離型剤

離型剤とは

離型剤とは、金型を使った成形加工において、成形物の金型からの脱型性を軽くするための薬剤です。

金型は同じ形のものを素早く大量に製造するのに役立ちます。ただし、金型に材料を流し込んで成形するだけでは、綺麗に製品を金型から外すことができず、金型に張り付いてしまうトラブルが発生します。

離型剤は金型成形の際に、金型からの離型性を上げて、生産効率を改善するために使われます。

離型剤の使用用途

主な用途は、製造ラインで製品を作成するための金型成形作業です。その他、以下の用途が挙げられます。

1. 医療分野

人体からの剥離を容易にするために、手術用具や医療機器に使用されています。

2. 建築現場

コンクリートや石材の製造で、汚れや錆を防止できます。

3. 食品業界

食品の形状を作る金型や、容器や包装材料を製造するために使用されます。

4. 製造業界

プラスチックやゴム製品、鉄鋼製品、紙製品などの製造にも使用されています。これらの分野で使用される離型剤は、それぞれの材料に合わせて選択されます。

離型剤の原理

離型剤が金型と成形物との間に存在することにより、成形物が金型から外れやすくなります。離型剤は、金型成形する際には必ず使用するものです。なお、使い方と構成成分によって分類できます。

1. 使い方による分類

外部離型剤
金型に塗って使用するタイプの離型剤です。食品用途では、パン焼き用の型やフライパンにあらかじめ塗っておく油やマーガリンなどに相当します。塗るだけのタイプをはじめ、焼き付け型やスプレー型などがあります。

内部離型剤
成形する材料にあらかじめ混ぜて使用するタイプです。これは成形の際に材料が溶けて流動性が上がった状態で、金型と材料の界面に移行し、脱型時に離型性を向上させる効果を発揮します。用途によっては、外部離型剤、内部離型剤の両方を併用することもあります。

2. 構成成分による分類

組成面では、離型剤成分以外に含まれる成分から、水型、乳化型、溶剤型、ペースト型、オイル型などに分けられます。一般的に外部離型剤は、脱型後の製品本体への離型剤付着を防止するため、金型表面には極めて低濃度になるように塗布する必要があります。このため、溶媒により希釈された、水型、乳化型、溶剤型が用いられることが多いです。

離型剤の種類

離型剤成分の種類としては、大きく分けてワックス系、シリコーン系、フッ素系があります。成分により効果は大きく変わります。フッ素系は、手間が少ない分潤滑性が低いです。シリコーン系は、潤滑性が良いですが洗浄手間がかかります。

1. ワックス系

離型剤成分として、ワックスを使用したものです。ワックスとは油脂のことですが、主に低分子のポリエチレンなどが挙げられます。

金型と成形品との間に層を形成し、層の間で剥離を起こしますが、これを層間剥離と呼びます。塗装性に優れるのが特徴です。しかし、製品への転写量が多く、金型が汚れやすい不具合があります。

2. シリコーン系

ワックス関係と同様に層間剥離を行います。シリコーンオイル特有の優れた潤滑性を利用しているため、離型性が非常に高いです。こちらも同様に転写量が多く、金型が汚れやすい不具合があります。

3. フッ素系

フッ素の非粘着剤を利用しています。界面剥離を起こすことで離型性を向上させます。少ない使用量で離型効果を発現できるのが特徴です。

単独として高い潤滑性を持たせることが困難なので、シリコーンと合わせて利用される場合が多いです。

離型剤の選び方

まずは使用目的に応じて選ぶ必要があります。食品や医療品など特殊な用途には、特殊な離型剤が必要となるため、選定の際には使用目的をしっかりと把握しておくことが重要です。

1. 成形品の素材

離型剤は、成形品の素材によって選ぶ必要があります。成形品によっては特定の離型剤の使用が適している場合があるため、素材に合わせた選定を行うことが重要です。

2. 脱脂・洗浄の容易さ

離型剤の使用により成形品から剥離しやすくなりますが、逆に金型表面の離型剤が原因で汚れが発生する場合があります。特に大量生産を行う際は、脱脂・洗浄の容易さも考慮することが大切です。

3. 健康・環境への影響

離型剤によっては、健康や環境に悪影響を与える場合があります。特に医療用品や食品包装材料には注意が必要です。安全性や環境性に配慮した離型剤を選ぶことが求められます。

参考文献
http://www.seimichemical.co.jp/product/fluoro/mold/
https://www.sankyo-chem.com/wpsankyo/2516

防爆モーター

防爆モーターとは

防爆モーター

防爆モーターとは、爆発性のある環境で安全に使用するために設計された電動モーターです。

化学工場や採鉱場など、爆発性ガスや粉塵などの危険物が存在する場所で使用されます。防爆モーターを使用することで、爆発性のある環境での安全性を向上させることが可能です。特別な構造や回路によって内部でのスパークや点火を防止し、爆発や火災のリスクを軽減します。

また、作業者の安全を確保するための重要な手段です。爆発性ガスなどの危険物が存在する環境では、通常のモーターを使用すると引火や爆発の危険が高まります。したがって、防爆モーターを使用することで作業者の健康と安全を守る必要があります。

防爆モーターは特定の規制基準に準拠して設計・製造されるモーターです。これにより、法的要件や安全規格に適合することが可能です。また、防爆モーターは認定機関によって評価・承認される場合があり、信頼性と品質の高さが保証されます。

