電磁場解析

電磁場解析とは

電磁場もしくは電磁界解析は、電磁気現象を支配する基礎方程式を解くことを意味する。この方程式はマクスウェルの方程式と呼ばれる。最近では、解析的に解くというよりはむしろ、有限差分時間領域法や有限要素法などの数値解法を用いて、特定の物性値や境界条件などを与え解くことを意味する場合が多い。

電磁場解析は、時間的に変動しない電場などを扱う静電場解析や電磁波解析などを含み、その適用事例は直流モーターなどの電動機はもちろん、電子レンジやアンテナ、ワイヤレス給電など様々である。

電磁場解析の使用用途

電磁場解析は、電磁波や磁力などが、対象物にどのような影響を及ぼすかを調べるために行われます。自動車、宇宙、防衛などの幅広い産業で利用されていますが、特に、電気・電子機器などの製造業でよく用いられ、設計工程で使用される場合が多いです。対象物としては、スーパーコンピューターやノートパソコン、電子レンジ、アンテナ、モーター、スピーカーなど様々で、電磁波や磁力などが生じる部品もしくは装置に電磁場解析が実施されます。

電磁場解析の特徴

電場と磁場を合わせて電磁場といい、これは電荷によってつくられます。電荷が静止している場合は電場のみをつくりますが、電荷が動き、電流が流れると電場に加えて磁場が生じます。このように、電場と磁場は密接に関係しており、その関係を表したのが、マクスウェルの方程式です。電磁場解析は、このマクスウェルの方程式を基礎方程式としたいわばシミュレーションです。

解析手法としては、大きく分けて2つあり、1つは時間領域での解析法、そして、2つ目は周波数領域での解析法です。時間領域の解析法としては、有限差分時間領域法、伝送線路法などがあり、周波数領域の解析法としては有限要素法やモーメントなどがあります。

電磁場解析を行う最終的な目標は、回路や装置などの電圧や電流分布、もしくは、装置近傍の電磁界や遠方へ放射される電界を知ることにあります。これを達成するためには、現実的な時間で結果が出るようにモデルを作成し、適切な計算条件のもとで、解析を実行する必要があります。

参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1998/4/5/4_5_354/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaem/22/1/22_7/_pdf

振動解析ソフト

振動解析ソフトとは

振動解析ソフトとは、解析する対象物に振動が作用した際に生じる現象をコンピュータ上で予測するために用いられるソフトウェアのことです。

物体にある一定の外力が作用すると、外力の大きさや方向に応じて変形が生じます。一般的に物体には変形量に応じて元の形に戻ろうとする力が生じ、物体の材料が持つ強度を超えた力が作用すると、塑性変形したり、破断してしまったりします。

一方で振動は、一定の外力ではなく、時間とともに変化する力として物体に作用するものです。特に波動というある周期で繰り返し作用することによって、物体に大きな外力が作用したかのような大きな変形や、破壊にまで至ってしまうこともあります。振動解析ソフトは、複雑な振動による現象をシミレーションするためのソフトウェアです。

振動解析ソフトの使用用途

振動解析ソフトは、振動の生じる様々な構造物で使用され、自動車や電気機器などの製造業はもちろん、地震による振動の影響をシミュレーションするために建築業界などでも用いられます。

構造物はそれぞれ固有振動数をもつため、加えられた振動と固有振動数が一致すれば、共振現象を引き起こしかねません。この共振によって振動が大きくなり、構造物の破損や破壊が生じるため、設計の段階で、シミュレーションなどを用いて、共振について確認する必要があります。振動解析ソフトは、このような現象の確認のために使用されます。

なお振動解析の機能は、線形動解析として構造解析ソフトに組み込まれています。また、音響振動解析ソフトと呼ばれる実験データを処理する装置もありますが、ここでは、シミュレーションソフトとしての振動解析ソフトについて説明します。

振動解析ソフトの原理

まず、振動解析の背骨となるのが、運動方程式です。ニュートンの第二法則として知られ「物体に働く合力は、その物体の質量に比例し、物体に加速度を与える」というものであり、数式ではF=maで表現されます。ここでFは外力、mは物体の質量、aは加速度です。

振動解析ソフトでは、実際の物体に即したバネ・マス系の F=ma+kx+c の方程式に、時間で変化する加速度や変位を用いて解析します。この時に用いられるのが微分・積分です。

振動解析ソフトでは、実際の物体の挙動を知るために、次のようなステップで解析します。まず物体を数式で表現するためのモデリングを行います。モデリングでは形だけでなく物質の情報、具体的には密度やヤング率なども入力します。次にモデリングした物体に運動方程式を適用しますが、その際には有限要素法、有限差分法、有限体積法などの数値解法が用いられます。数値解法を適用するための条件として、初期条件、境界条件なども必要です。

