使い捨て白衣

使い捨て白衣とは

使い捨て白衣

使い捨て白衣 (英語: Disposable lab coat, Single-use lab coat)とは1回限りの使用用途を想定した白衣です。ディスポーザブル白衣、ディスポ白衣とも呼ばれます。私服や学生服、作業服、スーツなどの上から羽織って使用します。

各種用途に合わせて樹脂製(ポリプロピレン、ビニール、ナイロン等)や布製などがあり、用途に応じて最適なものを使い分けます。使い捨て白衣が利用される場面としては、高校、大学の化学実験や病院(手術、感染症治療)、食品加工の現場などが挙げられます。

使い捨て白衣の使用用途

使い捨て白衣の使用用途としては以下が挙げられます。

  • 高校、大学の化学実験における学生向けの実験
  • 病院の感染症病棟での治療
  • 歯科治療
  • 出産時の父親の立ち合い
  • 食品加工工場
  • 電子部品の製造現場
  • 家屋のカビ除去作業
  • スプレー塗装作業

使い捨て白衣には種類があるため、設置環境や使用用途に合ったタイプを選ぶことが大切です。

使い捨て白衣の種類

使い捨て白衣には、樹脂製と布製の2種類あります。

1. 樹脂製の使い捨て白衣

化学物質から製作するため、皮膚に触れた際にアレルギー反応等を起こす可能性があるものの工場で大量生産できることが最大の特徴です。工場で大量生産できるため、コストが布製に比べて安価であることも魅力の1つと言えます。なお、リユースすることはできないものの、マテリアルリサイクルを行うことで再度樹脂素材としてリサイクル材を取り出すことが可能です。

現在は樹脂製の使い捨て白衣が主流となっています。サーキュラーエコノミーの観点からも、クローズドループで回すことが可能な樹脂製の使い捨て白衣をメインとしていくことが望ましいと考えられています。

2. 布製の使い捨て白衣

身に着けた際に肌へ対する刺激が弱いため、皮膚などが弱い方に最適です。また、布製であるため使い捨てず洗浄し、リユースすることも可能です。

使い捨て白衣のその他情報

使い捨て白衣のメリット

    1. 病原菌の拡散を防ぐ
      微生物や細菌の研究をしている研究室や、感染症の治療をする病院などにおいては、作業毎に白衣を捨てることで病原菌が研究室や作業場所に残ってしまうことを防ぎます。白衣を使い回す場合、常に清潔に保つために入念な洗浄が必要となりますが、洗浄が不十分で病原菌が残る恐れがあります。

      また、洗浄作業も含めて複数人が汚染された白衣に触れることになります。使い捨て白衣を使うことで、汚染された白衣から病原菌が拡散するリスクがなくなり、作業者の安全を守ることができます。

    2. 作業者の化学物質への暴露を防ぐ
      化学物質を取り扱う場所では、白衣を着ることで作業者の服が化学物質によって汚れることを防いだり、肌に被液して薬傷を起こすことを防ぐことができます。しかし、白衣を使い回すことで、白衣に付着した化学物質が浸透して作業者に悪影響を及ぼすことがあります。

      使い捨て白衣を使用することで、化学物質で汚染された白衣を着るリスクをなくし、それにより化学物質による被害を限りなくゼロに近付けることができます。

    3. 交差汚染を防ぐ
      交差汚染とは、病原菌や細菌などの付着により汚染度が高くなったものが、汚染度の低いものに接触することで汚染が広がることを指します。医薬品の製造現場や食品加工の現場においては交差汚染が重大な問題になります。

      白衣を使い回すと、病原菌や細菌による交差汚染のリスクが高まるだけでなく、白衣の洗浄に用いた洗剤や白衣の繊維そのものが交差汚染を引き起こすことも懸念されます。これらのリスクを排除するためには、白衣を使い捨てにすることが有効な手段となります。

    4. 管理の手間が掛からない
      汚染が重大な問題に繋がるような場所では、作業環境を常に高い清浄度に保つことが求められます。上記でも述べた通り、白衣の使い回しには交差汚染のリスクがあるため、問題を起こさないために徹底的な洗浄と清浄度の管理が求められ、管理の手間が掛かります。使い捨て白衣を利用することで、白衣の清浄度は常に高い状態を担保することができ、管理の手間を省略することができます。

参考文献
https://ths-net.jp/c/disposable.html

アスファルトルーフィング

アスファルトルーフィングとは

アスファルトルーフィング

アスファルトルーフィングとは、防水紙などにアスファルトを浸透させた防水シートの一種です。

ビルや住宅の屋根や壁面に使用され、雨水の侵入を防ぎます。建築物にとって雨漏りは脅威です。木材はそこから腐食が始まり、コンクリートは亀裂から侵入した雨水で鉄筋部にダメージを受けます。

アスファルトルーフィングは表からは見えませんが、建築物によって重要な役割を果たしています。

アスファルトルーフィングの使用用途

アスファルトルーフィングは、建築物全般に使用されます。以下は、アスファルトルーフィングの使用箇所例です。

  • 住宅用屋根材
  • 高層ビル用屋根材
  • 公共重要建築物の屋根材
  • 住宅用壁材

アスファルトルーフィングの原理

アスファルトルーフィングは、防水紙にアスファルトを浸透させた構造です。アスファルト自体にも防水機能と防水紙の性能によって雨水の侵入を防止しています。 防水紙以外では、不織布やフェルトなどが使用される場合もあります。