防爆モーターの使用用途

防爆モーターは化学プラント、採鉱業、ガス・石油業界などで使用されます。

1. 化学プラント

化学プラントではさまざまな原料を混合するための混合機が使用されますが、爆発性ガスや粉体を混合する場合もあります。それらの混合機の駆動に使用され、爆発性ガス存在下でも安全を担保している場合が多いです。

排気や換気システムにも使用されることがあります。爆発性ガスを安全に排気するために送風機を駆動させている場合や、防爆モーターが駆動源となる場合もあります。

2. 石油・ガス業

ガスプラントでは、ガスを圧縮して送気している場合が多いです。防爆モーターはガス圧縮用のコンプレッサーに使用され、引火や爆発を未然に防止します。

石油精製所では精製工程の一部に蒸留塔や反応器などの装置が使用されることがあります。これらを安全に駆動するために防爆モーターが必要です。

3. 採鉱業

採鉱場では、粉砕機によって鉱石を粉状にして運搬します。したがって、ガスや粉塵の発生が頻繁に起こります。防爆モーターによって粉砕機設備に換気システムを導入し、爆発性ガスや粉塵の除去をしている場合が多いです。

また、鉱石や材料の輸送にはコンベアが使用されます。ただし、鉱石などは火花によって発火するため危険です。防爆モーターによってコンベアを駆動させることで、可燃性の環境での鉱石の移動を安全に行います。

防爆モーターの原理

防爆モーターはエンクロージャやケーシングによって、内部で発生するスパークが外部へ流出することを防止します。エンクロージャは電気機器や電子機器を保護し、外部の要素から守るためのケースや筐体のことです。防爆モーターのエンクロージャは、防爆性能を確保するために厳密な規制に基づいて設計・製造されます。

また、防爆モーターは過電流が発生した場合に自動的に遮断する保護装置が備わっています。過電流が長時間継続すると、電磁部品の過熱や火災のリスクが高まるため、過電流保護装置は重要です。

過熱が検知された場合に、運転を停止する保護装置も搭載しています。過剰な熱は絶縁材料の劣化や火災の原因となるためです。

防爆モーターの種類

防爆モーター、安全増防爆型と内圧防爆型、耐圧防爆型の3種類に大別されます。

1. 安全増防爆型

内部のスパークや火花が爆発性ガスと混合した環境においても、安全に運転するために設計されたモーターです。略して安増 (あんまし) とも呼ばれます。これらのモーターは点火源とならぬよう構造が工夫されており、危険な雰囲気の中でもそのまま使用することが可能です。

具体的には、モーター巻線が通常よりも低い温度となるように設計されています。これによってモーターの過熱を防止し、発火のリスクを低減することが可能です。また、端子間の離隔も通常よりも広く、スパークを防止する構造です。

2. 内圧防爆型

内部に常に窒素などの不活性ガスを注入し続けることで、可燃性ガスなどが入らないように保護したモーターです。内圧が周囲環境よりも常に高く、可燃性ガス内部に入る危険性がありません。

したがって、可燃性ガスの雰囲気でも問題無く使用できます。ただし、この構造の場合は不活性ガスを注入するための設備が必要となります。

3. 耐圧防爆型

内部に可燃性ガスが侵入して爆発が起こっても、その爆発が点火源とならない特殊な構造のモーターです。ケーシングが爆発に耐える堅牢な構造です。また、ケーシング内圧を安全に解放する装置が組み込まれており、ケーシングの損傷や破損を防ぎます。

参考文献
https://www.tmeic.co.jp/product/rotating_machinery/motor/exp_japan/policy/

防爆コネクタ

防爆コネクタとは

防爆コネクタ(英: Explosion-proof connector)とは,爆発性の環境や危険な場所で使用される電気の接続用コネクタです。

防爆は爆発または火炎を防止する構造を指します。爆発性のガスや引火性・揮発性の液体を扱う工場では防爆仕様の機器を使用することが必要です。防爆コネクタは、爆発を引き起こす可能性のある火花や強い電磁放射を防ぐための設計がされています。

爆発性ガスが漏れ込んだ場合でも、コネクタ内の火花を制限する機能を有します。特殊な材料を使用しており、爆発性環境下でも堅牢かつ高耐久です。防爆コネクタは特定の規格や安全基準に適合していることが求められます。国際的な規格としては、ATEX (欧州) 、NEC (米国) 、IECEx (国際) などがあります。

防爆コネクタの使用用途

防爆モーターは化学プラントや採鉱業、軍事などで使用されます。

1. 製造業

化学薬品や石油製品の製造過程で発生する爆発性ガス下環境で使用されることが多いです。防爆コネクタによって電気機器や計測装置との安全な電気接続を確保します。

2. 鉱業

鉱業においては、鉱山内での採掘や精錬作業において、爆発性ガスや粉塵が発生する可能性があります。したがって、防爆コネクタが必要です。鉱山の照明、通信システム、モーター制御などに使用されます。

3. 軍事施設

軍事施設では、爆発物の取り扱う施設が多いです。したがって、防爆コネクタが広く使用されます。爆発性物質による事故や火災を防ぐため、電気の接続や通信システムにおいて高い安全性が求められます。

防爆コネクタの原理

防爆コネクタは、外部からの爆発性ガスや粉塵の侵入を防ぐために密閉された筐体を持ちます。筐体はステンレス鋼などの金属合金で作られる場合が多いです。

また、電気信号の伝達を行うための接触部があります。金属製のピンやソケットで構成され、信号の安定性と低い接触抵抗が特徴です。防爆コネクタの接触部は爆発のリスクを最小限に抑えるために、防爆ギャップなどを使用して爆発のリスクを軽減します。