振動解析ソフトは以上の計算を行い、結果を出力することができます。

振動解析ソフトのその他情報

振動解析ソフトは通常、以下の3つの解析を行うことができます。

1. モーダル解析 (固有値解析)

モーダル解析は、解析対象が特定の周波数の振動によって、どのように振動するかを調べるものです。共振というたとえ小さな振動を受けた場合でも、対象物に大きな振動が生じて破壊にまで至ってしまう現象を知るために行います。解析で得られる結果は固有振動数や振動モードです。

2. 周波数応答解析

与えられた振動に対して、さまざまな振動周波数領域ごとの応答を調べるための解析です。この解析ではFFT (高速フーリエ変換) という計算が行われ、結果としてそれぞれの条件に応じた変位、速度、加速度、応力などを求めることができます。

3. 過度応答解析

過度応答解析は時刻歴応答解析とも呼ばれ、時間の経過による振動の変化を調べます。地震による建物の振動の状態の変化なども過度応答解析が適用された例です。解析結果では変位、速度、加速度、応力が得られます。

参考文献
http://www.tetras.uitec.jeed.or.jp/files/kankoubutu/i-114-06-03.pdf

風洞

風洞とは風洞

風洞とは、固定したビル、飛行機、自動車などの模型の周りに空気を流し、その模型に働く力やその周りの風の流れを計測解析するための試験設備です。

風を流すことで、飛行機の場合は飛行状態、自動車は走行状態を模擬できます。レイノルズ数という数値を一致させれば、例え実機より小さい模型であっても、実際の飛行や走行とほぼ同じ実験結果を得ることが可能です。

風洞のサイズは大小様々で、JAXAの試験設備である低速風洞は模型を固定する測定部分の縦と横のサイズが5から6mほどあります。これが国内の航空宇宙分野で最大のサイズです。アメリカには縦約24メートル、横約37メートルという巨大な風洞があります。

風洞の使用用途

風洞の使用用途は、流体設計が重要な航空機やロケットなどへの測定データの活用はもちろんのこと、自動車や鉄道、風の影響の考慮が重要な高層ビルや橋梁設計へのデータ活用なども挙げられ、使用分野は非常に幅広いです。風洞による実験では、揚力や抗力などの模型に働く力や模型表面の圧力などの基本的な計測の他に、空気の流れを可視化するPIV (粒子画像流速測定法) なども活用されます。

風洞は、送風機、ノズル部分、整流板、測定部、ディフューザー部分などで構成されます。基本的には、人工的な風を模型に吹き付ける装置であるため、流体力や圧力の計測には、別途、計測装置が必要です。PIVなどで流れを可視化する場合も同様です。

風洞の原理

風洞の原理は、大きな流体解析したい対象となる物体を小さな相似形状な模型に変えて実際に風を与え、条件を整えてレイノルズ数を一致させることで、現実の風 (流体) の流れを計測で予測することにあります。レイノルズの法則を用いて実際の周囲の風の流体の影響を実測解析する実験設備が風洞です。

レイノルズ数Reを一致させることで、実機と模型の形状が相似の場合には周囲の流体の流れが等しくなることを、流体力学ではレイノルズの法則と呼んでいます。レイノルズ数Reは、以下の式で算出できます。

流体全体の運動量の慣性力 (速度x長さ) ÷動粘性で計算される物理量 (無次元量)

例えば、自動車の走行について精密な模型を実機の1/10のサイズで作成した場合を考えると、この時、風洞の風速を実際の走行の10倍に設定すれば、レイノルズの相似則を満足することができます。ただし、動粘性は温度によって変化するため、実際の走行と風洞速度で動粘度を一致させるのに温度の調整も重要となります。

風洞の種類

風洞は、大きく分けて2種類あります。

1. 単純吹き出し型

単純吹き出し型は、エッフェル型風洞とも呼ばれ、構成が単純であり設置スペースも小さいなどの長所がある反面、風を与えるための必要な動力が大きいなどの短所があります。

2.回流型

回流型は、風速を発生させるための動力が小さく流れも安定しやすいですが、気流の温度上昇が著しいという短所があります。また、装置自体も大がかりになりやすいです。ゲッチンゲン型風洞が有名です。

風洞のその他情報

CFDの活用

風洞実験の結果をシミュレーションで予測するCFD (Computational Fluid Dynamics、数値流体力学) の技術が昨今急激に進化しています。風洞は実際の試験装置や建築物に比べてスケールダウンした模型を扱いますが、それでもその試作費用と工数には費用を伴います。