アスファルトルーフィングの類似品として、改質アスファルトルーフィングや高分子系ルーフィングが挙げられます。その中でも、アスファルトルーフィングは安価なため、使用される機会が多いです。

アスファルトルーフィングのその他情報

1. アスファルトルーフィングと屋根部材

アスファルトルーフィングと屋根部材は2つ揃って雨水侵入を防止することが可能です。住宅建築の際には、屋根下地にアスファルトルーフィングを隙間なく敷き詰めます。施工にはタッカーと呼ばれる大型ホッチキスを使用します。

アスファルトルーフィングを施工したうえで、屋根部材を取り付けていきます。屋根部材に異常はないが雨漏りはしている場合、アスファルトルーフィングが経年劣化等で破損している可能性が高いです。

2. ルーフィングの種類

ルーフィングとは屋根の下地に敷き詰める防水シートです。ルーフィングにはさまざまな種類があり、以下はルーフィングの一例です。

  • アスファルトルーフィング
    一般的に多用される防水紙で、ストレートアスファルトを紙や不織布といった基材に浸潤させた防水紙です。
    また、アスファルトルーフィングの寿命は一般に10年程度と言われています。安価なアスファルトルーフィングが10年の寿命を有するため、一般に建物は新築から10年間は雨漏れしないことを意味します。
  • 改質ゴムアスファルトルーフィング
    アスファルトルーフィングは状態変化によって劣化していきます。その劣化現象を改善したルーフィングです。アスファルトルーフィングとは異なり、アスファルトにゴムや合成樹脂などを混合させて耐久性を高めています。20年以上の長寿命を持ちます。
  • 粘着層ルーフィング
    ルーフィングを固定する釘などが原因で雨漏りを引き起こすケースは多々あります。粘着層ルーフィングは固定部材を使用せずに屋根に固定が可能です。そのため、複雑な屋根形状の場合に適した防水紙となります。
  • 高分子系ルーフィング
    合成樹脂を主成分としたルーフィングです。適切に使用すると高いパフォーマンスが期待できます。
  • 透湿防水紙ルーフィング
    外部からの水分は通さない一方、内部の湿気を外部に放出できるルーフィングです。カビの発生しやすい木造建築に使用することで、建物を長持ちさせることができます。

3. ルーフィングの選び方

ルーフィングを選定する際に重要なポイントは、屋根材よりも寿命の長いルーフィングを選ぶことです。ルーフィングよりも屋根材の寿命が長い場合、屋根材がまだ使用できるにも関わらず屋根材を取り外す必要があります。

瓦のような屋根材であれば再利用可能ですが、再利用ができない屋根材の場合は屋根材も新調しなければなりません。そのため、屋根材や入居期間を考慮して適切なルーフィングを選定することが重要です。

参考文献
http://aspdiv.jwma.or.jp/jutaku/pdf/kikaku_04s-04.pdf
https://www.krkroof.net/publication/pdf/krk_seat2017_06.pdf
http://www.yaneyasan13.net/blog/49228.html

セーフティスイッチ

セーフティスイッチとは

セーフティスイッチは、工作機械本体の扉や周囲の安全柵など、安全を確保すべき場所に設置する装置です。

安全スイッチとも呼ばれています。工作機械の扉や周囲の安全柵などが閉まっていない状態で機械が駆動した場合、事故に繋がる可能性があります。これらが閉まっているのを検知し、その時だけ機械の駆動を許可するのがセーフティスイッチです。扉や安全柵をロックする機能が付いているものもあります。

セーフティスイッチの使用用途

セーフティスイッチは、安全確保のために設けられる工作機械自体の扉や、機械の周りの安全柵の開閉を検知し、機械の駆動を制御するために使用されます。インターロック装置として使用されるのが、主な用途です。

インターロック装置とは、機械など駆動する機械の周囲の安全が確保されていない状態では、当該機械の動作や起動を許可しない働きをする装置です。機械稼働中に機械自体の扉や周囲の安全柵が開かないようにロックをかけたい場合のために、ロック機能付のものもあります。

セーフティスイッチの原理

セーフティスイッチは、アクチュエーターと本体からなります。アクチュエーターは、専用の形状を有した、いわば鍵としての機能をするものです。扉や安全柵の可動部分に取り付けられます。

セーフティスイッチの本体には、アクチュエーターの挿入口があります。本体は、扉が閉まるとアクチュエーターが挿入口に入る場所に固定された状態になります。本体の中には機械に駆動を許可する信号を伝えるための電気的接点が設けられています。すなわち、扉が閉まり、アクチュエーターが本体の中に挿入されてはじめて電気的接点が切り替わり、機械に駆動を許可する信号を送る仕組みです。