外部からの電磁干渉や静電気の影響を防ぐ、シールド機能を備えている場合もあります。また、コネクタとケーブルの接続部にはケーブルグランドが配置されることが多いです。これにより、静電放電が制御され、爆発のリスクが軽減されます。

未完全な接続による火花や放電を防ぐために、インターロック機構を有することも多いです。コネクタが正しく接続されていない場合には電気回路が断たれ、安全性が確保されます。

防爆コネクタの種類

防爆コネクタの防爆性能は、国内外の規格で定められています。また、取り扱う危険物の種類や量によって危険度の大きい順にZone0からZone2に分類されます。エリアごとに必要な防爆構造が指定されています。

主に使用される防爆構造は、「本質安全防爆構造」「耐圧防爆構造」「内圧防爆構造」「安全増防爆構造」の4種類です。

1. 本質安全防爆構造 (記号i)

正常時および故障時に火花または高温が発生した場合に爆発性の空間に対して発火点とならないことが確認された構造です。Zone0でも使用可能です。

Zone0のエリアにおいては、制御盤などの本質安全化が難しい機器については防爆エリアの外に設置することが多いです。制御盤からの電気接続に防爆コネクタを用います。

2. 耐圧防爆構造 (記号d)

外部で爆発が起こった場合でも、その圧力に耐えて更に発火する恐れのない密閉構造です。堅牢な金属ケーシングが使用されます。Zone1から使用可能です。

3. 内圧防爆構造 (記号f)

内部に保護気体を封入することで発火の恐れがないようにする構造です。保存気体には窒素ガスなどが使用されます。Zone1から使用可能です。

4. 安全増防爆構造 (記号e)

火花やアーク、高温が生じないように安全策をとった構造です。配線同士の離隔が大きかったり、配線径を太くして温度上昇を低減したりした構造です。Zone3で使用可能です。

参考文献
https://aiwaok.jp/explosion-proof
https://www.amphenol.co.jp/military/techinfo/ExplosionproofConnector.html

防振台

防振台とは

防振台とは、微細な加工を要する製造現場や精密な光学実験などを行う場面などで、振動を発生する機器から、振動が外部への伝搬を抑えることを目的とした装置です。

防振台の性能を決めるのは、防振台自体が有する固有振動数です。固有振動数とは、物体が自由に振動する時の振動数であり、外部からの力が加わらなくても、その物体は固有振動数で振動します。物体の固有振動数が小さいほど、周囲からの振動に追従できなくなるため、固有振動数が低い防振台は防振性が高まります。

防振台にはよく空気ばねが用いられており、水平方向のみならず三次元方向に対して防振することが可能です。空気ばねは空気の粘性抵抗により、すみやかに振動を減衰させることができます。

防振台の使用用途

防振台は、空気ばねなどを用いた振動低減方法によって、半導体・液晶ディスプレイ製造といった振動を嫌う精密機器製造の場面においてよく利用されています。特に振動を発生させるポンプや工作機械などを台上で用いる場合、防振台を使えば外部に振動が伝わることを抑制することが可能です。

あるいは精密ばかりを用いた計測やマイクロスコープによる観察においても、作業時の机上の振動、あるいは外部からの振動を速やかに抑制できるため、計測時間の効率化を図ることができます。

防振台の原理

防振とは、振動する機械などの振動体から外部へと伝わる振動をできるだけ抑制することです。気体中を伝わる振動は途中にある壁などの障害を通じて大きく減衰するため、あまり遠くまで振動が伝わることはありません。しかし、固体を伝わる振動の場合では、固体が媒質となり振動を伝搬するので、物理的に振動の伝達を抑えることが必要となります。

固体中の振動の伝播を抑えるためには、固体が固有に持つ振動数 (固有振動数) が低くなるようにすることが大切です。もし、ある物体の固有振動数をと同じ周波数の振動が入力された場合、その物体は激しく振動します。これを共振と言います。共振現象は最悪の場合に、機械が壊れる原因にもなりかねません。

したがって、振動を減らすためには、伝播する周波数と固有振動数をできるだけ大きく遠ざけることで振動の伝搬は低減できます。特に、固有振動数を小さくするほど振動伝達率が低減するため、防振台においても空気ばねやコイルスプリングを取り付ける手法などを用いています。その固有振動数は、10ヘルツ以下という低振動数です。

空気ばね方式では、金具とゴム膜で構成された空気ばねに圧縮空気を封入します。外部からコンプレッサなどで空気供給を行い、台の水平を維持しています。一方で、コイルスプリング方式では、空気を必要としないメリットがありますが、台に載せているものの重心が移動するとスプリングがたわ無ことによって、傾きが生じてしまうことがデメリットです。

防振台の種類

防振台にはメカニズムによって、大きく2つの種類があります。

1. パッシブ型

パッシブ型の防振台は、入力された振動エネルギーを防振ゴムなどの柔らかい材質の部材や空気ばねなどによって吸収するタイプの防振台です。多くの防振台はパッシブ型です。パッシブ型の防振台の中には、コンプレッサーや工場エアなどによって空気を供給する必要があります。

2. アクティブ型

アクティブ型の防振台は、強制的に振動を打ち消すタイプの防振台です。センサーによって振動を検知し、アクチュエータが入力振動とは逆向きの力を加えることによって、振動を打ち消します。

アクティブ型の防振台はパッシブ型と比較すると、コントローラやアクチュエータなどの装置が必要で大掛かりになりますが、特に10Hz以下の低い周波数の防振に向いています。