一方でCFDの場合、PCやソフトウエアの導入費用は掛かりますが、その後の運用費用は風洞実験に比較すると抑制することが可能です。ただし、CFDのデータのみで風洞実験なしでの設計が大丈夫なレベルに到達するには、データの積み上げや細部のパラメータの決定という取り組みが不可欠です。いわば、CFDと風洞実験のデータ検証の補完関係により、設計精度の向上と工数コストの低減が日進月歩で進められています。

参考文献

https://www.aero.jaxa.jp/spsite/wind-tunnel/001.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvs/32/124/32_20/_pdf/-char/en

ラインファン

ラインファンとは

ラインファンは、吸音材を貼り付けた丸型などのボックスの中にファンと電動機を内蔵した送風機の一種です。空調や換気の設備として、事務所やホテル、映画館、工場など様々な建築物で利用されます。その多くは、天井裏などに吊るすようにして設置され、通風路であるダクトとつなぐことで、居室内の空気や外の空気を搬送します。

ラインファンの他には、遠心ファンや軸流ファンがあります。ファンの特徴としては、遠心ファンは圧力が高くなり、軸流ファンは風量が多くなります。ラインファンは、斜流ファンを内蔵しており、このファンには、遠心ファンと軸流ファンの中間の特性があります。

ラインファンの使用用途

ラインファンは、送風機の一種であり、空気調和、給気及び排気を目的として、高層ビル、病院、ホテル、学校、劇場、工場など、ほとんどの建築物で使用されます。その多くは、天井裏などに施工されたダクトに合わせて、吊るすようにして設置されることが多いです。

ほとんどのラインファンは、ファンとして斜流ファンを内蔵しています。この斜流ファンは、風量と圧力のどちらも必要な場合に使われるため、使用用途としても、そのような状況に適しているといえます。

ラインファンの原理

ラインファンは、斜流ファン、電動機、内側に吸音材を貼り付けた丸型もしくは角形のボックスなどで構成されます。ファンは遠心ファンを内蔵する場合もあります。ファンの駆動方法は、ほとんどが、ファンと電動機を直接つなげる直動式ですが、ベルトによる駆動方法も採用されています。最近のボックスは、ファンとのすき間を埋めるように吸音材を配置し、その吸音材でファンを固定するような構造となっています。

ファンは、その回転によって空気などの気体にエネルギーを与える回転機械です。遠心ファンは吸い込んだ気体を直角に曲げ吐き出すが、扇風機などに使われる軸流ファンは、気体を後方に送り出します。そのため、遠心ファンは遠心力による増速、増圧効果がありますが、軸流ファンはその効果がほとんどありません。ラインファンに使用される斜流ファンは、斜め後ろに風を送り出すため、遠心力の効果が得られます。その特性は、遠心と軸流の中間となり、角度を変更することで、遠心もしくは軸流の特性に近づけることができます。

参考文献

https://www.ebook.ebara.com/handbook/fan/50HZ/index_50HZ.html
https://www.ebara.co.jp/about/technologies/abstract/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/08/24/250_P38_1.pdf

ブラストマシン

ブラストマシンとは

ブラストマシンとは、物質に研磨剤を高圧・高速で吹き付けることにより、表面状態や組成を変化させる機械のことです。

ブラスト (噴射する) という意味から、ブラスターとも呼ばれます。研磨剤の種類によっては、サンドブラストやアルミナブラストなどが存在し、噴射構造によっては、エアーブラストやショットブラストといった名称で区別されます。

自動車や飛行機部品の加工において、精密な仕上げや表面改質が求められる場合に利用されます。建築物の強度向上にも寄与し、耐久性の向上が期待できます。さらに、半導体の製造過程でも、接着の下処理として重要な役割を果たしている機械です。

ブラストマシンの使用用途

ブラストマシンは、主に3つの目的で活用されています。

1. 表面粗さの向上

滑り止め処理や塗装の下地処理が可能です。滑り止め処理は、歩行者が滑らないように床面を荒らすことで安全性を高めるのに役立ちます。

また、塗装の下地処理では、表面を荒らすことで塗料の密着性が向上し、耐久性が増します。

2. 剛性の向上

旅客機ボディの強度向上や陸上競技の砲丸玉に活用されています。旅客機ボディでは、ブラスト処理により金属表面の応力を緩和させ、疲労強度の向上を実現可能です。

陸上競技の砲丸玉では、表面を硬化させることで剛性が増し、競技者の投擲性能が向上します。

3. 物質表面の清浄度の向上

具体的には、錆落としや切削後のバリ取り、酸化被膜の除去などが行われます。製品の寿命が延びるだけでなく、美観も向上し、品質の維持が図られます。

ブラストマシンの原理

ブラストマシンは、粉状の物質を圧縮空気や羽根車で高速噴射し、金属や樹脂などの表面に凹凸をつける機械です。圧縮空気で噴射するものをエアーブラスト、羽根車で噴射するものをショットブラストと呼びます。