ただし、このシステムでは機械が駆動した時に扉や柵がロックされるわけではありません。そこで、ロック機能を持ったセーフティスイッチも製造されています。

セーフティスイッチのその他の情報

1. 具体的な使用例

一般的な使用例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 工作機械の安全確保
    各種工作機械は、高速回転を伴うとともに、加工時の切りくずなどが飛んでくるおそれがあり非常に危険です。また、多くの工作機械は加工終了後に即時停止せず、一定時間惰性での稼働が続きます。このため、作業者が危険な目にあわないよう、セーフティスイッチを機械の扉に設置して機械が完全に停止しない限り扉が開くことがないように設定されます。
  • 多軸ロボットアーム周辺の安全確保
    多軸のロボットアームは、様々な分野の製造ラインの組み立て工程などで活躍しています。ロボットアームは様々な方向に回転するため、可動領域内に作業者がいるとロボットアームの動作に巻き込まれる可能性があり、安全の確保が必要です。
    そこで、ロボットアームの可動領域周辺に柵を設け、柵の開閉部にセーフティスイッチを設置します。作業者が柵の外に出て扉を閉じない限り、ロボットが起動しないようにすれば安全を確保できます。
  • 複数のロボットアームが稼働する生産ライン
    装置自体の安全確保のためにセーフティスイッチを使用する場合もあります。特に複数台のロボットアームが連動して稼働する生産ラインなどです。予期せぬタイミングで動作が始まるとロボットアーム同士が接触し破損してしまう可能性があるためです。

2. ロック機能のあるセーフティスイッチ

ロック機能があるセーフティスイッチについて解説します。一般的に、内部構造として「カム」と「ロッド」の関係によるロック機構を有しており、扉の開閉などに応じて「カム」と「ロッド」が動くことにより、ロック状態を切り替えることができるようになっています。ロック方式としては、主に以下の2つがあります。

  • スプリングロック方式
    スプリングの伸縮を用いてロックをするため、電源切断時にも機械的なロック状態を保持できます。このことから、惰性で動きすぐに停止できないものへの使用に適しています。
  • ソレノイドロック方式
    ソレノイドの力でロックを行うため、電源切断と同時にロックも解除されます。このため、電源切断後に即停止できるものへの使用に適しています。

3. セーフティスイッチのその他のタイプ

セーフティスイッチには、非接触式のものもあります。物理的な接触ではなく、磁気検知や電磁誘導で両者の距離を検出するのが非接触式のタイプです。アクチュエーターと本体の嵌合などによるチリやホコリを避けたい場合に使用されます。クリーンルーム内の設備や食品製造ラインなどでの使用に適しています。

参考文献
https://xtech.nikkei.com/dm/article/LECTURE/20120828/236140/?P=5
https://xtech.nikkei.com/dm/article/LECTURE/20121025/247572/
https://www.keyence.co.jp/products/safety/safety-door/

アクセントウォール

アクセントウォールとは

アクセントウォール

アクセントウォールとは、部屋の中で一部の壁だけを異なる素材や色にすることにより、アクセントを与える空間デザインのことです。

アクセントウォールには、一部の壁に他の壁とは異なるクロスを張るアクセントクロスや、或いは壁に用いる素材自体を変える(木材・ガラス・石材・漆喰など)ものがあります。壁のその模様や色を変えてみるだけでも、室内の空間の印象や雰囲気に大きなインパクトを与えることができます。室内の空間デザインに、手軽に居住者の個性を取り入れることが可能です。

また、アクセントウォールの工事自体は、壁の塗り替えや壁紙の張替えといった、比較的安価で済みなおかつ簡単な工事が多いため、手軽に挑戦できることも大きな魅力の一つです。

アクセントウォールの使用用途

1. 概要

一般的に多くの部屋の壁の色は、ベージュや白といったベーシックなカラーでまとめられることが多いです。このような場合、落ち着いた空間演出が可能である一方、個性を出すことは難しくなります。

アクセントウォールは、このような落ち着いた空間をベースとしつつもアクセント的に個性を演出したい場合に使用されます。また、通常、アクセントウォールは部屋の4面の壁面のうち、1面もしくは2面のみに用いられることが多いため、自然と視線が集まる「フォーカスポイント」を演出することとなります。フォーカルポイントとなるアクセントウォールを中心に、照明や家具や小物などを配置することで魅力的なインテリアデザインを行うことが可能です。

2. 具体例

アクセントウォールは、リビング、居室、玄関など、どんな部屋でも取り入れることが可能です。例えば、テレビの後ろの壁や玄関ホールなどは元々視線が集まりやすいため効果的にアクセントウォールを配することができます。

また、トイレは一般的に狭い空間ですが、壁面が大きく密になっているため、空間演出における壁面デザインの効果が大きいです。アクセントウォールを用いることで、個性を演出したり、お洒落な空間を演出することができます。

アクセントウォールの原理

1. 概要

アクセントウォールを配することにより、空間にアクセントを与えるとともに壁の存在感が増します。部屋の空間に緊張感やメリハリを演出することが可能です。

また、部屋の中に入ってきた人の視線を集める「フォーカスポイント」としての効果もあります。壁の周辺の家具や小物などのアイテムが際立つため、アクセントウォールを中心として、視野的に立体的な効果を得ることが可能です。

2. 色彩

アクセントウォールを選択する上では色彩バランスが最も重要です。決定に際しては、アクセントウォールだけでなく、家具・インテリアも含めてトータルコーディネートを行うことが必要です。また、大きく使う色は3色以下に抑えることが定石です。

まず、アクセントウォールの前に、部屋の壁、天井などの大部分を占める、ベージュや白などのベースカラーを決めます。次にアクセントウォールの色に大きく用いるサブカラーを決め、最後に必要があればワンポイントに使うアクセントカラーを更に選びます。そのうえで、照明や家具、小物などとの相性も検討する必要があります。サブカラー以下の選び方は、主に

