風洞

風洞とは風洞

風洞とは、固定したビル、飛行機、自動車などの模型の周りに空気を流し、その模型に働く力やその周りの風の流れを計測解析するための試験設備です。

風を流すことで、飛行機の場合は飛行状態、自動車は走行状態を模擬できます。レイノルズ数という数値を一致させれば、例え実機より小さい模型であっても、実際の飛行や走行とほぼ同じ実験結果を得ることが可能です。

風洞のサイズは大小様々で、JAXAの試験設備である低速風洞は模型を固定する測定部分の縦と横のサイズが5から6mほどあります。これが国内の航空宇宙分野で最大のサイズです。アメリカには縦約24メートル、横約37メートルという巨大な風洞があります。

風洞の使用用途

風洞の使用用途は、流体設計が重要な航空機やロケットなどへの測定データの活用はもちろんのこと、自動車や鉄道、風の影響の考慮が重要な高層ビルや橋梁設計へのデータ活用なども挙げられ、使用分野は非常に幅広いです。風洞による実験では、揚力や抗力などの模型に働く力や模型表面の圧力などの基本的な計測の他に、空気の流れを可視化するPIV (粒子画像流速測定法) なども活用されます。

風洞は、送風機、ノズル部分、整流板、測定部、ディフューザー部分などで構成されます。基本的には、人工的な風を模型に吹き付ける装置であるため、流体力や圧力の計測には、別途、計測装置が必要です。PIVなどで流れを可視化する場合も同様です。

風洞の原理

風洞の原理は、大きな流体解析したい対象となる物体を小さな相似形状な模型に変えて実際に風を与え、条件を整えてレイノルズ数を一致させることで、現実の風 (流体) の流れを計測で予測することにあります。レイノルズの法則を用いて実際の周囲の風の流体の影響を実測解析する実験設備が風洞です。

レイノルズ数Reを一致させることで、実機と模型の形状が相似の場合には周囲の流体の流れが等しくなることを、流体力学ではレイノルズの法則と呼んでいます。レイノルズ数Reは、以下の式で算出できます。

流体全体の運動量の慣性力 (速度x長さ) ÷動粘性で計算される物理量 (無次元量)

例えば、自動車の走行について精密な模型を実機の1/10のサイズで作成した場合を考えると、この時、風洞の風速を実際の走行の10倍に設定すれば、レイノルズの相似則を満足することができます。ただし、動粘性は温度によって変化するため、実際の走行と風洞速度で動粘度を一致させるのに温度の調整も重要となります。

風洞の種類

風洞は、大きく分けて2種類あります。

1. 単純吹き出し型

単純吹き出し型は、エッフェル型風洞とも呼ばれ、構成が単純であり設置スペースも小さいなどの長所がある反面、風を与えるための必要な動力が大きいなどの短所があります。

2.回流型

回流型は、風速を発生させるための動力が小さく流れも安定しやすいですが、気流の温度上昇が著しいという短所があります。また、装置自体も大がかりになりやすいです。ゲッチンゲン型風洞が有名です。

風洞のその他情報

CFDの活用

風洞実験の結果をシミュレーションで予測するCFD (Computational Fluid Dynamics、数値流体力学) の技術が昨今急激に進化しています。風洞は実際の試験装置や建築物に比べてスケールダウンした模型を扱いますが、それでもその試作費用と工数には費用を伴います。

一方でCFDの場合、PCやソフトウエアの導入費用は掛かりますが、その後の運用費用は風洞実験に比較すると抑制することが可能です。ただし、CFDのデータのみで風洞実験なしでの設計が大丈夫なレベルに到達するには、データの積み上げや細部のパラメータの決定という取り組みが不可欠です。いわば、CFDと風洞実験のデータ検証の補完関係により、設計精度の向上と工数コストの低減が日進月歩で進められています。

参考文献

https://www.aero.jaxa.jp/spsite/wind-tunnel/001.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvs/32/124/32_20/_pdf/-char/en

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