、構造の強化や振動吸収に効果的です。

4. 吸水性ポリウレタンスポンジ

吸水性ポリウレタンスポンジは、特殊な加工により水を効率的に吸収するように設計されたスポンジです。キッチン用スポンジや洗車用スポンジなどによく使われます。

汚れや油脂を効果的に除去するのに便利であり、吸水性が高いためにしっかりと水を含むことができます。さらに、浸水した場合にも速乾性があるため、再利用が可能です。吸水性ポリウレタンスポンジは、家庭用品や清掃用具として広く利用されています。

参考文献
https://www.fujigomu.co.jp/whats_urethane/
https://www.wakog.com/material/m_foaming/polyurethane
http://www.urethane-jp.org/manual/doc/anzentebiki_2015520.pdf

ホーニングマシン

ホーニングマシンとは

ホーニングマシンとは、中空構造物の穴の内径面を仕上げるために使われる工作機械です。

ホーニングマシンを用いることによって、穴の内径を精度よく、目的の表面粗さに仕上げることができます。また、ホーニングマシンで行う加工のことを、ホーニング加工と呼びます。

ホーニング加工では、高い真円度、円筒度を得ることが可能です。後述するクロスハッチと呼ばれる加工目も、ホーニング加工ならではの特徴です。

またホーニング加工を行う前には、あらかじめ穴加工をしておく必要がありますが、この穴加工を精度よく行なっておくと、ホーニング加工を施しても、精度を保ち続けることができます。ホーニング加工では、加工による削り代が非常に小さいためです。

ホーニングマシンの使用用途

ホーニング加工は主に、自動車や産業用機械のエンジンや、油圧や空圧機器に使用されるシリンダなど、円筒形状をした内面の研削に使用されます。また、遊星歯車機構のピニオンと呼ばれる歯車部品の内径の仕上げ加工にも、ホーニングマシンが使われます。

なお、遊星歯車機構とは、自動車用のオートマチックトランスミッションの変速機構、CVT (無段変速機) の前後進切り替え機構などに広く用いられているものです。

ホーニングマシンの原理

ホーニングマシンは、ワーク内面にホーンと呼ばれる棒状の砥石を押し付けながら研削する加工機械です。ホーンは、ホーニングヘッドと呼ばれる部品に取り付けられ、さらに4から数本のホーニングヘッドがマンドレルという心棒に取り付けられています。

ホーンはワークの円筒内面に対して、油圧またはバネ力による一定圧力によって、押し広げるように接触します。この接触状態においてホーンを動かすことにより、研削加工が行われますが、ホーンの動かし方が重要です。ホーンは上下または左右の往復運動と回転運動が同時に行われますが、2つの同時動作によって、ホーニング加工ならではのクロスハッチと呼ばれる加工目が形成されます。

クロスハッチは部品機能において、大変重要な役割を担います。ピストンが摺動するエンジンや、転がり軸受の転動面になるピニオンにおいて、クロスハッチは潤滑油を保持する油だまりになるためです。なお、ホーニングマシンと同様に、穴の内径を加工する機械には、内面研削盤があります。しかし、内径研削盤では、クロスハッチのような加工線は形成できません。

ホーニングマシンの種類

ホーニングマシンは形式によって大別すると、縦型と横型があります。仕上げの直径が大きいワークには縦型が多く採用され、長尺のワークには、横型のホーニングマシンが採用されるのが一般的です。さらに縦型、横型以外にも、ホーニングマシンには、以下のような種類があります。

1. 平行平面型

平行平面型は、複数のワークを二つの砥石で挟み込んで、高さを均一に揃えるために使います。穴の内径を研削するものではありませんが、砥石を押し付けて磨き上げる構造であることから、ホーニングマシンとして扱われています。

2. CNC多軸型

CNC多軸型は、コンピュータ制御により複数の砥石による加工が自動的に行われます。ホーニング加工では一般的に、粗さが異なる複数のホーンを使い分けなければなりません。CNC多軸型であれば、複数のホーンが必要となる加工でも、プログラム運転によって自動的に行うことが可能です。

3. 液体ホーニング

液体ホーニングは、砥石ではなく砥粒を含んだ加工液によって研削加工を行う機械です。具体的には、細かい砥石を加工液に均一に分散させ、圧縮空気により加工面に吹き付けることによって研削する加工方法です。液体ホーニングによって、つや消し加工やなし地状に加工することができます。液体ホーニングは別名ウェットブラストとも呼ばれ、バリ取りなどにも使われます。