  • 色相環上で、メインカラーの近くにある色を選ぶ
  • 色相環上で、メインカラーと向かい合った色 (補色) を選ぶ

の2通りです。メインカラーとサブカラーを同系色にすると、調和のとれた穏やかなコーディネートになり、向かい合う補色にすると、メリハリのあるコーディネートになります。

3. 面積効果

色の選択の上で重要なのが面積効果です。すなわち、

  • 明るい色は、面積が大きいほど一層明るく (色が薄く) 見える
  • 暗い色は、面積が大きくなるにつれて一層暗く (色が濃く) 見える

ということです。また、サンプル確認の際も、面積効果を念頭に置いたうえでなるべく大きいサンプルを利用することが必要と言えます。

アクセントウォールの種類

アクセントウォールには様々な種類があります。石、タイル、レンガや木材などを用いたものの他、単純にクロス(壁紙)を他の壁面とは異なるものにする「アクセントクロス」もアクセントウォールの1種です。

石やタイル、そしてレンガは、空間をヨーロッパ風にアレンジする上で特に効果的です。モダンな照明や家具、小物とも非常に相性が良く、開放的な雰囲気を維持しながら、空間にアクセントを加えることができます。

木材を用いたアクセントウォールは、穏やかで温かみのある空間を部屋の中に演出します。リラックスした雰囲気を演出したい空間で特に効果的です。素材の中には吸湿性や吸音性などの機能性を併せ持つものもあります。

参考文献
https://www.lixil.co.jp/square/articles/030/
https://www.wave-inc.co.jp/weblog/?p=17996

ジンク

ジンクとは

ジンク
ジンク(元素記号: Zn)とは、原子番号30の遷移金属元素である、亜鉛の英語名 Zincです。単体の亜鉛は、原子量65.38、密度 7.12 g/cm3 、融点 419.5℃、沸点 907℃であり、青みを帯びた銀白色の金属です。両性金属元素であり、酸、アルカリのどちらにも溶解します。

比較的イオン化傾向が大きい金属であることが特徴の1つで、この性質を利用して電池の電極や亜鉛めっきなどの利用法があります。また、生体における必須微量元素であり、味覚を正常に保ったり、代謝調整作用を有する酵素を構成したりするなど、重要な役割を持った成分です。

ジンクの化学的性質

ジンク(亜鉛)の化学的性質と亜鉛鉱石のイメージ図

化学反応

単体のジンクは、大気中に放置すると、次第に酸化皮膜が形成され、金属表面の光沢が失われます。水には不溶ですが、非酸化性の酸に対しては水素ガスを発生して溶解し、アルカリ溶液には溶解して亜鉛酸アルカリ錯塩を形成します。

例えば、塩酸と反応して溶解する場合は、塩化亜鉛と水素が生成物となります。また、水酸化ナトリウムと反応する場合には、テトラヒドロキソ亜鉛(II)イオンと水素を生成します。また、炭酸ガスが存在する場合には塩基性炭酸塩を形成します。

亜鉛の化合物

天然における亜鉛鉱石には、閃亜鉛鉱(英語: blende または sphalerite、化学式: ZnS)、異極鉱(英語: hemimorphite または calamine、化学式: Zn4Si2O7(OH)2・H2O)、菱亜鉛鉱(英語: smithsonite、化学式: ZnCO3)、紅亜鉛鉱(英語: zincite、化学式: ZnO)などがあります。基本的に、硫黄やケイ素、酸素などの他の元素と結合した状態で産出します。

亜鉛の原料としては、特に閃亜鉛鉱が重要な鉱石とされています。閃亜鉛鉱には、インジウムガリウムなどの希少金属が含まれることもあります。

ジンクの使用用途

ジンク(亜鉛)の工業的利用の例

  • 合金
    真鍮(と亜鉛)、洋白(銅と亜鉛とニッケル)やダイカストなどの合金への利用法があります。
  • 亜鉛めっき
    鉄よりイオン化傾向が大きいというジンクの性質を利用しているものに、亜鉛めっきがあります。鉄鋼材料表面に亜鉛めっきを行うと、表面の亜鉛の薄膜が水や酸素を防ぐので、鉄錆の発生を抑制することができます。

    また、亜鉛のイオン化傾向が内部の鉄よりも大きいので、傷などで鉄がむき出しになっても、表面の亜鉛が優先的に溶解し、内部の鉄を守ることが可能です。亜鉛めっきは、自動車部品、電気製品やコンピュータ、建材など様々な分野で利用されています。

  • ジンクリッチペイント
    亜鉛の粉末を70%〜95%ほど含む塗料は、ジンクリッチペイントと呼ばれ、錆止め塗装に用いられます。直塗り塗装以外に溶融亜鉛めっきの補修剤としても利用可能です。

    塗膜を形成する展色材には、一般的に、有機系ジンクリッチペイントにはエポキシ樹脂が、無機系ジンクリッチペイントにはアルキルシリケートが使用されています。

  • 電池の電極・電解液
  • マンガン乾電池においては、負極に亜鉛が、電解液には塩化亜鉛が使われています。塩化亜鉛には、他に、活性炭や染料、農薬製造などの用途があります。
  • 酸化亜鉛
    酸化亜鉛の白色粉末は、顔料、日焼け止め、医薬品などにも用いられます。特に、かつておしろいに用いられていた鉛が毒性が高いことから、その代替として化粧品への利用も盛んです。亜鉛の毒性は鉛に比べて極めて低いとされています。
  • 硫酸亜鉛
    硫酸亜鉛は、レーヨンの製造工程において、液体のレーヨンを凝固させるための溶液として用いられます。また、目薬の添加剤に用いられたり、育児やペット・家畜用の粉ミルクにミネラル分を強化する目的で添加されることもあります。そのほか、殺菌剤であるボルドー液などの農薬に対しては、農作物への薬害を防止する作用があります。

