荷揚げリフト

荷揚げリフトとは

荷揚げリフト

荷揚げリフトとは、資材や荷物を下の階から上の階へ効率的に輸送するために設計された装置です。

このリフトは様々なサイズや形状の荷物を持ち上げる能力に応じて、多くの種類があります。それぞれのリフトは、持ち上げる荷物の種類や重量に特化しており、使用する環境や必要とする機能に基づいて選ばれます。

重要な点として、荷揚げリフトは荷物専用に設計されているため、安全規定により人が乗ることは禁止されています。これは、リフトの構造が人を安全に運ぶための要件を満たしていないからです。

荷揚げリフトの使用用途

荷揚げリフトは、建築工事での資材の運搬に用いられるだけでなく、工場、倉庫、物流センターでも小型から大型まで幅広い種類の荷物を昇降するために広く設置されています。さらに、一般家屋での重い荷物の二階や三階への運搬にも利用されることがあります。

荷揚げリフトは、台車やパレットをそのまま乗せて荷物を運ぶことができるモデルもあり、これにより荷物運搬の効率を大いに高めることが可能です。

荷揚げリフトの導入により、荷物の運搬効率を向上させるとともに、従業員の負担を軽減し、限られた敷地内でのスペースを有効に活用することができます。これにより、作業の効率化が図られ、全体的な業務の生産性向上に寄与しています。

荷揚げリフトの原理

荷揚げリフトには多様なタイプがありますが、小型のものは家庭用の100V電源で稼働し、約100kgまでの荷物を揚げ下げすることが可能です。このタイプのリフトは小さく、畳半分から1/3程度のスペースがあれば、屋内外問わず使用できます。組立や設置が非常に容易で、常設利用と仮設利用のどちらにも対応できるため、様々な場所で便利に使えます。

リフトは梯子、ウインチ、荷台部分に分割可能で、ライトバンなどに搭載して運搬することも容易です。この手軽さと運搬の容易さから、一般家庭や農家、工務店で広く使われています。特に、納屋の階段に設置することで、階段を荷物運搬用のエレベーターとして活用できます。

また、屋外に設置することで、屋上や二階のベランダに直接植木鉢や荷物を運び込むことが可能になり、狭い階段や複雑な階段のある住居でも、重い荷物を持ち運びながらの階段の上り下りを避けられます。

建築現場では、コンパネや建築資材を運ぶのにも使用されます。大型の荷揚げリフトでは、エレベーター式の操作盤が採用されており、1階の操作盤タッチパネルから自動操作できるモデルもあります。上昇・下降は手動操作も可能で、速度は3段階に切り替えられます。また、扉が3方向に開く設計は、荷物の出し入れが容易です。

リフトの最下部には安全装置が備わっており、リフトが下降時に人や物に接触すると直ちに停止する機能があります。これにより、安全性が高まります。

荷揚げリフトの種類

最も一般的なタイプは、建築現場や工場、倉庫で使用される固定式リフトです。これらは大きな荷物を効率的に垂直に運ぶことができ、しばしば高い耐荷重性を備えています。

また、移動式リフトも広く利用されており、これにはホイール付きのモデルが含まれます。このタイプのリフトは、比較的軽量でありながらも、様々な場所へ簡単に移動して使用することができるため、一時的な作業場や狭いスペースでの使用に最適です。

特に小規模な作業や限られたスペースでの使用には、コンパクトリフトが適しています。これらは低耐荷重設計ですが、非常に省スペースで操作が容易です。小規模な商業施設や家庭内での使用に最適で、簡単に設置と移動が可能です。

一方、大型の荷揚げリフトは、建築材料や大きな機械部品の運搬に用いられることが多く、その強度と耐久性により重量物の取り扱いに非常に適しています。このタイプのリフトは、安全性と効率性を高めるための多くの機能を備えています。

各種リフトの選択に際しては、使用目的、設置環境、耐荷重能力、移動性の要件を考慮することが重要です。適切なリフトの選定により、作業効率と安全性が大きく向上します。

参考文献
https://kanakk.jp/lifts/
https://www.nisso-sangyo.co.jp/products/series/niage-lift
http://www.nsgon.com/gondola/category5.html

自記温度計

自記温度計とは

自記温度計

自記温度計とは、温度の測定結果を自動で記録する仕組みになっている温度計です。

バイメタル温度計やブルドン管温度計などに、温度の変化に連動して動くようにペンをつけ、一定の速度でゆっくりと回転する円筒に巻きつけた紙の上に記録することで経時変化を記録します。

自記温度計のほかに自記湿度計や自記圧力計もあり、また、湿度や圧力を温度と同時に測定できるものもあります。

自記温度計の使用用途

1. 気温観測、一般的な温度管理

自記温度計は、自記湿度計や自記圧力計と共に、一般的な気象観測や、美術館や倉庫などでの室温管理に利用されている装置です。気象観測では、百葉箱や通風筒 (気象台で用いられる) などの中に設置され、直射日光や雨風の影響を防いで測定されます。

産業用途でも広く使用されており、例えば石油産業では、石油関連施設での温度記録管理や石油パイプラインの温度記録管理などの用途があります。それ以外では、食品関連工場での温度記録管理のほか、広く一般産業における各種配管内の温度記録管理に用いられます。

その他に用いられている産業分野には、次のようなものがあります。

  • 一般工業
  • 化学工業
  • 建設業
  • 鉱業
  • ゴム工業

自記温度計は、温度記録を必要とする産業一般で利用されています。

2. 冷蔵庫・冷凍庫

自記温度計は、業務用冷蔵庫・冷凍庫・保冷庫・保温庫の温度記録用途で用いられる場合があり、専用の製品が販売されています。主に下記のような場所で用いられており、食品産業や医療関連施設を中心として使用されています。