参考文献
https://www.nissin-mfg.co.jp/works/machine/

フォーミング加工

フォーミング加工とは

フォーミング加工

フォーミング加工とは、複数の成形加工を1台で連続して行うことが可能な、フォーミングマシンを用いた加工方法です。

具体的には、鍛造、曲げ、せん断、絞りなどの塑性変形を利用した成形加工を指します。複数の工程を必要とする複雑な形状をもつ製品も、1台のフォーミングマシンだけで成形可能であるため、大量生産にも適した加工です。

フォーミング加工の使用用途

フォーミング加工は、さまざまな分野の金属製品の製造に用いられています。板材、帯板材からは、ピン、クリップ、板ばね、止め輪、バンドといった部品が製造されています。線材を原材料とした加工では、各種コイル部品やコイルばね部品、電子部品のリード線などの生産に用いられてます。

フォーミング加工の原理

フォーミング加工では1台の加工機械の中で、複数の成形加工が、まとめてできる構造になっています。また、原材料が板材の場合と、線材の場合で機械の構成が大きく分かれます。

1. マルチフォーミング加工

マルチフォーミング加工は、マルチフォーミングマシンを使った加工法です。板材、帯板材を原材料として、プレス加工絞り加工曲げ加工を、自動的にかつ連続的に行えます。

マルチフォーミングマシンは、大きく3つの部位で構成されています。材料を送るフィード装置、プレス加工のためのスタンピング装置、様々な曲げパンチで曲げ加工や絞り加工を行うフォーミング装置です。

2. ワイヤーフォーミング加工

ワイヤーフォーミング加工に用いられるワイヤーフォーミングマシンは、マルチフォーミングマシンからフィード装置とスタンピング装置が省かれた加工機械です。原材料がワイヤーなので、材料の搬送やプレス加工はありません。

線材はワイヤーフォーミングマシンの中心部で保持され、円周上に配置されている複数の成形ツールによって、曲げ加工が行われます。すべての工程が終了すると、コイル材より切りはなして一つの製品となります。

3. ロールフォーミング加工

ロールフォーミング加工は、連続して配置されている複数組のコマが並んだローラーの間に、金属素板を通すことにより素板を変形させ、目的の形状に加工するものです。コイル材から搬送された金属素板が切断機によって所定の大きさに切り出され、その後ロールフォーミング装置によって成形されます。これらのプロセスは自動化されており、連続的に生産することが可能です。

また、配置するローラを変更することにより、閉断面の形状など様々な形状の加工にも対応できます。さらに、徐々に塑性加工を行うため、高張力鋼板などのハイテンション材の加工を行いやすく、製品の軽量化を実現にも貢献します。

4. リードフォーミング加工

フォーミング加工の一つとして、電子部品のリード線を製造するリードフォーミング加工が知られています。電子部品は基板との接続を図るためにリード部分を基盤に合わせた形状に加工する必要があり、このような場合にリードフォーミング加工が施されます。

電子部品は小さくその取扱いが難しいため、リードフォーミング加工を行う専用の治具装置が各種展開されています。

フォーミング加工のその他情報

フォーミング加工のメリット

フォーミング加工のメリットは、複雑な形状の製品でも成形可能であること、大量生産に向いているため工数やコスト低減が見込めることです。フォーミング加工をせずに同様の成形を行う場合、複数の工程を経て一つの部品として仕上げる必要がありました。そのため、加工時間や金型の種類が多くなり、新しい製品の立ち上げにかかる費用も多くなります。

プレス加工で生産性を上げる手法として順送プレスという、多工程を一つのダイセットの中で順送りに成形する方法もあります。こちらは単発プレスと比較して生産性は大きく向上しますが、加工できる形状に限りがあります。一方で、フォーミングマシンは、1台の機械にプレス部と曲げ部の両方の機能を備えており、曲げの複雑な形状も、連続で加工していくことが可能です。

参考文献
https://www.apolotec.net/forming/
https://www.macro-forming.co.jp/forming/
https://www.semicon.sanken-ele.co.jp/support/reliability/4-7.html

ピエゾステージ

ピエゾステージとは

ピエゾステージ

水晶やある種のセラミックに電圧を印加すると変形する現象をピエゾ効果(逆圧電効果)と呼びます。この現象を直線運動や回転などの位置変化に利用したステージを、一般的にピエゾステージと呼びます。

ピエゾステージはナノメートルオーダーの微細な移動および位置分解能と、精確な位置再現性が最大の特長で、エンコーダと組み合わせることで精密なフィードバックシステムの構築が可能なため、科学研究分野や工業分野で広く活用されています。