2. 人体におけるジンク(亜鉛)と食品

ジンク(亜鉛)は、成人の生体内に約2000mg存在し、多くは各筋肉や骨、皮膚、肝臓、脳などに分布しています。代謝調整作用を有する亜鉛含有酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、アルコール脱水素酵素、カルボニックアンヒドラーゼなど)などの構造成分として、生体内の様々な反応に関与しています。代表的な役割として、DNA合成、タンパク質合成、活性酸素除去、正常な味覚の維持などがあります。

2020年版の食事摂取基準によると、ジンクの推奨摂取量は成人男性で約11mg/日、成人女性で約8mg/日と設定されています。ジンクが不足すると、皮膚炎、味覚障害、免疫機能障害などの症状が現れることがあります。また、子供の場合は成長障害が起こる可能性が指摘されています。

ジンクは、魚介類や肉類などに多く含まれており、具体的な食品には、牡蠣、しらす干し、豚レバー、牛赤身などがあります。また、きな粉やナッツ類にも多く含まれています。

ジンクをクエン酸やビタミンCなどと一緒に摂取すると、摂取効率が増加するとされています。一方で、米ぬかや玄米に多く含まれるフィチン酸は、ジンクの吸収を阻害するので、食べ合わせを考える必要があります。

3. ジンク(亜鉛)のサプリメント

ジンクは、単独のサプリメントで市販されている他、マルチビタミンやミネラルなど、他の成分と一緒になったものも販売されています。サプリメント中のジンクは、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛など、様々な塩の形を取ります。

サプリメントは基本的に、食事中や食後に水やぬるま湯で飲みます。コーヒーやお茶などのカフェインやタンニンが含まれる飲料では、それらの成分が栄養素と結合して吸収を阻害することがあります。また、ジンクを過剰に摂取すると、銅の欠乏、吐き気、嘔吐、胃障害、免疫障害などが発症する可能性があります。

参考文献
https://www.env.go.jp/council/09water/y099-01/mat08.pdf
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4ai.pdf
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/12.html
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
https://www.otsuka.co.jp/college/nutrients/zinc.html

ねじプラグ

ねじプラグとは

ねじプラグ_図0

ねじプラグ (英: Screw plugs) とは、自動車用でオイル排出用穴などの栓 (プラグ) に使用する部品です。

一般的にねじプラグは、「ドレンプラグ」や「ドレンボルト」とも呼ばれています。プラグという名称ですが、ガソリンエンジン点火用のスパークプラグではありません。

ねじプラグの名称そのものは、JIS規格で規定されている「自動車部品-ねじプラグ」です。ねじ込み式管継手のプラグを略して「ねじプラグ」と呼ぶ場合もあります。しかし、ここでは前述のJIS規格で規定されている方で説明します。

ねじプラグの使用用途

ねじプラグ_図1

図1. ねじプラグの使用例

ねじプラグは図1のように、自動車用の部品でエンジンや各種ギアボックス内のオイル (潤滑油) の排出用穴の栓 (プラグ) や、その他液体状のものを排出させる穴の栓として使用する部品です。例として、エンジンや各種ギアボックスハウジングの側面や底部には、オイル排出用穴にねじ加工が施されていて、その穴にねじプラグをねじ込み封止します。

ねじプラグの原理

ねじプラグの役割は、ねじ込み式管継手のプラグと同様で、めねじ加工されている排出口などに、ねじプラグをねじ込み封止することです。しかし、おねじとめねじの噛み合いの隙間からの漏洩を防止することが必要です。漏洩防止方法はねじの種類により異なり、ねじプラグの種類の項で説明します。

なお、ねじプラグに使用されているねじの種類は、下記の3種類です。

ねじの種類

適用規格

管用テーパねじ

JIS B0203

メートル並目ねじ

JIS B0205

メートル細目ねじ

JIS B0207

ねじプラグの種類

ねじプラグ_図2

図2. ねじプラグの種類と形状

1. ねじの種類・頭部の形状による分類

ねじプラグの種類は、ねじの種類、頭部の形状によって下記のとおりに分けられます。

種類

ねじの種類

頭部の形状による種類

1種

A形

管用テーパねじ

四角頭

B1形

六角穴付き

B2形

四角穴付き

C形

六角頭

2種

A形

メートル並目ねじ、メートル細目ねじ

六角頭

B形

つば付き六角頭

C形

つば付き六角穴付き

 

1種のB1形、B2形は、六角頭のような頭部が無く、ねじ軸に六角または四角穴があけられていて、取り付け部表面から、頭部の突き出しせずに取り付けができます。六角もしくは四角のL形レンチなどで、狭い場所での作業が可能です。