  • 血液や、ワクチンや、抗生物質などを保管する医療用保冷庫
  • 生鮮食品や、乳製品等を保管する冷蔵冷凍庫
  • 薬品保管庫

自記温度計の原理

1. 概要

自記温度計は、温度の経時的変化を自動的に記録可能な装置です。自記温度計で用いられる原理には、次のようなものがあります。

  • バイメタルブルドン管を用いて、その熱膨張により、自記装置のペンを動かす
  • 白金抵抗温度計を用いて、抵抗の変化により電流を変化させることで、記録電流計で温度を記録させる

2. バイメタル式温度計

バイメタルとは、2枚の薄い金属板を張り合わせたものです。金属は種類により温度変化にともなう膨張率が異なります。そのため、異なる種類の金属をはり合わせた金属板であるバイメタルは、温度によってたわみ方が変化します。自記温度計は、このたわみの変化をペンの上下動に変換し、その変動を、回転する円筒に張り合わせた記録紙に自動的にインクペンで記録する仕組みです。

3. ブルドン管式温度計

ブルドン管式自記温度計は、本体内部に封入された液体温度による膨張圧の変化を利用する温度計です。

感温部で温度を感知してリード線を経てブルドン管に導き、その動きを拡大して温度指示を行う仕組みです。このタイプでも記録用紙を回転する円筒に張り合わせ、ペンの動きを温度変化と連動させることで自動的に温度を記録します。

自記温度計の種類

自記温度計は、前述の通り、バイメタル式やブルドン管、白金抵抗温度計などの機構の種類があります。

記録紙で記録する種類の温度計には、記録できる期間によって日巻き、週巻き、1ヶ月巻きなどの種類があります。種類によって、ドラムの回転速度 (歯車のギア数) が異なっている仕組みです。通常、週巻きの記録紙の場合は、縦軸には温度を示す目盛りが1℃ごとに、横軸には時刻目盛りが1時間ごとに記されています。

また、用途別では、2カ所の被測定対象の温度を1枚の記録用紙に同時記録する2針型の製品や、冷蔵・冷凍庫用製品などの種類があります。冷蔵・冷凍庫用製品の下限温度は、-100℃、-40℃、-20℃などです。

その他、設置場所に合わせて壁掛け用の自記温度計や、携帯型自記温度計などの形状があります。携帯型自記温度計は取手が付いており、持ち運びが必要な現場での温度記録用途に使用されています。このように様々な種類があるため、用途に合わせて適切なものを選択することが可能です。

参考文献
http://www.sanwakeiki.com/category/item/rec-thermo/
https://kotobank.jp/word/%E8%87%AA%E8%A8%98%E6%B8%A9%E5%BA%A6%E8%A8%88-517609
https://www.ebara-keiki.co.jp/publics/index/85/
https://www.andokeiki.co.jp/kisyouyou/zikikeiki/zikikeikitop.html

自動組立機

自動組立機とは

自動組立機

自動組立機とは、工場などの製造工程において製品を自動で組立・製造する機械です。

人が工具でボルトを回して装置を組み立てたりするような作業を代替することができ、省人化や業務効率化に貢献することが可能です。

自動組立機は、製造する製品の種類だけでなく、実行する組立作業の種類によっても様々なものがあります。ネジ締め機や、リベット・ハトメカシメ機や、組立ロボット、搬送コンテナなど、単一の作業を行う機器や、複数の組み立て作業を行う組立工程を行う機器などがあります。自動車関連、電機・電子機器、住宅設備をはじめとする広い分野で活用されている装置です。

自動組立機の使用用途

自動組立機は、様々な工業分野において、ネジ締めや各種組立、組付け作業を行うことに用いられます。大きなものから小さなものまで、様々な工業生産に使用されます。

自動組立機で行われる組み立て・組付けの例は次のようなものが挙げられます。

  • 自動車のエンジン・トランスミッションなどの組立
  • その他自動車部品・車載電装品 (サスペンション、クラッチ、自動車用ダイナモ、自動車用イグニッションコイルなど) の組立
  • ディーゼルエンジンなどのエンジン組立
  • カーエアコンやルームエアコンで使用されるコンプレッサーの組立
  • 家電製品、腕時計などの部品組立
  • ステアリングモータ、マイクロモーターなど、各種モーター類の組立
  • 小型コイル・コアなどの組立
  • ミスト・液吐出ディスペンサーや、エアーレスポンプの組立
  • 電子部品 (カメラ、携帯電話用のマイクなど) の組立
  • 医療用品の組立 (注射針など) の組立
  • ペン先やキャップ、コイルスプリングなどの微細部品の組立
  • 筆記具の組立 (ボールペンチップ組み付けや修正液前軸組立など)
  • 粉体の成形や充填を要する化粧品 (口紅・ファンデーションなど) の組立

自動組立機の原理

1. 概要

ネジ締め機などの単一の作業を行う個々の機器について総称として自動組立機と呼ぶ場合や、いろいろな組立を複合した一連の組立ライン全体を自動組立機と呼ぶ場合があります。

自動組立機を構成する要素には主に下記のようなものがあります。

  • 部品供給 (パーツフィーダー)
  • 締付関連 (ネジ締め、カシメ)
  • ディスペンサー・塗布機 (潤滑剤や接着剤を吐出する)
  • 充填装置
  • エアチャック (ワークの把持・保持を行う)
  • 箱詰め装置・パレタイジング装置

また、これらを行う上でワークの有無や接近を検出する必要があります。そのために用いられるのが、光電センサや近接センサ、検査カメラなどです。

自動組立機は上記のような製品を組立・加工するユニットの他、製品及び部品を搬送するベースマシンとで構成されています。ベースマシンはライン型、ターンテーブル型の2タイプがあります。

2. ライン型自動組立機

ライン型自動組立機は、各工程が直線状に並んだものです。

ユニット配置が容易であるため、特に部品点数が多い自動機を構築する際にレイアウトが簡単です。メンテナンス性にも優れています。一方で、各ユニット間のスペースが必要なため、ターンテーブル型より広いスペースの確保が必要なケースがあります。

3. ターンテーブル型自動組立機

ターンテーブル型自動組立機は、回転する円盤の周囲に各工程の機能を配置する仕組みの自動組立機です。円周上に搬入工程から組立順に部品供給や組立、検査などのユニットが配置され、最後に排出工程へと送られます。