防振台のその他情報

除振台

防振台は振動を発生する装置などを載せ、載せた装置が発生する振動を周囲に伝えにくくするための装置です。逆に振動がある環境において、周囲から入ってくる振動を低減させる装置を除振台と言います。

振動の発生を抑えるのが防振であり、入ってきた振動を低減させるのが除振台です。役割によって呼び方は違いますが、装置としては多くの場合は防振、除振のいずれにも使うことができます。

また、制振という用語もありますが、制振は振動する物体に直接ブレーキをかけることです。具体的には、ダンピングという減衰装置によって振動を少なくします。

参考文献
https://jpn.surugaseiki.com/products/category/vibratoin-isolating-table
https://www.vibra.co.jp/products/detail/83
http://www.boushin.com/mechanism/

銀ペースト

銀ペーストとは

銀ペースト (英: silver paste) とは、樹脂に銀の粒子を分散させた導電性の接着剤です。

導電接合の方法として、はんだが用いられますが、はんだの場合、250℃近くまで昇温する必要があり、接合したい樹脂部品が加熱によりダメージを受ける可能性が高いです。

一方、銀ペーストの場合、100℃程度の温度でも焼結できるため、材料への損傷が抑えられます。キャパシタなどの電子部品と下地の基板を導通させ、固定することを目的に多く使われます。

銀ペーストの使用用途

銀ペーストは、低温での焼結が可能であり、電子デバイスの回路基板やディスプレイの電極、圧電部品など幅広く使用されます。近年では、折り曲げ自在の回路基板 (フレキシブルプリント配線板) の需要が増大し、樹脂フィルム上に配線を作成する際に、銀ペーストが用いられます。銅箔を貼り合わせるよりも低コストで、配線板の作成が可能です。

また、次世代太陽電池として注目される色素増感太陽電池では、透明な導電ガラスが持つ導電性をさらに高めるために、ガラス上に銀ペーストで配線加工が行われます。

銀ペーストの原理

銀ペーストは、樹脂の加熱による硬化反応を利用し、含有される銀の微粒子同士を接触させて導電性を得る方式です。

1. 樹脂

銀ペーストに使用する樹脂は、エポキシ系が主に用いられ、その構造と特性の関係について解析が進み、硬化剤についても開発が進んでいます。エポキシ樹脂の硬化反応は、エポキシと硬化剤との重合反応により進行し、強固な3次元的な結合構造の作成が可能です。

アミンを硬化剤とした場合には、アミンとエポキシ基の反応、あるいはアミノ基と水酸基との反応により、ポリマー化が進行します。始めは液状だったものが、加熱とともにゲル状へと変化し、ある時間後にはゴム状、最終的にはガラス状へと転移していきます。

ガラスへの転移が終了した所で、一連の硬化反応は終了です。なお、ガラス形状に転移する温度は、ガラス転移温度と呼ばれます。

2. 銀粒子

導電機構として、マイクロメートルサイズの銀の粒子がお互いに接触して電気が流れます。粒子間の電気接続を良好なものとするため、球状の粒子ではなく、平べったいフレーク状の銀微粒子が一般的です。

銀微粒子は、加熱によりエポキシ樹脂の3次元的な分子構造変化の中に取り込まれます。また、加熱すると、硬化する際に全体が収縮し、銀の粒子同士が接触することで、導電性の獲得が可能です。銀微粒子の他、金ペーストやニッケルペーストなどもあります。

銀ペーストの種類

接着剤となる樹脂及び配合する導電粒子には、各々多くの種類があり、市場では非常に多種類の導電性接着剤が、開発・販売されています。性能、用途、コスト、使い方などを考慮した選択が必要です。

使用される樹脂は、エポキシ系、フェノール系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系などがあります。電子部品の接続用途としては、加熱反応硬化型エポキシ系が主流です。

エポキシ系接着剤の特徴として、金属に対する接着力が優れており、耐熱性が高く、硬化時の体積収縮が少ないことが挙げられます。一方、導電粒子は、銀の導電粒子が広く使用されています。銀は導電性が安定している、酸化しにくい、貯蔵安定性が良い、熱伝導性が高いなどの特徴があり、電子材料では一般的です。

銀の導電粒子には、球状やフレーク状の粒子が使われ、性能によって粒子の大きさや配合量による種類があります。

銀ペーストのその他情報

銀ペーストの熱伝導率

銀単体の熱伝導率は429W/mKと非常に高いですが、使用される樹脂は1W/mKと低いので、エポキシ系銀ペースト全体の熱伝導率は、30~50W/mK程度です。この熱伝導率を大きくするためには、銀粒子の含有量を多くする必要があります。しかし、その分樹脂の含有量が減少するため、接着強度が大きく低下し、製造コストも懸念事項です。

さらに、銀粒子の平均粒子径が小さすぎると、熱伝導経路が確保できない課題や銀粒子の平均粒子径が大きすぎると、焼結しにくいなどの課題が出てきます。そこで近年では、銀ナノ粒子を導入した高熱伝導銀ペーストが開発されています。

これは、銀ナノ粒子により銀粒子同士を接着し、熱伝導の経路を数多く生成したことが要因です。熱伝導率が240W/mK程度の製品が出ています。

参考文献
https://www.noritake.co.jp/products/ceramic/middles/detail/125/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mes/25/0/25_181/_pdf
https://www.monotaro.com