その他の種類は、四角頭もしくは六角頭の頭部が取り付け部表面から突き出します。

2. ねじ先の形状による分類

ねじプラグ_図3

図3. ねじプラグの先端形状

ねじプラグは、ねじ先の形状が平坦のものと、外径が少し細くなっているパイロット形状のものがあり、ストレート形とテーパ形 (管用テーパねじの場合のみ) があります。

3. 漏洩防止方法による分類

ねじプラグ_図4

図4. ねじプラグの種類と漏洩防止方法

1種の管用テーパねじの場合は、ねじプラグのおねじ周囲にシールテープを巻き付け、ハウジングなどのめねじに側にねじ込み、ねじ間の隙間が密着し封止します。

2種のメートル並目・細目ねじの場合は、ねじプラグの座面とハウジング面との間にガスケットを挟み込み、ねじプラグをハウジングなどの目ねじ側にねじ込み、座面を密着させて封止します。このガスケットは、JIS D2101の附属書 表3 2種のプラグのガスケット形状・寸法に記載されているものです。

4. 材質による分類

下表は、一般的なねじプラグの材質の一覧です。

材質

適用規格

SWCH10A~12A、SWCH10K~12K、SWCH43K~48K

冷間圧造炭素鋼

JIS G3539

S10C~S20C、S43C~S48C

機械構造用炭素鋼鋼材

JIS G4051

C3604

銅及び銅合金の棒

JIS H3250

 

鋼製の場合は、防錆のためにJIS D0201 自動車部品-電気めっき通則に規定されている、Ep-Fe/Zn5cの表面処理が施されています。

5. その他

ねじプラグには、JIS規格に規定されていない種類も市販されています。例えば、ねじ先端部分にマグネットが取り付けられているものがあり、オイルタンクやオイルパン内に堆積したスラッジや鉄粉を吸着し、エンジンなどに不純物が流れないようにします。

スラッジとは、オイルやエンジン燃料の燃えカスや錆などの沈殿物です。

ねじプラグのその他情報

ねじプラグのサイズ

上記JIS規格で規定されているねじプラグのサイズは、下記のとおりです。

種類

ねじのサイズ

1種

A形

R1/8~R1

B1形、B2形

R1/16~R1

C形

R1/8~R1/2

2種

A形、B形、C形

M6~M36

 

参考文献
http://www.tokosha-k.co.jp/TEPAKATA.pdf

ウェルドナット

ウェルドナットとはウェルドナット

ウェルドナットとは、「パイロット」と呼ばれる突起形状を持った、溶接して取り付けるナットのことです。

ウェルドナットの「ウェルド  (weld)」とは、英語という意味を持ちます。ウェルドナットには複数の種類があり、角の数や形が異なるものが存在するため、用途に応じて選定することが大切です。

ウェルドナットの使用用途

ウェルドナットの使用用途は、主に家電製品、2輪車、4輪車、ゴルフクラブ用部品など薄い金属板を複数合わせた製品です。ボルト締結のトルクを確保する場合、緩み防止の兼ね合いから少なくともボルトとナットのねじ山は5ピッチ程度必要になります。

1ピッチは1.5mmのねじ山の物が一般的に多く使用されているため、最低7.5mm程度は金属板の厚みがないとボルト締結用のタップを金属板に設定することができません。そのため、7mm以下の薄い金属板はタップが切れないので、ウェルドナットを用いることでねじ山を確保し、薄板にボルト締結の接続箇所を設けています。

また、ウェルドナットを用いる場合は、金属板同士は溶接されないため脱着が容易で、サイズが大きい構造物には多くのウェルドナットが用いられています。

ウェルドナットの原理

ウェルドナットは、ナットに用意されている溶接用の突起であるパイロットが母材と溶着することで固定されています。このパイロットがウェルドナットの最大の特徴であり、重要な役割を果たしています。

パイロットは、あえて突起した形状とすることで母材との接地面積を減らし、溶接時にパイロットの部分だけをピンポイントで温度上昇しやすくなるよう工夫された形状です。また、パイロットの形状によってはナットの位置決めを行なう働きもあります。

ウェルドナットの種類によってはパイロットがないものも存在し、パイロットがある場合はプロジェクション溶接、ない場合はアーク溶接で母材に接合されるのが一般的です。

ウェルドナットの種類

ウェルドナットの種類として、主に以下の3種類が挙げられます。

1. 六角ウェルドナット (以降:六角型)

六角型は六角形の形状をしており、パイロットとして6つの角の中で3点の突起が設けられ金属板と溶接します。溶接個所が少ないため溶接作業がしやすく、作業性が高いことがメリットです。その一方で、金属板との接合箇所が3点に限られるため、接合の強固さは他の種類より劣る点がデメリットです。

2. 四角ウェルドナット (以降:四角型)

四角型は形が四角でパイロットも4つの角全てに設定されているため、4点全てが金属板と溶接されます。溶接箇所は4点で、溶接点が3点の六角型と比較するとより強固な接合となっているため、より高いトルクをかけることが可能です。自動車等では、四角型が最もよく使用されています。

3. T型ウェルドナット (以降:T型)

 T型はナット部にフランジが付けられ、そのおかげで溶接面積が大きくなることによって、より強固な接合が可能です。その反面、溶接にかかる時間は他のナットと比べて長いことがデメリットと言えます。

ウェルナットのその他情報

ウェルナットの長所

ウェルドナットを溶接することにより、ナットの持つパイロットと母材を溶着させて固定します。溶接によって接合されているため、接合の安定性が高く強度も確保できるのが特徴です。