高密度にユニット配置が可能で省スペース化が可能ですが、部品点数が多い場合はレイアウトとメンテナンス性の両立が困難になる場合があります。

自動組立機の種類

自動組立機は、上述の通りネジ締め機などの単一の加工・組立作業を行う個々の機器を指す場合や、いろいろな組立を複合した一連の組立ライン全体やベースマシンを指す場合などがあります。組立装置においても、特定の組立に特化した専門装置から、数種類の組立機能がプログラムされた複合装置など、扱う対象や目的によってシステムはさまざまです。下記では代表的な自動組立機に要素として含まれる装置を説明します。

1. カシメ装置

カシメ (加締め) とは、リベットと呼ばれるピンを差し込み変形させる固定の方法です。装置としては、スピンカシメ機やプレスカシメ機などがあります。

2. ネジ締め装置

ネジ締め装置とは、ネジ締め作業を自動で行う装置です。ネジ締めによる組立も製造ラインによってさまざまで、ハンディタイプをベースとしてビットの移動とネジ締めが自動化されている製品や、ロボットアームによるビットの移動とネジ締めが自動化された製品などがあります。

3. 溶着装置

溶着とは、プラスチックや非鉄金属を接合する技術です。加熱・加圧・冷却することによって接合を行います。高周波溶着、熱溶着、超音波溶着などの種類があり、生産品に応じた方式が使用されることが一般的です。

参考文献
https://mouhitotsuno.pentel.co.jp/content/field/automation/compose/
http://www.kyoei-dk.co.jp/jidou-kumitateki/
https://www.nittoseiko.co.jp/products/search/index.php/search?cell003=%E8%87%AA%E5%8B%95%E7%B5%84%E7%AB%8B%E6%A9%9F&label=1

自動洗浄機

自動洗浄機とは

自動洗浄機とは、器具などの対象物を自動で洗浄する装置です。

それぞれの製品ごとに洗浄可能な対象は異なりますが、実験用のガラス器具、プラスチック製品、食器、コンテナ、床、トイレなど多岐に渡ります。また、被洗浄対象物の汚れの種類に応じて、洗浄機で用いる溶剤や溶媒、そして自動洗浄機の形状も大きく異なります。

自動洗浄機の使用用途

自動洗浄機は、洗浄作業の効率化・自動化を主な目的として用いられる機械です。実験室で用いられるガラス器具の自動洗浄機では、異なる種類の様々な器具を大容量チャンバーで同時に洗浄乾燥を行うことにより、洗浄作業の効率化を図ることが可能です。

それ以外では、充てん機などの製造プロセスに用いるパーツ、漁協や食品加工工場におけるセイロやプラスチックコンテナの洗浄、食器や床など洗浄用途は多岐にわたります。それぞれ汚れの種類も水溶性の汚れから、非水溶性の汚れ、もしくはその両方が含まれるものなどさまざまです。

手洗いによる洗いむらを解消し、より均一で清浄に洗い上げることが可能になります。また、機械化によって作業安全性が向上するとともに、人件費や水道代などのコスト削減も実現可能です。

自動洗浄機の原理

1. 実験用器具の洗浄機

実験用器具の自動洗浄機のイメージ

図1. 実験用器具の自動洗浄機のイメージ

実験室などで用いられる研究開発用のガラス器具やプラスチック器具用の自動洗浄機は、広い洗浄槽 (チャンバー) を持ち、洗浄棚 (あるいはバスケット・ラック) と呼ばれる部品が取り付けられた構造をしています。バスケットやラックなどを用いることで、種々の形状のアイテムを同時に洗浄可能となっています。

また、製品によってはバスケットやラックを洗浄対象物に合わせてカスタマイズすることも可能です。製品によってポンプ仕様は異なりますが、強力な洗浄ポンプで効率的に洗浄を行えるうえ、水温は対象物に合わせて設定することができます。

製品によりますが、アルカリ性洗剤・中性洗剤・酸性洗剤を使い分けて効率的に洗浄を行うことができる機械が多いです。洗浄から乾燥まで全自動で行われます。

2. ウェハー洗浄機

ウェハー洗浄用の自動洗浄機のイメージ

図2. ウェハー洗浄用の自動洗浄機のイメージ

ウェハー洗浄機は、ウェハーの研磨後洗浄等を目的とした装置です。ウェハー両面スクラブ洗浄機は、コンベアを用いてウェハーを両面スクラブ機構部に搬送し、ウエハーを回転させながら両面ブラシ洗浄を行います。

洗浄されたウェハーは、純水リンスを経てアンローダーにて水没収納されます。機械によっては、オプションで界面活性剤や高圧洗浄が可能です。

3. 業務用食器洗浄機

業務用食器洗浄機のイメージ

図3. 業務用食器洗浄機のイメージ

給食施設などで用いられる業務用食器洗浄機は、コンベヤで食器を搬送しながら洗浄する機械です。予備洗浄、主洗浄、すすぎの工程をコンベヤで搬送しながら行います。

業務用食器洗浄機の中には、傾斜付きコンベヤを用いたり、仕上げすすぎの前に循環水による循環すすぎの工程を導入したりして水や洗剤の節約を図った製品も存在します。

4. メタルマスクやメッシュスクリーン版の洗浄機

メタルマスクやメッシュスクリーン版などの洗浄では、共晶はんだ洗浄、鉛フリーはんだ洗浄、レジスト洗浄、金属ペースト洗浄、ポリアミド洗浄、ポリイミド洗浄、エポキシ洗浄など、幅広い汚れの洗浄に対応しています。版に向けて溶剤を噴射しする為、印刷品質に関わる開口部の汚れを完全に除去することが可能です。