ブラストマシンは、大型のものから小型のものまでさまざまなサイズがあり、ロボット等と組み合わせて無人でブラストを行ったり、研磨剤を吸引するノズルを使用したりします。研磨剤の種類、吹き付ける強さ、ノズルや距離によって多様な表面状態にすることが可能です。

一般的な研磨剤には、アルミナ、砂、石、亜鉛粒、鉄などがあります。角のある研磨剤を吹き付けると、表面に凹凸を作り、摩擦のある面を作ることが可能です。また、球状の研磨剤を吹き付けることで、金属を締める効果があります。刃物の鍛造と同じ原理で、ブラストした金属の硬度を高められます。

さらに、壊れやすい研磨剤を低速で吹き付けることで、表面粗さをほぼ変化させずに表面を研掃することが可能です。錆落とし、活性面の露出、切削加工後のバリ取りに利用されます。

ブラストマシンの種類

ブラストマシンは、表面処理の技術として幅広く利用されており、その種類も多岐にわたります。主にエアーブラストマシン、ショットブラストマシン、ウェットブラストマシンの3種類が存在します。

1. エアーブラストマシン

エアーブラストマシンは、コンプレッサで作られた圧縮空気を使用して、研磨剤を高速で噴射するタイプのブラストマシンです。手軽でコストパフォーマンスが高く、広範囲の表面処理が可能です。一方で、研磨剤の回収や粉塵の対策が必要になります。

2. ショットブラストマシン

ショットブラストマシンは、モーターを接続した羽根車によって研磨剤を高速で噴射するタイプのブラストマシンです。主に大型の金属製品や建築資材の表面処理に適しており、高い効率で作業ができます。また、研磨剤の回収が容易で、粉塵の発生も抑えられます。

3. ウェットブラストマシン

ウェットブラストマシンは、水と研磨剤を混合したスラリーを噴射するタイプのブラストマシンです。水によって研磨剤の衝撃力が緩和されるため、繊細な表面処理が可能で、微細な仕上げが求められる部品に適しています。また、粉塵の発生が抑えられ、環境負荷も低いのが特徴です。

参考文献
https://www.hidaka-sa.co.jp/with-blast/

ビジョンセンサー

ビジョンセンサーとは

ビジョンセンサーとは、カメラで撮影した画像をコンピューターで処理することによって、さまざまな検査ができる装置です。

近年の製造業では、製造ラインの高速化や製造品種の多様化が進んでおり、それに伴って求められる品質レベルもますます高くなっています。

これらを満たすために、全数目視検査が余儀なくされていますが、人件費の高騰や人員不足、検査員育成に長時間を要するといった、さまざまな問題や課題があります。

そこで、従来の目視検査に代わる検査手段として、ビジョンセンサーが採用される機会が増えている状況です。

ビジョンセンサーの使用用途

ビジョンセンサーは、さまざまな業界で採用されています。大きく分けて、以下の5つの用途があります。

  • 製品の有無や入り数のカウント・異品種の検出などをおこなう検査
  • 産業ロボットなどに製品の位置情報をフィードバックするための位置決め
  • 製品の寸法が規格通りに出来ているかの寸法検査
  • キズやサビなど、さまざまな外観上の欠陥を見つける外観検査
  • 基板上の文字を認識する認識検査

検査員による目視検査の場合、数量のカウントや品種の間違え、判断基準が曖昧になってしまい欠陥を見逃してしまう可能性もあります。それに対して、ビジョンセンサーの場合、判断基準はあくまでも数値で管理できるため、適切に設定することによって安定した検査が可能です。

ビジョンセンサーの原理

ビジョンセンサーによる画像検査は、ハードウェアとそれを動かすソフトウェアの両輪で成り立っています。ハードウェアは、カメラやレンズ、照明などが当てはまります。

検査したい内容が確実に撮影できることが画像検査の重要なポイントです。そのため、ハードウェアの適切な選定が、正確な画像検査には必要不可欠と言えます。 ソフトウェアには、アルゴリズムとプログラムがあります。

画像検査アルゴリズムとは、画像を解析し検査対象が正しいかどうかを検査する手段のことです。画像にある、キズやサビ、異物といった欠陥を、コンピューターにNGとして検出するためには、適切に画像検査アルゴリズムを構築する必要あります。