ウェルドナットは、主に母材の金属板が薄くボルト用のタッピングができない時に使用されています。例えば、自動車のボディシェルのように1〜2mm程度の厚みしかない場合、ボルト用のタッピングを行っても金属板が薄すぎるためネジ山を確保できません。

このような時にウェルドナットを取り付けることで、金属板全体の厚みを変えず、ボルト締結を行いたい部位にだけネジ山を用意することが可能です。また、ナットが使用されているため、金属板同士を重ねて接合するスポット溶接に比べて、溶接後の取り外しが容易である点もメリットとして挙げられます。

参考文献
http://www.forming.co.jp/products/weld.html
https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/weldnut/

Xステージ

Xステージとは

Xステージ

Xステージとは、任意方向の場所で位置決めが出来るユニットです。

Xステージは製品により水平方向、縦方向、回転、角度、ゴニオの位置に一方向にのみ可動が出来ます。

ユニットを使用する際は用途に合わせ可動方向や位置決めの精度を考える必要があります。
あくまでXなのでX・Y方向の可動などは2軸ステージを使用すると良いでしょう。

マイクロメーターなどを取り付けているユニットを使用すれば、精度を必要とするストロークにも対応出来ます。

Xステージの使用用途

Xステージは検査機器や光学部品などのストロークを必要とする部分に位置決めや調整などの可動調整を目的に利用されます。

Xステージはユニットにより精度が違いますので、使用する目的や条件に合ったXステージを選定する必要があります。

Xステージの使用例をご紹介します。

  • 製品検査用装置の位置決め。
  • 装置位置(部組)のストローク調整用。
  • 製品組み立て用治具のモデル変更への対応調整。
  • FA装置の搬送や位置決め。

Xステージの原理

ここではXステージの原理について説明します。基本的にガイド・送り・クランプの3つの機構により構成されており、それぞれ3つの機構のパーツを選定する事により精度を変更することが出来ます。

ガイド機構には大まかに3種類の機構が有りそれぞれの特性を理解し選定する必要があります。

  • アリ溝
    オス、メスの溝をスライドさせて可動する機構です。
  • クロスローラ
    V溝のレールにローラーを配列し、V溝をローラーが転がりスライドさせて可動する機構です。
  • リニアボール
    ボールを溝に配列し、溝の中をボールがスライド移動し可動する機構です。

また、送り機構にもそれぞれ特徴があります。

  • ラック&ピニオン
    精度をあまり必要としないが送り速度を重視されますが、精密な位置決めには不向きです。
  • 送りねじ
    細かく送りたいまたは、精度はそれほど必要としないが細かな調整(0.5mm程度)が必要な場合に重視されます。長ストロークの調整には不向きです。
  • マイクロメータ
    精密な送りが必要な調整に最適(0.01mm単位)。長ストロークの調整には不向きです。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/d0039.html
https://jp.misumi-ec.com/maker/misumi/mech/product/xy/faq/faq01.html

3Dマシンビジョン

3Dマシンビジョンとは3Dマシンビジョン

3Dマシンビジョンとは、機械や部品の位置や構えなどを3次元で認識するシステムのことです。

マシンビジョンは、画像を取り込み処理した結果に基づいて機器を動作させるシステムを指します。その中でも特に3D情報を扱うものが、3Dマシンビジョンです。

従来のマシンビジョンの課題として、ロボットが効率よく作業するためには、ロボットが苦手とする工程を人によって修正する作業などが必要になることが挙げられます。3Dマシンビジョンは、かねてから工程の時間や作業を圧迫していたこの課題を、画像処理を2次元処理から3次元処理に変更することで解決しました。

3Dマシンビジョンの使用用途

3Dマシンビジョンは、大きく3つの目的に使用されています。

1. 寸法計測

自動車業界ではさまざまな部品の寸法計測、ドア段差や隙間の計測に、物流では荷物の3辺計測や容量計測、食品業界では食肉の自動スライス、等級の仕分け、菓子の製造ばらつきの判定に用いられています。

2. 外観検査

自動車部品のキズや打痕検査、電気電子分野ではプリント基盤やワイヤーボンディングの検査、食品業界では菓子の欠けの検査などに導入されています。

3. 位置決め作業

さまざまな工業製品のピッキング作業、物流作業におけるでパレタイズ、デバンニングなどが挙げられます。

3Dマシンビジョンの原理

3Dマシンビジョンの原理は、パターン投影、距離測定、部品認識の3ステップに大別できます。

1. パターン投影、距離測定

まずパターン投影、距離測定の工程において、対象物に対して複数のパターンを投影し、対象物の距離を測定します。

2. 部品認識

次に部品認識の工程で、事前に登録した辞書データと3DCADモデルによって部品の位置などを認識し、ロボットアームのハンドが対象物以外に接触せずに動作できるかの可否判定を行います。

3. 動作

最後に判定の結果をロボットコントローラに転送し、実際にロボットに動かします。

3Dマシンビジョンのその他情報

1. 従来のロボットビジョンと3Dマシンビジョン

従来のロボットビジョンの多くは、例えば平置きされた部品をロボットアームなどで取得するようなシステムに用いられていました。これは、ある程度秩序を持って2次元平面的に整列された部品をビジョンで撮像・画像処理し、部品の位置ズレや位相ズレをキャンセルしてロボットアームでピックアップするようなシステムです。