洗浄から乾燥まで全自動で行われ、乾燥は温風で素早く仕上げられます。

自動洗浄機の種類

自動洗浄機の種類には、洗浄対象物によって様々な種類があります。下記はその一部の例ですが、用途に応じて適切なものを選択することが必要です。

  • 研究・開発などにおけるガラス器具用の洗浄機
  • ミキサ内部に固定するミキサ洗浄機
  • メタルマスクやメッシュスクリーン版の洗浄機 
  • ウェハー洗浄機
  • 産業・工業機械部品洗浄機
  • 業務用食器洗浄機
  • 金属加工部品・プラスチック容器
  • GMP洗浄機 (製剤プロセスに使用されるコンポーネント部材の洗浄 (ガラス製品やプラスチック製品、充填機や打錠機の部品) )
  • レンズ・ハードディスク用自動超音波洗浄装置
  • コンテナ自動洗浄機
  • 自動床洗浄機

参考文献
https://www.steri-pro.co.jp/product/index.html#product_washing

自動合成装置

自動合成装置とは

自動合成装置とは、従来手作業で行われていた様々な化学合成反応の自動化を行う装置です。

既に市販化されている主なものには、通常の液相有機合成装置・マイクロウェーブペプチド固相合成装置・フロー合成装置・CNT合成装置などがあります。開発途上のものも含めると、種類は非常に多いです。

自動合成装置の使用用途

自動合成装置は、実験室レベルでの有機化合物合成・ペプチド合成から、創薬スクリーニングにおけるパラレル合成、プロセス開発までと様々な用途で用いられている装置です。

1. 実験室スケールにおける省力化・効率化

自動合成装置の主な用途は、研究開発の現場において従来手作業であった合成反応を自動化し、省力化・効率化を行うことです。実験室においては新規反応の開発・合成反応経路の最適化検討などに用いられます。

本装置の自動化によって、再現性が向上したり、より精度の高い反応条件制御を行ったりすることが可能です。また、実験データが自動でコンピュータに記録されるため、より正確な実験記録を効率的に得られるだけでなく、正確な温度モニタリングによって試薬添加時などの熱暴走を抑制させることもできます。

2. 危険物取り扱い作業の機械化

放射性標識化合物自動合成装置など、一部の自動合成装置では、人間の手作業では取り扱いにくい合成反応を機械化する役割を担う側面もあります。これにより、実験者の危険物への曝露量を低下させることが可能です。

3. スクリーニング・プロセス開発における大規模反応の機械化

創薬スクリーニングにおいては、自動合成装置を使用することでより効率的に多数のリード化合物の調製を行うことが可能です。迅速かつ広範なスクリーニングを行うことで、効率的な創薬シーズの発見に繋がります。

化学プロセス開発においては、実験室レベルの合成をプラントスケールへスケールアップするにあたり、合成効率・安全性・コスト面などにおける多数の課題を解決する必要があります。特に、ヒートトランスファーや除熱は重要なポイントです。

自動合成装置を用いることで、反応熱量測定などの正確なモニタリングを行い、濃度・添加速度・撹拌などを機械によって自動化・効率化することができます。このように、自動合成装置はin situモニタリングを容易にし、再現性向上や効率的な条件最適化を行う目的で用いられています。

自動合成装置の原理

1. 液相合成装置

自動合成装置 (液相) のイメージ

図1. 自動合成装置 (液相) のイメージ

液相合成の自動合成装置は、従来の試験管型の有機合成を機械化したものです。加熱・冷却機能のついた恒温槽に反応容器が取り付けられており、試薬添加や撹拌 (撹拌翼ないしはマグネチックスターラーなど) は機械的な制御を受けて適切な速度で行われます。

実験データは各種センサーやモニターで常時モニタリングされ、正確かつ詳細に自動的にコンピュータに記録されます。

2. ペプチド合成装置

ペプチド自動合成装置のイメージ

図2. ペプチド自動合成装置のイメージ

ペプチド合成装置は、メリフィールド固相合成法によるペプチド合成をポンプを用いて機械化・自動化しています。メリフィールド固相合成法とは、N末端保護アミノ酸をレジン (樹脂) に担持し、反応容器内で脱保護・洗浄・N末端保護アミノ酸との縮合反応・洗浄のサイクルを繰り返す手法です。

1サイクルで1方向的に1残基ずつペプチドを伸長し、最後に樹脂から切断することで目的とするペプチドを得られます。 (ペプチド固相合成法の詳細は後述参照)ペプチド自動合成装置の中には反応容器にマイクロウェーブ照射を行うことのできる装置もあり、手作業で行う合成よりも反応時間を短くできる点がメリットです。

3. フロー合成装置

フロー合成装置は、近年活発な研究が行われているフローケミストリー (フロー法・フロー反応ともいう) を機械で制御し、自動的に行う装置です。従来の試験管型の反応をバッチ法といいますが、バッチ法では合成中間体の精製コスト・熱伝達や撹拌の効率・実験廃棄物の問題が指摘されてきました。

フロー合成装置では、試験管やフラスコの代わりにカラムやマイクロ流路を用い、ポンプで流路内に2種類以上の反応剤の溶液を流入して反応を行います。無触媒型や均一触媒型では反応後の精製操作が必要ですが、反応剤もしくは触媒などを固定化したカラムを反応容器として用いる場合には、反応後の精製操作のコストも大きく削減できます。

フローケミストリーでは、反応容器ボリュームをバッチ法よりも小さくすることができるために反応効率が高くなる他、表面面積が大きいため熱交換が早く、より精密な温度制御も可能です。

自動合成装置の種類

自動合成装置には前述の通り、液相合成装置・ペプチド合成装置・フロー合成装置などの種類があります。小スケールの検討を目的とした小型製品から、プロセス開発においてスケールアップ検討を行うためのパイロットプラントクラスの大型製品まで大きさもさまざまです。

その他、例えばカーボンナノチューブを合成するCNT合成装置やPETに用いる放射性医薬品を合成する放射性医薬品自動合成装置等が挙げられます。放射性医薬品自動合成装置では、サイクロトロンから生成される [18F] フッ化物および各前駆化合物から放射性医薬品を自動的に合成、精製し、PET 用放射性注射液を製造します。

