ジンク

ジンクとは

ジンク
ジンク(元素記号: Zn)とは、原子番号30の遷移金属元素である、亜鉛の英語名 Zincです。単体の亜鉛は、原子量65.38、密度 7.12 g/cm3 、融点 419.5℃、沸点 907℃であり、青みを帯びた銀白色の金属です。両性金属元素であり、酸、アルカリのどちらにも溶解します。

比較的イオン化傾向が大きい金属であることが特徴の1つで、この性質を利用して電池の電極や亜鉛めっきなどの利用法があります。また、生体における必須微量元素であり、味覚を正常に保ったり、代謝調整作用を有する酵素を構成したりするなど、重要な役割を持った成分です。

ジンクの化学的性質

ジンク(亜鉛)の化学的性質と亜鉛鉱石のイメージ図

化学反応

単体のジンクは、大気中に放置すると、次第に酸化皮膜が形成され、金属表面の光沢が失われます。水には不溶ですが、非酸化性の酸に対しては水素ガスを発生して溶解し、アルカリ溶液には溶解して亜鉛酸アルカリ錯塩を形成します。

例えば、塩酸と反応して溶解する場合は、塩化亜鉛と水素が生成物となります。また、水酸化ナトリウムと反応する場合には、テトラヒドロキソ亜鉛(II)イオンと水素を生成します。また、炭酸ガスが存在する場合には塩基性炭酸塩を形成します。

亜鉛の化合物

天然における亜鉛鉱石には、閃亜鉛鉱(英語: blende または sphalerite、化学式: ZnS)、異極鉱(英語: hemimorphite または calamine、化学式: Zn4Si2O7(OH)2・H2O)、菱亜鉛鉱(英語: smithsonite、化学式: ZnCO3)、紅亜鉛鉱(英語: zincite、化学式: ZnO)などがあります。基本的に、硫黄やケイ素、酸素などの他の元素と結合した状態で産出します。

亜鉛の原料としては、特に閃亜鉛鉱が重要な鉱石とされています。閃亜鉛鉱には、インジウムガリウムなどの希少金属が含まれることもあります。

ジンクの使用用途

ジンク(亜鉛)の工業的利用の例

  • 合金
    真鍮(と亜鉛)、洋白(銅と亜鉛とニッケル)やダイカストなどの合金への利用法があります。
  • 亜鉛めっき
    鉄よりイオン化傾向が大きいというジンクの性質を利用しているものに、亜鉛めっきがあります。鉄鋼材料表面に亜鉛めっきを行うと、表面の亜鉛の薄膜が水や酸素を防ぐので、鉄錆の発生を抑制することができます。

    また、亜鉛のイオン化傾向が内部の鉄よりも大きいので、傷などで鉄がむき出しになっても、表面の亜鉛が優先的に溶解し、内部の鉄を守ることが可能です。亜鉛めっきは、自動車部品、電気製品やコンピュータ、建材など様々な分野で利用されています。

  • ジンクリッチペイント
    亜鉛の粉末を70%〜95%ほど含む塗料は、ジンクリッチペイントと呼ばれ、錆止め塗装に用いられます。直塗り塗装以外に溶融亜鉛めっきの補修剤としても利用可能です。

    塗膜を形成する展色材には、一般的に、有機系ジンクリッチペイントにはエポキシ樹脂が、無機系ジンクリッチペイントにはアルキルシリケートが使用されています。

  • 電池の電極・電解液
  • マンガン乾電池においては、負極に亜鉛が、電解液には塩化亜鉛が使われています。塩化亜鉛には、他に、活性炭や染料、農薬製造などの用途があります。
  • 酸化亜鉛
    酸化亜鉛の白色粉末は、顔料、日焼け止め、医薬品などにも用いられます。特に、かつておしろいに用いられていた鉛が毒性が高いことから、その代替として化粧品への利用も盛んです。亜鉛の毒性は鉛に比べて極めて低いとされています。
  • 硫酸亜鉛
    硫酸亜鉛は、レーヨンの製造工程において、液体のレーヨンを凝固させるための溶液として用いられます。また、目薬の添加剤に用いられたり、育児やペット・家畜用の粉ミルクにミネラル分を強化する目的で添加されることもあります。そのほか、殺菌剤であるボルドー液などの農薬に対しては、農作物への薬害を防止する作用があります。

2. 人体におけるジンク(亜鉛)と食品

ジンク(亜鉛)は、成人の生体内に約2000mg存在し、多くは各筋肉や骨、皮膚、肝臓、脳などに分布しています。代謝調整作用を有する亜鉛含有酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、アルコール脱水素酵素、カルボニックアンヒドラーゼなど)などの構造成分として、生体内の様々な反応に関与しています。代表的な役割として、DNA合成、タンパク質合成、活性酸素除去、正常な味覚の維持などがあります。

2020年版の食事摂取基準によると、ジンクの推奨摂取量は成人男性で約11mg/日、成人女性で約8mg/日と設定されています。ジンクが不足すると、皮膚炎、味覚障害、免疫機能障害などの症状が現れることがあります。また、子供の場合は成長障害が起こる可能性が指摘されています。

ジンクは、魚介類や肉類などに多く含まれており、具体的な食品には、牡蠣、しらす干し、豚レバー、牛赤身などがあります。また、きな粉やナッツ類にも多く含まれています。

ジンクをクエン酸やビタミンCなどと一緒に摂取すると、摂取効率が増加するとされています。一方で、米ぬかや玄米に多く含まれるフィチン酸は、ジンクの吸収を阻害するので、食べ合わせを考える必要があります。

3. ジンク(亜鉛)のサプリメント

ジンクは、単独のサプリメントで市販されている他、マルチビタミンやミネラルなど、他の成分と一緒になったものも販売されています。サプリメント中のジンクは、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛など、様々な塩の形を取ります。

サプリメントは基本的に、食事中や食後に水やぬるま湯で飲みます。コーヒーやお茶などのカフェインやタンニンが含まれる飲料では、それらの成分が栄養素と結合して吸収を阻害することがあります。また、ジンクを過剰に摂取すると、銅の欠乏、吐き気、嘔吐、胃障害、免疫障害などが発症する可能性があります。

参考文献
https://www.env.go.jp/council/09water/y099-01/mat08.pdf
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4ai.pdf
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/12.html
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
https://www.otsuka.co.jp/college/nutrients/zinc.html

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