ピエゾステージの使用用途

ピエゾステージは微細な移動と位置分解能、精確な位置再現性、さらには応答が非常に速く、寿命が長いことが特長です。

また、エンコーダを利用し絶対的な位置情報を得ることで、精密なフィードバックシステムを構築することができます。

科学研究および工業分野で、下記のような用途に利用されています。

  •  直動ステージ
  •  回転ステージ
  •  あおり/倒れステージ
  •  さまざまな機器の精確な移動と位置確保
  •  除振動システム
  •  高速精密シャッターシステム

ピエゾステージの原理

ある種のセラミックに電圧を印加すると変形する現象をピエゾ効果(逆圧電効果)と呼び、ピエゾ効果を示す物質を特にピエゾ素子と呼びます。

ピエゾ素子に見られる変形は、変化量が印加電圧に比例し、応答が非常に速く、可逆的であるという特徴を持ちます。

ピエゾ素子を位置決め用メカニズムとして形成したものをピエゾアクチュエータと呼び、ピエゾアクチュエータを組み込んだステージを一般的にピエゾステージと呼びます。

ピエゾステージは通常のモーターを利用したステージとは異なり、高い位置分解能と位置再現性、少ない消費電力での高負荷、速い位置応答という特徴があり、精確で速い位置決めが必要な場所で広く活用されています。

また磁石を利用しないので、周囲の磁場の影響をうけず、逆に周辺環境に磁場の影響を与えません。

真空中でも使用可能です。

一方で大きな移動量が必要な場合には機械的サポートを付加する必要があります。

またピエゾ素子の発熱と変形量の温度依存性には注意が必要です。

参考文献

https://www.rockgateco.com/product/scate/pos-ecs

http://www.keystone-intl.co.jp/products/encyclopedia/index.html

バンドソー

バンドソーとは

バンドソー

バンドソーとは、帯状のノコギリ刃をモーターやその他の駆動メカニズムに連動させ回転させて物を切断する工具のことです。

通常、電動でノコギリ刃が一定方向に回転するため、一般のノコギリの利用に比べ切断面がきれいでスムーズに操作できることが特徴です。

また、刃の厚さによって切削幅が決まるため、多種類の幅の刃を用意必要があります。切断において高い精度と作業効率を発揮するため、木工や金属加工などに欠かせない工具の一つです。しかし、刃によっては切削面が粗くなることがあるため、適切な刃の選択と定期的なメンテナンスが必要です。

バンドソーの使用用途

バンドソーは、木工、金属加工、建設および土木現場などさまざまな分野で広く使用されている工具で、卓上横型、卓上縦型、ポータブルタイプ、キャスター付きの4つで使用用途がわかれます。いずれのタイプでも、一般のノコギリの利用に比べ、切断面がきれいでスムーズに操作できる利点があります。

1. 卓上横型

卓上横型は、金属製パイプ、角材、板、丸棒などの切断に適しており、高い切断精度とスムーズな操作性が特徴です。木材や比較的薄い板などの切断にも使われます。

2. 卓上縦型

卓上縦型は、曲線に沿った切断や細かな部位の切断、比較的柔らかい材料の切断に適しています。曲線の切断は、他の切断工具では難しい場合がありますが、バンドソーであれば、曲線をきれいに切り取ることが可能です。

3. ポータブルタイプ

ポータブルタイプは、ほとんどが充電式で、高所や取り外しのできない材料の切断、上を向いた状態での作業などに適しています。重さが軽く、持ち運びが容易なので、現場作業での利用が多い点が特徴です。

4. キャスター付き

キャスター付きは通常大型で、大口径パイプや大きな材料の切断に適しています。大きな材料でも容易に切断できるため、建設や土木現場などでの使用が多い点が特徴です。

バンドソーの原理

バンドソーは、帯状のノコギリ刃をモーターなどの駆動システムに接続し、材料を切断します。ノコギリ刃はベルトのように回転し、切断部にはステージが付いており、材料を固定が可能です。卓上横型および卓上縦型には材料を切断するときに必要な力を加えられる切断部が付いており、切断を容易に行えます。

バンドソーの切断能力は通常、切断可能なパイプの直径で表示されます。材料によっては、ノコギリ刃の材質と刃形状を適切に選択することが必要です。

ノコギリを手で材料を切断する場合と異なり、バンドソーはノコ刃が一定方向に回転して切断するため、切断時に必要な力も比較的小さく、切断面がきれいなことが特長です。さらに、材料によってノコ刃の回転数を調節することで、火花の飛散を抑えたり、切り子が周囲に拡散しないようにしたりなど、適切な利用環境を設定できます。