自動合成装置のその他情報

ペプチド固相合成法

Fmoc法の概要 (上) とFmoc基の除去反応 (下)

図3. Fmoc法の概要 (上) とFmoc基の除去反応 (下)

ペプチド固相合成法はN末端の保護に用いる保護基によって主に2種類に分かれており、tBoc法とFmoc法があります。tBoc法では、主にTFA (トリフルオロ酢酸) を用いる酸性条件で脱保護を行います。

一方、Fmoc法は塩基性条件で脱保護を行い、主にピペリジンを用いる方法です。近年ではFmoc法の方が主流です。最後に樹脂から切り出す条件が酸性であるためtBoc法の方が副反応が起こりやすいと考えられること、Fmoc法の副生成物は溶媒 (DCM(ジクロロメタン) またはDMF (ジメチルホルムアミド)) によって容易に除去できること、などが理由と考えられます。

参考文献
https://www.mt.com/jp/
http://dfc-kyoto.co.jp/flow/
https://m-hub.jp/chemical/873/principle-and-method-of-solid-phase-peptide-synthesis

自動切断機

自動切断機とは

自動切断機

自動切断機とは、機械によって加工物の位置決めを行い、自動で金属などの切断を行う切断機のことです。

作業者が手に持って切断を行う手動切断機と対比して、自動切断機と呼ばれます。メタルソーやチップソーが装着され、プログラムで切断位置を指定するなどの方法で機械が自動的に鋼材の切断を行う装置です。大型の定置式切断機のほか、手で持って移動することができる小形の可搬式切断機 (ポータブル切断機) などがあります。

自動切断機の使用用途

1. 概要

自動切断機は、主に金属加工における切断を行うための装置です。被切断物には次のようなものがあります。

  • 一般鋼材 (丸棒、角棒、アングル材、その他)
  • アルミ押出材
  • ステンレス
  • 各種パイプ管 (丸、長方形、正方形など)
  • 鉄筋
  • ワイヤーロープ

直線切断の他、円弧切断や精密切断、型切断を行うことができる種類の自動切断機もあります。

切断機の種類や、製品にもよりますが、一般的には下記の各種素材を切断することが可能です。

  • ステンレス鋼
  • アルミ
  • 真鍮
  • チタン

2. 自動切断機が使用される分野

自動切断機は主に、以下の分野で使用されます。

  • 金属加工
  • 自動車製造
  • 鉄筋加工
  • 住宅基礎建造
  • 家具製造
  • 造船
  • 橋梁建造
  • PC・二次製品・セグメント業界

また、自動切断機の中で特に試料切断機と呼ばれるものは、材料の試験や分析を行う目的で適切な大きさに切り出すための切断機です。結晶体、金属組織分析などのため、光学顕微鏡試料、電子顕微鏡試料、強度試験片等などを作成するために使用されます。

自動切断機の原理

自動切断機は、切断砥石やチップソー、回転ノコ刃などをセットして金属を切断する仕組みです。ベルトなどで材料を搬送したり、プログラムで切断位置を指定するなどの仕組みにより、手動で位置決めをすることなく、自動的に切断が行われます。鋸刃の種類には次のようなものがあります。

  • 丸鋸 (チップソー、メタルソーなど)
  • 帯鋸 (バンドソー)
  • 弓鋸

ロールカッターと呼ばれる工具は、薄肉パイプ専用の切断装置です。これらの他、プラズマカッターやガス切断が用いられる場合もあります。

自動切断機の種類

1. 概要

自動切断機には多種多様な製品があり、様々な区分で分類することが可能です。

大きな形態としては、定置式と可搬式があります。また、切断方法によっても分類することができ、用途によって使いわけられています。

2. 定置式と可搬式

定置式自動切断機は、据え置き型で固定された切断機です。大きなものから小さなものまで目的に合わせて様々なものがあります。

可搬式自動切断機は、ポータブル切断機とも呼ばれる切断機です。可搬式自動切断機は小形で移動することができ、小回りがききます。主には、直線や円などの形状で切断が行われ、一部には金型をトレースするマグネット・トレーサや、パイプやH形鋼を切断する立体切断機もあります。可搬式自動切断機では、ガス切断装置およびプラズマ切断装置での切断が一般的です。

3. 切断方法

自動切断機の切断方法による分類区分は、主に下記のとおりです。

  • 高速切断機
    Φ約300から400mmの切断砥石を高速回転させることで、ステンレスや一般鋼材などを短時間で切断します。金属を固定しながら、切断するので真っ直ぐきれいに切断可能です。角パイプやアングル材などの切断に汎用されます。
  • バンドソー (帯ノコ盤)
    帯状の鋸刃を高速回転させることで、金属を切断を行う装置です。縦型・横型・ポータブルタイプなどの種類があり、特にパイプや中身の詰まった丸棒、角材の切断に適しています。
  • メタルソー切断機
    メタルソーを使用し、正確な寸法で切断ができます。
  • 精密切断機
    高精度を求める切断に使用します。ダイヤモンドソーなどが使用されます。安全で、断面が綺麗なのも特徴です。
  • ガス切断機
    アセチレンガスと酸素を使用する切断方法です。酸化と燃焼による反応を利用することから、酸素切断とも呼ばれます。
  • レーザー切断機
    CADなどでプログラムを読み込ませて、レーザーによって自動で切断を行う切断方法です。
  • プラズマ切断機
    棒 (トーチ) の先端についている電極と素材の間にプラズマを発生させ、金属素材を超高熱で溶かして切断する方法です。プラズマ切断機本体とエアーコンプレッサが必要になります。厚み10mm程度まで楽に切断できる機種もあり、また、電気が通る金属はほとんど切断可能です。音が静かであるという特徴があります。

参考文献
http://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0070100160
https://www.weldtool.jp/contents/chose-cut