しかし近年では、バラ積みされた部品をロボットアームでピックアップするようなシステムが求めらるようになってきました。ところが、2次元平面を前提として構築されていた従来のロボットビジョンシステムでは、バラ積みされた部品への対応できません。そこで注目されたのが、3Dビジョンシステムです。

2. 3Dマシンビジョンの課題

現在の3Dマシンビジョンの課題は、外乱や少しの誤差に弱いことです。外乱とは、3D画像を取得する際の光源などです。バラバラに積まれた部品を認識する際に、光源が変わると、3Dマシンビジョンでは部品が認識できなくなってしまうことがあります。

3Dマシンビジョンにとって、照明はそれほど重要な要素です。何らかの外乱によってその条件が崩れると、実装されているアルゴリズムでは対応できず、システムとして成り立たなくなる事態が発生することがあります。

また、部品箱内の部品は厳密に言うと全て異る形をしています。部品個々に細かい傷や少しの寸法誤差があるためです。部品がきれいに整列されていれば、このような違いがあっても影響がない場合がほとんどですが、バラ積みされた中では部品の角度や位置によっては正しい部品であると判断できなくなるケースがあります。

そのような状況では、本来正常品として扱わなければならない部品を異常品として処理してしまうため、最適な生産が難しいです。このような課題を克服するため、近年は3DマシンビジョンにAI技術を活用することが考えられています。

参考文献
https://www.sick.com/jp/ja/3d/w/machine-vision-index/
https://www.cognex.com/ja-jp/what-is/deep-learning/challenges-to-machine-vision

画像判別センサー

画像判別センサーとは

画像判別センサーとは、カメラで撮影した画像を使って対象物の有無や違いを判別するセンサーのことです。

具体的には、対象物の形状や面積、重心、長さ、位置などの特徴量を算出し、データやあらかじめ設定しておいた基準と照らし合わせて、判別した結果を出力します。

画像判別センサーの使用用途

画像判別センサーは、工場での省力化や省人化、訓練を積んだ検査員の目視検査ではこなせない大量の検査、細部の判定など検査レベルの拡大を目的として、さまざまな製造現場で使用されています。

自動車製造では、さまざまな部品の製造に使われています。例えば小さな部品では、ねじの製造ラインも使用例の1つです。出荷前の異品混入の検知からキズの有無、さらにはめっきの品質まで導入されつつあります。

コンポーネントとして組み立てられた部品の外観検査も、画像判別センサーが使用されています。画像判別センサーをロボットアームに取り付け、複数の画像を撮影した検査が行われています。

電子部品の生産ラインにおいては、製品そのものが非常に細かく目視検査が困難です。そこで画像判別センサーの活用が欠かせません。

その他、製薬や食品業界では、検査対象物は工業製品のような形状が定まったものではありません。主に色彩による判定が多く行われています。

画像判別センサーの原理

画像判別センサーの原理を理解するには、画像処理センサーが行なっている処理を把握することが重要です。

1. 映像信号の取り込み

カメラのレンズを通して取り込まれた光は、CCD (Charge Coupled Device) やCMOS (Complementary Metal Oxide Semiconductor) と呼ばれるイメージセンサーが、電気信号として取り出します。イメージセンサーとは、点を平面に並べたものです。

点の数は画素数として、デジタルカメラやスマートフォンのカメラのカタログにも記載されています。各画素ごとの電気信号を並べることで、画像が描き出されます。

2. 前処理

イメージセンサーによって電気信号に変えられた画像は、計測しやすい画像に加工しなければなりません。この加工を前処理と言います。前処理には画像の微小なムラを弱めて検査を安定化させるための平滑化、ノイズを除去するための膨張や収縮、キズの検査をしやすくするためのエッジ抽出などの処理が行われます。

3. 位置修正

検査対象物は常にレンズに対して同じ位置や、同じ向きにあるとは限りません。そこで、位置修正を行います。位置修正とは、検出した画像を計測しやすい位置に移動させる処理のことです。

4. 特徴量の抽出

位置修正が行われた後に、映像情報から検査に必要となる特徴量を抽出するための処理が必要です。例えば、明るさの変化が非常に大きい場所を検知すれば、検査品の輪郭 (エッジ) と判定することができます。

得られた画像内を小さな領域ごとに分割し、領域内の明るさの違いを抽出すれば、特定の大きさのキズや汚れがあると判定することが可能です。画像判別センサーでは、特徴量を抽出するための設定が非常に重要です。

画像判別センサーは映像を電気信号に変換してくれますが、検査の場合、合否判定の基準は、作業者が設定しなければなりません。最近では、その合否判定にAIを導入するケースも増えてきています。

画像判別センサーのその他情報

画像判別センサーでできること

1. 異物混入検査
基準になる画像パターンを登録し、そのモデルに似ているか否かを判断することで、異物の混入を調べることができます。

2. 輪郭検出
条件に探す方向と色の変化を設定し、画像の濃度と明暗の差分を認識することで、輪郭を検出できます。あらかじめ設定した閾値と比較することによって、製品の異状や異品混入を検知することが可能です。

3. 文字確認検査
部品の刻印やラベルや賞味期限の印字など、製品に正しく印字がされているかどうかを判別します。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/products/category/sensors/vision-sensors_machine-vision-systems/
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/44/16/index.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/sensor/sensorbasics/vs_info.jsp
https://www.keyence.co.jp/products/sensor/vision-sensor/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/vision/iv-casestudy/example/food_pharmaceuticals_cosmetics/