酸素計

酸素計とは

酸素計

酸素計は、空気中の酸素濃度を測定するための計測器です。

酸素センサー酸素モニタと呼ばれることもあります。酸素は人間の生命活動に必須の物質であるため、環境中の酸素濃度をモニターすることは極めて重要です。

また、種々の科学・産業分野において正確な酸素濃度管理が必要となるケースも多く、用途に合わせた機器が製造されています。

酸素計の概要

酸素計の使用用途

酸素計の使用用途は、下記の2種類に大別されます。

  • 酸欠防止を目的とする酸素濃度のモニタリング (検知・監視)
  • 工業プロセスなどにおける酸素濃度管理

酸欠防止では、トンネルなどの密閉空間における生命維持を目的とし、酸素濃度の監視を行います。酸素濃度が15%以下になると人間は呼吸困難になり、7%以下になると脳機能への障害が起こり、さらに4%以下になると死に至ると言われているためです。機器の形状には、携行型・壁掛け型があります。

また、化学工業、セラミックス、金属、などの工業熱処理プロセスの中には、酸素濃度を低く保たなければいけないケースもあります。工業炉の燃焼工程でも、燃焼効率と酸化還元プロセスの最適化のため、酸素濃度の監視制御が必要です。これら工業目的の酸素計は、高温の化学反応場などの過酷環境に対する耐久性を要します。

酸素計の原理

酸素計の主な動作原理は、「ガルバニ電池式」と「ジルコニア固体電解質方式」の2つです。その他にも、「磁気式」「波長可変半導体レーザ分光式」などが挙げられます。

1. ガルバニ電池式

ガルバニ電池式酸素計の模式図

図2. ガルバニ電池式酸素計の模式図

外界からの酸素を通過させる樹脂隔膜、金 (Au) 電極と鉛 (Pb) 電極、および電解液 (水酸化カリウム水溶液)から構成されます。各電極では下記の反応が起こります。

  • 陽極: Pb + 2OH → Pb2+ +H2O + 2e
  • 陰極: O2 + 2H2O + 4e → 4H2O

陽極で放出された電子が陰極に達し、陰極では空気中から取り込まれた酸素が、陽極で放出された電子を取り込みます。この電子の流れ (電流) が酸素濃度に比例するため、電流を測定することで酸素濃度が測定できるという仕組みです。この反応は、自発的に起るため、センサ駆動用の電源は必要ありません。

2. ジルコニア固体電解質方式

ジルコニア固体電解質方式酸素計の模式図

図3. ジルコニア固体電解質方式酸素計の模式図

ジルコニアが500℃以上の高温状態において固体電解質の性質を示すことを利用し、ジルコニアセルを用いた手法です。

ジルコニアは固体の中で酸素負イオン (O2) を伝導できる性質があり、酸素濃度の高いガス (大気中) から酸素濃度の低い雰囲気 (工業炉内など) へとイオンが伝導します。

このイオンの伝導によって電位差が発生しますが、O2高濃度側とO2低濃度側にはそれぞれ電極が設置されており、起電力が生じます。ちょうど電池の正極と負極のような関係です。

  • O2高濃度側: O2 + 4e → 2O2
  • O2低濃度側: 2O2 → O2 + 4e

電極間に発生した起電力はネルンストの式 (下記参照)に従うため、それぞれの電極における酸素分圧を求めることができます。

  • E=(RT/4F)·ln(PA/PB)
  • (R: 気体定数、T: 温度、F: ファラデー定数、PA: 高濃度側(大気中)酸素分圧、PB: 低濃度側酸素分圧)

なお、温度はジルコニアに備え付けた熱電対により計測されます。

なお、概ね400℃以下の雰囲気下では、対象ガスをサンプリングチューブで装置内に導入し、白金ヒータなどでジルコニアセルを所定の温度まで加熱します (サンプリング方式)。ジルコニアが固体電解質として機能するためには500℃以上の温度が必要となるためです。

酸素計の選び方

酸欠防止を目的とした酸素計と工業プロセスにおける低酸素濃度維持を目的とした酸素計では、異なった製品を使用する必要があります。

酸欠防止を目的とした携行・定置タイプの酸素系では、ガルバニ電池式が採用されており、このタイプではセンサ駆動用の電源も必要がありません。センサの寿命は、凡そ2~3年とされています。ただし、使用可能な環境は一般環境に近い雰囲気下に限定され、精度は±0.5%O2程度です。防爆仕様になっている製品もあります。

一方、工業炉などをはじめとする、高温の工業プロセスにおける酸素濃度の計測では、ジルコニア式の製品が使用されます。700℃以上の雰囲気下では、直接その雰囲気にセンサー部分を挿入する直挿式が利用されますが、400℃以下ではサンプリングチューブなどで炉内雰囲気ガスを引き込み、別途ジルコニアセルを加熱するサンプリング方式の製品が適切です。

参考文献
https://www.motoyama.co.jp/engineer/engO201.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/56/9/56_9_507/_pdf/-char/ja

酸素モニタ

酸素モニタとは

酸素モニタ

酸素モニタとは、空気中の酸素濃度を測定するための計測器のことです。

酸素センサー酸素計と呼ばれることもあります。酸素モニタが必要である理由として、酸素が人間の生命活動に必須の物質であることが挙げられます。

特に酸欠になりやすい閉塞環境の作業弁場において、酸素濃度をモニタリングすることは極めて重要です。また、多くの科学・産業分野において、プロセス管理や機器保守の観点で正確な酸素濃度管理が必要です。科学・産業分野の要請に応じて、様々な測定条件における測定システムが提供されています。

代表的にはジルコニアセンサーがあり、半導体製造における製品管理や、自動車等における省エネ、排ガス浄化にも利用されています。酸素モニタの詳細は、下記の図を参照してください。