自動分析装置

自動分析装置とは

自動分析装置 (生化学自動分析装置) のイメージ

図1. 自動分析装置 (生化学自動分析装置) のイメージ

自動分析装置とは、目的が決まっているある程度ルーチン化された分析について自動で分析を行う装置です。

代表的な例として、臨床で用いられている生化学自動分析装置があります。生化学自動分析装置は、人体から採取した血液・尿などの体液成分の検体について基礎的な生化学検査項目の成分を分析する装置です。

その他の自動分析装置には、同じく医療分野で用いられている多項目自動血球分析装置の他、他分野では油中ガス自動分析装置、全有機体炭素自動分析装置 (TOC計) などがあります。

自動分析装置の使用用途

生化学自動分析装置は、病院の検査室や検査センターなど、主に大きな医療機関を中心に広く取り入られており、患者の微量検体を用いて迅速かつ高精度な検査分析を行う目的で使用されます。生化学自動分析装置を用いることにより、基礎的な生化学検査項目の測定を行うことができ、製品によってはその他にも腫瘍マーカー、免疫血清など、免疫測定項目の分析が同時に可能です。

検査用途としては、例えば健康診断などの大規模なスクリーニング検査、外来において診察の前に行う診療前検査、治療の効果を確認するフォロー検査などがあります。生化学自動分析装置による血液検査・尿検査は今日の医療における診断の大きなウェイトを占めており、病院の検査室など臨床検査の現場では無くてはならない存在です。

自動分析装置の原理

生化学自動分析装置による分析は主に吸光測定などの分光学的手法で行われ、微量の検体試料による測定が可能です。測定に用いる吸光光度法は、ランベルト・ベール (英: Lambert-Beer) の法則に従う分析法です。

測定したい検体成分と試薬の反応については吸光度と濃度の関係をプロットした検量線が予め用意されており、これに分光光度計を用いた吸光度測定の結果を当てはめることで、試料の濃度が同定できます。自動分析装置では吸光度測定後、コンピュータによって自動的に濃度の同定まで速やかに行われます。

自動分析装置の種類

自動分析装置の多くは、生化学自動分析装置や多項目自動血球分析装置など医療分野で用いられていますが、その他の産業で用いられている自動分析装置もあります。

1. 生化学自動分析装置などの臨床用装置

生化学自動分析装置では、基礎的な生化学検査項目である、グルコースなどの糖類やコレステロール、タンパク質及びγ-GTPなどの酵素などの測定を行います。製品によってはその他にも腫瘍マーカー、免疫血清など、免疫測定項目の分析が同時に可能です。大型機や卓上機など、様々な大きさの製品があります。

その他の臨床用装置に、多項目自動血球分析装置があります。多項目自動血球分析装置では、白血球や赤血球を始めとする血球成分の分析を行うことができます。

2. 油中ガス自動分析装置

油中ガス自動分析装置のイメージ

図2. 油中ガス自動分析装置のイメージ

油中ガス自動分析装置は、変圧器など油入機器に使用されている絶縁油中の溶存ガスを分析し、異常診断を行なうために用いられている装置です。

3. TOC計

TOC計のイメージ

図3. TOC計のイメージ

全有機体炭素自動分析装置 (TOC計) は、河川・湖沼・海域・工場排水や土壌、化学製品など、さまざまな環境サンプルや化学製品中の全有機体炭素量をオンライン、あるいはオフラインで迅速かつ正確に自動分析する装置です。微小濃度の有機物にも対応できるため、カーボンリサイクル関連施策のための環境モニタリングや、品質管理において正確な測定が可能です。各種研究・試験機関での研究開発用に、卓上型の小型機もあります。

自動分析装置のその他情報

1. 測定プロセスの概要

装置の主な測定プロセスは、サンプリング・試薬分注・撹拌・反応・分光学的測定・洗浄、となっており、下記のようになります。

  1. 装置のサンプラにセット血液や尿などの体液検体をセットする
  2. 微量の検体をサンプリング (分注) し、反応セルに入れる
  3. 検査項目に応じて必要な試薬を分注添加し、撹拌機構で撹拌する
  4. 撹拌した反応セルを反応テーブルに保持し、反応に必要な時間だけ恒温を維持する
  5. 反応が完了した検体をベルトコンベアー式に測光部へ送らり、分光光度計を用いた吸光光度法によって定量分析・定性分析を行う (分析完了)
  6. 繰り返し使用するプローブや反応セルなどを洗浄する

2. 侵襲性

生化学検査における患者の侵襲は、微量の血液や尿の採取を採取するだけです。検査操作は検査室内で試薬反応と分光学的検査となるため、放射線被曝などの侵襲を伴うレントゲン検査やCT検査などに比べて低侵襲であるという利点があります。

また、近年では高精度・高速・高機能な装置の普及が進んだことにより、測定の効率化や測定時間の短縮がなされている他、必要検体量も更に微量化されてより低侵襲な検査が行えるようになっています。

参考文献
https://www.jeol.co.jp/science/ca.html

積算流量計

積算流量計とは

積算流量計とは、流体通過量の累積値を表示する流量計です。

冷却水やアルゴンなど、多種多様の流体に使用されます。流体の流量には、瞬時流量と積算流量の2種類があります。

前者は一定時間あたりに流れる量を指し、後者は測定開始から流れた量の累積値を指します。積算流量計は後者を測定する流量計で、流体の累積流量を測定するために使用されるものです。

積算流量計の使用用途

積算流量計は、さまざまな産業および応用分野で使用されます。瞬時流量計はプロセス管理や制御用途に使用されることが多いですが、積算流量計は取引や排出基準監視用などに使用されることが多いです。以下は積算流量計の使用用途一例です。

1. 流体供給管理

流体の供給量を正確に測定し、管理するために使用されます。身近な例では、水道メーターやガスメーターが挙げられます。月初の値を確認またはリセットしておき、月末に再確認することで月毎の使用量を算出可能です。

また、製造現場においては、重油や軽油などの液体燃料の測定に使用されることがあります。液体燃料はタンクローリーなどで運搬されることも多く、車両に付属した積算流量計で取引量を確認します。