カメラによって撮影した画像を、画像検査アルゴリズムによって整理することで、さまざまな欠陥や位置情報などを演算、出力して機器の動作に活かすことが可能です。アルゴリズムをもとに、C言語などのコンピューター言語によって、入力と出力を関連付けて検査が進行するように組み立てられたものが、プログラムになります。ハードウェアとソフトウェアが正常に機能することで、ビジョンセンサーとして活用できるようになります。

ビジョンセンサーのその他情報

1. ビジョンセンサーとカメラの違い

いずれも、CMOSやCCDといった撮像素子と光学レンズを組み合わせて、画像や映像を撮影・デジタルデータに変換する機材というところまでは同様です。カメラ (デジタルカメラ) では、そうして得られた画像や映像を保存し、後に見直したり、書類等の作成に活用したりするのが主な用途です。

一方、ビジョンセンサーは得られた画像や映像を基にコンピュータを用いてリアルタイムに解析を行います。これまで人が目視で行っていた外観や数量などの検査を行う、寸法や角度を測る、センサーの代わりに使用することが可能となります。

また、機種や設定の仕方によっては検査に使用した画像・映像を残しておき、トレーサビリティに使用することも可能です。

2. ビジョンセンサーの使い方

まず、ビジョンセンサーのカメラが正しく画像・映像を撮影できるように準備をする必要があります。いかに高機能なビジョンセンサーであっても、そもそもきちんと撮影ができなければ、本来の性能を発揮することはできません。

使用するビジョンセンサーやレンズの選定、ビジョンセンサー本体や検査対象物の固定、位置関係、周囲の明るさ (太陽光の時刻による変化を含む) など多くの点に配慮が必要です。場合によっては、専用に照明や遮光板・遮光覆いを設置するケースもあります。

ビジョンセンサーは製品にもよりますが、撮影した画像や映像からマスターとして登録した特定の形状を探す、特定の領域の色を調べる、直線や円を探す、寸法を測るといった多くの処理を行うことが可能です。検査したい内容に応じて、適切な処理を行うよう設定します。

極端に明るめに (暗めに) 撮影する、色を反転させる、ノイズ除去するなどといった「前処理」を行うことで、その後の検査がしやすくなったり、精度が向上したりすることがあります。検査結果に関しても、接点出力で出力するもの、イーサネットなどの通信で出力するものなどがあり、対応するホスト (PC、PLCなど) の選定も必要です。

参考文献
https://www.cognex.com/ja-jp/what-is/vision-sensors/how-do-vision-sensors-work
https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/snsr/sensor/items/vs/index.html
https://www.keyence.co.jp/products/vision/
https://www.cognex.com/ja-jp/what-is/vision-sensors/advantages

USBアダプタ

USBアダプタとは

USBアダプタ

USBアダプタとは、家庭用の交流電源をUSB用電源へ変換するACアダプタの一種です。

USBの正式名称は「Universal Serial Bus」であり、異なる形状のポートを統一化する目的でつくられた規格の一つです。アダプタとは、異なる種類の媒体を仲介する器具を指します。したがって、USBアダプタはUSBポートとコンセントなどを変換する器具です。

USBアダプタの使用用途

USBアダプタは、日常生活でも頻繁に目にする器具です。USBアダプタの使用用途は主に以下の2つがあります。

  • 携帯電話やタブレットをはじめとする電子機器の充電
  • 電子機器同士の情報伝送

USBアダプタは、家電量販店はもちろんコンビニでも安価かつ手軽に入手可能です。

USBアダプタの原理

USBアダプタの場合、コンセントによる交流電源入力の製品が主流です。この製品は、コンセント・USBポート、ケース、AC-DCコンバータ、などで構成されます。

コンセントは家庭用AC100Vタイプが主流です。2本の電源用プラグがあり、抜け防止用の穴が開いています。USBポートは一般的なType-Aの場合、内部が4つの導体に分かれており、両端の2か所が電源用です。

ケースは内部部品を保護し、感電を防止するのが目的の部品です。絶縁性が高い樹脂などが使用され、AC-DCコンバータでAC電源をDC5Vへ変換します。変換の効率や容量は、AC-DCコンバータの性能によって決定されます。

USBアダプタのその他情報

1. USBアダプタと規格

USBの規格統一化により互換性が改善され、消費者の利便性が大幅に向上しました。ただし、USBアダプタだけで携帯電話等の充電ができるわけではなく、USBをMicro BやType-Cなどに変換するUSBケーブルが別途必要です。

USBには情報処理速度の進歩により規格が多種多様にあります。最も主要なタイプはUSB Type-Aと呼ばれるもので、多くのパソコンに採用されています。一方で、Type-Cは近年急速に普及したタイプで、スマートフォンやハイエンドパソコンに採用されています。