バンドソーのその他の情報

他の機械との組み合わせ

バンドソーは、バンドソーガイド、クーラントタンク、バンドソーセンター、バンドソーオートフィーダーなどの機械と組み合わせて使用することで、効率的な使用が可能です。

1. バンドソーガイド
バンドソーの刃を正確に位置決めし、安定した切断を行うために、バンドソーガイドが必要です。バンドソーガイドは、刃を正確に導くことで、刃のひずみを防止し、切断精度を向上させます。

2. クーラントタンク
バンドソーを使用する際には、切削時に発生する熱を逃がすためにクーラントを使用します。クーラントタンクは、クーラントの供給や循環を行い、バンドソーの寿命を延ばし、切断精度を向上させる役割を持ちます。

3. バンドソーセンター
バンドソーを正確に角度をつけて切断するためには、バンドソーセンターが必要です。バンドソーセンターは、刃を垂直に保ちながら、正確な角度で切断を行えます。

4. バンドソーオートフィーダー
バンドソーを自動化するためには、バンドソーオートフィーダーが必要です。バンドソーオートフィーダーは、自動的に材料を供給し、連続的に切断を行えるため、製品の大量生産が実現できます。

参考文献
https://www.bildy.jp/mag/bandsaw-guide/

ハンマーミル

ハンマーミルとはハンマークラッシャー

ハンマーミルとは、さまざまな原料をホッパーから投入して、ローター部分に設置したハンマーを高速で回転させることで、投入した原料に衝撃を与えて、瞬間的に原料を粉砕することができる機器です。

ハンマー部分は、可動式あるいは固定式で種類があり、さらに回転速度の設定を変えることで、粉砕の粒度を変えることが出来ます。また、スクリーン部分は、加工後の出口に取り付けてフィルターとして利用するため、スクリーンのメッシュを変えることで、粒度を均一に揃えられます。

そのため、ハンマーとスクリーンの組み合わせを用途によって変えることで、多岐にわたる使用に対応することが可能です。

ハンマーミルの使用用途

ハンマーミルは粉砕区分でいうと微粉砕の目的で使用され、数cm程度の粒子を10~1μm程度に粉砕するために用いられます。ハンマーミルは様々な用途に用いられており、その分野は、建材などの処理から食品や医薬品まで多岐にわたります。

ハンマーミルは、目的や使用用途によって、種類が分かれています。ハンマーが固定されているハンマーミルは、原料などを粉砕加工する場合に利用され、穀類などの柔らかい原料や、必要とされる負荷が小さくハンマーの回転が少なくて済む場合に適しています。

ハンマーが可動するタイプのハンマーミルは、鉱石類や木材などの硬度が高い原料や、粉砕の為に大きな衝撃が必要とされる場合に適しています。

ハンマーミルの原理

ハンマーミルの構造

図1. ハンマーミルの構造

ハンマーミルは、ハンマーを高速で回転させて、さらにハンマーをスイングさせることで、加工したい対象物に対して衝撃を与えて粉砕します。そのため、ハンマーの回転速度やスイングの可動などによって、対象物の材質や用途に合わせて衝撃を調節することができます。

粉砕された加工物のはきだし口にスクリーンを設置し、加工後の粒度を調節することで品質が一定になります。動作音や振動が大きめではありますが、粉砕能力が高く比較的固いものも処理できることが特徴です。

また、単純な構造でできているため、分解・組み立てや部品交換等のメンテナンスが容易です。また、超鋼による摩耗対策も可能であるため、耐用年数が長く、長期にわたって用いることができます。

ハンマーミルのその他情報

ハンマーミルの注意点

ハンマーミルはシンプルな構造で様々な種類の材料の粉砕に適用できますが、注意点もあります。ハンマーミルはハンマーの衝撃力により試料を粉砕するため、固く脆性のある割れやすいものに適しています。一方で、プラスチックのように弾性のあるものや繊維質のものはあまり細かく粉砕することはできません。

またハンマーミルに限らず、乾式粉砕においては食品のような水分や油分のあるものでは装置への固着やスクリーンへの目詰まりが起こるため粉砕は難しいとされています。加えて、ハンマーミルは長時間動作させると熱を帯びてくるため、熱に弱いサンプルの粉砕には注意する必要があります。

このように、材料の特性によって適切な粉砕機構も異なってくるため、粉砕したいサンプルにより適切な粉砕機を選ぶことが大切です。

参考文献
https://www.taiki-techno.co.jp/product/crusher-mill/hammer-mill/index.html