ナイロンコーティングとは
ナイロンコーティングとは、物体の表面を高分子であるナイロンでコーティングする技術です。
結晶性の熱可塑性樹脂であるナイロンのパウダーを母材に付着させて、母材表面で溶融させてコーティングします。ナイロンにも数多くの種類が存在しますが、一般的には優れた特性を有するナイロン11が広く使われています。
ナイロン11はヒマシ油を原料とした植物由来であるため、環境負荷が小さいです。ナイロンコーティングを施すことで、高い耐熱性や耐摩耗性、耐衝撃性、耐候性、密着性を母材に付与できます。
ナイロンコーティングの使用用途
ナイロンコーティングは、その特性から様々な分野で利用されています。例えば、工業製品の部品や家電製品、自動車の部品、農業機器、医療機械、さらにはスポーツ用品など、多岐にわたる製品の表面に使われます。
特に、摩擦が生じやすい部分や電気を遮断する必要がある部分、耐久性を高めるための部分には積極的に使用されます。また、1cm以下の小さな製品から数mサイズの大きな製品までコーティングが可能です。ただし、耐酸性は低く酸性環境下では使用できません。
ナイロンコーティングの特徴
はじめにナイロンコーティングのメリット・デメリットを紹介します。
1. 長所
ナイロンコーティングの長所は、母材に高い耐熱性や耐摩耗性、耐衝撃性、耐海水性、耐候性などを付与できる点です。これにより、製品の寿命を延ばすことができます。
また、電気を通さないため、電気製品の絶縁体としても活躍します。さらに、ナイロンコーティングは色を変えることができ、製品の見た目を美しくするためにも有用です。
ナイロン11は植物由来かつ安全性に優れるため、食品衛生法にも適用できます。そのため、飲料水向けの排水管などにも利用可能とされ、衛生的な表面処理方法の1つとして知られています。
2. 短所
ナイロンコーティングの短所は、酸性の薬剤を使用できない点です。酸性条件下での使用を想定している場合は、注意が必要です。ただし、酸性以外の薬品には高い耐性を有しているため、用途の幅は広がります。
また、ナイロンコーティングを施すためには専門的な機械や技術が必要で、そのために初期投資が不可欠となります。
ナイロンコーティングのその他情報
ナイロンコーティングの方法
ナイロンコーティングの歴史は古く、1935年にナイロンが初めて合成されて以来、その特性が注目され、各種製品の表面処理として利用されてきました。その後も技術の進化とともに、より高品質なナイロンコーティングが可能となり、現在に至るまで多くの製品で活用されています。
ナイロンコーティングは主に流動浸漬法、静電粉体塗装法、ミニコート法のいずれかの方法で行われます。
1. 流動浸漬法
ナイロンのパウダーを多孔質の隔壁をもつ浸漬槽に入れ、その底面から不活性ガスを封入します。これにより生じる圧力でパウダーを浮かせ、そこに加熱した母材を浸漬させます。母材表面に溶融付着したパウダー粒子だけが付着し、その後後加熱によって均一なコーティング層を形成します。
2. 静電粉体塗装法
静電粉体塗装法は、塗装する物体に対して静電気を利用してナイロン粉末を付着させる方法です。この方法では、ナイロン粉末に電気的な帯電を施し、それを塗装したい物体に吹き付けます。
帯電したナイロン粉末は物体に引き付けられて付着し、その後高温の炉での加熱によって粉末が溶け、均一なコーティング層を形成します。
3. ミニコート法
ミニコート法は、特に小型の部品に対してナイロンコーティングを施すのに適した方法です。この方法では、部品をプレヒート (予熱) した後、ナイロン粉末を部品に付着させます。その後、部品を高温のオーブンに入れて粉末を溶かし、均一なコーティング層を形成します。
参考文献
http://www.ryushin.jp/resin/
http://www.nakata-coating.co.jp/powder/powder-nylon11.html
http://f-minoru.co.jp/resin/nylon.html