酸素モニタの使用用途

酸素モニタの使用用途は、「酸欠防止用」と「酸素濃度管理用」の2つに大別されます。

1. 酸欠防止を目的とする酸素濃度のモニタリング (検知・監視)

密閉空間で生命活動を維持する上で極めて重要な役割を担います。これは、酸素濃度が15%以下になると人間は呼吸困難になり、7%以下になると脳機能への障害が起こり、さらに4%以下になると死に至ると言われているためです。機器の形状には、携行型・壁掛け型があります。

2. 工業プロセスなどにおける酸素濃度管理

化学工業、セラミックス、金属、などの工業熱処理プロセスの中には、酸素濃度を低く保たなければならないケースもあります。工業炉の燃焼工程でも、燃焼効率と酸化還元プロセスの最適化のため、酸素濃度の監視制御が必要です。

このような工業用途の酸素モニタは、高温環境下で激しい化学反応にさらされる可能性があります。過酷環境に対して耐性を持った製品が必要です。

酸素モニタの原理

酸素モニタの主な動作原理は、「ガルバニ電池式」と「ジルコニア固体電解質方式」の2つです。その他にも、「磁気式」「波長可変半導体レーザ分光式」等が挙げられます。

1. ガルバニ電池式

外界からの酸素を通過させる樹脂隔膜、金 (Au) 電極と鉛 (Pb) 電極、および電解液 (水酸化カリウム水溶液) から構成されます。各電極では下記の反応が起こります。

  • 陽極: Pb + 2OH → Pb2+ +H2O + 2e
  • 陰極: O2 + 2H2O + 4e → 4H2O

陽極で放出された電子が陰極に達し、陰極では空気中から取り込まれた酸素が、陽極で放出された電子を取り込みます。この電子の流れ (電流) が酸素濃度に比例するため、電流を測定することで酸素濃度が測定できるという仕組みです。この反応は、自発的に起るため、センサ駆動用の電源は必要ありません。

2. ジルコニア固体電解質方式

ジルコニアが500℃以上の高温状態において固体電解質の性質を示すことを利用し、ジルコニアセルを用いた手法です。ジルコニアは固体の中で酸素負イオン (O2) を伝導できる性質があり、酸素濃度の高いガス (大気中) から酸素濃度の低い雰囲気 (工業炉内など) へとイオンが伝導します。

このイオンの伝導によって電位差が発生しますが、O2高濃度側とO2低濃度側にはそれぞれ電極が設置されており、起電力が生じます。ちょうど電池の正極と負極のような関係です。

  • O2高濃度側: O2 + 4e → 2O2
  • O2低濃度側: 2O2 → O2 + 4e

電極間に発生した起電力はネルンストの式 (下記参照) に従うため、それぞれの電極における酸素分圧を求めることができます。

  • E= (RT/4F) ·ln (PA/PB)
  • (R: 気体定数、T: 温度、F: ファラデー定数、PA: 高濃度側 (大気中) 酸素分圧、PB: 低濃度側酸素分圧)

温度はジルコニアに備え付けた熱電対により計測されます。なお、概ね400℃以下の雰囲気下では、対象ガスをサンプリングチューブで装置内に導入し、白金ヒータなどでジルコニアセルを所定の温度まで加熱します (サンプリング方式) 。ジルコニアが固体電解質として機能するためには、500℃以上の温度が必要になるからです。

酸素モニタの種類

酸欠防止を目的とした酸素計と、工業プロセスにおける低酸素濃度維持を目的とした酸素計では、異なった製品を使用する必要があります。

1. 酸欠防止を目的とした酸素モニタ

酸欠防止を目的とした携行・定置タイプの酸素系では、ガルバニ電池式が採用されます。このタイプではセンサ駆動用の電源も必要がありません。

センサの寿命は、凡そ2~3年です。ただし、使用可能な環境は一般環境に近い雰囲気下に限定され、精度は±0.5%O2程度です。機器の形状には、携行型・壁掛け型があり、防爆仕様になっている製品もあります。

2. 工業用途の酸素モニタ

工業炉などをはじめとする、高温の工業プロセスにおける酸素濃度の計測では、ジルコニア式の製品が適切です。700℃以上の雰囲気下では、直接その雰囲気にセンサー部分を挿入する直挿式が利用されます。

一方、400℃以下ではサンプリングチューブなどで炉内雰囲気ガスを引き込み、別途ジルコニアセルを加熱するサンプリング方式の製品が適切です。用途に応じて正しく選択する必要があります。

参考文献
https://www.motoyama.co.jp/engineer/engO201.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/56/9/56_9_507/_pdf/-char/ja

酸素センサー

酸素センサーとは

酸素センサー

酸素センサーとは、測定空間の大気中における酸素濃度を計測するためのセンサーです。

隔離された密閉空間において、生命活動を維持するために酸素濃度を計測することは極めて重要です。この酸素濃度計測で酸素センサーは、大きな役割を担います。

酸素濃度が15%以下になると、人間は呼吸困難になり、7%以下になると、脳機能への障害、さらに4%以下になると死に至るといわれています。さまざまな科学・産業分野において、酸素センサーが必要とされ、その分野の要請に応じて酸素濃度の測定条件やシステムが多岐に渡って開発されています。

代表的なセンサーは、ジルコニアセンサーです。ジルコニアセンサーは半導体製造における製品管理や自動車等における省エネ、排ガス浄化にも利用されています。

酸素センサーの使用用途

酸素濃度の計測は、大きく2つの役割として行われます。1つ目は、人の命を守る酸欠防止としての検知や監視です。2つ目は、工業製品の生産過程などにおける酸素濃度の管理です。