2. エネルギー管理

積算流量計は、エネルギー供給や消費の計測に使用されます。例えば、軽油などの燃料使用量確認や冷却用水使用量確認などで使用され、エネルギー効率の向上やコスト削減に寄与します。液体燃料や用水の取引量確認用と兼用されることも多いです。

3. 環境モニタリング

環境モニタリングにおいても利用されます。水質管理や廃棄物処理プラントでの流量測定、大気排出ガスの計測などがあります。工場の排出ガス量や排水量は条例などで規制されていることが多いため、積算流量計によって排出者と官憲の双方で確認します。

また、下水の排出量なども積算流量計で確認可能です。し尿などは合併浄化槽などで浄化した後、海や河川に放流されます。下水道にも使用料が定められているため、積算流量計などで適正に確認されています。

積算流量計の原理

積算流量は、瞬時流量に時間を掛け合わせると求められます。ただし、瞬時流量は流量変化時に不安定となる場合があるため、積算値を正確に表示できないことも多いです。したがって、積算値は積算流量計を用いて測定します。

積算流量計は積算値を正確に計量する必要があるため、容積式などの測定原理が用いられます。容積式は流体が管を通過する際に、その体積を計測する方式です。体積測定にはギアなどが使用され、ガソリンなど粘度の高い流体の流量も正確に計測できます。

積算流量計の種類

積算流量計はさまざまな種類が存在します。以下は積算流量計の種類一例です。

1. 容積流量計

容積流量計は流体が通過する際の容積を直接的に測定し、流量を算出する流量計です。容積の測定にはタービンやギアが使用されます。

流体の容積を直接測定するため、非常に高い測定精度です。正確な流量データを得られることから、燃料などの有価液体の流量測定などに使用されます。

また、堅牢な構造を持ち、耐久性があります。適切な保守と適切な環境条件下で使用される場合、長期間にわたって信頼性の高い値を計測可能です。

2. 渦流流量計

渦流流量計は、流体の流れにおける渦の発生および変化を検出して流量を測定します。流体が管内を通過する際に渦が発生し、その渦の周波数や振幅を測定することで流量を推定します。

気体と液体のどちらも測定することが可能です。主に蒸気の流量測定や清浄水の流量測定に利用されます。ただし、スラリーや粉体を含む流体に対しては、測定口が詰まるため不向きです。

一般に堅牢な構造を持ち、内部に可動部品がないため、耐久性が高く信頼性があります。渦の発生や変化に基づいて流量を推定するため、高い精度で測定することが可能です。また、可動部品が少なく、メンテナンスが比較的容易です。

3. 熱式流量計

熱式流量計は、流体の流れによる熱伝導または熱冷却の効果を利用して流量を測定する流量計です。一般的には熱線式流量計や熱散乱式流量計があります。熱源とセンサーを用いて温度差を検出し、その変化から流量を推定します。

4. 電磁式流量計

電磁式流量計は、流体中の導電性を利用して流量を測定します。磁場を掛けた状態で流体を通過させ、生じた電位差を測定して流量を算出します。

非接触で流量を測定可能であり、圧力損失が非常に低い点が特徴です。ただし、測定対象は導電性に限定されます。重油などの油の測定には使用できません。

参考文献
https://www.pentough.com/shiryo/kouza/keisoku02.pdf
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/flowmeter/base/instant.jsp
https://www.shinagawa-net.co.jp/j_m2_1.html
https://www.m-system.co.jp/mstoday1/MSTback/data/2001/07/Data/Ryuryo_T.htm

石定盤

石定盤とは

定盤とは、素材や部品などの加工のための寸法測定や検査等を行う際に、平面の基準として用いられる台のことです。

一般的に、四角形の形状をしています。定盤の上に置くもののサイズや用途に合わせて、さまざまな大きさがあります。

定盤は高い平面精度を持っており、さらに重たい部品などを載せても精度が保たれるように、高い剛性も必要です。精度や大きさはJISで規定されており、部品を固定するための穴やリブなどを加工することも認められています。

なお、JISでは定盤の材質として鋳鉄と石材の両方を規定していますが、材質による規格上の相違はほとんどありません。

石定盤の使用用途

石定盤は素材や部品のケガキ、加工、測定などの際に絶対的な平面を確保するために使用します。これは材質に関わらず、全ての定盤に共通することです。定盤を平面基準として加工機や測定機を動作させることで、直線や平面の加工や測定が可能となります。

つまり、定盤の上面を理想的な直線、平面と仮定して、加工や測定を行うことができます。定盤の材質が用途の違いに直結することはありませんが、石定盤を使用することにより求められるものは、主に耐摩耗性や腐食などの耐環境性などです。

石定盤の原理

石定盤は平面の基準となるため、JIS B 7513 精密定盤によって平面度による等級が定められています。また測定する部品には重量が大きく、定盤が変形すれば測定精度に影響しかねません。

上記JISでは剛性についても規格が設けられています。また、取り扱いの注意事項として、温度及び湿度が管理された雰囲気の中に設置すること、直射日光や突然の通風なども避けることなどが謳われています。

石定盤の特徴

鋳鉄製の定盤と比較した場合の石定盤の特徴は、経年変化が少ない、耐摩耗性が高い、耐環境性が高い、キズによるかえりやまくれがない、磁性を持たないなどです。また、定盤は使用において、平面度の維持が絶対条件です。

長年の使用により平面度が悪化した場合は、平面度を良くするために研磨を行います。石定盤の経年変化が少ない、耐摩耗性が高い特徴は、平面度の悪化を遅らせることが可能です。再研磨の回数を減らし、維持管理コストの低減が図れます。

また、石定盤では不注意により部品などを落下させた際のキズによってかえりが出ません。平面度の悪化だけでなく、かえりにより部品や測定機へキズ防止にもなります。

鋳鉄製の定盤に比べ石定盤の方がメリットばかりのようにも見えますが、コストが高いのがデメリットです。多くの石定盤は斑レイ岩を使用しており、硬い材質のため、平面度を出すため多くの加工時間が必要です。