2. USBアダプタと充電速度

充電の速度はUSBアダプタの最大電力に依存します。USBは規格として電圧がDC5Vと定められているため、多くの場合は高電流容量のアダプタを使用することで急速充電が可能です。

ただし、USBケーブルの仕様によってはUSBアダプタ本来の性能を得られない場合があります。こうした理由からUSBアダプタや付属のUSBケーブルを購入する際は、スペック情報の確認が必須です。

3. USBのバスパワーとセルフパワー

USB規格で動作する製品は、バスパワーとセルフパワーで動作するものに分かれます。このうち、USBアダプタが必要となるのはセルフパワーで動作する機器のみです。

バスパワーとは、PCなどのUSBポートから電源供給を受けて動作する機器です。バスパワーにより動作するUSB機器は、個別に電源供給を行う必要がありません。そのためケーブル本数を少なくできますが、一方で、大量に電力を消費するUSB機器の動作は不可能です。

一方で、セルフパワーで動作する製品は、USBアダプタを用いて電源供給を行う必要があります。ただし、その分大きな電力を消費した機器の動作が可能です。具体的には、外付HDDやプリンタ・スキャナなどの動作には適応されます。

4. USBアダプタの発熱

USBアダプタは、AC-DC変換および電圧の変換時に発熱します。特に出力の高く、高速充電に対応したUSBアダプタを利用する際には熱が発生しやすくなります。USBアダプタ利用時の熱の発生は避けられません。

熱によってUSBアダプタが変形したり異臭が発生した場合は、そのまま使い続けると発火の危険があります。使用を中止したうえで、新しい製品との交換が必要です。

参考文献
https://smartlog.jp/163540#S30791411
https://time-space.kddi.com/ict-keywords/20190116/2549
https://web-style.info/usb-power-adapter/
https://uzurea.net/usb-type-complate-list/
https://www.mco.co.jp/blog/20190821/
https://www.sanwa.co.jp/product/peripheral/howto/self-bus.html

ナイロンコーティング

ナイロンコーティングとは

ナイロンコーティングとは、物体の表面を高分子であるナイロンでコーティングする技術です。

結晶性の熱可塑性樹脂であるナイロンのパウダーを母材に付着させて、母材表面で溶融させてコーティングします。ナイロンにも数多くの種類が存在しますが、一般的には優れた特性を有するナイロン11が広く使われています。

ナイロン11はヒマシ油を原料とした植物由来であるため、環境負荷が小さいです。ナイロンコーティングを施すことで、高い耐熱性や耐摩耗性、耐衝撃性、耐候性、密着性を母材に付与できます。

ナイロンコーティングの使用用途

ナイロンコーティングは、その特性から様々な分野で利用されています。例えば、工業製品の部品や家電製品、自動車の部品、農業機器、医療機械、さらにはスポーツ用品など、多岐にわたる製品の表面に使われます。

特に、摩擦が生じやすい部分や電気を遮断する必要がある部分、耐久性を高めるための部分には積極的に使用されます。また、1cm以下の小さな製品から数mサイズの大きな製品までコーティングが可能です。ただし、耐酸性は低く酸性環境下では使用できません。

ナイロンコーティングの特徴

はじめにナイロンコーティングのメリット・デメリットを紹介します。

1. 長所

ナイロンコーティングの長所は、母材に高い耐熱性や耐摩耗性、耐衝撃性、耐海水性、耐候性などを付与できる点です。これにより、製品の寿命を延ばすことができます。

また、電気を通さないため、電気製品の絶縁体としても活躍します。さらに、ナイロンコーティングは色を変えることができ、製品の見た目を美しくするためにも有用です。

ナイロン11は植物由来かつ安全性に優れるため、食品衛生法にも適用できます。そのため、飲料水向けの排水管などにも利用可能とされ、衛生的な表面処理方法の1つとして知られています。

2. 短所

ナイロンコーティングの短所は、酸性の薬剤を使用できない点です。酸性条件下での使用を想定している場合は、注意が必要です。ただし、酸性以外の薬品には高い耐性を有しているため、用途の幅は広がります。

また、ナイロンコーティングを施すためには専門的な機械や技術が必要で、そのために初期投資が不可欠となります。

ナイロンコーティングのその他情報

ナイロンコーティングの方法

ナイロンコーティングの歴史は古く、1935年にナイロンが初めて合成されて以来、その特性が注目され、各種製品の表面処理として利用されてきました。その後も技術の進化とともに、より高品質なナイロンコーティングが可能となり、現在に至るまで多くの製品で活用されています。