1. 酸欠防止

酸欠防止としての使用例は、トンネルや地下工事などの土木作業現場での安全管理、医療分野では酸素吸入管理や高圧蘇生などです。これらの用途で用いる製品には、携行できたり壁掛け型で使えたりするものがあります。

2. 酸素濃度の管理

工業製品製造の工程管理としては、化学工業、セラミックス、金属の分野で用いられます。工業製品製造においては、熱処理工程の高温環境下で使用されることが多いのも特徴の1つです。

私たちの生活に身近な例では、自動車やオートバイのエンジンに使用されています。排気ガス中の酸素濃度を検知することによって、燃料の濃さを調整する役割を担っています。

酸素センサーの原理

酸素センサーの測定原理にはガルバニ電池式、ジルコニア個体電解質方式、磁気式、波長可変半導体レーザ分光式などがあります。

1. ガルバニ電池式

ガルバニ電池式は構造が簡便で、携行タイプの酸素計で使われている方式です。金と鉛の電極、樹脂隔膜と電解液で構成され、隔膜を通過した酸素が電解液に溶ける際に酸素濃度に応じた電流が流れる仕組みを利用しています。

2. ジルコニア個体電解質方式

ジルコニア個体電解質方式は、固体電解質であるジルコニアを用いる方式です。ジルコニアは固体の中で酸素負イオン  (O2-) を伝導できる性質があり、酸素濃度の高いガス (O2高圧側) から酸素濃度の低い雰囲気 (O2低圧側) へとイオンが伝導します。

ジルコニア個体電解質方式の酸素センサーでは、O2高圧側とO2低圧側にはそれぞれ電極が設置され、これらは電気的に接続された状態です。O2は、負イオンとしてジルコニア内部を透過しようとするため、O2高圧側の電極において電子を捕獲し、負イオンとなる一方で、O2低圧側では、透過してきたO2-から電子を受け取ります。

ちょうど電池の正極と負極のような関係であり、O2低圧側 (負極) で解放された電子は、再びO2高圧側 (正極) へと流れ込むという仕組みです。電極間に発生した起電力は、次のようなネルンストの式と呼ばれる関係を用い、それぞれの電極における酸素分圧を求められます。

 E= (RT/4F) · 1n (PA/PB)

ここでRは気体定数、Tは温度、Fはファラデー定数、PA・PBは、それぞれO2高圧側とO2低圧側の酸素分圧を示しています。なお、温度はジルコニアに備え付けた熱電対により計測し、PAは通常大気中の酸素分圧を基準としています。

酸素センサーのその他情報

酸素センサーの劣化

工業製品の製造工程で使用されるジルコニア式酸素センサーは、劣化に注意が必要です。高温環境下で使用され、さまざまなガスもジルコニアセルを劣化させたり影響を与えたりすることがあります。ハロゲンといった還元ガスも、劣化となる因子です。

自動車用では酸素センサーが劣化や故障すると、排気ガス中の有害物質が増加してしまいます。また、必要以上に燃料が濃くなると、燃費が悪化することもあります。O2センサーが劣化した際には、ディーラーやサービス工場で部品交換が必要です。

参考文献
https://www.motoyama.co.jp/engineer/engO201.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/56/9/56_9_507/_pdf/-char/ja

超音波発生装置

超音波発生装置とは

超音波発生装置

超音波発生装置とは、人の耳に聞こえない、概ね周波数が2okHz以上の音を発生する装置のことです。

超音波発生装置は装置単体としては超音波発生源であり、これにつながったプローブの先端や水槽の壁等から、任意の周波数の振動を所定の出力で発生させるような仕組みになっています。

超音波が空気中を伝わる仕組みは、物理的には可聴域の音と同じです。しかし、超音波は指向性が高く、高分解能の探知に利用できます。さらに超音波は、動力源や洗浄装置にも応用が可能です。したがって、超音波発生装置は様々な応用機器に組み込まれる形で利用されています。

超音波発生装置の使用用途

超音波発生装置は、検査装置や加工装置、洗浄装置などに組み込まれて使用されています。

1. 検査装置

検査装置では、医療分野において内蔵の状態を調べるエコー検査装置が広く知られています。また、産業分野では、超音波探傷検査装置が材料の欠陥やクラックを検出するために使用されています。さらに、海中の魚を探す魚群探知機も超音波を使用しています。超音波を使った検査では、被検査物に悪影響を与えず非破壊で検査できることが大きな利点です。

2. 加工装置

加工装置では、食品加工分野でマヨネーズや油の混合に用いられているほか、超音波振動を利用した切削装置なども製造されています。

3. 洗浄装置

超音波を利用した洗浄装置も様々な物があり、眼鏡の洗浄を始め、半導体や電子部品の洗浄などに私用されています。超音波洗浄では、洗浄槽の中に水や純水を入れ、洗剤を使用せずに製品や部品の汚れを落とせることが特徴です。

超音波発生装置の原理

超音波発生装置は、圧電素子 (圧電セラミックス) に高い周波数の電圧をかけて振動させ、物体周辺の空気を振動させて超音波を作り出します。超音波発生装置で用いられる圧電素子には、セラミックスの一種で酸化チタンや酸化バリウム等を高温で焼き固めた材料が用いられています。

圧電素子は、外部から圧力を加えると素子に電圧が発生します。その反対に、素子に電圧を加えると素子が伸び縮みします。

素子に圧力を加えると電圧が発生する理由は、素子に圧力を加えることで、固体中の結晶構造が歪められたことに起因します。固体中には、プラス・マイナスのイオンが配置されており、外部からの力によって、これらのイオンの位置がゆがめられ、固体内で電荷の偏りが生じます。その結果、電気的な分極が発生し、固体内に電圧が発生します。