石定盤のその他情報

1. 石定盤の等級

石定盤にはJISに規定された等級があり、0級、1級、2級に分類され、0級が最も高精度です。それぞれの等級には、平面度を計算するための定数C1とC2が定められており、この定数と定盤の対角長さから許容平面度を算出します。

許容平面度は、C1に定盤の対角長さを乗じたものにC2を加えて計算します。例えば0級定盤の場合、C1は0.003、C2は2.5と規定されており、対角長さ1000 mmであれば、1000×0.003+2.5=5.5 μmです。1級では、C1が0.006、C2が5、2級では、C1が0.012、C2が10と規定されています。

等級によって価格が大きく変わることはもちろん、製作可能なサイズも制限があるので、必要平面度とサイズにあったものを選択しなければなりません。

2. 石定盤の手入れ

定盤は平面精度が保証されている基準として使用します。そのため、日々の管理をしっかり行い、精度の狂いがないようにすることが必要です。表面をきれいな状態に保つことも欠かせません。表面が汚れていると、測定器などをスムーズに動かすことができず、測定誤差につながります。

また、表面に油分や固着したゴミなどがあると、平面度が悪くなってしまいます。そこで、石定盤専用のクリーナーの使用が管理維持には不可欠です。

実作業としてはまず、大きなゴミや埃をエアーブローで除去してから、専用クリーナーで拭き上げます。クリーナーを水拭きできれいにふき取り、乾拭きして乾燥させます。清掃が終わった後はカバーをかけて、埃などがたまらない様に保護することも大切です。また、検査に使用するものであれば、定期的に平面度を確認します。

石定盤は経年変化が少ないため、日々の清掃や平面度管理をきちんと行うことで、半永久的に使用することが可能です。

参考文献
https://www.daiwajuko.co.jp/industrial/surface_plate/about/
https://www.nabeya.co.jp/jig/point-plate.html
https://kikaikumitate.com/post-3409/

画像測定器

画像測定器とは

画像測定器

画像測定器とは、対象物の画像を解析して形状や寸法、位置などを高精度で測定する装置です。

CCDカメラやレーザー変位センサーなどの画像センサーで対象物を撮影し、専用の画像処理ソフトウェアによって得られた画像データから寸法計測や形状検査を行います。測定精度は高く、非接触での計測が可能なため、小物部品などの微細な形状測定に適しています。

具体的には、自動車や電機・電子機器などの製造ラインにおける品質管理です。画像処理技術の進歩により、測定速度や操作性も向上しており、精度と効率の両立が図れるようになっています。

画像測定器の使用用途

画像測定器は非接触で高精度な計測ができることから、品質管理や検査工程の自動化ニーズが高まる中、その活用範囲が拡大しています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

1. 電子部品や自動車部品の微細寸法測定

複雑な形状の製品でも非接触で寸法計測ができるため、微細な電子部品や自動車エンジンの各部品の寸法管理に威力を発揮します。測定誤差が生産停止につながる重要工程で、高精度な計測が求められています。

2. 食品や医薬品の外観検査

製品の形状や色、欠陥の有無を画像処理で判定し、人の目視に頼らない自動選別が可能となります。大量生産されるこれらの製品の品質を均一に保つうえで、画像測定器による検査は必要不可欠です。

3. 半導体産業

半導体製造でも、微細なパターンや線幅を測定する際に画像測定器が活用されます。製造プロセスがますます複雑化する中で、正確な測定は欠かせない要素となっています。

画像測定器の原理

画像測定器は対象物から得られた画像データを解析して、寸法や形状、位置関係などを高精度に測定します。その仕組みは以下のプロセスによって成り立っています。

1. 高解像度画像の取得

画像測定の基本は、対象物の高解像度の画像データを取得です。CCDセンサーやCMOSセンサーなどの高性能カメラにより、ミクロンオーダーの解像度で対象物を撮影します。

また、対象物を回転させたり、複数方向から撮影したりして、3D的な形状データを構築します。

2. 画像処理による特徴量抽出

次の工程は、画像処理による特徴量の抽出です。エッジ検出や陰影解析などの画像処理技術を駆使して、対象物の輪郭線や角、穴などの特徴を画像から読み取ります。複雑な形状でも特徴量を正確に抽出できるよう、画像処理アルゴリズムが進化しています。

3. 測定演算と結果出力

抽出された特徴量を入力データとして、設定された測定演算アルゴリズムに従って処理を行います。演算では寸法計算や幾何学的解析が行われ、測定結果が出力されます。演算アルゴリズムは高精度化を追求して開発が進められています。

4. 精度の向上

画像センサーや画像処理技術の向上により、画像測定器の精度は日進月歩で向上しています。より高解像度の画像データを入力し、精緻なアルゴリズムで解析して、微細寸法の非接触計測が可能となっています。

 

以上のプロセスにより、従来困難だったミクロンオーダーの非接触高精度計測が実現しています。画像測定器は、今後も精度向上が期待される分野です。

画像測定器の種類

画像測定器にはその用途や特徴に応じて、様々な種類があります。それぞれに適した用途があるため、目的に応じて最適な測定器を選択が重要です。

1. オプティカルコンパレーター

光学系の測定器で、レンズを用いて基準パターンと対象物のずれを検出します。主にMEMSや半導体製造プロセスの測定に使われています。

2. 二次元画像測定器

CCDカメラで対象物を撮影し、専用の画像解析ソフトで寸法解析を行う汎用的な測定器です。形状測定から欠陥検査まで、用途は多岐にわたります。

3. 三次元画像測定器

レーザーやスリット光を用いて三次元形状を計測する測定器です。自動車部品などの立体的な形状測定に適しています。

4. 顕微鏡型測定器

顕微鏡とCCDカメラを組み合わせ、微細部品の寸法計測を行う高精度な測定器です。精密部品の寸法管理に利用されています。

5. 表面欠陥検査機

表面のキズや汚れを画像処理で検出する欠陥検査専用の装置です。薄膜素子やウエハの検査に用いられます。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/measurement-selection/type/image.jsp