ナイロンコーティングは主に流動浸漬法、静電粉体塗装法、ミニコート法のいずれかの方法で行われます。

1. 流動浸漬法
ナイロンのパウダーを多孔質の隔壁をもつ浸漬槽に入れ、その底面から不活性ガスを封入します。これにより生じる圧力でパウダーを浮かせ、そこに加熱した母材を浸漬させます。母材表面に溶融付着したパウダー粒子だけが付着し、その後後加熱によって均一なコーティング層を形成します。

2. 静電粉体塗装法
静電粉体塗装法は、塗装する物体に対して静電気を利用してナイロン粉末を付着させる方法です。この方法では、ナイロン粉末に電気的な帯電を施し、それを塗装したい物体に吹き付けます。

帯電したナイロン粉末は物体に引き付けられて付着し、その後高温の炉での加熱によって粉末が溶け、均一なコーティング層を形成します。

3. ミニコート法
ミニコート法は、特に小型の部品に対してナイロンコーティングを施すのに適した方法です。この方法では、部品をプレヒート (予熱) した後、ナイロン粉末を部品に付着させます。その後、部品を高温のオーブンに入れて粉末を溶かし、均一なコーティング層を形成します。

参考文献
http://www.ryushin.jp/resin/
http://www.nakata-coating.co.jp/powder/powder-nylon11.html
http://f-minoru.co.jp/resin/nylon.html

ドラムフィルター

ドラムフィルターとは

ドラムフィルターとは、回転するドラム状のフィルターを用いて異物などの濾過対象物を除去する濾過方式です。

フィルターの孔径によって様々な大きさ・種類の物質を除去できます。一般的には5~1,000μmの物質を濾過する際に用いられ、フィルターの素材もポリエステルなどの樹脂からステンレスまで幅広く対応しています。

回転しながら濾過するため目詰まりを抑制できるだけでなく、フィルターの洗浄や交換などのメンテナンス性にも優れていることが特徴です。

ドラムフィルターの使用用途

ドラムフィルターは、化学工業や食品工業、金属工業、上下水道などの各種産業の濾過に使用されます。フィルターの孔径を変更するだけであらゆる物質の除去が可能になるため、用途の幅が非常に広いです。

設備費やメンテナンス性、ランニングコストに優れることから、幅広い産業で多くの採用実績を持ちます。また、構造がシンプルなため設備の小型化が可能で、省スペース化に貢献できたり、格子状の支持体にフィルターを装着し、張力により密着させることで洗浄しやすくなるように設計されたりします。

ドラムフィルターの特徴

ドラムフィルターはシンプルな原理かつ効率性、メンテンナンス性などに優れるため、設備導入しやすいことが特徴です。フィルターが目詰まりするので、フィルターの洗浄および交換は定期的に行う必要はありますが、洗浄は自動化されている機種も多くあります。

一方で、フィルター交換は手作業で行いますが、比較的簡単に行えることがメリットです。

ドラムフィルターの選び方

1. 使用目的

液体の浄化、固体の分離、廃水処理など、具体的な目的に合致したフィルターを選ぶことが重要なので、使用目的を明確にすることが必要です。特に使用目的が複数ある場合は、複数の条件を満たすフィルターを選択する必要があります。

2. 処理材料と粒子サイズ

材料が液体である場合、粘度や化学的特性も考慮に入れる必要があります。フィルター材料と耐久性も重要で、腐食性の液体や高温環境下で使用する場合は適切なフィルターを選択する必要があります。

フィルター孔のサイズは、通過する固体粒子のサイズに合致するように選びます。粒子がフィルター孔よりも大きい場合、分離が効果的に行われます。フィルターケーキ( フィルターを通過した固体物質 )の取り扱い方法も検討した上、でスムーズな排出や処分を確保することが大事です。

3. ドラムのサイズ、形状、回転速度、およびフィルターセルの配置

それぞれ処理能力や分離効率に影響するため、プロセスの要件に合致するドラムを選びます。メンテナンス要件も検討し、クリーニングサイクルやフィルターセルの交換が容易であるかどうかを確認することが重要です。

4. 性能とコスト

選択肢が複数ある場合は特に比較を行い、予算内で最適に選択する必要があります。特定の業界やアプリケーションに適合する規制や安全性にも注意を払います。これらの要因を総合的に考慮して、最終的に使用環境と目的に最適なドラムフィルターを選択することが重要です。

ドラムフィルターのその他情報

ケーク層の除去方法

ドラムフィルターに堆積される物質はケーク層とも言われ、ケーク層の種類によって除去及び排出方法が異なります。具体的な例は以下の通りです。

1. スクレッパーディスチャージ法
圧縮した空気でフィルターからケーク層を剥がし、スクレッパーと呼ばれるヘラのようなもので掻き出します。最も一般的な方式ですが、粘着性のある物質には使用できません。