反対に、電圧の印加によって素子が伸縮するのは、その電場によって、イオンの位置が動くことで結晶構造が変わり、固体が持つ厚みが変化するためと理解されています。

超音波発生機の構造

超音波発生機は、大きく分けて発振器、共振器、変換器の3つの構成要素からできています。

発振器は前述のように、圧電素子を用いて高周波の電圧から超音波を発生する部分です。共振器は、発振器で発進させた振動を金属の棒や板に伝えて、これらを共振させて増幅します。変換器は、増幅させた超音波を、使用する媒体に伝搬させるために変換する部品です。つまり、超音波は空気中で音として使う場合や、洗浄槽で水の振動として使う場合、検査装置でプローブを介して検査対象に振動を与えるために使う場合など、様々な形の振動に変換されます。

さらに、超音波発生装置には、発振器の周波数や出力レベルを調整するための制御回路や、発生した超音波を測定するためのセンサーなどが備わっています。

超音波発生装置は材料試験などで単独で使用される場合もありますが、多くの場合には何らかの応用機器の中に組み込まれて使用されます。具体的には医療用の超音波診断装置や産業用の超音波洗浄装置や粉砕装置、海中で使用するソナーや魚群探知機などが良く知られています。

参考文献
https://www.honda-el.co.jp/hb/1_1.html
https://senjyou.jp/ultrasonic-cleansing/

超音波レベル計

超音波レベル計とは

超音波レベル計

超音波レベル計 (英: Ultrasonic Level Meter) とは、液体や固体のレベルを超音波の反射によって測定する装置です。

超音波の発生器が送信側から超音波パルスを発射し、反射して受信器に戻ってくる時間を計測します。超音波レベル計は非接触で液位を測定できるため、さまざまな物質の液位測定に適用可能です。特に有害物質や高温液体など、人が直接触れることが難しい場所で使用されます。

密度や導電率にも左右されないため、非常に高精度な測定ができる点が特徴です。また、超音波の伝播速度が早く、測定結果の精度が高いです。また、一部の超音波レベル計には信号処理技術を使用して測定誤差を補正する機能も備わっています。

超音波レベル計は堅牢な構造を持ち、長期間にわたって安定して使用可能です。また、非接触測定のため、センサ部分が摩耗や汚れなどが発生しづらい傾向にあります。したがって、メンテナンスが比較的容易です。

超音波レベル計の使用用途

超音波レベル計はさまざまな分野・用途に使用されます。特に、容器やタンクの液位測定の目的で使用されることが多いです。

エネルギー産業では、石油やガスの貯蔵タンクのレベル監視に使用されます。在庫管理や補給計画を最適化可能です。化学プラントでは硫酸などの化学物質タンク液位を測定し、生産プロセスの制御や安全性確保に役立ちます。

せき式流量計のセンサーとして使用し、流量測定を目的に使用されることもあります。せき式流量計は流体の導線に堰板を設け、その上流液位を測定することで流量を割り出す装置です。構造が簡単なため、開放流路に広く使用される流量計です。

また、液体のみではなく、粉体のレベル測定に使用されることがあります。鉱業において鉱石タンクや鉱滓容器のレベル測定によって貯蔵管理する場合も多いです。

超音波レベル計の原理

超音波レベル計は、超音波の原理を利用して液体や固体のレベルを測定する装置です。装置内には超音波を発生させる超音波発生器を有します。超音波発生器は、振動子や圧電素子などのデバイスを使用して超音波パルスを発生します。

発射された超音波パルスは、空気や液体などの媒体を伝播します。音波の周波数が人間の聴覚範囲 (20Hzから20kHz) を超える高周波数の音波です。超音波は対象物表面に到達すると一部は反射され、音波レベル計の超音波受信器へ導入されます。

受信機では反射された超音波の到達時間を計測します。計測された時間は超音波が送信器から対象物まで往復した時間であり、これにより対象物までの距離を推定することが可能です。

超音波レベル計の種類

超音波レベル計には分離型と一体型の2種類があります。

1. 分離型

分離型は、コントローラ部とセンサー部が別々のユニットとして設計された超音波レベル計です。ユニット同士をケーブルで接続し、センサー部品の信号を演算処理部へ送信します。

分離型は演算処理部品をタンクから離れた位置に配置できるため、センサの設置場所に制約が少ない点が特徴です。適切な制御部分が遠隔地に配置されている場合に適しています。また、センサ部分が液体や固体による影響を受けにくく、高温や腐食性のある環境で使用することができます。

全長が高いタンクであれば、下部にコントローラ部を設置することが多いです。これにより、タンク上へ登らなくともコントローラ部で液位表示を確認することが可能です。

2. 一体型

一体型は、センサ部分と制御部分が一体化した超音波レベル計です。センサ部分と制御部分が統合されているため、コンパクトで取り付けが簡単です。通常は液体や固体のタンクに直接取り付けられ、測定と制御が同じ装置で行われます。

センサと制御部分が統合されているため、配線や接続の煩雑さが少ない点が特徴です。また、センサと制御部分が連携しており、通信や設定が容易で操作もシンプルです。

参考文献
https://www.yokogawa.co.jp/solutions/products-platforms/field-instruments/level-meters/sun-ultrasonic-level-meter/
http://www.nohken.com/japan/product/level_sensor/ultrasonic/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/levelsensor/type/reflection.jsp