2. ローラーディスチャージ法
ローラーをケーク層に押しつけ、スクレッパーで除去します。ローラーにケーク層の物質を吸着させる必要があるため、粘着性のある物質に使用されます。

3. プリコートカット法
圧縮した空気等は使用せずに、真空下でケーク層をスクレッパーで剥ぎ取ります。除去しきれず残留したケーク層はプリコート層と呼ばれ、プリコート層の上に形成されたケークを定期的に取り除きます。真空下で行うため、濾液の逆流が発生しない点がメリットです。ただし、均一な大きさの粒子以外には適していません。

参考文献
https://www.noritake.co.jp/products/eeg/parts/detail/15/
http://nihon-inka.net/product/roka/drumfilter.html

デプスフィルター

デプスフィルターとは

デプスフィルターとは、濾過対象物をフィルターの表面ではなく、内部で捕捉し除去するタイプのフィルターです。

フィルター上部の孔径が大きく、下部に近づくにつれ孔径が小さくなるように構造設計されているため、内部で捕捉できます。一方で、表面で阻止するタイプのフィルターはスクリーンフィルターと呼ばれ、広く使われています。

スクリーンフィルターは表面に濾過対象物が蓄積され、次第に目詰まりが発生し流束が低下する点がデメリットです。その一方で、デプスフィルターは目詰まりを抑制し、高い濾過速度を維持できます。

デプスフィルターの使用用途

デプスフィルターは、化学工業や食品、医薬など各種産業の精製、濃縮、細菌や異物の除去を目的に使用されています。フィルター自体は浄水器などの分野で一般家庭でも利用されていますが、デプスフィルターは工業用途での前処理に使用されるのが一般的です。

通常、濾過によって濾過対象物や異物を除去する際は、孔径の異なるフィルターで複数回濾過を行います。これは目詰まりを極力抑えるために有効な工夫です。

デプスフィルターの特徴

デプスフィルターは、使用する種類によっては完全に除去できないという特徴を持ちます。最近ではガラスファイバーやセルロース繊維を材料に用いたフィルターもありますが、押し固めているだけのため厚みや密度調節が不十分な場合、異物が透過してしまいます。確実に異物を阻止したい場合は、孔径の勾配をつけたデプスフィルターを使用することが必要です。

なお、デプスフィルターの最大のメリットは目詰まりを抑制し、高い流束を維持できることです。高い濾過速度を維持することで、生産効率やメンテナンスコストを改善できます。

一方で、デプスフィルターの種類によっては完全に阻止できないことや再利用が困難であることがデメリットとして挙げられます。スクリーンフィルターの場合は、表面を洗浄し再利用することもありますが、デプスフィルターは洗浄することが困難なため使い捨てになります。そのため、シングルユースを基本とする医薬分野に使用される場合が多いです。

デプスフィルターの選び方

1. 使用目的

フィルターを使用する具体的な目的を明確にします。例えば、液体の浄化、粒子の分離、空気の清浄化、音声フィルタリングなど、目的に応じて選択するフィルターは異なります。デプスフィルターのメリットデメリットを理解した上で、使用目的に合うものを選ぶことが重要です。

2. フィルターの材料

フィルターの材料には紙、繊維、金属、活性炭、セラミックなどがあり、使用環境や対象物質に合わせて選択することが大切です。異物の除去率や耐久性などそれぞれの材料で特徴が異なるため、どの材料で作られているか明確にします。

3. 対象物質の性質

フィルターを通過する対象物質 (液体、気体、粒子の種類、サイズ、濃度 ) によって、適切なフィルターの微細度や孔のサイズを選びます。対象物質が微小な粒子である場合は微細なフィルターが必要で、微小でない場合は適切なものを選びます。

4. 環境条件・耐久性

フィルターが使用される環境条件 (温度、圧力、化学的な耐性など) に合致する材料や構造を選択します。特に、極端な環境条件下での使用では耐久性が重要です。耐久性が低いとフィルタ交換の頻度が上がり、手間や工数だけでなく、運用コストもかかってしまいます。

5. 流量要件

フィルターを通過する流体やガスの流量に応じて、適切なフィルターサイズと設計を選びます。高い流量が必要な場合は、大容量のフィルターが必要です。

6. メンテナンス要件・コスト効率

フィルターの交換や清掃頻度に応じて、メンテナンスが容易で経済的なフィルターを選択します。高性能なフィルターは高コストですが、目的と予算に応じた最適なバランスを見つける必要があります。

7. 認証基準

特定の業界や用途には、安全性や品質の基準が存在することがあります。適切な認証を持つフィルターを選ぶ必要があります。

参考文献
https://m-hub.jp/
https://jp.images-monotaro.com/etc/pdf/membrane.pdf